Share

第六十話

Auteur: 麻木香豆
last update Date de publication: 2025-12-27 13:13:50

「あん……っ、ん……」

「ふぅ……ふ、ぅ……」

息が絡み合い、言葉が途切れ途切れになる。

一護の声に誘われるように、寧人はゆっくりと動きを進めた。

「……そう、少しずつ……」

「一護、入ったぞ……」

一護は短く息を吸い、すぐにそれを吐き出す。

肩にかかる力が強まり、指先が無意識にシーツを掴んだ。

「うん……もっと……」

「あ……っ」

寧人が動くたび、一護の喉から抑えきれない声がこぼれる。

その反応が、寧人の背中をぞくりと震わせ、理性を少しずつ削っていく。

「やばい……一護……」

「寧人……もっと……」

確かめるように、寧人は一度だけ動きを緩めた。

一護の表情を覗き込む。その瞳は潤んでいるが、逃げる色はなかった。

「……大丈夫か。痛くないか」

「……止めると、逆に……だから……そのまま……」

一護の言葉に、寧人は小さく息を呑む。

それから、覚悟を決めたように動きを戻した。

「……わかった」

「……うん……」

声と呼吸が重なり、部屋の輪郭がぼやけていく。

時間の感覚が薄れ、ただ互いの存在だけがはっきりと残る。

やがて、寧人の動きが乱れ始めた
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   番外編 第十六話

    久方ぶりの営みが、この部屋の中でよかった——。寧人は、胸元で静かな寝息を立てる愛しい一護を見下ろしながら、そう思った。指先でそっと髪をかき上げ、天井へと視線を逃がす。一緒に暮らしているからこそ、慣れや仕事の疲れに紛れて、愛し合う時間がいつの間にか簡素になっていた。そのことを、今さらのように反省する。昨夜のように、何度も、急がず、優しく、甘く、確かめ合うように抱き合ったのは本当に久しぶりだった。きっと、こういう時間が必要だったのだ。愛する人の体温。規則正しい寝息。胸に伝わる鼓動。微かに残る香り。——この旅が終わり、また二人の日常に戻ったとしても。今夜のことを、忘れずにいよう。そう心に刻みながら、寧人は再び一護を抱き寄せ、静かに目を閉じた。「おはよう、寧人! 寧人社長!!!」「はうっ――っ!? ……いでっ……お、おは……」頬に走った衝撃で、寧人は変な声を上げて目を覚ました。反射的に体を起こそうとして、全身に鈍いだるさが走る。「あ……待っ、待って……それ、今やると……」「ほら見た。だから言ったでしょ、勢いよく起きるなって」横を見ると、すでに着替え終えた一護が、呆れ半分・心配半分の顔で髪を整えながら座っていた。「……今のさ、ビンタじゃなかったよね」「うん。最初は手のひら。でも全然起きないから」「櫛?」「櫛。最終手段」ひどい。そう思いながらも、否定できないのが悔しい。どうやら一度は目を覚ましたのに、そのまま見事に二度寝したらしい。「……体、重……」「そりゃそうだよ。昨夜あれだけやっといて、しかも何回も」「ちょ、それ言わなくていい……」「事実でしょ。自覚しなよ、いい歳した社長さん」キャンピングカーじゃない、きちんとした部屋。柔らかいマットレス。静かな朝。そのせいで、昨夜の余韻が余計に体に残っている気がする。「……提供でもらったマットレスも良かったけど、ここのも相当だな……」と、だるそうに言いながらも、目だけは完全に仕事モードに入る。「メーカー違うけど、大丈夫?」「大丈夫。ちゃんと把握してます」一護は即答する。「他の部屋には、提供いただいたザノッカスのマットレス使ってるところもあるから。そこも含めて、動画で説明する」「さすが……」「感心してる場合じゃない。ほら、さっさと起きる」「……腰が……」「自業自

