เข้าสู่ระบบ「旗艦へ目標座標を送る! 環境への考慮も重視して、照射面積は最小に集約、威力を抑えることも忘れるな!」 次元潜航海賊船モリガンから送られた位置情報が、超戦艦ハンニバルの中央管制室へと到達する。 直後、全長数キロに及ぶ巨艦の最深部で、主機関が低い唸りを上げた。 人工的に封じ込められた小型ブラックホールが回転を始め、周囲の空間がわずかに歪む。 重力炉の出力計が跳ね上がり、巨大な機関室を青白い放電が走った。 発生した膨大なエネルギーは、艦内の兵装や推進器へは送られず、全て船体側面に設けられた臨時給電口へ集中していく。 ハンニバルと、その隣に停泊する惑星破壊砲「オーディンの剣」との間には、何本もの極太ケーブルが渡されていた。 ケーブルの外装が震え、内部を走るエネルギーの奔流によって、一本、また一本と白熱していく。接続部から火花が噴き上がり、周囲の作業艇が慌てて退避した。 惑星破壊砲の船体には、以前の戦闘によって生じた亀裂や焼損が、いまだ生々しく残っている。 溶接された装甲板は不格好に盛り上がり、砲身の各所には応急補修用の骨組みが露出していた。 その傷だらけの巨砲に、マイクロブラックホールの臨界した力が流れ込む。 停止していた冷却装置が次々と再起動し、砲身を取り巻く蓄積環が、後方から順番に青白く輝き始めた。 低い振動が船体全体を揺らし、周囲の宇宙空間にまで見えないエネルギーの波紋を放つ。「充填率、十……十五……二十!」 警報が鳴り響くなか、《オーディンの剣》は傷ついた獣のように、再び目を覚ました。 ツーシームが示した深海の一点へ向け、惑星を殺す砲口が、ゆっくりと旋回を開始した。◇◇◇◇◇「くるぞ! 急速潜航!!」「了解!」 ツーシームの叫びに従い、モリガンは次元の狭間へと逃げ込む。 次の瞬間、白銀の光柱が宇宙から惑星アクアの海面へ突き刺さった。 ……海が割れた。 いや、割れたのではない。 直撃点を中心に、数百万トンもの海水が一瞬で沸騰し、巨大な蒸気の柱となって空へ噴き上がったのだ。 超高温に晒された海水は液体の姿を保てず、猛烈な蒸気の衝撃波となって四方へ広がる。 周囲の海面が盛り上がり、山脈のような津波が幾重にも連なった。 光柱はなおも衰えず、深海を貫通した。 ヘカトンケイル旅団の長射程ビーム艦を多数収容していた秘密格納
――聖帝国暦六四五年七月上旬。 惑星アクアの地下最高司令部で、ルントシュテット伯爵は苛立ちを募らせていた。 机上には、新たな被害報告書が置かれている。 また一隻、海中を航行していた輸送艦が撃沈されたのだ。 襲撃を受けた船からの通信はなく、護衛部隊も敵の姿を確認していない。輸送艦は何の前触れもなく魚雷を受け、そのまま深海へ沈んでいた。 ルントシュテット伯爵は報告書を机へ投げ出し、水中戦闘を専門とする若手参謀を呼びつけた。「お呼びでございましょうか、閣下」「ああ。そこへ座りたまえ」「はっ」 若手参謀が緊張した面持ちで腰を下ろす。「それでだな」 伯爵は指先で報告書を叩いた。「我が領海内に、忌々しい敵の潜水艦が入り込んでいるようだ。なぜ発見できぬのかね?」「はい。敵艦と思われる船は、能動ソナーに反応せず、聴音装置を駆使しても、推進機関の駆動音すら捉えられません」「まったく音がしないと?」「はい。襲撃時に魚雷の航走音が確認されるだけで、発射元は特定できておりませぬ。まるで、海の中に幽霊船がいるかのようで……」「馬鹿なことを申すな!」 伯爵が机を叩いた。「現実に幽霊船など存在するものか!」「……も、申し訳ございません」 若手参謀は額に浮かんだ汗を拭った。「ただし、可能性は低いものの、敵艦が次元潜航艇であるとの意見もございます」「次元潜航艇だと?」「はい。異次元との狭間へ船体を移せば、我々と同じ空間には存在しなくなります。通常のソナーや聴音装置で探知できないのも説明がつきます」 伯爵は不機嫌そうに眉を寄せた。「それほど有用な兵器なら、なぜ我が軍は使っておらぬのだ?」「次元潜航艇は、操縦者の脳波と艦艇を直接連動させる特殊な制御方式を用います。適性を持つ者が極めて少なく、誰にでも扱える兵器ではございません」「訓練では、どうにもならぬのか?」「それだけではありません。水中と異次元の狭間を航行している間は、通常の観測装置がほとんど機能しなくなります」 若手参謀は、卓上に簡単な立体映像を表示した。「操縦者は周囲の地形も、海流も、他の艦艇の位置も把握できませぬ。例えるならば、目隠しをしたまま深海を全速力で進むようなものです」「岩礁へ衝突すれば?」「一瞬で沈みます」「海底火山や海溝へ入り込めば?」「帰還は困難かと」 伯爵
