「ごめんなさい。本当に……」頭を深く下げる春香さん。「ありがとうね、そんな風に言ってくれて。でも、自分の責任だから本当に気にしないで」「……あ、ありがとう。私……今日、蓮見さんと話せて良かった。じゃあ、行くね。また……会えるかな?」「うん、必ず会おうね。寂しいけど、元気でね」「白川先生と、お幸せにね」「えっ!?」「恋愛経験が無い私でもさすがに見てればわかるから」春香さんにも、七海先生にも当てられてしまったということは、自然に顔に出てしまっているのだろうか?気づかないうちにニヤけていたのかも知れない。だとしたら、かなり恥ずかしい。「う、うん。ありがとう」春香さんは、ほんの少しだけ手を振って、そのまま去っていった。「あんなに笑顔が素敵な人だったんだ。だから、これから先は大丈夫だよね」春香さんは、これから先の人生、きっと自分らしく前向きに生きていける。背中を見送る私の心は、嬉しさと安心したせいか、ポカポカして温かくなった。ナースステーションに戻ると、歩夢君がいた。「どこに行ってたんですか?」「あ、うん。春香さんと話してた」「そうなんですか……。春香さんが辞めてしまうなんて、寂しいですよね。七海先生もいないし……」「うん。寂しいよね。でも、春香さんはきっとまたどこかで看護師を続けると思うし、元気に頑張ってほしいよね」「はい。本当にそう思います。春香さん、看護師として今まで頑張ってたから……」歩夢君のこの言葉。春香さんが聞いたら嬉しいだろう。「まだまだこれからだよね。春香さんも、そして私達も。患者さんのためにしっかり頑張らなきゃ」「頑張ります!あっ、あの、藍花さん。今日、仕事終わってから少し話せますか?」「えっ、あ、うん。大丈夫だけど……どうしたの?」「藍花さんと2人でちゃんと話すのは今日が最後です。あっ、もちろん僕まで病院を辞めるわけじゃないですよ。ただ……改まって話すのは最後……ってことです」「……うん。わかった。実は私も話したいことがあるの」「そ、そうなんですか……。わかりました。話しましょう」蒼真さんとのこと、ちゃんと言わないと……***そして、夜になり、私は歩夢君と2人、病院を出て駅に向かってゆっくりと歩いた。「ごめんね、歩きながらで……」「いえ、突然僕が声をかけてしまったので、すみません」歩夢君
「藍花さん」「ん?」「……やっぱり僕、あなたのこと……」「……」「ずっと考えてしまいます」歩夢君は、小さな声でそう言った。「……」そう言われて、言葉が上手く続けられない。「でも、藍花さんには好きな人がいるから……僕達は恋人にはなれないんですよね」「歩夢君、ごめん……」「いやだな~。僕は藍花さんの笑った顔が好きなんです。そんなしんみりした顔しないで下さい。好きな人にはずっと笑顔でいてほしいです。あなたが笑顔なら、僕はそれだけで嬉しい。藍花さんが幸せなんだってわかれば……それでいいんです」「そんな……。歩夢君、優し過ぎるよ」七海先生と同じだ。私は、歩夢君にももっと別の世界を見てもらいたい。いろいろな人に出会い、新しい道を進んでほしい。「僕はこれから仕事も頑張っていきます。だけど、あなたを想うことも止めませんから。あなたが誰を好きでも構いません。迷惑だとは思いますけど、もうしばらく……藍花さんを好きでいさせて下さい。今日はそれが言いたくて」「歩夢君。すごく嬉しいけど、でも、私にこだわらず、新しく好きな人ができた時には、必ずその人を大切にしてあげてほしい。私に申し訳ないなんて思わずに、ちゃんと前に進んでね」「……ですよね。ずっと想ってるなんてやっぱり迷惑ですよね」「ううん、迷惑なんかじゃないよ。だけど、あなたの大切な人生だから。歩夢君の未来はキラキラ輝いててほしい。私だって……君に笑っててもらいたいよ」「……笑って……?」「そうだよ。歩夢君の笑顔はみんなを元気にするパワーがあるの。そのパワーで患者さんが元気になるんだよ。歩夢君が悲しい顔をしてたら、みんな元気もらえなくなる……」「……パワーありますかね?」「あるよ!もちろん」「だったら、ずっと笑っていないとダメですね。僕が誰かの役に立てるなら……」「うん」「もし、僕にも誰かを想える時がもし来たら……藍花さんのいうように、その人を大切に……しますね。まあ、もしそんな人が現れたら……ですけど。あっ、駅に着きました。あっという間です、早いですね」歩夢君はつぶやくように言って、口角を上げてニコッと笑った。「ありがとう、歩夢君。君の笑顔で私も元気になれるから……感謝してる。本当に……いろいろありがとう。明日からもまたよろしくね」「はい!藍花さんと一緒に働けるだけで僕は幸せです。
