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第九話:逆転の嵐、7回の崩壊

last update Zuletzt aktualisiert: 10.02.2026 14:00:46

準決勝のスコアは、6回終了時点で福丘2-1龍門。球太の先発は予想外の好投を続け、6回まで1失点に抑えていた。スタンドの福丘応援団は「早乙女コール」を連発し、ベンチでは涼が静かにタオルで汗を拭きながら、球太のマウンドを見つめ続けていた。

7回表、福丘の攻撃。2アウトから翔が四球を選び、続く打者がセンター前ヒットで1・三塁のチャンス。打席は大石。龍門のエース・黒崎はすでに100球近くを投げ、息が少し上がっている。

黒崎の初球、外角低めフォーク。大石のバットが空を切る。ストライク。

二球目、内角ストレート。ファウル。

三球目、真ん中やや高めストレート。大石のバットが火を噴くように振られる。

カキーン!!

打球はライトスタンドへ……!

3ラン! スコア5-1!

スタンドが爆発する。福丘ベンチが総立ち。球太はベンチの柵を握りしめ、拳を握った。

「よし……! これでいける!」

7回裏。球太がマウンドに戻る。監督の山田はベンチから静かに見守る。

「早乙女。最後まで投げ切れ」

球太は頷き、グローブを叩いた。腕は重いが、まだ投げられる。球速は151キロ台を維持している。

龍門の攻撃。1番打者、右打ちの巧打者。

初球、ストレート。151キロ。ストライク。

二球目、外角スライダー。ボールが曲がりすぎてボール。

三球目、内角フォーク。落ちる!

打者が空振り三振!

続く2番打者。左打ちのパワーヒッター。

初球、ストレート。ファウル。二球目、フォーク。空振り。

三球目、真ん中低めストレート。打者がタイミングを合わせてフルスイング。

カキーン!

打球はレフトへ。高く上がる……フェンス直撃の二塁打!

1アウト二塁。球太の息が少し乱れ始めた。

「くそ……集中しろ」

西田がマウンドへ向かう。

「球太、腕が少し下がってる。ストレートの軌道を高めにしろ」

球太は頷く。次の打者、龍門の4番。クリーンナップの中心。

フルカウント。球太は深呼吸し、ストレートを投げる。

152キロ!

だが、打者のバットがタイミングを合わせて捉える。

カキーン!!

打球はセンターオーバー。翔がジャンプするが届かない……!

タイムリー三塁打! 5-2!

ベンチが静まり返る。球太の表情に焦りが浮かぶ。

続く5番打者。パワーヒッター。

初球、ストレート。ファウル。二球目、スライダー。ボール。

三球目、フォーク。落ちるはずが……甘く入ってしまった。

カキーン!!

打球はレフトスタンドへ……!

逆転ホームラン! 5-4!

スコアは5-4。龍門が逆転した。

球太はマウンドで頭を抱えた。土を強く踏みしめる。汗が目に入り、視界がぼやける。

「俺の……せいだ」

続く6番打者。初球をセンター前ヒット。1アウト一塁。

7番打者。四球。1アウト一・二塁。

8番打者。初球をレフト前ヒット。1アウト満塁。

監督が立ち上がる。

「早乙女! 降りろ!」

球太は首を振ったが、山田監督の判断は早かった。

「篠原! 準備しろ!」

球太はゆっくりマウンドを降りた。足取りが重い。ベンチに戻る途中、涼とすれ違う。

「ごめん……俺が……」

涼は静かに言った。

「気にすんな。お前の投球はよかった。後は……俺が締める」

球太はベンチの端に座り、グローブを握りしめてマウンドを見つめた。

涼がマウンドに立つ。キャッチャーの西田がミットを構える。

「涼、肩は……大丈夫か?」

涼は小さく頷いた。

「投げられる」

初球、ストレート。

バシュン!!

球速表示板:156キロ。

スタンドがどよめく。龍門の9番打者が空振り三振!

続く1番打者も三振。涼のストレートは、肩の違和感を感じさせないキレを見せていた。

2アウト。続く2番打者。

涼の投球。ストレート157キロ。ファウル。

二球目、スライダー。空振り。

三球目、チェンジアップ。打者がタイミングを外され、ゴロ。

ショートが処理してアウト!

7回裏を無失点で締めた!

ベンチに戻った涼に、球太が駆け寄る。

「涼……すげえ。肩、大丈夫か?」

涼は息を切らしながら言った。

「まだ……投げられる。でも、流れは変えられなかった」

スコアは5-4、龍門リード。8回表、福丘の攻撃。

黒崎はすでに疲労が見え始めていたが、粘り強く投げ続ける。福丘は2点を返し、同点6-6に追いつく!

8回裏。涼が続投。

しかし、肩の違和感が徐々に表面化し始めた。ストレートの球速が154キロに落ち、キレが少し鈍る。

龍門の3番打者に四球を与え、4番打者にヒット。1アウト一・二塁。

続く5番打者。フルカウント。

涼の勝負球、ストレート。

155キロ!

だが、打者が捉える。

カキーン!

打球はライト線へ。フェンス際まで……!

タイムリー二塁打! 6-7!

再び逆転を許す。

涼はマウンドで唇を噛んだ。西田がマウンドへ。

「涼、肩が……もう限界だ」

涼は首を振った。

「あと……もう少し」

だが、次の打者に四球。満塁のピンチ。

監督が立ち上がる。

「篠原、降りろ!」

涼は抵抗したが、監督の視線に頷いた。

マウンドを降りる涼の背中。ベンチに戻ると、球太がタオルを渡す。

「涼……ありがとう。お前のおかげで、まだ諦めずにいられた」

涼は小さく笑った。

「後は……打線だ」

9回表、福丘の最後の攻撃。だが、黒崎のリリーフが入り、三者凡退。

試合終了。龍門の勝利。6-7。

グラウンドに沈黙が落ちる。福丘の選手たちは土の上に座り込み、肩を落とした。

球太はベンチの端でグローブを握りしめ、俯いた。涼が隣に座り、肩を並べた。

「早乙女……お前はよく投げた。初めての先発で、ここまで……」

球太は顔を上げ、涼を見た。涙が混じった声で言った。

「俺が7回で崩さなければ……お前の肩を、無理させずに済んだのに」

涼は静かに首を振った。

「誰も悪くない。夏は……こんなもんだ」

監督が選手たちを集めた。

「今日は……負けた。だが、お前たちはよく戦った。早乙女、篠原。お前たちの投球は、来年の甲子園への糧になる」

球太は立ち上がり、涼と拳を合わせた。

「来年……絶対に」

涼は頷いた。

「ああ。俺たちの夏は、まだ終わってない」

スタンドの歓声が遠くに聞こえる中、二人は肩を並べてグラウンドを去った。

甲子園への道は、ここで一旦閉ざされた。でも、二人の闘志は、燃え続けている。

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