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須崎翔央の恋act1

Penulis: いのか
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-30 19:38:05

かっこいいプロサッカー選手の父。

何でもできるヒーローの兄。

翔央にとって2人は憧れだった。

2人の様になりたい、そう思って背中を追いかけていた。

現在。

父は元人気サッカー選手、元日本代表のバラエティータレントとなっている。たまに試合の解説をするけれど最早「かっこいい」ではなかった。

兄はただただ平凡な学生となっていた。

翔央にとって大事な家族だったが。

2人の様にはなりたくない、そう思ってひたすらに努力をしていた。

心変わりしたのは小学6年になった時。

彗と共に強豪で知られた地元クラブチームに通っていた。

彗はU15に、翔央はU12に所属しそれぞれチームの主力として期待されていた。

6年になる直前の春休み。

翔央に声をかけたのはクラブの上層部の1人だった。

「春休みの間U15に体験で練習参加しないか?」

翔央は舞い上がった。

上のカテゴリーで練習できる事も嬉しかったが何よりも彗とボールが蹴れる事が嬉しかった。

U15への練習参加初日。

先日までU12で一緒にプレーしていた彗も含めた1つ上の知り合いとボールを蹴り楽しく過ごした。

U15への練習参加2日目。

U15の選手に混じりミニゲームをした。負けたくなくて必死に食らいつきプレーした。

U15への練習参加3日目。

紅白に分かれてのTRM。主力が出るはずの1本目、MFで翔央の名が呼ばれた。

U15への練習参加4日目。

「おはようございます」彗の後に続き挨拶しながらクラブハウスに入るとザワザワしていた室内が静まりかえった。

U15への練習参加5日目。

「親が代表選手だったからって生意気なんだよ!」キレた先輩の1人がそう声を荒らげた。

翌日は練習が休みの日だった。

悪い事をした覚えはなかったのにも関わらず言われた言葉は翔央の心に重く積まれた。

U15への練習参加6日目。

その日は彗が練習を休んだ。1人で行った翔央に話しかける人はおらずボールを蹴り合う相手すらいなかった。見かねたコーチの1人がパートナーになってくれた。

U15への練習参加7日目。

「今日も行かないの?」翔央の問いかけに「行かない」と素っ気なく返して彗はソファに寝転がり漫画本を開いた。「僕も行きたくない」そう言いたかったが口からでたのは「行ってきます」という言葉だった。

U15への練習参加8日目。最終日。

近隣で活動している複数チームが集まりTRMがおこなわれた。「1本目のメンバーGK早川、CB青木と野瀬、SB佐田と小林、ボランチ熊林と坂井、サイドハーフ松村と荒木トップ下に須崎、トップは高澤でいくぞ。準備しろ」監督の発表に皆の視線が一瞬翔央にむいた。

TRMで翔央はほとんどボールに絡む事ができなかった。他のメンバーとまったく息が合わなかった。

U15の選手がU12の選手に簡単にポジションを奪われて気持ちいいものではなかった。

強豪と言われるチームの中でプレーしているからこそ、全員とは言わずとも翔央の存在は一瞬でも目障りだった。

「ありがとうございました」

監督に挨拶をして翔央の練習参加は終わった。明日からはまた元のチームで練習できる事に安堵した。

帰宅すると珍しく母がいた。

鼻歌を奏でながらミルクティーをペットボトルからコップへ注いでいる。

「亮哉来てるの?」

翔央に気付き「そうよ」とこたえる。

この家で率先してミルクティーを飲む人間はいない。このペットボトルのミルクティーは彗と翔央の幼馴染である亮哉の為に常備されている。

「翔央も飲む?」

「僕は麦茶でいい、自分でいれるよ」

「いいわよ、いれてあげる」

母がそう言ってくれたので翔央は洗濯機に汚れた練習着などをいれて手洗いを済ませる。

小腹も空いたので冷蔵庫からチキンバーを取り出してかぶりつく。最近はテリヤキ味にはまっていた。

ふと見ると先程まではいなかった彗と亮哉がソファに座っていた。

「おかえり」

翔央に気付いた亮哉が声をかけた。

「うん」

チキンバーをかじりながら翔央もソファに座り込むみ麦茶を手にする。

「亮哉が来るから練習サボったの?」

彗が練習に来なかった理由が亮哉が来るからだと知っていたら自分も家にいたのに、と翔央は思った。

「サボったわけじゃない」

「じゅあ、なんで練習来ないの?」

「……」

彗は一度翔央を見て何か言おうとしたがやめた。

「お前に関係ない」

彗の素っ気ない言葉に翔央はムッとなった。

彗が一緒にいればまだ皆があんな態度する事はなかったかもしれない。少なくとも彗と仲のいいメンバー位は。

「彗は別にサボったわけじゃないよ」

「亮哉」

亮哉が話そうとしたのを制止する。

「後で自分で話すから、お前は口出さすな」

彗に言われて亮哉の普段崩さない顔の眉根が一瞬動く。その一瞬に翔央は気づいてしまう。

彗にだけ。

昔から亮哉は彗に対してだけ感情をみせる事がある。

それに対してムカっとしてしまうのは亮哉との時間が彗とほとんど変わらないはずだから。

彗にはして翔央にはしてくれない顔。

「別にどうでもいい」

もうその話しに興味ないという態度で翔央は言ってゲームを手にした。

「ねぇ、モリオカートしよ」

翌日、U12の練習。

約1週間ぶりの馴染んだU12に翔央の気分は軽かった。

「久しぶり」

クラブハウスのロッカー室に入り声をかけた。

室内にいた4人が振り返り翔央を見る。

「……あぁ、久しぶり」

返事は返してくれたが様子が普段と違った。

「っす」

言いながら入ってきた1人はドア前に翔央がいるのを確認すると口を閉ざした。

「何?」

「……」

「お前等、どうしたの?」

以前との態度の違いがあきらかで翔央がきいた。

雰囲気は昨日までのU15に似ているようだった。

--気のせいじゃ、ないよな。

「何か言いたい事あるのか?」

そう聞いても答えてくれるわけはないとわかっている。

「俺たち先に行くな」

先にいた4人が慌てた様子で出ていく。

仕方ないので翔央は黙って準備をしスパイクと飲み物、タオルを持ちグランドに出た。

グランドに出ても先にいたメンバーは翔央を遠巻きにした。

「お前等、本当にどうしたの?」

訳わからないと言いたい翔央に返ってきた言葉は。

「お前には俺達じゃ不釣り合いだろ?」

「はあ?」

言ってきたのは同学年の溝口宙(みぞぐちそら)だった。

「U15でもスタメン入れる有名選手の2世様だもんな」

溝口宙、翔央と同じく兄がU15に所属していた。

U15でのポジションは主にトップ下。

翔央が入った1週間のTRMで変わって外された選手が宙の兄だった。

溝口兄弟の逆恨みに皆の嫉妬、相乗効果で翔央をハブにしたいようだ。

とてもくだらないイジメだった。

上昇志向が強い人間達だからなのか。自分より目立つ選手は潰したくなるようだった。

--くだらないプライドだな。

翔はこのクラブに対して思い入れなどなくなった。

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