――聖帝国暦六四五年六月下旬。 ユリウス率いる新帝国軍は、惑星アクアの攻略に苦戦していた。 惑星アクアは、人口や産業構造だけを見れば資源惑星に分類される。 軍事施設が地表の大部分を占めている以上、本来であれば大規模な艦砲射撃も許容されるはずであった。 だが、この惑星の海には、他の星々ではすでに絶滅した海洋生物が数多く生息していた。 交戦条約は、希少生物が確認された海域への無差別攻撃を禁じている。 攻撃可能な場所、兵器の種類、投入できる火力のすべてに、厳しい制限が課されていた。「装甲空母を前進させよ!」「はっ!」 ユリウスの命令を受け、艦隊中央から複数の大型艦が進み出た。 装甲空母は、新帝国軍が近年配備を始めた新鋭艦である。 宇宙空間で使用する宇宙戦闘機と、大気圏内で運用する気圏戦闘機。 その双方を搭載し、発着艦および補給や整備できる多目的空母であった。 また、艦体には分厚い装甲と強力な防御障壁が備えられており、敵の砲撃下でも航空部隊を展開できる。「砲撃艦隊、海面上の確認済みの浮遊対空陣地を制圧せよ。海中へは撃ち込むな!」「了解!」 新帝国軍のビーム砲は、海面へ突入した時点で急速に減衰する。 それでも、装甲空母や強襲揚陸艦が大気圏へ突入する間、敵の対空砲火を抑えるには十分な威力があった。 長距離砲撃を得意とするヘカトンケイル戦略砲兵旅団も、確認されている艦艇は五十隻前後にすぎない。 海中へ潜伏できる地形的優位を失えば、千隻近い新帝国軍艦隊に正面から抗することはできなかった。 惑星アクアの地表を覆うものが、流体金属ではなく海水であることにも意味があった。 流体金属の海へ艦艇を潜ませる場合、施設や船体の腐食や高熱への対策が必要になる。 桟橋、埠頭、防護隔壁、海中扉の建設費も莫大となり、維持するだけで国家予算を食い潰しかねない。 対して、海水ならば既存の潜水技術を応用できる。 さらに、自然の海溝や岩礁を利用し、安価に巨大な防衛網を構築できる。 惑星アクアは、限られた予算で造られた要塞として、驚異的な費用対効果を発揮していた。◇◇◇◇◇ パウルス元帥率いる強襲部隊は、気圏戦闘機の物量をもって、いくつかの対空陣地と航空基地を占領した。 新帝国軍の気圏戦闘機は、数でも性能でも防衛側を圧倒していた。 しかし、目下の最重要
――聖帝国暦六四五年六月中旬。 銀河聖帝国ノヴァの首都星ベルゼブブ。 中核都市ルシフェルにそびえる帝国最高議事堂の閣議室では、ローゼンタール総統兼宰相を中心に、帝国の今後を左右する討議が行われていた。「現在、真っ先に討つべきは、アストレアの偽帝であると考えます」 そう主張したのは、ロサリオ副総統であった。 ブラウンの髪を持つ、若く聡明な美青年である。行政能力のみならず弁舌にも優れ、ローゼンタールが特に目をかけている人物だった。 二人の間には、政治上の信頼だけでは説明できない特別な関係があるという噂も、宮廷内ではまことしやかに囁かれていた。「いや、そうとも参りますまい」 異論を唱えたのは、外務尚書アリアスであった。 白髪で細身の老人であり、ローゼンタール家の家宰を長く務めてきた。 幼少期のマリアーヌに政治や歴史を教えた、師とも呼ぶべき人物である。「現在の国力を、我が帝国が幾ばくか衰退しているとして十とするならば、アストレアの偽帝国は二、ルドミラ教国は一といったところでしょう」 アリアスは卓上へ星域図を投影した。「アストレアの小僧は、領地経営と人心掌握に長けております。時間を与えれば、二が三となり、やがて五にもなりかねませぬ」「だからこそ、今のうちに叩くべきでは?」 ロサリオが問い返す。「逆でございます」 アリアスは細い指で、ルドミラ教国領を示した。