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8.妻ではありませんが?

Auteur: 桜立風
last update Date de publication: 2026-06-13 11:12:03

「何も変わってないから……」

大きな玄関ドアを開けると正面に立派な観葉植物。その後ろはガラス状の壁になっていて、歪んだ模様が上手に視線を隠している。

「確かに、何も変わってないみたいですね?」

「……だろ?」

……といっても、ここを出てからまだ、10日にもならない。

リビングも……当然ながら何も変化はないわけで。何気なく進んだ先にソファがあり、座ろうとした紅に、神楽がすかさず言う。

「冷蔵庫の中も変わらないぞ?」

「はい……」

「……」

何なんだ?開けて確かめてほしいのか?

固まる紅に、神楽は後頭部を撫でながら続けた。

「ビールが冷えてると思う。君が出ていった日、入れていっただろ?」

「……さぁ、記憶に、ないです」

「ツマミは、冷蔵庫に入ってるもので適当に作ってくれたらいいから」

神楽はそう言って、先にソファに座った。……この人何を言ってるんだろ。私はもう奥さんじゃなくてお客さんなんだけど。

「……私は、オリーブとチーズをつまみにしてビールを飲みたいですね」

目の前に座り、背筋を伸ばして足を組んでやった。自分の前でそんなに偉そうに座る女など初めてだったのかもしれない。

神楽は目をパチ
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    「話の内容と店があまりにもミスマッチじゃないか?」 神楽に真剣な表情で言われ、驚いた。 別の店に行こう誘われ、豚串と生ビールの美味しさは堪能したので、素直について行くことにする。 「言い訳をするわけじゃないが、あの頃の俺は荒れててな。多分、かなりの人に嫌な思いをさせたと思う」 次の店は半個室の落ち着いた店。 お酒を注文したところで、神楽が口を開いた。 「荒れていた理由は?」 当時の神楽は、男子高校生ながら、誰もが注目してしまうほどのビジュアルを兼ね備えていた。 取り巻きも多く、華やかで、全校生徒の憧れだったと思う。 そんな人がなぜ、心を荒らして安易に人を傷つけたのか、それが知りたかった。 「母親が、より良い生活を求めて父親と離婚して……俺を連れて医者の男と再婚した。12歳の時だ」 「噂は本当だったんですね?」 「噂になってたの?」 「はい。戻ってくる颯真さんという方が、院長の本当の息子だと」 神楽は少し笑って、ワインをひとくち飲んだ。 「母親に連れられて行った先に、確かに颯真がいたよ。ひとつ年下で、俺とはまったく違うタイプ」 「連れ子同士、ってことなんですね。成長過程は置いといて、2人とも医者になったのはすごいです」 「父親の考えだよ。だから母親は高校を卒業して家を出ようとした俺を許さなかった。……反抗するのも面倒で医者になったけど、学費は出してくれるし悪い話じゃなかったよな」 そう言いながら、心ここにあらず、といった様子の神楽。 「反抗してる最中だったんですね?高校時代は」 あの頃の神楽は、鋭利なナイフのような面が確かにあった。 関わる人を傷つけるのに、その綺麗な見た目が人を集めてしまう…… 「子供の頃からサッカーをやっててな。父親はチームのコーチだった。母親に言わせれば稼ぎが悪かったらしいが……俺にはいい父親だったんだ」 「本当は、離れたくなかった?」 「友達もたくさんいたし、子供ならではの話だけど、サッカー選手になりたいって夢もあった。けど……母親はそのすべてを突然奪ったんだよ」 言葉にはならない悲しみが伝わってくる。継父や連れ子の颯真との関係も、決して心安らぐものではなかったのだろう。 「わかりました」 「……は?」 紅は生ビールを2つ頼み、ドンッと神楽の

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  • クズなハイスペ夫を改心させたのはもっとクズな私です   3.紅の目的

    先に部屋を出た紅は、冷蔵庫を開け、冷えたミネラルウォーターをグラスに注ぐ。飲みきって息をつく紅の後ろに、部屋から出てきた神楽が近づいた。こういう時は……どんな態度を取ったらいいか。「あの、神楽さんも飲みますか?ミネラルウォーター……」「いや、いらない」肩からふわりと薄いショールがかけられた。「夜は少し冷えるからね」グラスをシンクに置いた紅の唇を、親指でひと撫でしてから手を取った神楽。……キスを拒んだのに、機嫌を損ねなかった?いや、面白くはないはず。寝室で見せた獣のような目を思い出し、紅はそっと笑った。「悪いな、遅くなった」「いいよ!神楽が最後に現れるのはいつものことだ

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