ログイン「とりあえず、冒険者として恥ずかしくない格好はしないといけないな……着たままの服一着だけでは洗濯もできないだろうし、サイバルさんのところへ行くか。服は……俺も一着しか持ってないけど、セルフィは女の子だし、洗濯して乾かしてる間の服も必要だろう。よし、まずは服、その次に装備、それが終わったら……時間があればお金を稼ぎに行こう」
「はい、頑張ります」
「とりあえず武器は……これを持っててもらうか」
アイテムボックスからショートソードを取り出し、セルフィに見せる。
「それをセルフィちゃんに持たせたら、タカナシさんは何を使うんですか? 」
イアンちゃんが不思議そうにしている。
「なに、俺にはちょいと不釣り合いな装備だ、もうちょっと小さいナイフなんかでもいいし、今薬草採取やモンスター退治に行くような範囲なら、これでもちょっと過剰装備なぐらいだ、どっちにせよ鍛冶屋には寄ることになるんだし、その時に店主のおすすめでも聞いて、もしかしたら逆にセルフィにナイフで俺にはショートソードのほうがいい、って話になるかもしれないしな。それに、もし剣聖ならナイフよりもショートソードのほうが様になるだろ」
「それはそうかもしれませんが……まあ、お付き合いします。私がついていればそんなに無理なことにはなりそうにはないですからね」
「それに、イアンちゃんに見立ててもらわないとセルフィの服装をまさか俺が選ぶわけにもいかないだろうからな。薬草採取やモンスター退治にも着まわせる服装を一揃いお願いするよ」
「まあ、そのぐらいはいいですけど。まずはサイバルフクショクテンに行くんですね? 」
「うむ、そうしよう」
「口調移ってますよ」
宿から十分ほど歩いて、昨日ぶりのサイバルフクショクテン。店に入ると、ちょうどサイバルさんが店内の整理をしていた。
「うむ、タカナシどの。昨日ぶりですな。今日はどのような用事かな? 」
「こっちの子の服を見立ててもらいに来ました。昨日の収入のおかげで保護できた親類の子なんですよ」
「うむ、それはよかった。私も大金はたいただけの甲斐はあった。それが人助けに使われるならより結構なことである」
イアンちゃんがセルフィの手を引いて、中古のほうへ回る。
しばらく待つと、中古の服を立派に着こなした美少女が出来上がっていた。元がこれだけ美少女だと、父親はどれだけの美青年、もしくは美中年だったのだろう。ちょっと悔しいな。
「では、この服装と……肌着は新品のほうがいいだろう。三枚ぐらい買っておいで。そのぐらいの資金はある」
「はい。行ってきます」
肌着を選ばせた後、今日はちゃんと支払いをして店を出る。まだ金貨三枚分ぐらいの金銭的余裕もあるし、最悪RMTで自分の貯金を切り崩すこともできる。まだまだ楽しめるな。まだ二日目だというのに、もうこんなにイベントが盛りだくさんだ。この調子なら明日にでも町がドラゴンに襲われてセルフィの秘められた剣聖としての力が覚醒したりなんかするかもしれない。
さて、次は装備品だ。防具のほうはイアンちゃんお勧めの防具屋があったので、そこで頭を守る、日よけを含めた装備をそろえる。
「おそろいです」
「おそろいだな。似合ってるぞ」
「ご主人様もです」
おそろいのリネンの厚手の帽子を被り、俺とセルフィが少し微笑みあう。その後で昨日も立ち寄った武器屋へ行く。
「……なんだ、不良品扱いで返品か? そこのは品質までは保証できないぞ」
相変わらず不愛想な店主がこちらを見る。どうやら昨日の客を覚えているだけの脳みそはあるらしい。
「いや、この子に持たせるものを見繕ってほしい」
「……子供まで働かせるのか」
「訳あってな。ご主人様とお使いということになっている」
訳あって、とつけることで訳ありだと匂わせるテクニックだ。これにより、もしかしたらお忍びの貴族の道楽かもしれないと思わせることができる。そうなれば、下手に愛想と売り物をケチるよりもいい結果が返ってくると思わせることだろう。
「……銀貨3枚。それでちょうどいいのを見繕ってやる」
イアンちゃんのほうに顔を向けると、こくんとうなずく。どうやら適正価格のようだ。
「頼むよ」
「わかった」
そういうと、色々握りや振りの具合や体重移動を計算した、現状で最も振りやすいと思われる一本を選んでくれた。その手間賃として銀貨3枚はプロ目線価格が入っているとはいえそう安くはないだろう。
「ありがとうな」
