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257話

Penulis: 籘裏美馬
last update Tanggal publikasi: 2026-06-20 16:33:07

パーティーに参加している音羽は、自分と伏見に注がれる視線の多さに気が付いていた。

波多野の妻も、自分達に向けられる視線の多さにどこか居心地の悪さを感じているようで、気まずそうにしている。

音羽と波多野の妻は軽く世間話を終え、そっと波多野の妻に近付いた。

周囲には聞こえない程度の小さな声で波多野の妻に囁く。

「すみません……、私の素性が本格的に知られ始めたようです。巻き込まれない内に離れた方がいいかと……」

「ありがとうございます、音羽さん。……お言葉に甘えて、私は少し離れますね。ですがご安心ください。知り合いには音羽さんや伏見さんの素晴らしい人柄を話しておきますので」

覚悟を決めたように話す波多野の妻に、音羽は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

眉を下げ、お礼を口にした。

「ありがとうございます、波多野さん。色々と落ち着いたらまた恭ちゃんと遊んであげてくださいね」

「ふふ、もちろんです……!では、また」

お互い軽く頭を下げる。

波多野の夫が待っている方へ歩いて行く妻を見送っていると、一足先に話が終わったのであろう伏見が音羽に歩いて来た。

「蓮夜、蓮夜達の方が
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    ◇ ざわざわ、とパーティー会場がざわめいている。 樹の腕に自分の腕を絡ませていた裕衣は、眉を顰めた。 「やだ、何なのよ。何の騒ぎ?」 「いや、ここからでは分からない」 裕衣の言葉に、樹も不審そうに呟く。 「どうやら入口で揉めているようだ。……人相の悪い人間が、招待状も無いのにこのパーティー会場に入ろうとしているらしい」 「人相の……?嫌ねぇ……場所を間違えているのかしら」 「ああ、全くだ。時折こういった場所にああ言う連中が来る所を見た事があるが……。大体は倒産しかけの企業や、馬鹿な会社の役員がああいった連中に連れていかれる。あんや奴らと関係を持つなど、愚の骨頂だ」 樹の言葉に裕衣は笑みを浮かべながら、内心冷や汗をかいていた。 (ま、まさか……私を探しているんじゃないわよね……?だ、だってこの間ちゃんと言われた通りの金額を渡したもの……。遅延だってしてないわ) だから、自分に用があるはずがない。 きっと今来ているのは、違う人に会いに来ているのだ、と裕衣は思い込む。 だが、どんな人物が来ているのか──。 それが気になって、裕衣は入口の方を確認した。 (お金の受け渡しをする人は、毎回違うけど……。知っている顔じゃないわよね……) 入口周辺には、人だかりが出来ている。 だが、ちらちらと見え隠れする人物がいた。 派手なシャツに、人相の悪い顔。 髪の毛などなく、スキンヘッドにされている。 そして、その頭には大小様々な傷跡が残っており、誰がどう見ても「普通の人」では無い事は丸わかりだった。 人の隙間から人相を確認した裕衣は、見知った顔では無い事にほっとした。 だが、ほっとしたのも束の間。 裕衣と、その人物の目がぱちり、と合った気がした。 「──え」 裕衣が驚きに目を見開いていると、目が合ったスキンヘッドの男は、にぱっと笑みを浮かべた。 そして、口を大きく開く。 その動作が、とてもゆっくりと感じられて、裕衣はひゅっと喉を鳴らした。 やめてよ、一体何を言うつもり──。 顔色を悪くする裕衣を嘲笑うかのように、スキンヘッドの男は大声で言葉を発した。 「裕衣さん!玉櫛 裕衣さん!良かった、あなたに会いたくて来たんです!」 「──ひっ」 裕衣が小さく悲鳴を上げる。 スキンヘッドの男は、ご丁寧に裕衣の名前、そして苗字まではっ

