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52.関係の変化。

last update publish date: 2026-01-31 10:33:21

いろいろあった文化祭が終わり、1ヶ月。

いよいよ冬休みが迫ってきた、とある日の昼休みのこと。

窓の外に広がる寒空を横目に、私は暖かい教室で、雪乃と共に昼食を食べていた。いつも一緒に食べている悠里くんは、今日はバスケ部の用事があるらしい。

悠里くんと付き合い始めた頃は、こうして雪乃と食べることの方が多かったが、今では、悠里くんと食べることの方が多かった。

「何か久しぶりだねぇ、一緒に食べられるの」

ふと、雪乃が今、私が思っていたことと同じことを口にする。

「お互い違う相手と食べたり、用事があったりしたもんね。一緒に食べられるのは2週間ぶりくらいかな?」

なので、私は雪乃の言葉にすぐに頷いた。

悠里くんと一緒に食べる夢のような時間も好きだが、気心の知れた友人である雪乃と食べる時間も、安心感があり、楽しくて好きだ。

「悠里くんが柚子とお昼一緒にするようになっちゃったもんねぇ。最初は付き合ってんの?本当に?て、感じだったのに、今ではこの学校の誰もが知る、ベストカップルなんだもん」

「ふふ、まぁね」

おかしそうに笑う雪乃に、私は少しだけ誇らしげに胸を張った。

雪乃の言う通り、もうすっかり私は悠
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  • 推しに告白(嘘)されまして。   88.不名誉な疑惑。

    バレンタインからあっという間に時は流れ、三学期の終わりが見えてきた今日この頃。放課後の風紀委員室で他の風紀委員たちと仕事をしていると、ガチャリと扉が開かれた。「邪魔するぞ」そう言って風紀委員室に現れたのは、生徒会長だ。2年の進学科でクラスメイトでもある生徒会長、田中は、ファイルを抱えて、まっすぐとこちらまでやって来た。綺麗にセットされた黒髪に、ふちのない眼鏡。きちんと着こなされた制服は、まさに生徒に見せたい見本そのものだ。真面目が服を着ているような彼と私は馬が合い、生徒会長と風紀委員長という立場上、よく話をする仲でもあった。「どうしたの、田中。何か不備でもあった?」いつもの調子で書類から視線を上げ、田中を見る。すると田中はそんな私に何故かとても難しい顔をした。一体、何が田中にあんな顔をさせているのか。不思議に思いながらも田中の言葉を待っていると、田中は私の目の前で、ファイルの中にあった紙をバサァッと、何十枚も広げた。「これを見ろ。目安箱に入れられていたものだ」田中が眼鏡の奥で、私に鋭い視線を向ける。その視線の意味が全くわからず、私は首を傾げたが、とりあえず目の前に広げられた紙を手に取ってみた。目安箱とは、名の通りのもので、生徒たちの要望や悩みなどを匿名で聞くものだ。ちょっとした不憫なこと、あればありがたいこと、校則の改善案など、入れられる意見はさまざまなのだが、私が手に取った紙にはそんなことは書かれていなかった。『鉄子は誰と付き合っているの?千晴くん?悠里くん?』「…ん?」紙に書かれていたまさかの内容に見間違いか、と自分の目を一瞬疑う。…なんだ、これ?ふざけているようにしか見えない内容の紙を一度机に置き、他のものにも目を向けてみる。『鉄子先輩の彼氏は悠里先輩ですよね?』『千晴くんと鉄子はこっそり付き合っている』『鉄子は悠里くんと千晴くん、2人と付き合っているで合ってますか?』だが、どの紙を見ても、ふざけた内容のものしかなかった。目安箱にこれが入っていたというのか。全くうちの生徒たちは目安箱をなんだと思っているんだ。広げられた紙たちの内容に呆れながらも「何、これ」と苦笑する。すると田中はそんな私に淡々と告げた。「ここ1ヶ月の間に目安箱に入れられたものだ。お前の振る舞いが招いた結果だぞ」「…はぁ」まるで

  • 推しに告白(嘘)されまして。   87.アナタの声で夢をみる。

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  • 推しに告白(嘘)されまして。   84.最初のチョコ。

