宇宙事業に身を投じた娘に、家族全員が慌て始めた

交通事故で退院した日、病院で極秘研究の契約書にサインした。

宇宙局の職員は興奮して私の手を握り、「参加いただきありがとうございます」と言った。

「重ねて申し上げますが、この研究計画は極秘です。一言も外部に漏らしてはなりません。研究参加の5年間は完全隔離され、外部との連絡は一切不可能です」

彼は家族との別れに3日間の猶予を与えてくれた。

だが私はそれを聞いて涼しい顔で笑い、「施設育ちですから、血の繋がった家族はいません」と答えた。

一人で退院手続きを済ませ、家に着くと、両親が暗い顔で待ち構えていた。

母は怒りを抑えきれない様子で言った。「蛍（ほたる）、どこで遊びほうけてたのよ！？3ヶ月も家に帰ってこないなんて！

妹は君と誕生日を祝おうと、夜中まで待ち続けたのよ。来ないなんて！あの子がどれほど泣き崩れたか、想像もつかんのか？」

父の目は冷たく硬く、一切の感情も込めずに言った。

「もう羽根が生え揃って、親の言うことさえ聞かなくなったんだ。だったらさっさとこの家から出て行きやがれ！」

3ヶ月前、私は交通事故で生死の境を彷徨っていた。病院から何度も連絡を試みたが、返ってきたのは冷たい話し中の音ばかりだった。

彼らは私の生死に微塵も興味がなく、今さらのように妹の犬の誕生日に帰らなかったことを偉そうに責めてくるとは！

腑に落ちなかった――なぜ血を分けた娘より、よそ者が大事なのか？

最後の数日、喧嘩する気もなく、静かに答えた。「携帯を見てなかった。忙しかったから」

父はテーブルをバンと叩き、怒鳴りつけようとした。

その時、楚山智子（そやま ともこ）が親に買ってもらったエルメスを着て、階段をゆっくりと降りてきた。彼女は物分かりの良い弱々しい表情を浮かべていた。

「お父さん、お母さん、姉ちゃんは勉強で忙しいよ。博士まで進んだから、研究の仕事はいつも大変なのよ。私はただペットのちょっとした誕生日を祝ってるだけだよ、大したことじゃない」

父は「フンッ」と鼻で笑い、「博士だと？何の役にも立たん！家族を大切にする道理もわからんとは、学費の無駄だ！即刻退学届けだせ！」と言い放った。

私は黙って笑い、何も言わなかった。

今回の事故で帰れなかったのは、智子が唆した男が学門前で故意に車で撥ねたからだ。

轢いた奴はその場で逃げ、私は気を失って病院に運ばれ、目が覚めたのは三ヶ月後だった。

彼女は私が両親のいる集まりに毎回顔を出すのを嫌がっていた。

「もう少し我慢しよう。どうせあと数日で私はいなくなるから」

母はそれを聞いて驚いたように眉をひそめ、「どこへ行くの？家を出てどこに行けるっていうの？」と聞いた。

彼女は私に行く場所がないと確信していた。彼らに引き取られる前、私はみすぼらしい施設で一人ぼっちで暮らしていたからだった。

智子は口元にほのかな嗤いを浮かべたが、両親のそばに座ると、すっかり悲しげな表情に変わっていた。

「姉ちゃんは私がいる場所に来たくないんだと思う。私のような者が居場所を持つべきではない。私がいなくなればいいのに」

彼女はさりげなく首元のダイヤモンドネックレスをちらりと見せた。きらめく光がそのダイヤの希少価値を物語っていた。

あれは母のお気に入りの宝石だった。私がまだ小さく、家にいた頃、母がこう言っていたのを覚えている。

「蛍、これはうちの家宝よ。あなたが大人になったら、あなたにあげる」

なのに今、そのネックレスは智子の首に輝いていた。