「藍花、好きだよ……」「私もです。蒼真さんとの時間がすごく大切です」部屋の明かりはついたまま。私達はベッド入り、隣り同士並んでる。布団の中ではお互い何もつけていない。肌と肌が触れ合う感覚に、さっきからずっとドキドキしている。「僕もだ。今までは医学のこと以外に費やす時間なんてほとんど無かった。ジムに行ったりするくらいで、食事も簡単に済ませてた」「蒼真さんは勉強熱心ですから、みんな言ってます」だからこそ無敵なんだ。どこまでも外科医として努力する姿がカッコよくて、私は心底尊敬している。「それももちろん大事だ。勉強することは止めない。でも今は……藍花との時間が1番大切なんだ。この時間があるからまた頑張れる。今となっては、もうお前がいないと頑張れない」「そんな、そんなことないですよ。蒼真さんはいつだって……」言葉を続けようとした瞬間、そっと唇を塞がれた。「こんなこと言われたら失望する?」私は首を横に振った。「もし藍花がいなくなったら……俺、そう思うと本気で怖くなるんだ。情けないよな」「蒼真さん……。情けないなんて思いません。失望なんてするわけないです。蒼真さんは頑張り過ぎるくらい頑張ってます。そんなすごい人にそんな風に言ってもらえることは……やっぱり素直に嬉しいです」今度は私のおでこに優しくキスをした。「藍花。お前がもし患者さんのことを思うなら、絶対に一生俺から離れるな。藍花が側にいてくれたら俺はもう何も怖くない」そう言って私を抱き締める腕の強さに、何とも言えない安心感と男らしさを感じた。守られるって……こういうことなんだと。「いいな?絶対に俺から離れるな」私を間近で見つめながら甘く囁くその顔が、あまりにも美し過ぎる。この世にこんな美しいものが存在するなど、理解に苦しむほどだ。「私、離れません。ずっとあなたの側にいさせて下さい」「その言葉を待ってた。藍花……お前の全部を俺の物にしたい。俺だけのものに……」何度も何度も繰り返して押し寄せる甘いセリフの波。その波に飲み込まれて溺れてしまいそうになる。
そして、とろけるような刺激が私を包む。私の全てが蒼真さんに支配されていく……充分に敏感になった場所を、胸から順番に下に向かって何度も触れられ、私は更に深く高揚する。「あぁっ……ダメっ。蒼真さん……」「まだだよ。まだ……我慢だ」「意地……悪」繰り返される執拗な指の動きに、私はどうしようもなく淫らになる。蒼真さんの前では一切理性が効かない。制御不能になり、2人ともブレーキをかけることができず、ますます激しく震えるほどに乱れていく。私のこんな姿は誰にも想像できないだろう。普段の見た目との違いに、きっと引かれてしまうに違いない。自分でさえも、快楽に溺れる自分を受け入れられずにいるのだから――蒼真さんはお構い無しに私を愛撫する。体の全部の気持ち良いところを1つ1つ丁寧に。そんなところをそんな風にされたら……もうどうしようもなく気持ち良くて、我慢などできない。「もっと声出していいよ。藍花の思い通りにしてやるから」「思い通り……?」「ああ。どうしてほしい?」「……あ、あの……」私の望んでいることは何?こんなに体が熱いのに、まだまだ求められておかしくなりそうだ。だったら止めてほしい?私の本当の望みはいったい何なの?きっと私は……最高に気持ちいい瞬間がほしい――私は、「もっともっとしてほしいんでしょ?」と、悩める自分の心に問いかけた。「もっと……して。お願い、蒼真さん……」気がつけば、そんな恥ずかしいセリフを発していた。これが私の本性なのか?だとしたら、私、確実に……あなたにしつけられてこうなったんだ。ごく控えめだった私の中から、恐ろしい程淫らな部分を蒼真さんが引き出した。1から10まで全部、あなたに調教されて、私は女としてのこの上ない喜びを知ってしまった。不思議だ。もう私は、以前のつまらない自分には二度と戻りたくない――と、心で叫んでいた。
「もっと激しくしてやる。覚悟して」毎回、私を狂わせるくらい、蒼真さんに攻められる。こんなにも激しくしつけられて、私は……あなたという底の無い沼から抜けられなくなってしまった。「蒼真さん、そこ、気持ちいいです」「本当?こんなところがいいんだ。また1つ感じる場所が増えたな。藍花の体はしつけがいがある。触れれば触れる程に敏感になって……。じゃあ、ここは?」どんどんあなたにハマる感覚を、私はこの上ない「幸せ」だと思える。この人だけの物になりたい。私の全部を蒼真さんにあげたい。離れたく……ない。心から強く思った。「ずっと一緒だ」「……はい。