「また来な。お嬢ちゃんは成長期だ、すぐに駄目になるかもしれんからな」
「さて、装備は一通りそろえた。早速……と、冒険者登録が先だったな」
「そうです、忘れてないのは大事なことです。いつ思い出すかヤキモキしていました」
イアンちゃんにも思い出した、えらい! と褒められた。40過ぎの……今の俺は40過ぎには見えないんだったな。
「なあイアンちゃん。俺いくつぐらいに見える? 」
「どうしたんですか急に……そうですねえ、20前半ぐらいだと思います」
そうか、20年若返っていることになるのか。なら、昨日の作業で腰を痛めなかったのも納得だな。
「そうか、20前半か……俺、実は43なんだよね」
「異世界転移する際に若返っていることはよくあるそうです。なのであまり気にせずに、その分、疲弊していない自分の体を喜ぶべきでは? 」
「そうだな、そう考えるほうが自然か。よし、若返ってラッキーぐらいに思っておこう」
「??? 」
二人の会話の流れが分かっていないセルフィが頭にはてなを浮かべまくっているが、さっそく冒険者ギルドに向かい、冒険者登録を行う。借金奴隷でも強制でなければ問題なく冒険者登録をすることは可能らしい。心で全力拒否していれば冒険者登録する際の水晶が弾き出し、その際は事情聴取される、という流れらしい。
過去に、借金奴隷を無理やり冒険者にして肉壁として使おうとした例があり、大問題だとして全国的に一律禁止されている行為であるらしい。つまりセルフィはいやいや冒険者になろうとしているわけではない、ということが証明されたわけか。
無事に冒険者証が出来上がったところで、時刻は午後三時ごろか。今からだと三時間ほど活動できればいいってところだな。今日はモンスター狩りにしよう。早速セルフィの腕前を見せてもらわないといけないな。本当に剣聖なのかどうか、判断するのは今からだ。剣聖なのか他のスキルなのか、しっかり見定めさせてもらおう。
引き続き四層を回る。楽にバーサーカーとフェンサーを倒す方法を見つけてからは、三層と同じぐらいのペースでモンスターを倒せている。 モンスターの生息数は少しだけ少ないが、この層でもらえる魔石が一個銅貨四枚だと考えれば、一時間に25匹倒せれば銀貨1枚分の仕事ができることになる。実際はもう少し多いので、銀貨1枚よりは稼げてるかな。「順調ですね。四層でこのまま回っていていいかもしれません」「三層でしっかり稼いだのと、これまで戦ってきた分だけレベルも上がってるしな。レベル二つ分の成長は伊達じゃないってことだな」「私も剣聖レベル……いくつなんですかね? そういえば覚えてないです」 セルフィが指で何個かを数えている。鑑定で観察し、セルフィの剣聖レベルを確認する。セルフィの剣聖レベルは6のままであっているようだった。「6で合ってるな。俺の鑑定がそう教えてくれている」「ご主人様の鑑定はレベルまで分かるのですか? 」「なんかわかるようになったらしい。ちょこちょこと鑑定使ってるから知らないうちにレベルが上がって使えるようになったのかもしれないな。鑑定もレベルがあるって話も初めて知ったが、まあ便利に使えるようになったのは間違いないな。しっかり細かく使って鑑定レベルも上げていこう」 そろそろ剣聖レベルも7になるんじゃないか? 今日中に上がる可能性は高いな。よし、まじめに戦っていくか。 この階層も他の階層と同じく、複数匹で出てくるパターンが少なくない。三匹出てくる場合はうまく二対二の状況を作ってささっと倒し、残ったもう一匹が戦いに参加する前に素早く倒す必要があるため、結構な時間勝負になる。 時間勝負になる分、素早くモンスターを倒すことになる。結果として周回効率も良くなる。二時間ほど集中して戦ったところで、セルフィの剣聖レベルが7に、そしてまた一時間ほどして俺の剣術レベルも7になった。 どうやら、剣聖レベルと俺の剣術レベルにはそれほどの経験値量の差はないらしい。火魔法をレベル3まで上げた影響は、ほぼ誤差の範囲に収まってくれているようだ。こうなったらあとは気になるのは一つ。レ
