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第4話

Auteur: みそ煮
last update Date de publication: 2026-02-10 14:48:18

香織は何とかして日菜乃の流産を阻止できないか考えた。

もちろん、彼女が罪を着せられることを防ぐためだったが、何の罪もない赤子が亡くなるのは耐え難かった。

事件が起きるのは一週間後だ。あの事件は結局、亮太が血眼になって犯人探しをしたが何の手がかりも得られなかった未解決事件だった。

亮太は香織がやったと思い込み、当然のように彼女を犯人だと決めつけた。

何の証拠も無く決めつけるのは良くないが、香織は亮太の気持ちがまったく理解できないわけではなかった。

香織から見ても、自分は怪しい人物だったからだ。

しかし、やっていないものはやっていない。

日菜乃は狡猾な女だ。前世で自ら毒を飲み、香織を犯人に仕立て上げた。

しかし、いくら性根が腐っていても自らの血を分けた子を殺すとは考えにくい。愛する亮太との子供ならなおさらだった。

なら、日菜乃をよく思わない者の仕業か。

香織は日菜乃に敵意を抱いてる者たちを思い浮かべてみるものの、多すぎて誰がやったかなんて見当がつかなかった。

日菜乃はあのような性格のため、会社ではかなり嫌われていた。

仕事ができないうえに、不倫関係となった社長との仲を平然と社内にバラしていたのだ。

結局、彼らの関係を知らなかったのは妻である香織だけだったのだ。そのことを思うと悔しくてたまらなかった。

ふと窓の外に目を向けると、亮太と日菜乃、そして二人の娘である朱里が庭にいるのが見えた。

笑い合っている三人は、とても幸せそうな家族に見えた。完璧だった、香織さえいなければ。

「とにかく、二度とあのような仕打ちを受けるわけにはいかない」

今回の事件は、亮太が香織を激しく憎むようになるきっかけだった。あの事件以降、亮太は日菜乃に何かあるとすぐに香織のせいだと決めつけるようになった。

そのとき、部屋の扉がノックされた。

――「奥様、失礼します」

「……あなたは」

部屋に入ってきたのは亮太の秘書だった。

名前はたしか、芹沢隆二(せりざわりゅうじ)だったはずだ。

私ははっきり言ってこの男に良い印象がない。いつも亮太や日菜乃にこびへつらい、お飾りの妻である私のことは見下していた。

私が拷問を受けたとき、平然と極寒の外へ放り出したのもこの男だった。

「社長が日菜乃様の懐妊祝いのパーティーを開くそうです。社長が奥様も参加していいとおっしゃっていましたよ。当然、出席なさいますよね?」

「……」

芹沢はニヤニヤと笑みを浮かべて香織の返事を待っていた。愛人の妊娠祝いのパーティーに本妻を呼ぶだなんて。

前世で、亮太は日菜乃の懐妊祝いのパーティーを開いた。日菜乃は本妻ではなく愛人だったため、盛大にやることはできなかったが、近しい仲の者たちを呼んで彼女の妊娠を祝った。

そんな中、香織は日菜乃の妊娠に不満を抱きながらも亮太に会うため会に出席した。

ドレスに身を包み、日菜乃の妊娠を祝いにやってきた香織は、人々からの軽蔑の眼差しと亮太の罵声を一斉に浴びる羽目となった。

『何故お前がここにいるんだ!』

亮太はドレスアップし、入念に化粧を施した香織の頬を思いきり殴った。

香織は勢いで床に倒れこみ、人々はそんな彼女を蔑みの目で見つめた。

『この会はお前のような者が来ていい場所ではない!さっさとつまみ出せ!』

香織は警備の者に腕を掴まれ、会場から引きずり出されるという醜態を晒すこととなった。

亮太は香織をパーティーに招待などしていなかったのだ。全て、秘書である芹沢の陰謀だった。

それからというもの、香織は呼ばれてもいないパーティーに強引に参加した恥知らずな女というレッテルを貼られることになってしまったのだ。

そしてその翌日、日菜乃が子供を流産した。

「そうね、せっかく日菜乃さんが第二子を妊娠したのだから私がお祝いしないわけにはいかないわ。ぜひ、出席させてちょうだい」

香織は芹沢に笑顔で答えた。今回はあえてその陰謀にのってやろう。それが香織の考えだった。

芹沢はその笑みが気に食わなかったのか、眉をピクリとさせた。

「社長は日菜乃様のご懐妊をとても喜んでおられます。彼女に何かあったらただでは済まないでしょう」

「あら、あなたは私が彼女に何かすると思っているのかしら?」

「……あなたのような人ならやりかねないことです」

「……」

芹沢は香織と亮太が婚約していた頃から彼女のことを嫌っていた。貧乏家庭に生まれ、苦労して社長の秘書にまでなった芹沢にとって、何の努力もせずに悠々自適に暮らしている香織は許しがたい存在だったのだ。

しかし実際、香織は芹沢の想像しているように楽に生きてきたわけでなかった。大企業の令嬢として生を受けたものの、両親からの愛は得られなかった。

仕事人間で厳格な父親はいつも彼女に完璧を求めていた。

生まれた娘に興味のない母親は、赤子の頃からシッターに彼女を任せ、遊び歩いていた。

香織はそのような複雑な家庭環境で生きてきたのだ。

「私はあなたが思っているような女ではないわ」

「……」

芹沢は何も言わずに香織を睨みつけて部屋から出て行った。相変わらず無礼な男だ。

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