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12.『癒しの部屋』

last update 公開日: 2026-03-14 17:00:00

「……金木犀が枯れてる」

 備え付けの便器の傍に置いた金木犀の小枝が不自然なスピードで枯れていた。

「切り花よりもたねぇんだよ」

 夕食前、房の貴重品をポケットに入れていた京が答える。

「なんで ? 水も入れてあったよね ? 」

「さぁな。ここはあの世と変わんねぇ世界だからな。生き物には向かねぇのかもな」

「生き物には…… ? じゃあ、翡翠さんとかどうなんだろ ? 寿命縮んだりしないのかな ? 」

「はぁ ? 」

 涼は翡翠が人だと思っている。

 いや、涼だけではないのだここにいる殆どの囚人は涼と同じ疑問を抱いたことがあるだろう。

 京は悪戯な笑みを浮かべると涼に頷いて見せる。

「確かになぁ。お前、今度聞いてみろよ」

「うーん。不思議だもんね」

 どこまでも涼は人を疑わない。涼をそうしてしまったのは、大人に疑念を持ったとしても、それを許さない環境に長くいたせいだ。

「俺、後で採りに行くよ」

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