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第316話

Auteur: 無敵で一番カッコいい
「先に行ってて。私は靴を履き替えてから行くわ」

明日香は靴棚の前で、白いカシミアの室内シューズを選んだ。軽くて暖かく、スリッパ代わりにもちょうどいい。

階下に降りると、康生はすでにリビングのソファに座っていた。テーブルの上には、赤く大ぶりな封筒がいくつも並んでいる。

月島家のしきたりでは、新年最初の日には子どもたちが順番に年始の挨拶をしなければならない。

康生は遼一にはそれほど厳しくなかったが、明日香にだけはいつも律儀に礼儀を求めた。

そして珠子はというと、月島家にいながらもそうした形式には一切縛られない立場だった。

明日香は静かに康生の前に進み出て、深く頭を下げた。

「新しい一年も、お父さんのご健康とご多幸を心よりお祈りいたします」

康生は無言で、分厚い赤い封筒を手渡した。

明日香は両手でそれを受け取り、重みと厚みからして中身は少なくとも20万円はあると察し、にこりと笑って「ありがとうございます、お父さん」と言った。

封筒をバッグにしまったちょうどその時、遼一がスーツのポケットからもう一つの赤い封筒を取り出して差し出した。

「俺からも」

「結構です。お父さんか
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