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第1035話

Author: 金招き
広がった布地から、その正体が明らかになった。

愛美は最初から、これがセクシーな寝間着だと気づいていた。

だが、こうして広げてみると、その大胆なデザインがよくわかる。

彼女は今までこんなに露出度の高い服を着たことがなかった。

それでも、どこかで嬉しくて、わくわくして、胸が高鳴っていた。

――この姿を越人が見たら、どんな顔をするんだろう。

想像するだけで、なんだかドキドキする。

サプライズにするため、彼女は服をそっと外に置いておいた。

しばらくして、バスルームから水音が止み、越人が出てきた。

「プレゼント、見つけたか?」

「ええ」

愛美は淡々と答えた。

「何だった?」

越人は何気なく聞いたが、内心ではアクセサリーやジュエリーの類だろうと勝手に予想していた。

――女って、そういうの好きだし。

「大したものじゃないよ」

愛美は答えた。

「大したものじゃないって何?教えてよ」

越人は尋ねた。

「私、そろそろお風呂に入る」

愛美はそう言って、バスルームの方へスタスタと歩いていった。

「どうしたんだ?結婚したばかりなのに、もう秘密を作るのか?どんな高価なものだって、俺に見せられないものなんてあるか?」

越人は笑った。

「無価の宝物よ。だから、簡単に見せちゃダメなの」

愛美は振り返って、にこりと意味深な笑みを浮かべたあと、寝室を出て行った。

越人はその言葉に肩をすくめたが、追及はしなかった。

彼はベッドに腰を下ろし、愛美の戻りを待った。

――二人は共に暮らしてきたが、これまでずっと節度を保ってきた。

体調の問題もあったし、何より愛美があの事件のトラウマを抱えていることを慮り、不用意に踏み込むことを控えてきたのだ。

だが最近、彼女は確かに回復しつつあった。

少しずつ、あの明るさを取り戻している。

以前のような、悩み知らずで素直な愛美に戻ってほしい。

無邪気で、愛らしく、そして魅力的な――

ふと、昔二人で過ごした日々が思い出され、越人の唇に自然と笑みが浮かんだ。

しばらく経っても、愛美は寝室に戻ってこなかった。

──いくらなんでも、長すぎる。

越人はベッドから起き上がり、部屋を出て浴室の方へ向かった。

ドアはまだ閉じられていた。

彼はノックしながら声をかけた。

「愛美……?」

「あっ……!」

中から慌てた
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