嬉しい……です」温かな胸に抱かれ、お互いの肌が触れ、私達は愛に満ちた最高の世界にいつまでも身を置いた。***そして、月日は流れ、私は体の異変に気づいた。すぐに病院に行く。予想は的中していた。私は、蒼真さんとの子どもを授かった――感動で涙が溢れ、止まらなかった。いつかはもしかして……と思っていた。勢いでそのまま抱かれた時もあったし、でも、気をつけようなんて、お互い言わなかった。だから、当たり前と言えば……当たり前だった。私はこの状況をすごく嬉しく思ったけれど、蒼真さんはどうなんだろう?もしかして私はフラレるのだろうか?そう思ったら心底怖くなった。そんなことはない、絶対に蒼真さんは私のことを大事にしてくれる。きっと、大丈夫――それにしてもいつ話そうか?頭の中にいろんな思いが巡る。確かに不安は拭いきれない。私は、蒼真さんの部屋に招かれた日、ちゃんと打ち明けようと決意した。いつものように食事をしてから、ドキドキしながら話を切り出した。「あの……蒼真さん」「ん?」こちらに顔を向け、蒼真さんは私をじっと見た。「あっ、あの。えっと……」かなり不安げな表情だったのか、蒼真さんは心配そうに眉間に皺を寄せた。「大丈夫?落ち着いて。ゆっくりでいいから何があったのか話して」「……は、はい」
「……藍花」それでもなかなか切り出せない私に、優しく呼びかけてくれた。その思いに背中を押され、私は口を開いた。「蒼真さんとの子ども……あ、赤ちゃんが私のお腹にいます」「……」数秒の沈黙。私は蒼真さんの表情を確かめるのが怖くて、下を向きながら続けた。「あっ、でも、もし私と赤ちゃんが重荷なら、私は身を引きますから。蒼真さんには外科医という大切なお仕事がありますし、私は1人でもこの子を……」えっ……突然体が大きくて温かいものに包み込まれた。「……蒼真……さん?」「藍花……ありがとう。俺、すごく嬉しい。本当に……嬉しい」そう言って、蒼真さんは抱きしめた腕を離し、私を真っ直ぐに見つめた。瞬きした瞬間、蒼真さんの瞳からキラキラした雫が1粒こぼれ落ちた。泣いている……?蒼真さんの涙、初めて見た……「あの……赤ちゃん、喜んでくれるんですか?」「当たり前だろ。喜ばない理由なんて何一つない。嬉しくてこんなにも胸が熱い。俺、いつか……こうなることを願ってたのかも知れない」その優しい答えに肩の力が一気に抜けた。「良かった……です。嬉しいです。もしかしたら私、蒼真さんにフラれるんじゃないかって、怖くて」私も、自然に涙が溢れた。「フラれるなんて思うな。絶対に離さないって言っただろ。正直、近いうちにプロポーズするつもりだったんだ」「えっ……。本当……ですか?」「ああ。でも、俺達の赤ちゃんが1日も早い結婚を願ってくれたんだな。藍花の中に芽生えた小さな命、俺の全てかけて守るから。もちろん、藍花のことも、必ず守る」蒼真さんの瞳には1ミリのかげりもない。私と赤ちゃんを本気で受け入れてくれてると、ちゃんと思えた。霧がかかったみたいな暗い気持ちが一気に晴れて、私の心に明るい光が差し込んだ。「私、蒼真さんと赤ちゃんと3人で家族になれるんですか?」「ああ、もちろんだ。藍花、俺と……結婚してくれないか?」心にズシンと重く響く「結婚」の2文字。嬉しくて、嬉しくて、喜びが心の底から溢れ出してくる。「……本当に私でいいんですか?」「ああ、俺達、夫婦になろう。藍花のこと、世界一幸せにするから、俺に着いてきてくれ」迷いのない蒼真さんの言葉。この瞬間、蒼真さんといることが私にとって何の間違いもない、1番正しい選択だと確信できた。
「蒼真さん、はい、こんな私ですが、どうぞよろしくお願いします」「良かった」「私……こんなに幸せでいいんですか?」「藍花。たぶん、俺はお前より幸せだと思ってる」すぐ目の前の優しい笑顔に照れてしまう。「そんなことないです。私の方が幸せです」2人で微笑み合う。「ただ1つだけお願いがある。藍花にはうちの病院で出産してもらいたい。その方が何かと安心だ。俺も藍花のすぐ側にいるから」どこまでも私を大切にしてくれる蒼真さん。その気遣いに心から感謝した。「実は今の病院は婦人科だけなんです。出産できる病院を探そうと思っていたのでちょうど良かったです。それに松下総合病院には最高の先生と看護師が揃ってますから、私も安心して赤ちゃんを産めます。蒼真さんも同じ病院にいてくれるので心強いです。本当にありがとうございます」私は、蒼真さんとの子どもを産んでママになる。まだ全く実感は湧かないけれど、次々と起こっていく夢のようなストーリーに、私は子どもみたいに心が踊ってしまう。恥ずかしくなるくらい、幸せ過ぎてたまらなかった。