「アストレアと戦う最中に、教国が背後から動けば厄介です。定石に従うならば、邪魔が入らぬうちに最も弱い一を滅ぼすべきでしょう」「なるほど」 軍務尚書ハイアットが頷いた。「では、首都防衛に近衛師団を残し、再びルドミラ教国領へ侵攻いたしますかな。今回はアストレアの偽帝も、惑星アクア攻略に手を取られ、援軍には来られますまい」「ただし、問題がございます」 ハイアットは言葉を続けた。「度重なる敗戦の責任を取り、帝国総軍作戦部長クライツ上級元帥は、軍事最高顧問へと退きました。また、帝国艦隊司令長官レオンハルト元帥も、予備役への編入が決まっております」 閣議室が静まり返る。「帝国軍の最重要職が二つとも空席となります。遠征軍の総指揮を、誰に任せるべきでしょうか?」「ロサリオでよいのではないか?」 ローゼンタールは、さも当然のように答えた。「副総統として占領地を統治する権限も持たせら
アーヴィング大公国が、ルドミラ教国へ外交的な働きかけを行っていた頃。 いわゆる旧帝国では、第六総管区や第五総管区における反乱を鎮圧するため、各星系の住民に過酷な臨時課税を課していた。 艦艇の建造費。 増員した兵士への給与。 失われた軍需物資の補充。 そして、治安維持隊を各地へ派遣するための莫大な経費。 それらの負担は、すべて帝国臣民へ押しつけられた。 日々の食料品や生活必需品にまで特別税が加算され、工場や商店には軍事協力金が割り当てられる。 納税が遅れた者は財産を差し押さえられ、辺境星系では、税を払うために土地や宇宙船を手放す者まで現れていた。 そのため、帝国各地ではさまざまな反政府団体が結成された。 自由選挙を求める政治結社。 課税の撤廃を訴える商工業者の連合。 星系自治を掲げる地方運動。 思想や立場は異なっていたが、彼らは共通して中央政府への不満を抱き、各地で大規模な抗議活動を繰り広げていた。「我々は必ず、再び一つの帝国となる!」 ノクターン総統は、旧帝国領の主要星系を巡り、精力的に遊説を続けていた。「今は苦しい時期である。だが、辺境区の反乱を鎮圧し、帝国の秩序を回復した暁には、必ずや豊かな暮らしを取り戻してみせる!」 演説会場の周囲には、多数の抗議者も集まっていた。 総統を支持する者もいれば、臨時課税の撤廃を叫ぶ者もいる。 警備部隊が両者の間に立ち、辛うじて衝突を防いでいた。 演説を終えたノクターン公爵は、沿道に手を振りながら、黒塗りの専用車へ乗り込んだ。 その車両は、帝国最高水準の防護設備を備えた特注品である。 強力な電磁防壁。 物理弾を逸らす防御重力場。 厚い複合装甲と、防弾透明材。 通常の銃撃であれば、何百発撃ち込まれようとも、車内の要人を傷つけることはできないはずであった。 ……だが、その時。 車両の防御装置は、なぜか作動しなかった。 四方から、ほとんど同時に銃声が響いた。 六発の実体弾が車窓を突き破り、ノクターン公爵の胸部へ集中して突き刺さる。「ぐっ……!」 総統は大量の血を吐き、座席へ倒れ込んだ。 砕けた透明材の破片が、血に染まった軍服の上へ降り注いだ。 運転手が慌てて車両を急発進させる。 同時に、どこに潜んでいたのかと思えるほど多くの警備兵が沿道へ姿を現した。「全員、地
ユリウス率いる新帝国軍が惑星アクアを攻めあぐねていた頃。 カスパル大公派の派遣した使節団は、ルドミラ教国領の中枢へ到達していた。 使者を乗せた外交船は、教国の首都星ヒンデンブルクへ入域すると、管制局から送られてくる誘導信号に従い、大気圏へ降下した。 眼下に広がるのは、緑豊かな大地と、幾つもの尖塔を持つ白亜の都市であった。 その中核都市ニデルの中央には、巨大な大聖堂がそびえている。 宗教施設であると同時に、教国政府の中枢でもある建物だ。 外交船が宇宙港へ着陸すると、白を基調とした礼装姿の官吏たちが使節団を出迎えた。「ご使者様、こちらへお進みください」 使者は教国側の案内役に従い、宇宙港から専用車両へ乗り込んだ。 車両は、巡礼者や商人でにぎわう大通りを抜け、大聖堂へ向かう。 建物の正面には聖人たちの巨大な彫像が並び、その足元では武装した衛兵が厳重な警備に当たっていた。 