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6 新たな出会い

作者: けいこ
last update 最終更新日: 2025-06-23 10:42:55

家に着いて、まず智華ちゃんを、白を基調に淡い紫を取り入れた部屋に案内した。

次に、文都君には、白に深い緑をプラスした部屋に入ってもらった。

どちらも、自分の新しい部屋を気に入ってくれたようだった。

いよいよ最後、私は4度目のお迎えに向かった。

望月颯(もちづき はやて)君、21歳。

有名美大に通う画家志望の男の子。

履歴書の写真では、どちらかといえば可愛くて中性的な感じがした。

茶髪でゆるめのパーマをかけていて、個性的でとても似合っていた。偏見かも知れないけれど「The 美大生」というイメージだ。

そんなことを考えているうちにバスが来た。

最後の男子はどんな子なのかとドキドキする。

ゆっくりとバス降りてきた颯君は……

履歴書の写真より圧倒的にオシャレで、少しだけ髪も短く切ったのか、外国のオシャレな雑誌から飛び出してきたモデルみたいだった。

あまりに魅力的で呆然とする。

「こんにちは。お世話になります。大家さんですか?望月颯です」

「あっ、ええ。み、三井結菜です。よろしくね、颯君」

なぜか颯君のことはすぐに名前で呼べた。

「良かった。大家さんが凄く素敵な人で。結菜さんか……。だったら結姉(ゆいねえ)だね」

「ゆ、結姉?そんな風に呼ばれたことないけど」

私は、苦笑いした。

「だったら俺が初めてだね」

「えっ、あっ、うん、そうだね」

別荘まで5分の距離を歩く間、いろいろとニコニコ笑いながら話してくれる颯君。

すごくフレンドリーに接してくれて好感が持てた。

会ってすぐにいきなり敬語は消滅しているけれど、それも全く嫌味がなくて特に気にはならなかった。若い人とのコミュニケーションの取り方が、さっきの祥太君で少しは慣れたのかも知れない。

颯君は、コーディネートした部屋の色が黄色で良かったと思えるほど、とてもキラキラした太陽みたいに明るい男の子だ。
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