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    パーティーに参加している音羽は、自分と伏見に注がれる視線の多さに気が付いていた。 波多野の妻も、自分達に向けられる視線の多さにどこか居心地の悪さを感じているようで、気まずそうにしている。 音羽と波多野の妻は軽く世間話を終え、そっと波多野の妻に近付いた。 周囲には聞こえない程度の小さな声で波多野の妻に囁く。 「すみません……、私の素性が本格的に知られ始めたようです。巻き込まれない内に離れた方がいいかと……」 「ありがとうございます、音羽さん。……お言葉に甘えて、私は少し離れますね。ですがご安心ください。知り合いには音羽さんや伏見さんの素晴らしい人柄を話しておきますので」 覚悟を決めたように話す波多野の妻に、音羽は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 眉を下げ、お礼を口にした。 「ありがとうございます、波多野さん。色々と落ち着いたらまた恭ちゃんと遊んであげてくださいね」 「ふふ、もちろんです……!では、また」 お互い軽く頭を下げる。 波多野の夫が待っている方へ歩いて行く妻を見送っていると、一足先に話が終わったのであろう伏見が音羽に歩いて来た。 「蓮夜、蓮夜達の方がお話が終わるの早かったんですね?」 「ああ。話す事は少ないしな」 それより──、と伏見は目を細める。 そして音羽の耳元に顔を寄せると、周囲には聞こえない程度の小さな声で囁いた。 「あっちも俺たちに気が付いたみたいだ。仕掛けようか」 「──分かりました」 頷く音羽に伏見は笑みを返す。 そして、音羽の腰に手を回して歩き出した。 わざと玉櫛夫婦から距離を取るように歩いて行く。 すると、玉櫛夫婦──いや、樹の方がまるで音羽を追うように着いて来るのが分かった。 「音羽、少し玉櫛 裕衣を脅かそう。うちの組員を向かわせる。だが、玉櫛 裕衣は不動組の人間だと勘違いするだろう」 そう言うなり、伏見は自分のスマホを取り出し、どこかに電話をかけた。 恐らく待機させている自分の組員だろう。 音羽が見守る中、伏見は電話相手にただ一言告げた。 「始めてくれ」 そして、すぐに電話を切る。 近くにいた他会社の役員が、伏見と音羽に話しかけてくる。 それに笑顔で対応していると、視界の端に樹と裕衣の姿が入った。 来た──。 音羽がそう思ったのと同時。 パーティー会場の入口が、にわかに

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    ◇ 取引先の創立記念パーティー当日。 その日、樹と裕衣は時間ギリギリに会場にやって来ていた。 ホテルの大ホールを貸し切って催される大きなパーティーだ。 招待客が多く、玉櫛ホールディングスの社長である樹が姿を見せると、沢山の人が挨拶に訪れる。 愛想笑いを浮かべ、そつなくこなしていた樹だったが、ふと隣に立つ裕衣に違和感を覚えちらりと視線を向けた。 すると、裕衣は心ここに在らず、といった様子で挨拶にやってくる人達に言葉を返している。 その裕衣の様子に苛立ちを覚えた樹は、真面目に仕事をしろ、と一言言ってやろうとした。 だが、その時に会場に入って来た人物を見て、話そうとした言葉が固まる。 「──なんで、」 自分の夫が驚いた様子で別の方向を向き、唖然としている──。 その事に気がついた裕衣は、自らもそちらへ顔を向けた。 そして、樹同様、驚いた。 パーティー会場に現れたのは、伏見と音羽だったのだ。 「──何で、あの女が……」 裕衣の表情は忌々しいとでも言うように歪められた。 ◇ 「伏見さん……!」 ざわざわ、と人の沢山の人の話し声が聞こえる中、伏見の名前を呼ぶ声が聞こえた。 遠くからやって来るのは、翔の父親である波多野だ。 波多野夫妻が揃って音羽と伏見の所へやって来た。 音羽はびっくりして伏見に視線を向ける。 まさか、伏見が自ら自分の素性を明かしているとは思わなかったのだ。 「蓮夜、自分の本当の苗字を名乗ったのですか?」 「ああ。あの日、表の名刺を渡してある。もう隠す必要は無いだろう?」 あっけらかんと話す伏見に音羽が呆れていると、波多野夫婦がやって来た。 「このパーティーでお会い出来るとは……!」 「ええ、私たちも驚きました。波多野さんも繋がりがあったのですね」 伏見と波多野が話している間、音羽と波多野の妻が和やかに会話をする。 「恭くんは元気ですか?」 波多野の妻の言葉に、音羽は困ったように眉を下げた。 「実は今、蓮夜──夫の実家に泊まっていて、恭ちゃんとはあれ以来会えていないんです」 音羽が寂しそうにそう答えると、波多野の妻は「まあ」と気遣うように口を手で覆った。 「それは寂しいですね……。一刻も早く一緒に住めるようになればいいですね」 「ええ、本当に」 「それとは別に──」 波多野の妻が、ちらりと

