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73:レンの叫び

last update Dernière mise à jour: 2025-12-25 11:29:03

 部屋の空気が糸が張り詰めたようにきしむ。私が「お金はいりません」と告げた、その直後のこと。

「…………ッ!!」

 隣で声にならない叫びが上げる。ハルくんにヘッドロックを決められていたレンくんが、動く。

 それは力任せの抵抗ではなかった。一瞬ふっと全身の力を抜いたかと思うと、流れるような身のこなしでハルくんの腕をするりとすり抜ける。長年のダンスレッスンで培われた洗練された体幹の使い方は、ダサいスウェット姿であっても健在だった。

「うわっ!?」

 身体能力お化けのハルくんが、虚を突かれて体勢を崩した。

 その隙にレンくんは音もなく立ち上がった。重力を感じさせない優雅な所作で、私とセナさんの間に滑り込むように割って入る。

 そしてテーブルの上に置かれた分厚い茶封筒を、力任せに床へと叩き落とした。まるで汚らしいものを払うように。

 バサッと乾いた音がして、数億円の価値がある紙束が無残に転がる。

「……彼女を責めるな!」

 悲痛な声だった。普段テレビで聞く、甘く囁くような美声ではない。けれどその冷え冷えとした声音は、部屋の空気を一瞬にして凍らせた。

「全部、俺の意思だ。俺が勝手に押しかけて、頼み込んで、無理やりここに置いてもらってるんだ! 紬は何も悪くない!」

「落ち着きなさい、レン」

 セナさんは眉ひとつ動かさず、冷徹な仮面を崩さない。暴れる子供を諭す教師のように、静かに告げる。

「君は疲れているんです。判断力が鈍っている」

「分かったような口を利くな!」

 レンくんは乱れた呼吸を悟らせまいとするように、すっと背筋を伸ばして立っていた。

 彼は氷のような瞳でセナさんを見下ろした。凍っているようで、その奥に熱を灯した瞳で。

「紬の飯じゃないと、ダメなんだ」

 彼は感情を押し殺した声で言った。揺らめくアイスブルーの瞳が、表面上の冷静さのアンバランスを物語っている。

「他の物は味がしない。……高級な

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