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第5話

ผู้เขียน: タワークラッシュ
いつの間にか私の背後に立っていた安藤先生が、ポンと肩を叩いた。

「どうして君が、ご家族に相談しなかったのか……今になってようやくわかったよ」

先生は少しだけ言葉を区切ってから、優しく続けた。

「だが、南奈波防大への進学もいい選択だ。学費や寮費は全額免除だし、特別手当も出る。君なら一人でも立派にやっていけるだろう」

私はこくりと頷いた。

あの薄汚れた書類袋を胸元にしっかりと抱え込み、小さな声で「ありがとうございます」とだけ告げて、家路についた。

玄関の扉を開けると、リビングからは場違いなほどの賑やかな声が漏れ聞こえてきた。

夏希はソファの真ん中に陣取り、両親と誠司に囲まれながら、目を細めて機嫌よく笑っている。

誠司の声が一番大きく響いた。

「よし、決まりだな!今日からさっそくドライブ旅行に出発しようぜ!」

いち早く私に気づいた夏希が、すぐに立ち上がって愛想よく駆け寄ってくる。

「おかえり!先生から聞いたよ、調査書見つかったんだってね……まだ怒ってる?」

彼女はあからさまに唇を尖らせ、申し訳なさそうな顔を作った。

「ごめんね。あの時、私たちも一緒に探してあげるべきだったよね。置いてっちゃって悪かったなあって……」

なんだ、わかっているじゃないか。

一番心細かったあの瞬間に、私を置いていくべきじゃなかったことくらい。

けれど、こんなことは一度や二度じゃない。

私がどれだけ傷ついて感情をぶつけても、夏希がひとたび涙を流せば、全員の関心はすべて彼女へと向かう。

そうやって大きな問題はうやむやにされ、小さな不満はなかったことにされてきた。

私の気持ちさえ無視してしまえば、すべての問題が丸く収まるのだとでも思っているかのようだ。

私が彼らに依存しきっていて、一生ご機嫌を伺いながら生きていくしかないと高を括っている。

もしこれ以上食い下がれば、今度は私が「物分かりの悪い、しつこい人間」に仕立て上げられるだけだ。

いい。あと少しの辛抱だ。

黙り込んでいる私を見て、誠司が手を伸ばし、私の頭を撫でようとした。

「ほらほら。無事に見つかったんだから、もう過ぎたことだろ」

私は体を軽くひねり、その手をすっと避けた。

「……うん」

誠司は一瞬だけ表情を強張らせ、空を切った手を気まずそうに握りしめた。

「ほんとに?よかった!」

夏希が私に抱きつき、私の胸元にぐりぐりと顔を押し付けてくる。

「やっぱり、晴陽はすっごくいい子だね!」

彼女は勢いよく顔を上げた。

「そうだ!さっきね、私を慰めるためにドライブに連れてってくれるって話になったの。行き先は南奈波。海が近くて、道端にヤシの木がいっぱい生えてるんだって。あんたも一緒に行こ!」

南奈波。

その一言が、細い針のように私の胸をチクリと刺した。

私は誠司の方を向いた。

視線が交差する。

暖かなオレンジ色の照明が、彼の横顔の輪郭を柔らかく縁取っていた。

一緒に南奈波防大を受けて、海を見に行く。

あの時、彼は確かにそう言った。

けれど今、彼は北にある帝都へと向かい、私は最南端の南奈波へと向かおうとしている。

この先、私たちの人生が交わることは二度とないだろう。

この旅行が、おそらく最後になる。

「わかった。荷物、まとめてくる」

窓の外では、いつの間にか激しい雨が降り出していた。

鞄を抱えて下に降りると、誠司がちょうど車の後部座席に夏希のスーツケースを押し込んでいるところだった。

四角いそれは、残されたわずかなスペースを隙間なく完璧に塞いでしまった。

彼は体を起こし、ぎゅうぎゅうの座席と、雨の中に立つ私とを交互に見比べて、ひどく困ったような顔をした。

「荷物が多すぎて……ちょっと乗れそうにないな」

雨音が激しく打ち付ける。

彼の声は風にちぎられ、途切れ途切れにしか届かない。

「悪いけど、お前はまた今度にしてくれないか。まあ、これからいくらでも機会はあるし……」

後部座席の窓は半分開いていた。

夏希は小さな手鏡に向かって前髪をいじりながら、その口元にほんのわずかな笑みを浮かべている。

私の背後から歩いてきた母が、助手席のドアを開け放ちながら吐き捨てた。

「ほんと、よくもまあ図々しく来れるわね。お姉ちゃんを泣かせておいて、厚かましく旅行についてこようとするなんて」

前髪を伝い落ちた雨水が目に入り、ひどく染みた。

ああ、これが私への罰なのだろうか。

先に甘い飴を差し出しておいて、目の前で粉々に踏み躙ってみせる。

今日、私が夏希に恥をかかせたことへの報復として。

「大丈夫。行っておいでよ」

自分の口から出た声は、思いのほか凪いでいた。

私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、車のエンジンがかかった。

テールランプの光が雨霧の中でどんどん小さくなり、やがてぼんやりとした赤い点へと変わって消えた。

私はその場に立ち尽くして、しばらくそれを見送ってから、踵を返して家へと歩き出した。

顔に雨が打ち付けているはずなのに、もう何も感じなかった。

こんなことばかり経験してきたせいで、心の中はこの天気よりもずっと穏やかに澄み切っていた。

玄関の前に立ち、ドアノブを引く。

びくともしない。

もう一度力を込めて引っ張っても、やはり開かなかった。

鍵が、かかっている。

彼らは鍵を渡すこともなく、そのままドアを施錠して出かけてしまった。

――いや、違う。

最初から、私という人間の存在すら記憶から抜け落ちていたに違いない。

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