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第727話

Author: 落流蛍
哲郎が投稿したSNSの内容は、瞬く間にネット上で拡散された。

もちろん、華名も多くの憶測を目にしていた。

こんな絶好の機会を、彼女が逃すはずもない。

すぐさま彼女は自身のSNSにこう投稿した。

【哲郎兄さんの最高の祝福に感謝します。小清水グループを手に入れたら、必ず誠心誠意経営して、皆さんや哲郎兄さんの期待に応えます】

この投稿が公開された途端、「華名こそ小清水グループの継承者」と信じるネットユーザーたちは一気に熱狂した。

【ほら見たことか、やっぱり小清水グループを継ぐのは華名なんだよ。哲郎の全面的なサポートがあるんだ、他に誰が小清水グループを取れるっていうの?華恋とか言ってたやつ、正気かよ】

【そうそう、常識で考えたらわかるでしょ。華恋に何があるっていうの?あの南雲グループだって、もとは賀茂家の後押しがあったからこそだよ】

【だからこそ、耶馬台国では結局のところ賀茂家がすべて。賀茂家が生かそうと思えば生きられるし、殺そうと思えば終わりなのよ】

【華名がここまで断言してるんだもん、小清水グループを継ぐのは彼女で決まりでしょ。いいな~、財閥の彼氏がいるってやっぱり強いわ】

【爆笑、華恋なんて今ごろどこかに隠れて泣いてるんじゃない?】

【マジで草。自分の身の程もわからずに華名に対抗しようとするなんて、笑えるわ。もし賀茂爺がまだ生きていたら、2人の間に勝負の余地もあったかもしれないけど、今となっては華恋に勝ち目なんてゼロ】

【あ、そうそう、賀茂爺の死についてさ、聞いたことある?なんか裏話で、どうも華恋が関係してるって......】

このコメントが火をつけ、ネット上ではさらに興味を引く展開へ。

【詳しく!】

【上と同じ、賀茂爺の死と華恋にどんな関係が?】

【お願い、話を途中で切らないで、何があったのか早く教えて!】

......

多数のコメントに煽られるように、投稿者がついに口を開いた。

【詳しいことはあんまり知らないけど......聞いた話だと、賀茂爺は華恋を庇って銃弾を受けたんだって】

【えぇっ!?賀茂爺って老衰じゃなくて、華恋を守って死んだの!?】

【そういえば、あの時は変だったよな。何の前触れもなく突然亡くなったし......】

【うそでしょ......?華恋のために命を落としたなんて、賀茂爺優しすぎるよ......なのに
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