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第1079話

Auteur: リンフェイ
「ここはあなたが契約してる専用駐車スペースなの?あなただけしかここに止めてはいけないわけ?」

鈴と一悶着あった唯花は一歩も譲らないつもりだ。

この鈴に対して、唯花は全く好感を持てなかった。

鈴は言葉に詰まった後、まったく理屈もクソもないようなセリフを吐き出した。「ここは咲の花屋の前よ。私はあの人の妹なの。だから、ここは私が駐車して当然の場所なのよ」

「柴尾さんって、咲さんのことをお姉さんだって思ってるんですねぇ。だったら、あの日の夜、桜井家のパーティーで、どうしてそのお姉さんにあんなことをしたのよ?」

鈴は両親からかなり甘やかされて育てられた。それに小さい頃からずっと咲に嫌がらせをすることに快感を覚えてしまっている。そんな彼女は堂々と自信ありげにこう言った。「あの目の見えないクソ女ね、あいつはただ私を喜ばせるために存在しているおもちゃよ!」

それを聞いた瞬間、唯花はこっぴどくこの女を教育したくてたまらなかった。

どうしてこのような妹がこの世に存在するのだ?

恐らく柴尾加奈子たち両親がしっかりと子供の教育をするのを怠ったせいだろう。

咲は生まれつき目の不自由な子供だったわけではない。それは十六歳の頃に大きな病気にかかったのが原因なのだ。加奈子は絶対に咲の世話をしようとしなかったし、柴尾社長も仕事に忙しくて家にいなかった。そして咲は病気をどんどん悪化させて、危うく命まで落としかねないところまでいってしまったのだ。彼女のおばが実家の家族に会いに来た時に、咲の状態が悪いことに気づいて、急いで病院に連れていったのである。

当時、医者は十数時間もの手術を行い、咲の命はなんとか助かったが、失明してしまったのだ。見た目からは彼女は失明しているようには見えないが、実際に彼女は見えていないのだ。

唯花夫婦は咲が目の見えないふりをしているだけだろう、もしくは失明していたのが治って、それを周りには気づかれないようにしているのかもしれないと疑っていた。どちらにせよ、それを証明することはできないのだが。

そのようなことは置いておいて、唯花はこの、まだ親戚にはなっていない、未来の義理の妹に対して、かなり同情していた。

おばあさんは唯花に、将来結城家を取りまとめる女主人となるのだと言っていた。結城家長男の嫁なのだから、その他理仁の兄弟、従兄弟たちの奥さんたちを守る責任があ
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