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試練の塔

last update Date de publication: 2025-12-30 06:56:54

 食事を摂っていると、マルクエンはハッとしてとある事を思い出す。

「しまった。すっかり忘れていましたが、ジャガの街で竜の素材を使った武器を作って貰っている所でした」

 ラミッタもそれを聞いて「そういえば」と思い出した。

「あの二人とのお別れにばっかり頭が行ってて、忘れていたわ」

「今の装備では何か問題でも?」

 剣士のゴーダが聞くと、マルクエンは答える。

「私達が元の世界から持ってきた剣は魔人によって破壊されてしまいました。この剣は急遽、買った物なのです」

 マスカルが「なるほど」と頷く。

「そうでしたか、後ほどお二人の装備品を拝見してもよろしいでしょうか?」

 店を出て、人の迷惑にならない場所で剣を抜いて見せた。

「そうですね……。一般の冒険者でしたら十分に立派な剣ですが、試練の塔へ挑むには心許こころもとないですね」

「ジャガの街へ戻り、剣を貰ってきますか?」

 マルクエンが言うと、マスカルは首を横に振る。

「残念ですが、剣が出来るまで時間もかかるでしょう。今は一刻を争う事態なのです」

「そんなに猶予が無いのですか?」

 ラミッタが疑うように見た。

「魔人もこちらの動向を探っ
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  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   お手て

    マルクエン達は空き家に案内された。中を除くと、机も椅子、生活用品はある。「こんな所しかご案内できまぜんがー、どうか使っでぐださい」「いえ、充分です。ありがとうございます」 そう、マルクエンは礼を言って村人を見送った。「はー、疲れたわね……」 ラミッタは独り言をしてから、うーんと背伸びをする。 マッサも椅子に座って机に突っ伏した。「俺はもう限界っすよー……」「ふん、だらしないな」 虚勢を張るスフィンだったが、自分自身も疲労|困憊《こんぱい》だ。「あー、もう寝ますか……。ベッドもありますし」 マッサは自分自身の疲れか、スフィンを気遣ってか、寝ようとしていた。「そうですね、隣の部屋にあるみたいですし……」 隣の部屋をの戸を開けると、ベッドはある事にはあったが、三つだ。「三つか、私はさっきの部屋のソファで寝ます。皆さん使って下さい」「何よ宿敵、気を使っているの?」 ラミッタがむくれて言うと、マルクエンは軽く笑う。「ははは、私はそこまで疲れていないからな」「この体力バカ」「美女二人と同じ部屋で寝られるなんて、幸せ者ですよ俺はぁ」 マッサがそんな事を呟くので、スフィンは怪訝そうな目で見つめた。「こいつは外に放り出そう」「酷くない!? スフィンさん酷くない!?」 結局マッサは左端のベッドに横たわり、真ん中がスフィンで右端がラミッタとなる。 カーテンを閉め、薄暗くなった部屋で、眠気を感じる三人。「ふぅー、やっと休めますぜ」「黙って寝ろ」「はいはい、聖女様ー」「聖女と言うな!!」 そうスフィンが言うと、しばらくの静寂。「でも、やっている事は聖女様ですぜ?」 ポツリとマッサが言うと、スフィンは寝返りを打って背を向ける。「大体、私は軍人だ。この手で|数多《あまた》もの敵を殺してきた。私の手は血で汚れている」「そうですかい……」 うーんと目を閉じるマッサ。「だけど、スフィンさんの手白くて綺麗で柔らかかったなー」「そういう話ではない!!」 ははっとマッサが笑い、その後は会話もなく、いつの間にか眠ってしまう。 そんな部屋の隣でマルクエンは一人寂しくソファで横になっていた。「聖女様……」 スフィンに足を治して貰った男、タカセはそう口にしていた。 元々剣の腕が立ち、運動神経の良かったタカセは足の感覚を取り戻しつつ

