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第2話

last update Last Updated: 2025-08-07 13:59:59

カフェに向かう道すがら、頭の中はひどく混乱していた。

あれこれ考えているようで、実は何も思考できていない。ただ漠然とした不安だけが、私の心を支配していた。

気を紛らわせるようにスマホを取り出すと、ニュースの通知が目に飛び込んできた。

【今注目のイケメンモデル・神崎かんざきりつが本日、海外での活動を終え羽田空港に凱旋。長時間のフライトにも関わらず、駆けつけたファンへ神対応で魅了した。】

画面に表示された律の写真は、ガッチリと帽子とマスクで顔を隠していたが、それでも彼の独特のオーラは隠しきれていない。

瞬く間にファンに囲まれている様子が写し出されていた。

現代社会にプライバシーなんてないんだな……と、ぼんやりため息が出た。

律か……懐かしいな。そんなことを考えていると、少しだけ胸のざわつきが収まるのを感じた。

カフェに着き、いつものようにレモンティーを注文する。

氷が溶けていくカラン、という音が妙に耳につく。

グラスの中でレモンがゆっくりと沈んでいくのを眺めながら、私はぼんやりと今日の出来事を反芻していた。

思考が中断されたのは、入口のドアに取り付けられたベルがカラン、と鳴ったときだった。

──拓哉だ。

運動後の熱気を帯びた彼の体から放たれる、いつもの陽気な雰囲気が、今日はなぜかひどく冷たく感じられた。

以前なら、こうやって練習後の意気揚々とした拓哉に会うと、それだけで顔が赤くなり、心臓がドキドキしたものだ。

けれど今は、胸の奥が冷え切っているような感覚しかなかった。

拓哉は私の向かいの席に座ると、目の前のレモン水をゴクゴクと一気に半分飲み干す。

グラスをテーブルに置き、満足そうに息を吐き出した。

「やっぱり運動後の冷たいレモン水って、疲れた体にしみるよな。ほんと最高だよ」

私が何も返せないでいると、拓哉はわずかに首を傾げて続けた。

「今度はさ、レモン水にちょっと炭酸入れてみるのもいいかもよ?寧々も試してみなよ」

炭酸……か。彼の言葉に、私の脳裏に過去の記憶が蘇る。

私は曖昧に頷き、「うん、わかった」とだけ答えた。

──でも、拓哉は昔言っていたはずだ。『運動後は炭酸なんていらない、シンプルな冷たいレモン水が一番だ』って。

いつもこのカフェに来ると、私たちは軽く挨拶してから、二人揃って一気にレモン水を飲み干していた。

なのに、ここ最近――先月くらいからだろうか。拓哉は、半分飲んだところでグラスを置くようになった。まるで誰かに言われたかのように。

悪意を持って誰かを疑いたくはない。拓哉のことを信じたい。でも、胸の奥に芽生えた疑念は、どうしても拭い去れない。

これ以上余計なことは考えたくなくて、私は平然を装った声で「帰ろっか」と拓哉に言った。

私の様子がいつもより冷たいと感じたのだろうか。拓哉は弁明するように言葉を継いだ。

「今日、バスケ終わってから海人たちとちょっと喋っててさ。それで、つい遅くなっちゃったんだ。ごめんごめん」

彼の言葉は、もしかしたら本当かもしれない。信じたい気持ちと、疑ってしまう気持ちが胸の中でせめぎ合う。

だから私は「大丈夫だよ。私もちょうど飲み物飲み終わったとこ」と、精一杯笑顔を作って言った。

私のいつもの雰囲気が戻ったのを見て、拓哉はほっとしたようにいつもの屈託ない笑顔を見せた。

「そういえば、寧々が前に作ってくれたカレー、あれ、めっちゃ美味かったよな。また食べたいなぁ」

拓哉の唐突な言葉に一瞬戸惑ったものの、私は内心で安堵した。これで、とりあえずこの話は終わる。話題をうまく変えることに成功した、と。

そして、いつもと同じように、拓哉と二人で同棲中の家に帰った。

帰宅後。私が先にシャワーを浴びて、リビングのソファで髪を乾かしながらスマホを見ていると、ふと山下莉緒の最新のSNS投稿が目に入った。

「……っ!」

【今日はバスケ部の応援!みんなかっこよかった~!拓哉くんのスリーポイント、最高だった♡練習中に偶然撮れたベストショット!】

添えられた写真は、スリーポイントを放つ瞬間の拓哉の躍動感あふれる姿だった。

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