เข้าสู่ระบบあの年、川に落ちた時、母・清田千佐子(きよた ちさこ)は先に妹・清田心海(きよた ここみ)を助けた。 そのあと、救助隊が私・清田美波(きよた みなみ)を引き上げた。しかし、長時間の呼吸停止によって、脳に深刻なダメージを負い、私の知能は5歳の水準で止まってしまった。 それを境に、人の心の声が聞こえるようになった。 それから13年間、父・清田昌大(きよた まさひろ)と母は、私を一番愛している、今まで苦労をかけた分を償いたいと、口癖のように言ってきた。 けれど、聞こえてくる心の声は、愚痴ばかりだ。 【バカの世話には、もううんざりだ!】 【どうして私たちが、こんな思いをしなきゃいけないの】 都京大学の合格通知書を受け取った日、心海は両親に願いを聞いてほしいとねだった。 「こんなに頑張ったんだからさ。みんなで旅行に行こうよ。お父さんとお母さんと私の3人で」 こちらを見る心海の目に浮かぶ感情は、知能の低い私には理解できないほど複雑だ。 【13年前、どうして死ななかったの。今度こそ、家で一人、飢えて死ねばいい!】 両親の顔に、わずかな迷いが浮かぶ。やがて母は私の頭をそっと撫でる。 「美波はいい子にして、お留守番しててね。お母さんが帰ってきたら、遊園地に連れていってあげるから」 でも、母はまた嘘をついている。聞こえてくる心の声は、あまりにもはっきりしている。 【今度こそ、素直に死んでくれたら、私たちは楽になれる】
ดูเพิ่มเติม頭を揺らし続けている男の子の心の中では、童謡がずっと繰り返されている。【どんぐりころころ、どんぶりこ……】まるで壊れたレコードのように、同じフレーズが何度も何度も繰り返されている。天井を見つめている女の子は、こう考えている。【天井にクモがいる。巣を作ってるけど、すごく遅いなぁ。おばあちゃんが編み物するより遅いかも】隣に座る三つ編みの女の子の頭の中は、昼ご飯のことでいっぱいだ。【今日のお昼、何かな。お母さん、昨日はオムライスにするって言ってたけど、ウインナーも入ってるかな?】本当に、みんな考えていることはばらばらだ。でも、私は少しも嫌にならない。両親の心の声よりずっときれいで、雨上がりの空みたいに澄んでいる。午前の授業で、先生は簡単な漢字を教えてくれる。黒板に「大」「小」「上」「下」と書き、一文字ずつみんなで声に出して読む。私は誰よりも大きな声で読む。すると、先生がごほうびに小さな花のシールをくれる。それを手の甲に貼り、一日中ずっと眺めている。昼休み、自分の席で弁当を広げる。桂子が作ってくれた弁当には、豚の角煮と野菜炒め、それに食べやすく切ったリンゴが入っている。リンゴをかじっていると、隣の天井を見ていた女の子が突然こちらを振り向く。目は相変わらず上を向いたままだけど、私の袖をちょんと引く。「ねえ……名前、なんだっけ?」「清田美波」「わたしは、太田愛梨(おおた あいり)」彼女はにっと笑う。前歯が一本抜けている。「その帽子、かわいいね」私は頭にかぶった帽子に触れる。桂子が数日前に買ってくれた。ピンク色の帽子で、ツバのところには白いウサギの刺繍が入っている。「ありがとう、桂子おばさんが買ってくれたの」「おばさんって誰?」「向かいの家に住んでる……私に、すっごく優しい人」愛梨は小さく頷き、また天井を見上げる。でも、その心の声が聞こえてくる。【美波ちゃんには優しくしてくれるおばさんがいるんだ。いいなぁ、わたしにはいない。お母さん、いつもわたしを叩くの。でも、誰にも言えない。わたしも、そんなおばさんが欲しいな】私は弁当に入っていた豚の角煮を2切れ、愛梨の弁当にそっと入れる。愛梨は一瞬きょとんとするが、目の前の肉をじっと見つめ、やがてリスのように頬を膨らませて食べ始める。彼女は何も言わない
「お父さん、一緒にやって」父は一瞬きょとんとしたあと、笑いながら私の隣に座る。二人でカーペットに座り、父はパズルのピースを一つずつ探しながら、声に出して教えてくれる。「これが城の屋根だな……こっちは空の雲だ」けれど、ピースを探す手は次第に遅くなっていく。心の中では、うんざりした声が響いている。【500ピースなんて、いつになったら終わるんだ?明日は仕事だってのに、こんなことに付き合ってられるか】聞こえていないふりをして、ピースを一つずつはめ込んでいく。少しずれると、また外してやり直す。父は40分ほど付き合ってくれた。その間に仕事の電話を何度も受けた。最後の電話が鳴った時、父はほっとしたように立ち上がり、私の頭を軽く撫でる。「お父さん、ちょっと電話してくるな。美波は一人でやってて。いい子にしてるんだぞ」スマホを手に寝室へ向かう。ドアが閉まると、ドア越しに同僚へ愚痴る父親の声が聞こえてくる。「まいったよ。今、家で子どもの面倒を見てるんだ。もう面倒くさくてさ。明日、仕事が終わったら飲みに行こうぜ」私は黙ってパズルを続ける。夜の9時になるころには、城の土台が完成し、空の部分も半分ほど出来上がっている。母にお風呂へ入って寝るよう急かされ、私はパズルを丁寧に片づけて、ベッドの下へしまう。4月に入ると、桂子が私のために特別支援学校を探してくれた。それほど大きくない学校で、街の南側にある古い商店街沿いに建っている。校門には、ツタが青々と絡みついている。桂子に連れられて入学の手続きに行く日、対応してくれる校長先生は、眼鏡をかけたふくよかな女性だ。とても穏やかな人で、目を細めて微笑んで話しかけてくれる。「お名前はなんていうの?」「清田美波」「何歳かな?」指を折って数え始める。でも、5本目のところで止まってしまう。すると、隣にいた桂子が小さな声で教えてくれる。「18よ!」私は慌てて言う。「18歳!」校長先生は笑いながら、私の頭を優しく撫でる。彼女の心の声が聞こえる。【この子、目がしっかりしているわ。重度の知的障害には見えないけれど……以前の診断が誤診だった可能性もあるわね。まずはしばらく様子を見てみよう】両親は最初、私を学校へ通わせることに反対していた。「美波みたいな子が学校に行って、何になるんだ?