使者は幾つもの検問を通過し、やがて奥深くにある謁見室へ案内された。「ご使者殿。遠路はるばる、ご苦労である」 使者を迎えたのは、エロー枢機卿であった。 彼は古代帝国の知識や遺物にも通じた宗教家であると同時に、教国有数の政治家でもある。 穏やかな微笑を浮かべているが、その眼差しには、相手の腹の底まで見透かそうとする鋭さがあった。「早速ではございますが、我が主君カスパル大公殿下からの親書をお渡しいたします」 使者は恭しく封書を差し出した。 枢機卿は侍従からそれを受け取り、封印を確認した後、ゆっくりと文面へ目を通す。「……なるほど」 読み終えたエロー枢機卿は、わずかに眉を上げた。「新帝国軍と名乗る賊徒から、アーヴィング大公国を守ってほしいと仰るか?」「はい。左様にございます」 使者は深く頭を下げた。「偽帝ユリウス=アストレアは、荒鷲の金印を利用し、正統なるアーヴィング大公家を滅ぼそうとしております」「金印が偽物であると?」「たとえ金印そのものが本物であったとしても、それを持つ者が正統であるとは限りませぬ」 使者は淀みなく答えた。「ユリウスが旧第六総管区を統一したならば、次に狙われるのはルドミラ教国でありましょう。今こそ我らが手を携え、偽帝アストレアを討ち果たすべきかと存じます」 その主張は、必ずしも的外れではなかった。 ユリウスが旧帝国の正統
ツーシームは惑星ヴァルカンの軌道上に浮かぶ、宇宙船用の中型ドックに姿を現していた。 広大な格納空間には白色灯が並び、無数の整備アームが忙しなく伸び縮みしている。 金属を切削する甲高い音と、冷却材の噴き出す低い唸りが、油と焼けた鉄の匂いを伴って充満していた。 その中央で、海賊船「モリガン」は外装を剥がされ、まるで解体途中の獣のように横たわっている。「商会長、こんな油臭いところへようこそ」 振り返った男――元星間ギルドの主任技師、トロストは、作業服の袖をまくり上げたまま笑った。 頬はこけ、目の奥は妙に冴えている。「ああ。いつ戦いがあるかわからないからね」 ツーシームは周囲を見回
聖帝国暦六四五年一月下旬――。 アーヴィング大公による、旧第六総管区内の有人星系平定は、ほぼ完了していた。 さらにグラストヘイム要塞を制圧したことで、その影響力は隣接する第三総管区の一部星系にまで及びつつある。 版図は急速に広がり、大公国はもはや一地方勢力とは呼べぬ規模に達していた。「皆、ご苦労であった!」 広間に響く大公の声に、居並ぶ貴族たちが一斉に頭を下げる。 この日の式典は、新たに征服・編入した惑星を、功績に応じて味方の貴族たちへ分配する場でもあった。 惑星名が読み上げられ、次々と与えられていく所領。 それを聞きながら、ユリウスの側近であるグレゴール翁は、思わず眉をひ
聖帝国暦六四五年一月初旬――。 新年を迎えたこの日、アーヴィング大公から伯爵に叙せられたユリウスは、大公主催の新春の宴に参列していた。 広大な祝宴の間には、金糸を織り込んだ絨毯が敷かれ、天井からは祝祭用の宝珠が柔らかな光を降らせている。 長卓には山のような料理と香り高い酒が並び、貴族たちは杯を掲げて笑い声を交わしていた。 だが、その笑顔の裏で、誰もが戦況の行方を気にしている。 帝国は割れ、戦は終わっていない。 宴もたけなわとなった頃、ユリウスは静かに名を呼ばれた。 大公の控室へ――と。 重厚な扉の向こうは、宴の喧騒が嘘のように静まり返っていた。 暖炉の火が揺れ、壁にかかる
――クーデター騒ぎから、三日前。 帝国作戦部長クライツ上級元帥率いる反乱討伐軍は、巨大な艦列を連ねて帝国首都星ネオ・ベルゼブブへ帰還していた。 首都宙域は平穏そのものだった。 軌道上には防衛艦隊が整然と巡回し、地表では地上部隊が訓練任務を淡々とこなしている。――あまりにも、平和すぎる。 その光景を背に、クライツは一刻の猶予もなく、摂政ノクターン公爵の私邸へ出頭した。 上級元帥は、決して高潔な人格者ではない。 功績も、地位も、評価も気にする。 だが同時に、彼は友軍を見捨てることを良しとしない軍人でもあった。 だからこそ、グラストヘイム要塞を見殺しにする判断が、今なお喉に刺さっ