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    ◇ 「創立記念パーティー?」 「はい、社長。今週末、取引先の──」 リビングで秘書からスケジュールを聞いていた樹は、告げられた会社名に「ああ」と頷いた。 「もうそんな時期か。面倒だがその会社とは昔からの付き合いだ。参加するしかないな」 はあ、と溜息を零した樹はちらりと寝室に視線を向ける。 「裕衣はまだ寝ているのか」 「そのようです」 「先に会社に行くぞ。待っていられない」 「かしこまりました、社長」 リビングから足早に出て行く樹は、外に出たところで不意に足を止めた。 樹の視線の先には、今まさにこれから保育園に行こうとしている息子の恭と、運転手飯野の姿があったのだ。 「──ちっ、面倒だな」 きっと恭が駆け寄って来て、うるさく話しかけてくるだろう。 そう思った樹だったが、思っていた反応と真逆だった。 恭と飯野は樹に気がついたものの、車の方に行く。 飯野がドアを開けると、恭はそのまま車に乗り込んだ。 流石に自分の雇用主を無視は出来ない。 飯野は笑みを貼り付けると、樹に向かって頭を下げた。 「旦那様、坊っちゃまを園にお送りいたします」 「あ、ああ──……」 では、と言って飯野が車に乗り込む。 その間、恭が樹に視線を向ける事は1度もなく、樹は唖然とその場に立ち尽くした。 今までであれば、顔を合わせた恭にうざったいくらいに話しかけられていたのに。 それなのに、今日は視線1つこちらに寄越さなかった。 「──生意気な」 ぼそり、と呟いた樹に、秘書は不思議そうに顔を向ける。 「社長、どうしましたか?」 「……いや、なんでもない。それより早く会社へ」 「かしこまりました」 頭を下げる秘書。 樹はそのまま車に乗りこみ、秘書が運転席に乗り込む。 車を運転する男性秘書の後頭部を見ながら、樹は自分の家にある寝室の方向へ顔を向けた。 ここ最近、裕衣の様子がおかしい。 今までは裕衣は四六時中樹にべったりだった。 それなのに、ここ最近──数週間前から何かこそこそとしているようだった。 だが、裕衣がこそこそする理由も、何をしているかも特に調べようとはしなかった。 一緒に会社に行き、帰ってくる生活は変わらなかったからだ。 だが、この数日裕衣は朝起きてこない。 そして、会社も一緒には行かない。 「……秘書としての仕事すら全