  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   聖女様

    「本当に勇者様だったが、こりゃ失礼しましただ」 その後も話をし、何とか信じて貰えたマルクエン達。男に案内され、村へと向かう。 |鬱蒼《うっそう》とした森を抜けると、集落が広がっていた。「ここが村ですだ」 そのまま村長の家まで連れていかれる。疲れを感じていた一行はすぐにでも休みたかったが、仕方がない。「村長ー、勇者様だー」「勇者様!?」 慌てて老人が軋む体に鞭打って飛び出てきた。「ほ、本当に勇者様だか?」「えぇ」 そう言って自己紹介を始めるマルクエン達。「信じられねぇが、信じるしかないべか……」 村長はポツリと言ってから、笑顔を作る。「ようこそおいでぐださっだ。勇者様。空き家があるんで、そこを使ってくだせぇ」 どうやらこの村に宿屋は無いらしく、空き家を貸してもらえる事になった。「ありがとうございます。ありがたいです」 マルクエンは深々と頭を下げて、その言葉に甘える。「勇者様、一つお願いがあるんだきっとも。勇者様は回復の魔法ってのを使えねーだか?」 回復と聞いて、スフィンはピクリと反応した。「この前魔物がおそっでぎで、村人と雇ってる冒険者が怪我したんで、治して貰えないかっで」 マルクエンはスフィンを見ると、軽く頷く。「この能力の実験には丁度いい。案内してくれ」 スフィンの言葉を聞いて村の男は大いに喜んだ。 そのまま歩くと、とある家の中に着く。中に通されると、怪我人が並んで寝ていた。 怪我人の元にしゃがんで、マッサにしてやった時の様に魔物の爪で切られたであろう太ももの傷に触れるスフィン。 すると、光があふれ、たちまちの内に傷が治っていく。 手当された本人も、見ていた村人も驚いていた。「こ、これが勇者様だべか!?」「いや、私は勇者ではない」「そうそう、聖女様だ」 マッサ

  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   能力

    「この塔にはもう用はないな」 スフィンがそう言いかけた時、女神の声が二人の脳内に響く。「そうそう、マッサ。あなたにも何か能力を差し上げねばなりませんね」 それを聞いて、待ってましたと言わんばかりにマッサの胸は高鳴る。「あなたには、別の世界の勇者も持っていた能力を与えましょう」「別の世界の勇者の能力……?」「そうです」 何が来るんだと、|勿体《もったい》ぶらせる女神にマッサはソワソワとしていた。「名付けて『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』です」「は?」 女神の言葉にマッサは何を言われたのか理解できない。いや、理解したくない。「ですから、『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』です」「いや、何すかその能力!?」 マッサはツッコミを入れた。その後頭をかきむしる。「別の世界の勇者はこの能力で世界を救いました」「噓でしょ!! 絶対嘘でしょ女神様!?」 後ろではスフィンがクククと笑いを堪えていた。「さぁ、行きなさい人の子よ! 世界を救うのです!!」「そんな、もっと別の能力に……」 マッサの訴えも|虚《むな》しく、女神の声は消えて、扉が開く。「全然手応えないわね、準備運動にもならないわ」 塔の外では魔物を蹴散らしながらラミッタが呟く。 マルクエンも同じだった。マッサの心配もしながら、魔物を簡単に斬り捨てている。 その時、塔の扉が開いて、二人は振り返った。 塔の石畳をコツコツと音を鳴らして人が来る。 スフィンの隣を平然と歩くマッサを見て驚くラミッタとマルクエン。「マッサさん、大丈夫ですか!?」 マルクエンが声をかけると、ニッと笑うマッサ。「大丈夫っす、スフィンさんに治してもらいました!」「治したって、どういう事よ!?」