桂子が、焼きたてのクランベリークッキーを持ってきてくれる。砂糖を入れたホットミルクも一緒だ。私は桂子の肩に寄りかかる。風が吹き抜け、桂子からクチナシの甘い香りが漂ってくる。ほんのりと温かい。両親がいまだに私のことを好きじゃなく、足手まといだと思っていることはわかっている。でも、構わない。私には桂子がいる。それに、私は人の心の声を聞くことができる。彼らはもう二度と、私を傷つけることはできない。これからは、きっと穏やかに暮らしていける。……あの事件から半月ほど経ち、家の中の空気はどこか妙だ。両親は私に対して、異様なほど優しくなる。毎朝、私が目を覚ます前に、母は温かい牛乳とゆで卵をベッドまで運んでくる。卵はきれいに殻をむいてある。父は仕事から帰るとおもちゃを買ってきてくれる。数日前はゼンマイ仕掛けのカエルで、昨日は音楽が鳴るメリーゴーランドのオルゴールだ。しかし、彼らの心の声は筒抜けだ。母は牛乳を持って部屋に入ってくる時、こう考えている。【しばらくは大人しくして、あの子が油断するのを待つしかないわ】父がオルゴールを枕元に置く時、心の中はこうだ。【長井だって、毎日見張っていられるわけじゃない。あいつが自分の家のことで忙しくなった時を狙って、また機会を作ればいい】心海が大学へ行ってからは、たまに電話をかけてくる。でも、そのたびにお金をせがむだけだ。母は電話口では笑って応じるものの、切った瞬間に顔を曇らせる。心の中では、まるで炭火がくすぶるような声が響いている。【心海もあてにならない。金をせびるだけで、何もしてくれない。どっちも私たちのお荷物だわ】私は二人を無視する。昼間はいつも通り桂子の家に遊びに行き、字の読み書きを教えてもらったり、自分の名前を書く練習をしたりする。「清田美波」を何度も書く。形はぐにゃぐにゃだけど、桂子は上手だと褒め、練習した紙を家の冷蔵庫に貼ってくれる。桂子の息子の奥さんが、先月、二人目の子どもを出産した。男の子で、名前は冬真(とうま)という。桂子は息子夫婦の家へ孫の世話を手伝いに行くこともあり、手が回らない時は、私も一緒に連れていってくれる。冬真はとても泣き虫だけど、私が抱っこしてゆらゆら揺らすと、すぐに泣き止む。まん丸な目で私を見つめ、小さな手で私の指をぎゅっと握りしめてく
心海は、すぐそばに立っている。その顔色は相変わらずひどく悪い。彼女の心の声が聞こえてくる。【どうして、計画は完璧だったのに……なんでこの足手まといがまだ生きてるのよ、本当に最悪!】けれど、それを口に出すことはできない。ただ拳を握りしめて、そこに立っている。母は慌ててキッチンへ向かい、私の好きな料理を次々と作る。肉じゃが、照り焼きチキン、つみれ汁……テーブルいっぱいに料理が並ぶ。母は何度も私の皿に料理を取り分ける。「美波、たくさん食べてね。今まで本当にごめんね。これからは毎日、美波の好きなものを作ってあげるから」父も魚の骨まで丁寧に取り除き、私の皿にそっと置く。「美波、明日はお父さんと一緒に新しい服を買いに行こう。大好きなお姫様みたいなワンピースも買おう。な?」私はその魚を口に入れる。何も答えない。心海は、翌日に大学の寮へ引っ越す予定になっていた。ところが、その朝から親戚たちから次々と電話がかかってくる。母方の叔父は心海を厳しく叱る。「この恩知らずが!美波がああなったのは、お前を先に助けたからじゃないか。それなのに、あの子を飢えさせて死なせようとしたのか?」父方の叔母からも責められる。「都京大学に受かったからって、それが何なの?清田家に、あんたみたいな陰険で意地が悪い娘はいらないわ」親戚たちから責め立てられたことで、心海は引っ越しの日を半月ほど先延ばしにする。それから毎日自分の部屋に引きこもり、外に出ようともしない。たまに水を飲みに部屋を出てきても、私の姿を見ると逃げるように自分の部屋へ戻る。……家を出る日、心海は私の部屋の外に立ち、申し訳なさそうに頭を下げる。「お姉ちゃん、今まで私が悪かったわ。許してくれない?休みに帰ってきたら、何か買ってきてあげるから」私は心海をじっと見つめる。「心海はまだ、美波のこと、足手まといだって思ってる?学校を卒業したら、もう家には帰らない。美波のことも、もう面倒を見たくないって思ってるよね?」心海の顔から、一瞬で血の気が引く。何も言わずにスーツケースを引き、そのまま家を出ていく。一度も振り返らない。大学に入ってから、心海が家に電話をかけてくることはほとんどなくなる。たまにかかってきても、両親に生活費を頼む時くらいだ。両親は今、私にとても優しく
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