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呼ばれない夜

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-12-19 07:06:06

子ども部屋の灯りは、低かった。

壁の灯は少しだけ下げられていて、影がやわらかい。

昼のざわめきが全部落ちたあとみたいに、家の中が静かだった。

蒼真はもう横になっている。

眠っているのに、眉の間がほんの少し寄っていた。

毛布の端を握ったまま、離していない。

雛龍のるぅも、枕の近くで丸くなっている。

小さな息が、蒼真の寝息と混ざって聞こえた。

美琴は戸口に立ったまま、しばらく動けなかった。

呼吸を合わせるように息を吸って、吐いた。

今日は門の前で、声を出した。

名前も、呼んだ。

それなのに。

夜になると、また戻ってきてしまう。

勝手に緊張する身体が、残っている。

美琴はベッドの横へ近づく。

蒼真の髪が少し乱れていて、指先で直した。

額に触れる前に、一度だけ手を止めた。

「一分だけのおはなし、する?」

返事はない。

でも、蒼真の指が毛布をきゅっと握った。

起きてないふりの、合図みたいだった。

「じゃあ、短いやつね」

美琴は声を小さくして、息の間に言葉を置く。

難しい話にしない。

蒼真が安心できる音だけにする。

「灯りがひとつ、ふわって浮かぶ夜があるの」

「怖いときに、笑ったらね」

蒼真のまつげが、一度だけ揺れた。

美琴はそれを見て、続きを言うのをやめた。

「……おやすみ」

額をそっと寄せる。

おでこを、こつん。

蒼真は目を開けないまま、息を吐いた。

「……ママ」

寝言だった。

呼んだのに、呼んでいない声。

美琴は一瞬、返事をしそうになって止めた。

起こしたくない。

でも、胸の奥がじわっと熱くなる。

「いるよ」

声は、ほとんど息だった。

蒼真の指が、少しだけゆるむ。

美琴は毛布の端を整えて、手を引いた。

るぅが小さく喉を鳴らして、また丸くなる。

その音に背中を押されるみたいに、美琴は部屋を出た。

廊下は、ひんやりしている。

足音が響きやすい。

昼間は気にならなかった灯りの間隔が、やけに遠い。

美琴は自然に、屋敷の奥のほうを見た。

いつもなら、どこかに気配がある。

重たいわけじゃない。

ただ、そこにいると分かる感じ。

今夜は、それがない。

立ち止まったところで、向こうから足音が来た。

細くて、迷いのない音。

リネアだった。

手には盆。

湯気が薄く揺れて、香りが鼻の奥に触れた。

金木犀の小瓶と同じ匂いが、ほんの少し混ざっている。

「起きてしまいましたか」

「……はい」

美琴は
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