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    「え……、脅、迫……?」 そんな物騒なワードが突然飛び出てきて、音羽は目を瞬かせる。 一体どう言う事──。 疑問を抱いた音羽にも分かるように、伏見は分かりやすく説明してくれた。 「……元々、玉櫛の2人にはうちの組から見張りを付けている。……そうしたら先日、玉櫛 裕衣が会社の駐車場で誰かと会ったのを確認した。距離が遠かったため、確実とは言えないが、玉櫛 裕衣が会っていたのは伏見組の敵対組織、不動組の構成員だと思われる」 「不動、組……」 「ああ」 こくり、と頷く伏見。 音羽も不動組の事は知っていた。 以前はこちら側の世界など、何も知らなかっただろう。 だが、伏見と一緒になると決めてから少しずつ伏見はこの世界の事を音羽に教えてくれていた。 伏見組の傘下組織や、逆に敵対している組織。 その説明の中で、不動組の名前は敵対組織の中に確かにあった。 音羽は伏見に教えてもらった内容を思い出しながら、言葉を紡ぐ。 「確か不動組って……伏見組と違ってかなり過激な事をする組織だって……。麻薬や人身売買、それ以外にも色々と手広くやっているって……」 かなり危険な組だ、と伏見から言われた記憶が音羽にはあった。 不動組は、伏見組とは違い一般人にも手を出す。 そして、一般人をまるで使い捨ての駒のように擦り切れるまで使い、そして使えなくなったら「消して」しまう過激な組織だと聞いた。 「……あいつらに脅迫されているってんなら、玉櫛 裕衣も擦り切れるまで使われるだろうが……だが、それを待っていたら時間がかかる。……財閥に嫁いだんだ。財力はあるだろう?」 伏見の言葉に音羽ははっとする。 確かに、あれだけの大企業の社長を夫に持っている裕衣には、多少なりとも大金を動かす権利は持っているだろう。 伏見の言葉に、音羽は頷いた。 「確かに……。お金を無心されて潰れるのにはかなり時間がかかりそうです。……それに、玉櫛 樹が裕衣を助けるために動いたら、もっと時間がかかっちゃう……」 そんなの、待っている暇は無い。 伏見は口端を持ち上げ、口を開く。 「ああ。だから、自滅させる。あの大企業、玉櫛ホールディングスが反社会勢力と繋がっていると世間に知らしめる。その程度だったら十分操作は出来る。……今度、玉櫛ホールディングスが招待されているパーティーがある。そこに潜り込ん

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    まだきっと頭がぼんやりしているからだろう。 音羽は伏見に請われるまま、口移しで水を飲ませていた。 伏見が「もう少しくれ」と言えば音羽は「しょうがないですね」と困ったように笑い、グラスに入った水を含み、口移しで飲ませてくれる。 もういい?と聞いてくる音羽に、伏見はこれ以上するとまた音羽に手を出してしまいそうだ、と苦笑して「十分だ、ありがとう」と答えた。 隣に座った音羽の手を取り、伏見は椅子から立ち上がる。 寝室にある布団はもう片した。 色濃い情事の空気は既に残っていない。 自分の頭ももう十分冷えた。 そう考えた伏見は、音羽を伴い寝室に戻る。 「音羽、ここに座ってくれ」 「蓮夜の膝に?」 「ああ。大事な話がある。……恭の事について、だ」 座椅子に腰を下ろした伏見が膝をぽんぽんと叩き、座るように音羽を促す。 先程より大分意識がしっかりしてきた音羽は、恥ずかしさに躊躇ったが、次に伏見の口から出て来た「恭」と言う名前を聞いて真剣な表情になる。 「分かりました。恭ちゃんの事ですか?」 「ああ」 さっ、と自分の膝の上に座った音羽。 その音羽を背後からぎゅっと抱きしめつつ、伏見はどう切り出そうか、と悩んだ。 「……今回キャンプに一緒に行った家族」 不意に、伏見が低い声で話し出す。 音羽はこくりと頷きながら答えた。 「波多野さんと近藤さん?そのご家族がどうしましたか?」 「……翔の父親も、光希の父親も俺たちの味方をしてくれるらしい」 「──えっ!?」 色々な説明をすっ飛ばし、いきなり結論から語り出した伏見に音羽は驚きの声を上げる。 翔と光希の母親と、音羽は話していた。 その話した内容から何となくこちら側に着いてくれたのでは、と言う雰囲気は感じていたが。 まさか、伏見達もそんな話をしていたとは、と音羽は目を丸くして振り返った。 「……食材を用意している時と、川で遊んでいる時に翔の父親──波多野と話した。自分たちにはまだそこまで影響力は無いが、玉櫛には色々と思う事があるそうだ。……音羽について流れている噂を、広げるのを手助けしてくれるらしい」 「──なら!」 伏見の表情を見て、音羽の顔が明るくなる。 もしかしたら、正攻法で樹や裕衣から恭を引き取れるかもしれない。 今までは、それが難しいかも、と思っていた音羽だったが、知り

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