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   番外編 第十五話

    「まぁ、そういう関係ですよ」 さくらキャンパーの二人が帰り、キャンピングカー内での簡単なミーティング中。 ドラゴンがまるで天気の話でもするみたいに、さらっと言った。 あまりに雑な一言だったが、それだけで他の三人はだいたいを察する。 「既婚者だって分かってて付き合ってた。でもさ……陸斗さんの息子――宙社長の写真を見せてもらってさ。 かっこいいって言ったら、そこから嫉妬が始まったんだよ」 一息ついて、苦笑する。 「陸斗さんも十分イケメンだけど、亡くなった奥さんも美人でさ。 二人のいいとこ取り、って感じで宙社長はさらにイケメンで……」 「……なるほどね」 話を聞いていた一人が、間を置かずにまとめる。 「で、恋人の“息子”に目移りしたと思われて嫉妬されて、結果フラれた、と」 「違う!」 ドラゴンは即座に声を上げた。 「フラれてない! 嫉妬がひどすぎて……こっちから別れたんだ。 別れたくない、でも別れる、って……最悪な別れ方」 少しだけ視線を落とす。 「後になって分かった。あれ、向こうがわざと大喧嘩になるよう仕向けてたんだって。 俺に嫌われ役を押し付けて、綺麗に終わらせるために」 小さく、息を吐く。 「……結局さ、陸斗さんの方が一枚も二枚も上手だったってわけ。そっから美容師の仕事に力を入れようとしたところに一護と出会ったわけさ……」 ドラゴンは一護を見る。一護は知らなかった過去をフーンと聞いていた。 「まぁ過去は誰にでもある。知る、知らないは……プライベートのことだから踏み入れない方が良い」 と1人納得してるようだ。 寧人は立ち上がった。「よしよし。過去の話も全部聞けたし、俺はスッキリした! あとはゴールするだけだな!」「いや、それ完全に自分が一人で納得しただけだろ!」 三人から一斉に突っ込まれた。「でもさ、陸斗さんって当時も奥さんいなかったんでしょ? 宙社長も独身。どっちもフリーだよね。……まぁ宙社長はノンケだけど」 そう前置きしてから、寧人はずいっとドラゴンを見る。「やっぱり陸斗さんなんじゃないの? ドラちゃん」 ドラゴンは一瞬言葉に詰まり、耳まで赤くなった。「……そ、そうだけど。でもやっぱ無理だって」「不倫でもないしさ。陸斗さんだって、ドラちゃんのこと今も

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   番外編 第十四話

    「社長! すいません……」 「いえいえ、こちらこそ……お返事がないまま押しかける形になってしまって」 二人の社長が同時に頭を下げ合う光景は、端から見ればどこか可笑しい。だが寧人はその様子を横目に流し、すぐに視線を逸らした。 ――ドラゴン。 さくらキャンパーの宙社長のすぐ後ろ、少し距離を取るように立っている。 向かい合う二人の社長を見ても、胸はざわつかない。スタート時に感じた、あの妙な引っかかりもない。 (……社長じゃない? じゃあ、社員の中に気まずい相手でもいるのか) その後も、さくらキャンパーのスタッフが何度か商品を運び、メンテナンスの確認に訪れたが、場の空気は終始穏やかだった。少なくとも、表面上は。 「いやいや、寧人くん。相変わらずよく動くね。中年の星だよ」 快活に笑ったのは宙社長の父、陸斗だった。寧人より十は年上のはずだが、日に焼けた肌と張りのある体つきのせいか、年齢を感じさせない。 「そんな……まだ中年ってほどでもないですよ」 そう前置きしてから、寧人は自然な流れで続けた。 「ここまで体が持つのも、彼のマッサージのおかげなんです」 視線を向けると、ドラゴンは一瞬だけこちらを見返し――すぐに目を伏せた。笑顔はなく、表情はわずかに硬い。 「ほう……」 陸斗は興味深そうに顎を撫でる。 「スタートの時、後ろの方で隠れてるみたいだったが……君が寧人くんの体を?」 その言葉に、ドラゴンの肩がほんのわずかに強張る。 寧人はその変化を、見逃さなかった。 (ははーん、まさかのまさか……宙社長じゃなくて……陸斗さんだったのかー) と思った矢先、一護も古田も確信していたようだ。 「なるほど……年上が好きだったから僕には靡かなかったんだ、ドラちゃん」 少し一護は鼻で笑った。だが年上すぎるのでは、寧人よりも上である。 「隠れなくてもわかることだったのに……でも今は落ち着いて立派な仕事しているようで何よりだよ」 「……まぁね」 気づけば2人の世界になっていた。 宙社長も何か知ってそうである。 「……息子も社長業をして数年になるからそろそろ僕も落ち着いて来たんだよね。僕もサイクリングでもしようかな、その時は君にマッサージしてもらおうかな。久しぶりに」 「……無理しないでくださ

