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第1065話

Author: 木真知子
言い終える前に、桜子は隼人の首に両腕を回した。

涙を含んだ瞳のまま、彼の薄い唇を塞ぐ。

隼人の体が、柔らかな雲に落ちるようにふわりと浮く。

最初は理性が勝っていた。

けれど、小獣のように激しく深まっていくキスに、思考が真っ白になる。

彼は桜子を強く抱きしめ、熱い手で彼女の黒いタイトドレスを裂いた。

主導権は一瞬、桜子にあった。

だが最後に呑み込んだのは、彼の圧倒的な熱だった。

――燃える。

欲の炎に包まれて、すべてがひっくり返る。

腰が、少し痛い。

それでも、胸の奥は甘く痺れていた。

......

夜明けまで絡み合った二人は、腕を抱き寄せたまま昼近くまで眠った。

隼人が先に目を覚ます。

桜子は彼の腕を枕に、まだ夢の中。

痺れる腕を動かすこともできず、彼はただ見惚れていた。

――昔、王が寵姫のせいで朝政を疎かにしたという話を、理解できなかった。

今なら分かる。

朝どころか、世界が崩れても動かない自信がある。

やがて桜子が大きく伸びをして目を開けた。

ベッドでひとしきりいちゃついたあと、汗のべたつきに耐えられなくなった彼女が「お風呂!」と文句を言う。

結果――隼人に抱えられて浴室へ。

またもや『お得意の』連れ風呂。

危うく足を滑らせそうになって、桜子は本気で睨んだ。

シャワーのあと、並んで鏡に向かい、歯を磨く。

そのとき、携帯が鳴る。

桜子は歯ブラシをくわえたまま応答した。

「黒滝先生。海外旅行、どうでした?楽しめました?」

竜也――桜子のために動いてくれた医師。

隼人はすべてを知っている。

手の動きが止まり、耳が自然とそちらを向く。

「景色は最高で、食事も素晴らしかったです。ご招待、感謝します。

ただ、もう盛京に戻りました」

竜也の声は穏やかだ。

「戻った?どうして?」

「あなたが心配で。外にいても落ち着かないんです」

隼人は無言で口の端を歪める。

歯ブラシを噛んだまま、低く鼻で笑った。

桜子はちらりと隼人を睨み、電話に戻る。

「今どこにいます?安全な場所を手配します」

「お気遣いなく。今は安全です」

そして声を潜める。

「今回戻ったのは――秦の薬が切れる頃合いだからです」

「......ほう?」

桜子の眉がわずかに上がる。

「薬がなくなれば、また連絡してくるはずです。

今度
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