***私達は、2人のことを病院のみんなにも話すことにした。婚約、そして妊娠のことはあっという間に広がり、いろいろな反響があった。七海先生が辞めた時以上に「白川先生」のファンはザワザワしているようで、改めて蒼真さんの人気ぶりに驚かされた。中川師長と歩夢君が特に喜んでくれたことはとても嬉しく、話せて良かったと思った。歩夢君も、「藍花さん、おめでとうございます。すごく嬉しいです。あなたが幸せで良かった」と、ニコッと最高の笑顔で微笑みかけてくれた。最初は病院中、そして患者さんまでが私達の噂で持ち切りだったけれど、いつしか穏やかに見守ってくれるムードになっていた。それからしばらくして、つわりがかなりキツくなり、私は仕事は辞めることにした。すごく寂しかったけれど、仕方がない。この状況ではまともに仕事ができず、みんなにも迷惑をかけてしまうとわかっているから。またいつか、ここで働けることを願って――私は、後ろ髪を引かれる思いで松下総合病院を去った。
しばらくして、蒼真さんは私をマンションに呼んでくれた。「一緒に暮らそう。藍花が心配だし、側にいたい」「いいんですか?」「ああ、もちろん。君の体もつらいだろうし、無理のないように過ごしてくれればいい。一緒にいれば、もし何かあった時、少しは安心だろう」「少しだなんて、私……正直不安だったので、蒼真さんと一緒にいられたら、本当に安心です」とはいうものの、蒼真さんはホワイトリバー不動産の御曹司。それに比べて私はごく普通の一般人。身分の違いには天と地ほどの差がある。本当に、私はここで蒼真さんと一緒に暮らしてもいいのだろうか?でも、少し前にも「身分の違いなんて関係ない。そんなものは一切気にするな」と、叱られてしまったから……だから、もう言わないようにしたかった。引越しも全て蒼真さんが手配してくれ、もったいないくらいに広くて素敵な部屋での生活が始まり……何だか心も体もリラックスできて、この環境ならお腹の赤ちゃんにも良さそうだと思えた。それに、何よりも、大好きな蒼真さんの側にいられること、それが1番心強くて嬉しかった。蒼真さんのぬくもりに包まれる安心感は半端なく、私はこの心穏やかで幸せな日々に感謝しかなかった。
翌日、堂本先生が内科の診察前に、私に会いに来てくれた。「済まなかったね、昨日は」「まさか蒼真さんに電話されるとは……びっくりしました」「何だかね……無性に電話しないとって体が勝手に動いてた。自分でもよくわからないけど……そうしなきゃいけないって」「先生は優しい人です」「買いかぶりすぎだよ」「いいえ。じゃなかったら、電話なんかしないですよ。でも……本当にありがとうございました」「え?」「蒼真さん、喜んでいましたよ。堂本先生が電話をくれたこと。そして……堂本先生に申し訳なかったって言っていました」「……そっか……。久しぶりに昨日は学生時代の頃のことを思い出しながら眠った」「そうなんですか?」「ああ。不思議と楽しかった思い出ばかりが浮かんできて……なんだか懐かしかった。いつまでも彼女のことを引きずっているなんて、未練がましくて情けないってことがわかったよ。ほんと、バカだった」先生の顔は、優しくて安堵感に溢れていた。「堂本先生……」「これからは、僕も新しい人生を楽しみたいって思ってる」「よかったです。めいっぱい楽しくて幸せな人生を送ってくださいね。私も蒼真さんも、堂本先生に素敵な未来が訪れるって信じてます」「ありがとう、嬉しいよ」「私も先生に負けないよう、楽しい人生を送れるようにしたいと思います」蒼真さんと蒼太と3人で……「そうだ。新しい病院が決まったんだ。僕の実家がある近くに友達のクリニックがあるんだけど、ずっと前から声をかけてもらっててね。そこで一緒に頑張っていこうと思う」「そうなんですね。寂しいですけど……頑張ってくださいね」「ああ。彼女とならうまくやっていけそうだし」「彼女?女医さんですか?」「僕の幼なじみ。幼稚園の頃からのくされ縁でね。本当に優秀な内科医なんだ。……なんだかね、昔から僕のことが好きみたい」「えっ!」「もちろん、僕にはまだ彼女に対して恋愛感情は無いけどね。まぁ、でも、この先はどうなのかわからないしね」幼なじみの間柄、何だか勝手に恋の予感を巡らせた。堂本先生がとても嬉しそうだからかな。いろんなことが吹っ切れたような爽やかな表情に、私は心からホッとした。「いつかまた……蒼真さんに会いに来てください。いつでも堂本先生のこと大歓迎ですよ。あの人も楽しみにしていると思います」「……そうだね、またいつか