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   番外編 第十三話

    その頃、ドラゴンは―― 人影もまばらなサービスエリアの公園で、山並みをぼんやりと眺めていた。 風に揺れる木々を見ているうちに、思考は勝手に過去へと滑っていく。 一護と同じ記憶を辿っていたのかどうかは、本人にもわからない。 ただ、胸の奥が重くなって、息を吐くしかなかった。 そのため息が、答えの代わりだった。さてさてとキャンピングカーに戻ろうとするとクラクションが後ろから聞こえた。 ドラゴンは自分ではないと思い振り返らなかったがもう一回鳴った。 ようやく振り返ったドラゴン。 そこにあったものを見て彼は諦めたかのように、少し笑って言った。 「……しょうがないなぁ、もう……」 ※※※ キャンピングカーの中。 古田はすでに起きており、一護も編集作業をひと段落させていた。 寧人はマットの上で黙々とストレッチをしている。 あれから、もう一時間が経っていた。 「……ドラちゃん、いい加減帰ってこないかな」 ぽつりと零した一護の視線は、無意識にテーブルへ向かう。 そこには、ドラゴンのスマホが置き去りのままだった。 連絡が取れないことは、わかっている。それでも気になってしまう。 「まぁ、そのうち戻ってくるさ」 古田は軽く受け流すように言いながら、続けて寧人を見る。 「リン、今日のスケジュールは?」 「はい……えっと……あっ」 寧人の声が裏返る。 古田はスマホを覗き込み、目を見開いた。 「……しまった。寝過ぎた」 慌ててメールを開き、指を走らせる。 「寝てる間に来てたみたいだ。今、返す」 画面に表示されていたのは、さくらキャンパー広報からの連絡だった。 他の業務との兼ね合いで、依頼されていた商品の持ち込みが―― 予定より三時間、前倒しになるという内容である。 キャンピングカーの空気が、わずかに引き締まった。 「まぁ、焦ってもしょうがないよ。向こうも自分たちの都合だし、大丈夫ですよって言ってくれてるし」 そう言う一護に、古田はすぐ首を振った。 「いえ、社長。それが一番よくないです。 どれだけ関係が良好でも、信頼は積み重ねで、逆にミスも積み重なります。今回は……僕が寝てたせいですし……」 珍しく歯切れの悪い古田。 寧人はそこまで切迫感を持っていないが、その温度

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   番外編 第十二話

     編集ソフトのタイムラインを眺めながら、一護は無意識に指を止めていた。 ……何もいいことはない。 自分で言った言葉が、遅れて胸に返ってくる。視線が画面から外れ、意識が過去へ引きずられる。 ※※※ 忘れたはずの過去なのに……と一護はふと頭の中に過去がよぎった。 ドラゴンは一護が美容院とは別のビジネスで立ち上げたメンズエステ店の初期メンバーだった。美容学校卒業、美容師免許もあった彼だがマッサージの腕は確かで、口も達者で、客受けもいい。何よりよく笑った。 仕事終わり、店を閉めてから二人で飲みに行った。 最初は他愛ない愚痴と軽口だったのに、気づけば距離が縮んでいた。 若かった。二人とも……。 一護は社長として忙しく、外にもよく出ていた。人に囲まれ、酒の席も多く、誘いも断らなかった。 (僕は……好きだった、でも店をうまく切り盛りするためにって……言い訳か。でも若さが故に……あちこち手を出しすぎたり、世話好きがこうじてしまったんだ、ああ、これもいいわけだ) ドラゴンは「今日も遅いんだ?」 「ごめん。待っててね」そう言って頭を撫でれば、ドラゴンは笑った。 けれど、その笑顔が少しずつ薄くなっていくのに、気づかなかった。 あまりにも一護本位だった。 「俺のこと、好き?」 ある日そう聞かれて、一護は笑って返した。 「当たり前だろ」 それが、決定打だったのかもしれない。 欲しかったのは言葉じゃなかったのかもしれない。 「……もういい」 そう言ってドラゴンは離れた。責めることも、縋ることもせず、ただ静かに。一護は引き止めなかった。いや、引き止められなかった。社長としての自分、忙しさ、プライド。全部が邪魔をした。 ※※※ 一護は小さく息を吐く。宙社長がノンケなのは本当だ。イケメンである彼に少し口説いたことがあったのは確かだ。まだ彼が社長になる前だった。彼の父親に似て、とは思っていた。 (ドラちゃんが誰かを本気で好きになるとしたら) 一護は編集画面に戻る。ほんの一瞬だけ目を伏せてから、何事もなかったように作業を続けた。 (今さら過去を掘り返しても、遅い) そう言い聞かせながら。けれど胸の奥では、あの時ちゃんと愛せなかった自分が、まだ終わっていなかった。 ふぅ……とため息しか出ない。今

