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見える人

Author: 結城慎二
last update publish date: 2026-06-09 06:00:23

 僕は女の子二人を連れて家に戻る。

 道すがらお姉ちゃんの方、クレタが僕に訊ねてきた。

「ねぇ」

「何?」

「肩のあたりを飛んでいる妖精は何?」

 え?

「君、見えるの?」

 そりゃあびっくりするでしょ、だって転生者しか見えないって言う妖精が見えてるって言うんだから。

 妹のカルホは

「え? どこどこ? 私も見たぁ〜い」

 てな具合なんだから。

 僕だって前世の記憶が蘇って初めて目撃したもんだ。

 もっとも、ずっとそばにいたわけじゃなさそうだけど……。

 僕はリリムを見る。

「何よ? 転生者にしか見えないわよ」

 ってことはつまり……。

「そう言うことね」

 そう言うことね。

「前世の記憶は戻っているの?」

 と、聞いてみたら

「前世って何よ?」

 と聞き返される始末。

 リリムに助けを求めると
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    「さて……」 と、飲み物で一息ついた三人を見回し視線を集める。「今晩宴が開かれるわけだけど、みんなにはこの宴で僕を正式な村長にしてもらいたい」「正式な村長?」 と、ザイーダが「なにを言ってんだ?」って顔で聞き返す。  イラードも「正式もなにもお館様はこの村の村長でしょう」 と、さも当然と言った口調で言う。  判ってないなぁ。  チラリとルダーを見るとこっちはなんとなくニュアンスがつかめていそうだ。  イラードもザイーダも村の中では結構な知識人なはずだけど、この辺りの機微は文字が読めるからと言って理解認識できるもんじゃないのかな?「今僕は、元々の村の住人ということで村長をやっている」 そこで区切ってみんながうなずくの確認する。「最初の七人はその経緯を知っているしある意味納得している」「知識や復興活動の運営を率先して行なっていたし、実績もある。誰もが納得していると思うが?」 と、ルダーは言うけどそうとも言えない。「さて、それはどうだろう? 後から来た人たちの中には僕を幼くて経験不足、信用ならないと思っている人も少なくないと思うんだ」「確かに若いと侮っている村人が数人いますね」 さすが、諜報部。  ザイーダはそこらへんの情報もちゃんと持っていたようだ。「なるほど、今は復興に力をあわせる都合もあって声に出していないだけで、お館様が村長でいることに不満を持っているものがいるのですね」「そう! 彼らはきっと『仮の村長』と思っているんだと僕は考えてる。復興作業も一段落したら『今の村長で本当にいいのか?』とか言い始めるに違いない」 ま、この辺は半分被害妄想なんだけど。「そこで、この機会に村の総意として僕を村長として正式に認めさせる」「できますか?」 いい質問だよ、ザイーダ。

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     ルダーを連れ立って僕は館に戻る。  館につくとザイーダが現れた。「なにかあったのか?」「いえ、御用がおありかと」 よく気がつきますこと。「じゃあ、イラードを呼んできてもらえないかな?」「ワタシならここに」 うおっ!  後ろから突然声をかけてこないでくれ。「じゃあ、みんな中へ」 と三人を招き入れる。  館の一階は基本的にはこの世界の常識にならって土足でいいのだけど、二階と奥座敷は土足禁止になっている。  その奥座敷には囲炉裏が切ってあって常時火種を絶やさない。  その囲炉裏に炭をくべ水を入れた深鍋を乗せる。  お茶が欲しいなぁ……。  他の地域がどうか知らないけど、この村では昔から水を沸かして飲んでいた。  白湯であったり湯冷ましであったり、基本生水は飲まない。  この季節ならダリプの果汁が子供達に人気だった。  大人たちはまぁダリプ酒を昼日中から飲んでた。  原始的な醸造だからか、甘くてアルコール分低めなので水のようにがぶがぶ飲めてしまえる。  けど今は、僕の前世知識から平日は仕事中に飲んではいけないことにしている。  アルコールは脱水を促すし、肝臓に悪いしね。  ルダーが四人分のカップを持ってくる。  勝手知ったる他人の家ってやつか?  ザイーダは野生のスタベラをジャムにしたものを湯の中に入れる。  甘酸っぱくて疲れた体になかなか効果がある。  そうか、日本茶的なのは難しくてもハーブティー的なものなら飲めるかもしれない。「ルダー、ハーブティー的なものってできそう?」「ん? 食える草はいくつかあるけど、うまい飲み物になるかどうかは……」「アニーたちと一緒に試してみてよ」「んーん……まぁ、来年な」 あ。  そろそろ冬枯れの時期か。  仕方ないな、本題に入ろう。