  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   選ばれたのは

    「それじゃあ、バチバチしちゃうよー?」 ミネスはそう言っておもむろに地面に降り立つ。「食らっちゃいな!」 突き刺さる氷のナイフの表面が溶け出し、そこへ雷の魔法を打ち込む。 ナイフ同士に電気が流れ、一瞬にして襲いかかってきた。「甘いわね」 土混じりの防御壁を巡らせ、ラミッタは防ぐ。 しかし、隙が出来てしまった。「そこで一生そうしてなよ! お二人共お幸せにー!!!」 ミネスは電気を流し、そのままマッサとスフィンの元へと飛んでいく。「まずい、二人を守らねば!!」「って言っても、防御壁崩したら電気地獄で丸焦げよ!?」 ラミッタの言う通りだ。助けようにもこちらが倒れてしまっては元も子もない。「待ってなさい、この程度の魔法、私が相殺してあげるわ」 ミネスはマッサとスフィンの元へと高速で飛び、追い付く。「さぁ、もう逃げられないよ!!」「逃げるのも飽きたな、戦ってやる!!」 スフィンが言って馬を止めて剣を抜いた。「待て、スフィンさん!! 戦うのは試練の塔を突破した後だ!!!」「死んじゃえ」 ミネスは氷のナイフを無数に発射する。 スフィンも手練れなのでそれを剣で弾き、身を守った。「おー、やるね」 余りにも多いナイフに、打ち漏らしが出てきて、顔や足などを掠めて血が滲む。「どこまで耐えられるかなぁ?」 ミネスはナイフを出しながら段々と近づいてくる。「スフィンさん、俺が食い止める!!」 マッサがそう言って割り込もうとするが、彼も氷のナイフ達に悪戦苦闘していた。「それじゃそろそろ逝ってみよー」 ミネス自身がナイフを構えてスフィンへ突進してきた。 そのナイフは腹を突き刺す。 だが、スフィンのではない。「かっ、かふっ」 ナイフは割って

  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   護衛

     朝を迎え、マルクエンとラミッタが起き出す。 ラミッタは隣にスフィン将軍が居ないことに気付き、しまったと思った。「おはようございますスフィン将軍! 申し訳ありません、将軍より遅くに起きるとは……」「いや、良いんだラミッタ」 怒ってはいない様子なので、ホッとしたラミッタ。続けてマルクエンもテントから出てくる。「おはようございます」「敵が起きているというのにイーヌの兵は随分と不用心なのだな」「いや、まぁ、ははは……」 相変わらずマルクエンに対してはあたりの強いスフィンだ。「おや、おはようございます。飯出来ているんで食べましょうや!」 マッサに言われ、食事を済まし、馬車を走らせ試練の塔へと向かう。「この調子なら明日の朝には着くとおもいますぜー」 荷台に座るスフィンは「あぁ」と短く返し、揺られていた。「あそこに見えるのが試練の塔ですぜー。思ったより早く着きましたなー」「あれが……」 遠くに高くそびえ立つ建造物が見え、スフィンがジッと目を凝らしていた。 そんな時だった。「っ……!! 魔人の気配!!」 ラミッタが突然大きな声で言う。スフィンも膨大な魔力の気配を感じ取っていた。「こりゃ、まずいかもなー」 口調とは裏腹にマッサは真剣な眼差しで空を見る。 遠くからこちらへ飛んでくる影があった。「はぁーい、元気してた?」 奇術師の魔人。ミネスがやってきて、拡声魔法を使って話しかけてくる。「残念ながら元気よ、どこかへ行ってもらえるとありがたいのだけど」 ラミッタがそう返すと、やれやれといったポーズをし、ミネスは話し続けた。「そっちの金髪のおねーさん。ちょっと殺させて貰えないかなー?」 ミネスは自分の事かと剣を引き抜いて構える。「やれ