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   番外編 第十一話

    昼。 今日は自転車旅はなく各自自由行動、という名目だったが、実際に外へ出たのはドラゴンだけだった。 キャンピングカーには、一護・古田・寧人の三人が残り、それぞれ仕事に追われている。 一護は編集作業、古田は運転席を倒して休憩、寧人はその横でスマホを弄っていた。 沈黙を破ったのは古田だった。 「……て、寧人。ドラちゃん探ってどうするの? しかも誘導、下手すぎ」 「すまん……。てか“下手”ってリンから言われるの久しぶりでゾクっと来るんだけど」 横たわったままの古田に向けてそう言うと、編集画面を見ていた一護が一瞬だけ顔を上げ、ちらりと二人を見た。 「……いや、ほんと。聞き出し方が雑だったね」 「まぁ、何かの流れで聞こうとしてるのは分かったけどさ」 「だよな……」 そう言って寧人は天井を見る。 少し間を置いて、古田がぽつりと続けた。 「……正直、僕も気になってるんだ。ドラちゃんがさくらキャンパーで何かあったのか」 「やっぱ元客と店員の関係だから、感じるもんある?」 「うーん……。普段あんなにオープンな人がさ、人に隠れるようなことしないでしょ。配信だって出たがりのはずなのに、今回だけ出ないってのがさ」 その言葉に、寧人も小さく頷く。 「確かに。スタッフが来るたびキョロキョロして、何もなかった顔して戻ってくることもあったな。でもその時、宙社長はいなかったし……」 「……まさか社長と何かあった、とか?」 「“何か”って……関係があったって意味か?」 寧人が言うと、古田は眉を寄せる。 「マッサージ店の常連なら、どこかで顔合わせてると思うけど。僕、彼を見たことないし」 二人がそのまま盛り上がり始める一方で、 一護はいつの間にかキーボードを叩く手を止めていた。 画面は見ているが、視線が定まっていない。 それに気づいた寧人が、少し言いづらそうに口を開く。 「……一護。元彼として、ドラちゃんのこと何か知ってるか? 宙社長と付き合ってたとか、そういうの」 一瞬、間が落ちる。 「……いくら元彼でも」 一護はゆっくり息を吸ってから言った。 「知らないことはたくさんあるよ。それに――宙社長はノンケだし!」 語気が強くなり、空気が張りつめる。 「ははん。一護、社長がノンケって知ってるんだ?」 古田がからかうように言う。 「まさか一

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   第四十五話

    「さっきからずっとリンくん喘いでたけど、ヨシくんがずっと悶えてたから気づかなかったでしょ……」 ドラゴンはくすっと笑うように言った。 「あの子ね、ベッドの上だと全然違うの。可愛い声出して……」 その言葉で、寧人の耳がようやく現実を拾い始めた。 壁越しに聞こえてくる、古田の声。切羽詰まった、求めるような、途切れ途切れの喘ぎ。 反対側の部屋からも、別の客の声が混じる。 「ここ、一部屋ずつ分かれてるけど壁が薄いから……さっきからヨシくんも相当だったし、たぶん全部屋に響いてるよ」 「ああああっ……」 耐えきれず、寧人は両手で顔を覆った。 恥ずかしさと、逃げ場のなさで頭が

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   第四十二話

     部屋に入った瞬間、背後で扉が静かに閉まった。 金属が噛み合うような、やけに重い音。 ――あ、これ、閉じ込められるやつだ。 逃げ道を断たれた、と頭で考えるより先に、体が理解してしまう。 肩がわずかに強張り、喉がひくりと鳴った。 薄暗い間接照明。 直接的な明るさはなく、輪郭だけがぼんやりと浮かび上がる。 視界に入るのは、ビニールシートの敷かれたベッドと簡素な棚。 清潔ではあるが、生活感はない。「人がくつろぐための場所」ではなく、「何かをするための場所」だと一目でわかる。 そして、その奥。 黒いバスローブを羽織った背の高い男が一人、こちらを見て立っていた。 最初から、ずっ

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   第三十九話

    (ソフト改稿・濃密心理描写) 翌日。 営業車に乗り込んでしばらくすると、またあの空気になっていた。 古田はすでに上半身どころかほぼ全ての衣服を脱ぎ、満足げにシートに体を預けている。 対して寧人は、妙にぎこちしく服を握りしめていた。「ねぇ、脱がないの? 汗でぐちゃぐちゃになっちゃうよ」「いや、その……今日は……」 寧人が言葉を濁すのは珍しい。「じゃあ私が脱がせてあげる」 古田が手を伸ばし、寧人のウエストにかけたその瞬間―― 寧人がビクリと身体ごと跳ねて抵抗した。 本気で止めるような反応。 古田は思わず手を止め、目を瞬かせる。「今日は……リ、リンだけ……裸でいい」 小

  • 合縁奇縁、そんなふたりの話(BL)   誘惑編 第三十八話

     風呂上りで温まった体がほどよく弛んで、寧人は妙に気分が軽くなっていた。 ――マンネリを崩せる場所さえ見つければ、一護はきっと喜んでくれる。 そんな未来をぼんやり想像していたのだが、胸の奥にはもうひとつ小さな棘が残っている。 古田のことだ。今は問題なく働けているが、あの人の過去がいつ表に出るかは分からない。 考えれば考えるほど、落ち着かない。「一護、ちょっと相談したいんだが」 同じく湯上がりで、髪からまだ水気の残る一護が湯呑みを差し出してくる。「ん、どうしたの?」「古田さんって……どう思う?」「あぁ、あの人ね」 一護の声は落ち着いている。けれど脳裏に思い浮かべたその姿には

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status