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     階下から漂ってくるおいしそうな香りに起こされた。  体は少し重い。(仕合の後はこんな感じになるとこが多かったな) などと妙に懐かしく思いながら下に降りる。「よう、やっと起きてきたな」 と出迎えてくれたのはルダーだった。  むーん……微妙に嬉しくないな。(やっぱり女性に起こされたい) などと思いつつも、なんでまたルダーが僕の館にいるのか疑問に思っていると。「ヘレンにな」 と、まるで僕の心が読めるかのように説明してくれる。「ヘレンがな、ずっと気を張ってたやつは肩の荷が下りると体調を崩すことが多いから、あったかくてうまいもんを食べさせてやれって持たせてくれたんだ」 なるほど。  おじいさん商隊長さんが亡くなったのもそんな感じだった。「滋養にもいいぞ。デーコンポモイトスープだ。肉はラバトの塩漬けを使ってる」「それはうまそうだ。じゃあ、遠慮なくごちそうになるよ」「おぅよ」 もう随分前から自炊になっていて、最近は食べる機会もめっきり減ったけど、ヘレンの料理はうまいんだ。  食事をしながら僕は村の様子を訊ねる。「今日はみんなゆっくり起きて今は村人総出で宴の準備をしてるぞ」 農作物の収穫作業も一段落ついてるし、雑木林の収穫はピサーメ以外まだ少し早いと聞いてるからちょうどよかったのかもしれない。「誕生会と収穫祭と戦勝記念の宴だね」「おお、景気がいいな」「捕虜の容体は?」 そう訊ねると、ルダーの声のトーンが少し落ちる。「二人はお館様が去って間もなく死んだ。もう一人は『苦しい、殺してくれ』って言うんでイラードが楽にした」 そうか。「生き残りは例の男の家で見張られている」 手引き役の男は戦闘で死んでいるから、今は空き家ってことになるんだし有効利用ってやつだな。「様子は?」「縛られてるからって

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    五日ぶりの温かい飯

    「で、僕のステータスはどうやったら確認できるの?」「なにそれ、美味しいの?」 え?「うそうそ、そんな便利機能現実世界にあるわけないじゃない」 だよねー。「数値が知りたいなら体力測定とかIQ検査でもしてみる?」「それって実際あてになるの?」「参考程度には」 だめじゃん、そんなの。「まぁまぁ。ホラ、そろそろ準備始めなきゃまた木の上で寝ることになるよ」 リリムに言われて気がついた。  お日様がだいぶ西に傾いているらしく、僕の影

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    都市伝説は真実だった

    「じゃあ次は概要ね」 と、リリムは言う。「世界の概要は現世の知識があるから割愛ね」 あらま。「あなたは転生の際にDNAってやつに細工されていてね、神様曰く人よりちょっと優秀になってるそうよ」 え? ちょっと?「そこはとても優秀になってんじゃないの? テンプレ的に」「いくら世界に干渉できる環境にある神様だってそんなことホイホイしたら世の中のバランスが狂っちゃうでしょう?」「異世界転生は世界のバランスを崩さないのか?」「崩すわよ。それなりに。そもそも

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-後篇-

     村に戻った僕は村人の埋葬をする。  人の死には慣れている。  現世の僕が、だけど。  この世界は前世の世界と違って文明水準が高くない。  当然医療水準も高くない。  田舎だからってのはあるかもしれない。  大きな街はもしかしたらすごく発展しているのかもしれない。  魔法のある世界だから、当然治癒魔法もあるはずだ。  でもそれがどれくらいの効果があるかもわからない。  だからこの村はよく人が死んだ。  子供は特によく死んだ。  僕にも姉と妹がいたらしい。  妹の方はかす

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-前篇-

     僕は十五歳の朝を木の枝の上で迎えた。  この世界の元服、つまり成人の儀式が行われる日だ。  確かに一生忘れられない日にはなったけど……切ない。  あまりにも切ない。  秋とはいえ、昼頃になればそれなりに暖かくなる。  今日は天気もいいので昼頃にはむしろ汗ばむほどの陽気になった。  慎重にあたりの気配を確認しつつ、木から降り集落に戻ると、まだプスプスとくすぶっている焼け跡の中を歩く。  あたり一面、嫌な臭いが立ち込めているのは、村人の焼けた臭いだろう。  昨日から何も食べてないのに込み上げてくる胃液を吐き出し

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