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憎しみに支配された王女と愛の対峙

Penulis: 吟色
last update Terakhir Diperbarui: 2025-09-10 07:31:13

王宮の地下から続く石段を上がっていくと、だんだん声が大きくなってきた。

冷たくて、怒りに満ちた女性の声。

オリヴィア王女の声。

「愛などこの世に不要だ」

その言葉が、石の廊下に響いている。

「愛は人を弱くする」

「愛は人を苦しめる」

「愛は……偽りだ」

私の胸が痛んだ。

なんて悲しい言葉。

きっと、心の奥では愛を求めているのに。

「リア」

カイルが私の手を握ってくれた。

「大丈夫か?」

「ええ」

私は頷いた。

「でも、あんなに愛を憎んでいる人を、本当に癒やせるのかしら」

「癒やせる」

エリザベス姉が確信を込めて言った。

「オリヴィアは、元は愛に満ちた子だった」

「きっと、心の奥では愛を求めている」

セラフィナも同意した。

「愛を憎むのは、愛に傷ついたから」

そうね。

愛を知らない人は、愛を憎めない。

愛の素晴らしさを知っているからこそ、それを失った時の絶望も深い。

私たちは王座の間への扉に着いた。

重厚な扉の向こうから、オリヴィア王女の声が聞こえてくる。

「愛を禁ずる法を作れ」

「愛を口にした者は処罰せよ」

「この国から、愛を根絶するのだ」

根絶……なんて恐ろしい言葉。

でも、その声に滲む悲しみを、私は感じ取った。

「入りましょう」

私は扉に手をかけた。

「愛を取り戻しに」

扉を開くと、王座の間が見えた。

豪華な装飾が施された広い部屋。

でも、なぜか暗くて冷たい印象。

王座には、一人の女性が座っていた。

オリヴィア王女。

エリザベス姉によく似た美しい顔立ち。

でも、その瞳は氷のように冷たい。

愛を失った人の瞳。

「誰だ」

オリヴィア王女が私たちを見た。

「エリザベス……まさか」

「オリヴィア」

エリザベス姉が前に出た。

「久しぶりね」

「なぜここに」

オリヴィア王女の声が震えた。

「お前は愛に溺れて、国を捨てた女だろう」

「捨ててなんかいない」

エリザベス姉が首を振った。

「愛があるからこそ、国を守りたいの」

「嘘を言うな」

オリヴィア王女が立ち上がった。

「愛は人を盲目にする」

「愛は人を弱くする」

「愛は……」

そこで言葉が詰まった。

「愛は、人を傷つける」

最後の言葉が、かすれていた。

きっと、自分の経験を言っているのね。

愛する人を失った痛みを。

「オリヴィア」

私が前に出た。

「あなたも愛を知っていたのね」

「誰だ、お前は」

オリヴィア王女が私を睨んだ。
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