  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   いざ、旅立ち

    「まぁいいや。旅の準備だ!! それに仲良くしましょうや!!」 マッサが笑いながら言い。皆を見た。「それじゃ、俺はギルドで馬車の手配と、他に手続きを済ませてきますわー。皆さんは各自必要なものを買っておいて下さいな」「必要なものか」 スフィンはうーんと考えてみる。「小さな街ですが、旅人用に旅の道具の品揃えは良いのでね!」「よし、分かった。行くぞラミッタ」「え? あっ、えぇ、はい!」 いつも買い物はマルクエンと一緒だったので、一瞬ポカンとしたラミッタ。「まさか、私よりもイーヌの騎士と買い物がしたいと?」「め、滅相もありません!! こんなド変態卑猥野郎なんて知りません!」 しょんぼりマルクエンは余計にしょんぼりとしていた。 買い物も終わり、マルクエンとスフィン達はギルドの前に集まる。「いやー、お待たせしました。それじゃ行きましょうか!」 扉を開けて出てきたマッサはニコニコ笑って言った。 マッサの後を付いて街を出る三人。「そういや、マルクエン様とラミッタ様に聞きたかったんですが、試練の塔とはどんな場所だったんですかい?」 その質問に答える前に、かねてから思っていた事をマルクエンは告げた。「そのー。様付けで呼ばなくても大丈夫ですよ。これから一緒に旅をするのですし」「だけど、流石に呼び捨てって訳にもいかねーしなー。マルクエンさんとラミッタさんって呼ばせてもらうぜ!」「そうですね、それで良いです」 勇者と距離が近くなった気がして、マッサも上機嫌だ。「それで、試練の塔っすよ! どんな所なんですかい?」「どんな所かと言っても……。本当に不思議な所でした。無限に続く階段に動く石像。塔の中なのに大自然が広がったりと」「そうなんすか、やっぱ試練の塔ハンパねぇですねー」 そこで口を挟んだのは意外にもスフィンだった。

  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   二人で

    「昔から身体強化は使っていたみたいだけど、あの青いオーラの奴は魔力の消費が特に激しそうね」 ラミッタの言葉にマルクエンは頷いて答える。「あぁ、物凄い疲れるぞ」「身体強化にしろ、光の刃にしろ、宿敵は魔力を100出せば良い所を、120ぐらいで使っているから疲れるのよ」「なるほどな……」 ラミッタの指摘を理解は出来たが、どうすれば良いのかわからない。「まぁ、これは数こなして慣れしかないけどね」「だが時間がないな……」「そうね……」 二人の間にしばし沈黙が流れる。 それを破ったのはラミッタだった。「今、出来ることを考えましょう」「そうだな。ラミッタと連携をしてヴィシソワさんを

  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   共闘

    「お、お前、生きていたのか!?」 マルクエンは動揺して言った。同じ様に焦るラミッタも言葉を返す。「いや、まって、宿敵、なんでアンタがここに!?」 互いに混乱し、上手く言葉が出て来ない。代わりにシヘンがマルクエンに声を掛けた。「お知り合いなんですか?」「い、いえ、知り合いというか、知ってはいるのですが」「えー、何スか? もしかして痴話喧嘩とかー?」 ケイはにやにや笑いながら言った。マルクエンは顔を赤くして言葉を返す。「いや、決してそんなものでは」 そんなやり取りをしていると、村人が血相を変えて冒険者ギルドに入ってきた。「た、大変だ!! ゴブリンと魔物の群れが村に襲いかかって

  • 別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが   再会

     女の名がわかった所で、笑顔を作りマルクエンは言う。「シヘンさんですか、よろしくお願いします」「い、いえ、その、マルクエンさんのお国の……」 シヘンは先程言われた国名を忘れてしまい、察したマルクエンがもう一度言う。「あぁ、イーヌ王国です」「そう! イーヌ王国……。ごめんなさい、聞いたことがありません」「そうですか……」 イーヌ王国は決して小さな国ではないので、名を知らぬという事は、よほど遠い地なのか、もしくは本当に死後の世界なのか。「あの、どうしてマルクエンさんは森に?」 シヘンに聞かれ、マルクエンはうーんと悩み言った。「えぇ、とても信じられない話なのですが、気付いたらこ

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    「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」 一人の女が赤面しながら男を指差し言う。 そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』に決闘ではなく、結婚を。プロポーズを受けた。 騎士と魔剣士が剣を構え、対峙していた。互いの背には軍勢が半円状に並んでいる。 一人の名は『マルクエン・クライス』と言い王国騎士の男だ。前髪をかき上げた少し長めの金髪に重厚な白い鎧を身に纏っている。 もう一人は『ラミッタ・ピラ』魔剣士の女だ。肩より少し長めで切りそろえた茶髪に白と茶のヘアバンドをし、黒を基調とした軽装備で、左肩に赤い肩当て。 互いに別の国に仕

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