「藍花……」「蒼真さん……?」「もっともっと俺のことを好きになって……」「……あっ……」蒼真さんの手のひらが私の頬に触れる。そこから直に伝わってくる愛情。蒼真さんへのどうしようもない愛しさが、私の体を巡る。「でも、どれだけ俺を好きになっても、俺が君を好きな気持ちには勝てないけどね」キュンと胸を貫く甘い言葉。自然に唇を塞がれて、蕩けそうになる。こんなことが私の日常にあることが今でもまだ不思議で仕方ない。上から下まで、とてつもなく美しい蒼真さん。年齢を少し重ねた私達。それでも、この妖艶な魅力を醸し出す蒼真さんに、私はいつだって心を奪われる。「堂本先生の話を聞いて、改めて思った。君の心は、誰にも奪わせない。どんな宝石をも盗み出す怪盗にだって……この体と心は盗ませない」「蒼真さん……」「何があっても俺のそばから離れるな」「はい。絶対に離れません……」幸せだった。いくつになっても蒼真さんに抱かれる幸せは、私の最上の喜びだ。「藍花のこと気持ちよくしてやるから」その言葉をきっかけに、蒼真さんの愛撫が始まった。嬉しい……本当に……嬉しい。「ああんっ……はぁ……っ」「ここ、気持ちいいんだろ?」「はあっ、ダ、ダメっ」「ダメじゃないだろ……こんなに濡らしてるくせに」「で、でも……っ」「もっとしてほしい……って、言って」耳元にかかる熱い吐息。蒼真さんの唇がそっと耳に触れると、体が勝手に身震いした。「ああっ、も、もっと……して……」体中がしびれ、我慢できないほどの快感に包まれる。言葉で表すことのできない刺激的な快楽が押し寄せる。「藍花……可愛いよ」「蒼真さん……はぁっ、い、いいっ、気持ち……いい」蒼真さんの舌が私のいやらしい部分に這う。どうしようもなく濡れている場所をさらに愛撫され、私はもうどうなってもいいと思った。「イキたい?」「は、はい……もう……我慢できないっ」蒼真さんは、人差し指で私の秘部の奥を何度も突いた。こんなことをされたら……「ああっ!ダ、ダメぇ!もう……イッちゃう……」案の定、私は簡単にあっけなく絶頂を迎えた。蒼真さんに私の敏感な部分を全て知られ、逃げることなんてできない。もちろん……逃げたいなんて思わないけれど。「蒼真さん……」「ん?」「蒼真さんは……本当に私の体で満足してます
「……残念だな。確かに……嘘だよ」「……う、嘘?」「彼は、僕の彼女の告白を見事に断った。僕のことを裏切った彼女にも腹が立つけど、1番憎いのは白川先生だよ。彼は何もかも持っているのに、誰1人女性を相手にしようとしなかった。そういうところがめちゃくちゃ嫌いだったよ。余裕があるっていうか……」嘘だったと聞いて、信じていたとは言え、心からホッとした自分がいた。「蒼真さんは誠実な人なのに、勝手に悪者にしないでください。そんな理由……ひどいです」「……君はほんとに彼のことが好きなんだね。よくわかったよ。それに、白川先生も……嘘偽りなく藍花さんのことが好きなんだろうね」「……」そうだといいなと、一瞬考えてしまった。蒼真さんに嘘偽りなく愛されたい――私は心からそう思った。「どんな女も寄せつけない男が選んだんだ、君は相当良い女なんだろう」「そ、それは……。で、でも、これ以上、蒼真さんに何か言ったり変なことしたら私、許しませんよ」「強いな、君は。別に、今まで彼に何かをしようと思った事はないよ。もう忘れていたし、僕は僕の道を進んでいた。なのに、白川先生が突然連絡してきて……。あれだけ女性を相手にしなかったくせに、君みたいなとても素敵な女性を奥さんにしていたから……。結局、ああいう男が、君みたいないい女を手に入れるんだと思うと、なんだか無性に腹が立ってきて……。あの時彼女を奪われた僕の気持ちを白川先生にも味合わせてやろうと思ってね」「そんな……」「僕の密かな企みは結局失敗に終わったけどね。残念だけど、僕じゃ、彼には到底かなわないってことだな」堂本先生は苦笑いした。「僕はね、あれから誰かを好きになることができなくなってしまったんだ」「えっ?そんな……」「本当のことだよ。彼女ができても、またフラれるんじゃないか、誰かに盗られるんじゃないかって思うと怖くてね。情けないけど、誰かを好きになることができなくなってしまって」「堂本先生……」何だかその告白に胸が痛くなった。トラウマになってしまった先生の気持ちはわからなくはない。でも、それは蒼真さんのせいではない。彼氏がいながら、他の男性に告白した女性が悪いと思う。「今の病院すごくいいでしょ?働きやすくて、みんないい人ばかりだ。正直、そんな中でこんな歪んだ心を持った自分が、これから先、うまくやっていける自信は
