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第3話

Auteur: みそ煮
last update Date de publication: 2026-02-09 11:01:04

それからすぐに、日菜乃との同居が始まった。亮太と離婚するとはいっても、二人の結婚は政略結婚のためそう簡単に離婚することはできなかった。

香織の両親は厳格な人だった。離婚された女を、受け入れてなどくれないだろう。離婚には入念な準備が必要だった。

「奥様には本当に悪かったと思っています……離婚を考え直してください……!」

「……」

そして今日も日菜乃は香織の元へと訪れた。亮太と離婚しないでほしいと何度も懇願してくるのだ。香織はずっと日菜乃がこのような行動を取る意味がわからなかった。日菜乃にとって香織は邪魔者であり、離婚することになったとしても彼女には何のダメージもない。むしろ愛する亮太と念願だった社長夫人の座を手に入れられる。

「あなたは私が亮太と離婚しないでほしいと思ってるわけ?」

「はい、私、お二人の仲を壊そうと思ったことは一度も無いんです……!ただ恋人として彼の傍にいられればよかったんです……離婚なんてそんな……」

なら何故わざわざここへ来たのか。言ってることがめちゃくちゃだ。だけど、日菜乃の考えも今ならわかる気がする。

香織は日菜乃の耳元でそっと囁いた。

「そりゃあそうよね。困るもの、不倫の末に本妻を追い出した女がのうのうと後妻の座に収まった、なんて噂されちゃったら」

「……!」

だから日菜乃は前世であのようなことを仕掛けたのだろう。香織を悪人にすることで、自分の不倫を正当化しようとしたのだ。

亮太はそんな日菜乃のドス黒い本性に気付いていないのか、それとも知っていて傍においているのか。知っていたとしたら何て尊い愛なのだろう。

日菜乃の顔が青くなっていく。図星だったのだろう。何も言い返せないようだ。

「香織!日菜乃に何しているんだ!」

「……亮太?」

「社長!」

突如扉を開けて部屋に入ってきた亮太が日菜乃を抱きしめた。

日菜乃は目に涙を浮かべて亮太の胸に抱かれていた。何かあるとすぐにそうやって被害者のようにふるまうのは日菜乃の常套手段だった。

「お前は知らないだろうが、日菜乃は妊娠中なんだ!あまりストレスを与えないでくれ」

それだけ言うと、亮太は日菜乃を抱き上げて部屋から出て行った。二人が出て行った部屋で、香織は一人取り残された。

「妊娠中……」

そうだ、どうして忘れていたんだろう。日菜乃はここへ来たとき、ちょうど二人目を妊娠していた。

しかし、子が無事に生まれることはなかった。彼女は流産してしまうのだ。

この一週間後に何者かによって階段から突き落とされて。

その事件は香織にとっても強く記憶に残る出来事の一つだった。結局日菜乃を階段から突き落とした犯人が捕まることはなかったが、亮太は香織を疑っていたのだ。

もちろん、香織は日菜乃のことを酷く嫌っていたが、何の罪もない赤子を殺すほど悪に染まったわけではなかった。当然、彼女は何もしていない。

結局事件があった時間帯、香織にはアリバイがあったため無実が証明された。しかしそれでも亮太は香織が誰かに命令してやらせたのではないかという疑念を抱いていた。

実際香織は九条グループの令嬢なのだから、不可能なことではないだろう。考えているうちに、前世の記憶がよみがえってきた。

『お前がやったんだろ!』

『亮太、何を言っているの!私は何もしていないわ!』

『うるさい!お前以外にはありえない!』

そういうと、亮太は香織の首を掴み、力を入れた。香織は苦しくてもがいたが、亮太は手を離さなかった。

結局、彼の秘書が慌てて止めに入り、そこでようやく亮太は香織から離れた。床に体を投げ飛ばされた香織は息も絶え絶えに、日菜乃の元へと向かう彼の後ろ姿を見つめていた。

亮太は二人目が生まれるのをとても楽しみにしていた。あの一件で、香織と亮太の間には深い溝ができることとなった。

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