    やっとの思いで生チョコタルトを完成させ、いよいよラッピングの工程へと入った。最初の生チョコタルトこそ、元気いっぱい欲張りタルトになったが、残り二つは千夏ちゃんのアドバイスのおかげで、少しはマシになった。千夏ちゃん曰く、二つ目のタルトは、〝恐れすぎ、貧相タルト〟で、三つ目が、〝バランス最悪、アンバランスタルト〟なのだが。そんな辛辣な千夏ちゃんだが、最後には「でも頑張りは認めるわ。さすがお義姉様、苦手なことにも、逃げず立ち向かう姿は圧巻だったわ」と、どこか上から目線な笑顔で拍手を送ってくれた。大きなテーブルの上には、もう生チョコ作りに使われた調理器具たちはない。それらは先ほど片付け、今は小さな箱やリボン、紙など、ラッピングに必要なものが並べられていた。そこから私は小さな箱を手に取り、生チョコタルトを入れながらも、ふと思ったことを口にした。「そういえば、千夏ちゃんは今日作ったやつ誰にあげるの?」「あら、そういえば言ってなかったわね。お父様とお兄様とそれから婚約者によ」「へぇ…。お父様とお兄様と婚約者にね…。ん?」千夏ちゃんの淡々とした答えに、一瞬、私は固まる。お父様にあげる、わかる。お兄様にあげる、わかる。婚約者にあげる…?婚約者?「え、え!?千夏ちゃん中学生だよね!?こ、婚約者がい、いるの!?え!?」「ええ。もちろん。華守の娘だもの」何でもないことのように答えた千夏ちゃんに、私は大きく目を見開き、思わず千夏ちゃんを凝視した。だが、そんな私とは違い、千夏ちゃんは平然としており、手際よく、箱にリボンを巻き付けていく。その姿に私は思った。婚約者がいるということは、千夏ちゃんにとっては、当たり前で、普通なのだ、と。お金持ちの世界、すごすぎる。庶民には全く理解できない世界だ。未知の世界に衝撃で固まっていると、そんな私に気がついた千夏ちゃんは、作業を続けながら言った。「華守と繋がりたいのよ、みんなね。つい最近まで婚約者がいなかったお兄様の方が異例なのよ?」「…は、はぁ」千夏ちゃんの説明に、つい間の抜けた返事をしてしまう。千夏ちゃんのお兄様、つまり千晴の婚約者は千夏ちゃんにとっては私なのだが、もうそこにいちいちツッコミを入れるのはやめた。「それで?アナタは一体誰にあげるのかしら?沢村悠里と、残りのものは誰に?」全ての箱のラッ

  • 推しに告白(嘘)されまして。   83.仕上げ。

    優雅で楽しい、そしてほんの少し恥ずかしい、そんなひと時を過ごした後。時間になったので、私たちは厨房へと戻ってきていた。いよいよ、生チョコタルト作り再開だ。次の工程は寝かせていた生地をタルトの形にする、というものだった。ちなみに千晴はまたあの座り心地の良さそうな椅子に座って、こちらをどこか楽しげに見つめていた。まるでどこぞの王族のようだ。「この生地を伸ばすのよ、慎重にね」「う、うん」千夏ちゃんに見守れながらも、木の板…いや、千夏ちゃん曰く、ペストリーボードと呼ばれるものの上に置かれた生地を、めん棒でゆっくりと円になるように伸ばしていく。最初は薄くなりすぎることを恐れて、おそるおそるめん棒を転がしていたが、千夏ちゃんに「少しずつ力を入れて。少しずつよ」と言われたので、指示通りに力をそっと加えていった。「…っ」そして少し歪だが、直径15センチほどの円がようやく一つ完成し、私はやっと息を吐いた。緊張で今この時まで息をすることを忘れていた。「あとはこの生地を型に入れて、はみ出ている生地をこのパレットで削ぎ落とすの」いつの間にか千夏ちゃんも作っていたらしい円の生地を使って、千夏ちゃんが手際よく次の作業内容を教えてくれる。私はそれを一瞬たりとも見逃さないように見て、忘れぬうちに自分の生地を睨んだ。「お義姉様、ポイントは優しく、よ」「うん…!」千夏ちゃんの真剣な声に、私は同じく真剣な声で返す。それから震える指先に力を込めて、何とか続きの工程に入った。こうして私たちは、それぞれ三つずつ、タルト生地を作った。そして形になったタルト生地はまた冷蔵庫で寝かされた。その後、オーブンで焼き、次にその焼けたタルトに、チョコと生クリームを混ぜたものを流し入れた。この工程を経て、やっと、生チョコタルトの土台が完成した。作業の途中、板チョコを刻む段階で、板チョコを木っ端微塵にしてしまうという場面もあったが、まな板の上でのことだったので、一応は大丈夫だった。千夏ちゃんに絶句され、千晴に大爆笑されたが。こうして完成した生チョコタルトの土台。次はいよいよ最後の仕上げであるトッピングだ。「あとはこちらにある苺やブルーベリーを使って、美しくトッピングするだけよ」テーブルの上にある苺やベリー系のフルーツを千夏ちゃんが丁寧に両手で指す。ボウルに入れられて

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