蒼太が小学校の高学年になり、私は蒼真さんの勧めで、近くの病院で看護師として働きだした。蒼真さんの知り合いの内科の先生がいる地元では有名な総合病院。松下総合病院と比べると、かなり規模は小さいがそれなりに立派な病院だった。いろいろ教えてくれる中川師長のような頼りになる先輩がいてくれて、とてもありがたかった。私は、外科の病棟に勤務していた。「藍花さん。少しは慣れましたか?」「あっ、堂本先生。はい……と言いたいところですが、まだまだです。堂本先生がこちらの病院を紹介していただいたおかげで本当に助かりました。ありがとうございました」「いえいえ。白川先生から頼まれると断れません。彼は僕の学生時代の友達ですから」「主人からも聞いています。堂本先生はとても優秀だから、勉強させてもらいなさいと」スラット背が高く、白衣も似合っていて、とても落ち着いた雰囲気のある真面目な先生だ。病院内の評判もとても良い。看護師達からの信頼も厚く、患者さんにも人気がある。松下総合病院で頑張っている蒼真さんと同じだ。「とんでもない。学生時代から彼の方がとても優秀で、僕なんか足元にも及ばないですよ」「……あっ、いえ。短期間ですが、先生を見ていて立派な方だとわかります」「ありがとうございます。あなたにそう言ってもらえると嬉しいです」「よかったら、1度、食事でもいかがですか?」「本当ですか?主人も喜びます」「……あ、いや。できれば、藍花さんと2人で話がしたいんですけど……。いろいろと……」えっ、2人きりで?……と、心の声が口から出そうになった。堂本先生の突然の誘いに驚き、なんと答えればいいのかわからなかった。「……ダメかな?」「す、すみません。2人きりはちょっと……。ナースステーションの誰かを誘ってみんなで行きませんか?」そう言った途端、堂本先生の顔つきが険しくなった。「みんなでワイワイするのは好きじゃないんだ。落ち着いたところで、白川先生の学生時代の話とか……できたらいいんだけど……」「主人の学生時代の話ですか?」そう言われると、とても興味がある。それでも蒼真さんに内緒で行くことはできない。「ああ、そうだよ。学生時代の白川先生のことを君に教えてあげたくて。聞きたくないの?」「き、聞きたくないことはないです。でも……」「とても興味が湧く話だと思うけどね」
僕はその結果に心からホッとしながらも、正直、自分を情けなく思った。自分にとって何よりも大切な人がこんなになるまで頑張っていたのに……無理していることに気づいてあげることができなかった。結果、桜子に不安を与えてしまい、痛い思いをさせてしまった。医師として、そして、彼氏として本当に申し訳ないことをしたと心底反省した。医師だから、体も心も強いわけではない。もがきながら、苦しみながら、逃げ出したい気持ちもある中で、みんな必死に患者さんのために頑張っている。僕も今回の事を教訓にして、桜子の体調も気にしながら、お互い励ましあって、支え合って生きていきたいと思った。もう二度と桜子を不安にさせないと、心に誓った。「ごめんね。本当に心配かけて。何だかみんなに心配をかけてしまって……恥ずかしい。これからは、一生懸命、妊婦さんや婦人科の病気を抱えている人のために頑張っていくね。あ、でも、自分の体にも気をつけていきます」「……うん。そうだね。僕もたくさんの人の命を守りたい。その気持ちを永遠に持ち続けて、そして、桜子のこと、必ず……幸せにしたい」「蒼太さん……?」「本当はもっとロマンチックな形で言いたかったけど、今どうしても君に伝えたいから」「えっ?」「桜子。僕たち結婚して、夫婦にならないか?」「……蒼太……さん?」「お互いに支え合って、いつまでもずっと一緒にいよう。絶対幸せにするから、僕についてきてほしい」「……嬉しい。蒼太さん、私、とっても嬉しいよ」「ほんと?」「うん、私を選んでくれて本当に本当にありがとう」「こちらこそ……。うわっ、すごくドキドキした」あまりの緊張に思わず心臓を抑えた。「私もドキドキしたよ。ありがとう、ほんとに嬉しい」「うん、僕も嬉しい。良かった……」病院の片隅、僕たちは永遠の愛を誓った。泣きながら笑うなんて変だけど……でも、こんなに幸せでいられることに感謝しかなかった。***それからしばらくして、両親と僕たちは川の近くにあるキャンプ場にやってきた。流れる水がとても綺麗で、心地よい風が吹いている。最高のキャンプ日和だ。早速、近くにテントを張ってバーベキューの準備をする。父も母も、桜子の元気な姿を見て、とても嬉しそうだった。「何だか蒼太の子供の頃を思い出すわね。川辺で遊んでいる姿がとても可愛かったわよね。ほ
数日して、桜子が胃カメラを受ける日がやってきた。一旦腹痛も治まり、翌日には退院して、仕事にも戻っていた。僕の両親と桜子、4人でその話をしたら、父も母もとても心配していた。父は外科医、母は看護師、2人とも熱い志を持って今も仕事をしている。2人とも可愛い桜子に対して何かしてあげたいとの思いを語ってくれた。「お父さん、お母さん。私のことをそんなに心配してくださって、本当にありがとうございます。産婦人科医として働いている自分が病気になるなんて……すごく情けないです」桜子は沈痛な面持ちで頭を下げた。「何を言ってるの。人間は病気になるものよ。でも病院に行って治療を受ければ大丈夫。病院と先生を信じてね。きっと良くなるわ。情けないなんて言っちゃだめよ」母が丁寧に諭すように言った。看護師としての母も、普段の母も、とても穏やかで優しい人だ。「お母さん……。励ましていただいてとっても心強いです」「いえいえ、私は昔、外科医である主人によく怒られていたのよ。笑顔で患者さんに接して、決して不安にさせてはいけないって」「別に怒っていたわけじゃないよ」父が照れながら言う。僕にはわかるけどね、父は母のことが大好きで、でも、うまく気持ちを伝えられずに、そういう態度で接してしまっていたんだって――「とにかく患者さんに優しく不安を与えずに治療を続ける主人を見て、とても感動したの。患者さんは先生に頼るしかない。わからないから不安になる、だから、先生に優しくされたら心から安心するのよね。主人と関わる患者さんは皆そうだったわ」「……そのくらいでいいから」「お父さん、照れすぎだよ。お母さんはそんなお父さんのことをいつだって尊敬していた。僕もその姿を見ていたから、お医者さんになりたいって子供の時から決めてたよ。無事に父さんと同じ外科医になれて本当に良かったと思ってる」「そうよね。だってそのおかげで蒼太は、桜子さんと出会うことができたんだもの」「お母さんがお父さんと出会ったように……ですね」桜子が少し目を潤ませて、そう言った。「そうね。私も主人と出会えて本当に幸せよ。可愛い桜子さん、本当に蒼太と出会ってくれてありがとうね。病気の事はきっと大丈夫だから。信じましょう。元気になったら、みんなでバーベキューでも行きましょう」「うわぁ、楽しみです。バーベキューなんて小学生の時以来で
優秀な外科医である父の背中を見て育った僕は、昨年研修医を経て、無事に父と同じ外科医となった。まだまだ未熟だけれど、志は熱い。これからたくさんのことを学んで、多くの患者さんを救いたいと心に誓っている。大学病院の外科での仕事は大変だけれど、それを支えてくれる父や母、そして、僕の彼女の「相川 桜子」、みんなのおかげでモチベーション高く頑張れている。桜子は同じ大学で医学を学んだ同士であり、現在は産婦人科医として頑張っている。父や母の知り合いの七海先生の話はよく聞いていたが、僕も、産婦人科医はとても大変で尊い仕事だと認識している。桜子とは新米の医者同士、励ましあったり、知識を共有したりして、お互い尊敬しあっていてとても良い関係だ。そう、彼女は、僕の最高のパートナー。来年あたり結婚して、仲の良い楽しい家庭を作りたいと思っている。もちろん、授かることができれば、かわいい赤ちゃんも欲しい。僕の両親もそのことをとても喜んでくれていて、優しくて品があって、努力家の桜子のことをすでに娘みたいに可愛がってくれている。***そんなある日のこと。桜子はいつものように実家から大学病院に向かった。電車を降りて病院まで歩いている途中の事だった。桜子が急に腹痛を訴えて倒れ込み、たまたま近くにいた人が救急車を呼んでくれ、僕たちが勤める大学病院に運ばれた。知らせを聞いて、僕は慌てて桜子の元に飛んでいった。桜子はお腹を押さえ、冷や汗をかいてベッドに横たわっていた。「桜子!大丈夫か?」「あっ、ごめんね。仕事中なのに」「何言ってるんだ。そんなこと気にするな。それより大丈夫なのか?」「……うん、急にお腹を刺すような痛みがして……」僕は目の前にいる桜子を見て、胸が張り裂けそうなくらい不安になった。一体何が起こったのかと心配で心配でたまらない。なのに、今の自分には何もしてあげることができず、医師として情けなくて悲しくて、無力さを痛感した。「蒼太先生。桜子先生は今から検査に入ります。すみませんが、しばらく待っていて下さいね」「わかりました。先生、どうかよろしくお願いします」 「大丈夫ですよ。しっかり検査させていただきます。終わったらまた連絡しますね」「お世話になります。ありがとうございます」僕はそう言って、担当の先生に頭を下げ、不安な気持ちを抱えたまま外科に戻った
伯母さんに結婚をせかされてから数日後、僕は、いつものように松下総合病院で仕事をしていた。「歩夢さん。あの……私、もうすぐ退院ですよね」「そうですね。よく頑張りましたね」「あの……退院する前に話しておきたいことがあって……」しばらく入院していた田川 紗英さんに、突然話しかけられてびっくりした。「……どうかしましたか?田川さん」「……入院中、仲良くしてくれてありがとうございました。すごく不安で仕方なかったけど、歩夢さんのおかげでリラックスして手術も受けれたし、術後もいっぱい励ましてもらったから今日まで頑張れました」僕より2つ年下の彼女。気づけば、田川さんは僕のことを名前で呼んでくれていた。「ありがとうございます。そう言ってもらえたら嬉しいです。少しでも田川さんのお役に立てたならよかったです」「少しだなんて。歩夢さんにはたくさんたくさん励ましてもらいました。私、すごく……幸せでした」「そんな大げさですよ、幸せだなんて。これから先、あなたにはたくさん幸せなことが待っていますから」「そうですかね……。私にも何か良いことありますかね」「もちろんですよ。絶対あります。田川さんは、退院したらやりたいこととかあるんですか?」田川さんは、小柄で女性らしいふんわりとした印象のある、とても可愛らしい人だ。しかも、性格が良い。趣味の話や、テレビや食べ物の話など、いろいろなことを話している中で意気投合することも多かった。きっと、こんな人と結婚したら毎日楽しんだろうなと、ほんの少し思ったりもした。「……やりたい事はたくさんありますよ。映画も見たいし、ショッピングもしたい。キャンプに行ってバーベキューもしてみたいし、夜空の星を見るツアーにも参加してみたい。あっ、遊園地にも行きたいですね。あとは……う~ん、まだまだやりたい事がいっぱいあってまとまりません」必死に語る田川さんが可愛く思えた。「いいじゃないですか。楽しみがいっぱいですね」「でも……」「でも?」「どれもこれも1人では寂しいです。2人でなら楽しいことばかりですけど……」田川さんは目を閉じて、そして、何かを想像するかのように微笑んだ。「ん?仲良しの友達がいるんですか?」「……友達はいますけど……そういう楽しいことを一緒にしたいと思うのは、やっぱり……」田川さんは、急に僕から視線を外し戸惑
「歩夢、いい加減、そろそろあなたも結婚とか考えたらどうなの?いつまでも1人じゃ寂しいでしょ」伯母の中川師長にまた同じ質問をされた。もう何度目だろう。もちろん、伯母さんだって本当は言いたくないだろうけど……「だから、いつも言ってるように、僕には彼女がいないんだから結婚なんてできないよ。相手がいなきゃ、結婚はできないんだからね」「当たり前でしょ。そんなことわかってるわ。ほんとに毎回毎回同じことばかり。歩夢にはその気がないの?」今日の伯母さんはいつも以上に必死だ。「その気がないわけじゃないよ。でも……病院にいたら出会いなんてないよ」「そうはいうけど、今どきネットとか出会いはたくさんああるんでしょ?何か試して前に進んでみたら?この間も、私の知り合いの娘さんが、その……なんて言うのかしら?マッチングアプリ?そういうので、素敵な人と出会ったらしいわよ。いろんな相手がいてね、こちらが興味を示したらボタンを押すんですって。それを見て相手も興味を持ってくれたら、会ったりするんですって~。すごいわよねぇ~」伯母さんの口からマッチングアプリなんていう言葉が飛び出すとは思ってもみなかった。確かに……伯母さんの助言は有難いと思う。だけど、今の僕には誰かと付き合うなんてまだ考えられない。正直、藍花さんと離れて数年、他の誰かを好きになることはなかった。無理して誰かを好きになろうとも思わなかった。僕は……きっとこのまま独身のまま人生を終えるのだと……そんな気がしていた。それでもいいとさえ思っていた。「伯母さんの気持ちは本当にありがたいけど、もう少し今は仕事を頑張っていたいんだ。まだまだ未熟だし、仕事が1番楽しい。もっと勉強して、いろんなことを知りたいから。そうだ、伯母さんこそマッチングアプリとかしてみれば?良い相手が見つかるかも知れないよ」「な、な、何を言ってるのよ!伯母さんをからかわないで。ま、全く何を言ってるのかしらね。私がマッチングアプリなんてするわけないでしょ」かなり慌ててる伯母さんをみたら、さらにからかいたくなった。「伯母さんも第2の人生を楽しんでみたら?イケメンでお金持ちの人もいるかも、僕、断然応援するよ」「私のことはいいのよ、ほんとにもう。歩夢……。あなた、もしかして、まだ藍花ちゃんのことを?」伯母さんにはとっくの昔から僕の気持ちを見抜かれ