午前中めいっぱい、肩慣らしと称してコボルトスカウトとコボルトファイター相手に思い存分戦い尽くした。レベルもまた一つ上がり、これで剣術レベルが……6になったかな。 自分で自分を見て鑑定したので間違いない。セルフィは剣聖レベル6のままらしいが、6から7に上がるにはそれなりに時間がかかるらしい。俺が剣術レベル6と火魔法レベル3の間ぐらいだから……結構かかる感じか。 そういえば、いつの間にか鑑定でスキルレベルまで見られるようになっているな。これも鑑定レベルの上昇の影響とかだろうか。午前中の仕事を終えて、一層の安全地帯に戻ってそこで食事。今日は黒パンのサンドイッチだ。ちゃんと両面を軽く炙ってくれてある。 冷えたそのままのパンを硬いまま食べることはせず、アイテムボックスの効力で温かく辛うじて柔らかい食感を残しつつも、焼いた肉と野菜の味わいもそのままに食べることができている。「今日のは食べ応えがあります」「さすがに少ないと言ったら一個分多めに入れてくれるようになったみたいだ。後でお礼を言っておかないとな」「そうですね、催促したみたいでなんだか悪い気分です。でも、リバーシでお客さん読んだりマヨで儲けさせたりしてますからそこはイーブンですよね」「むしろ、マヨで儲けさせてる分だけ向こうのほうが美味しい思いをしているはずだ。その分昼食でサービスしてもらっていると思えば悪い気はしないな」「……これにもマヨが塗られているみたいですね。なんか高級っぽいお味になってますよ。酸味があって美味しいです」 焼いたパンの内側に塗ったマヨ。そしてお肉の汁とまじりあってこれがなかなかにイケている。イメージ的にはウサギ肉のマヨレタスサンドイッチなのだが、ウサギ肉に塗られたソースがまたマヨと混ざり合って美味しさを引き立て合っている。「次はどんな食べ物にするかな……」「まだ何か美味しいものが出てくるんですか? ご主人様の頭の中にはどれだけの食べ物への情熱が詰め込まれているんでしょう。楽しみです」「まあ、思いついたらちょこちょこと作って出す……程度のものかな。まあ、材料があるかどうかはわからんからな。また市場調査して作
パナメラのダンジョンの本っぽい何かを読み終わり、元の位置に戻すと冒険者ギルドを後にして、そのまま北門へ向かう。北門では今日も門番が暇そうにしつつも、まじめに出入りする人間の身分確認を行っていた。「おつとめご苦労様です」 探索者証を見せてそのまま通り抜けようとする。……が、Eランクの探索者証を見せたとたん少し顔色が変わり、こちらに少しだけ圧をかけ始める。「ん? お前たち、この前までFランクだったんじゃないか? 気をつけろよ、Eランクになってすぐに怪我をする奴が多いんだ。パナメラのダンジョンへ行くんだろうが、無理に五層へ行こうとせずに体を慣らしていくんだぞ」 普通にいいおせっかいだった。ここは素直にお礼を言っておこう。「ご忠告どうもありがとうございます、気を付けます」「うむ、無事帰って来いよ」 門番もこうやって適度にコミュニケーションを取っておかないと暇なんだろうな。それでも、誰も守っていなかったらモンスターが大発生したりした場合の対応が遅れることになる。先日のようなミニボアやワイルドボアの大発生に対応するときも必要だろう。「暇なんですかね。もしくは新人冒険者には一言かける決まりでもあるんでしょうか」「さあな。さて、三十分歩く間にミニボアを狩りながら行こう。何もしないよりは金になる」 パナメラのダンジョンまで片道30分。セルフィとのんびり話をしながら行くのも悪くないが、それでは金にならない。 それに、30分も語るほどのネタはお互いにないのはわかり切っているし、思い出話はセルフィのトラウマを刺激する可能性があるので危険。だから、モンスター退治をしているほうが合理的といえるだろう。 草原部分からちらちらと見えているミニボアに軽く水魔法や土魔法で刺激を与えてやり、こっちを向いたところでミニボアを仕留めては、アイテムボックスから半分だけ出して血抜きをしながら歩く。そしてそのうちに血抜きが終わり血が止まると、完全にアイテムボックスの中にしまい込む。 これを繰り返してミニボアをできるだけ綺麗な状態でアイテムボックスにしまい込み、冒険者ギルドに
銀の卵亭を出て、まず冒険者ギルドへ。カウンターへ行き、受付嬢へ簡単な質問をする。「パナメラのダンジョンの地図とか、出てくるモンスターの特徴を知りたいんですが、まとめてある資料みたいなものはありますか? 」 受付嬢もその手の質問には慣れているのか、すんなり頭の中から知識を披露してくれた。「二階部分の書物棚にパナメラのダンジョンという名前そのままの本がありますので、そちらを参照されると宜しいと思います。事前に知っておけば怪我のリスクも減りますし、モンスターの強さにも対応しやすくなりますからね。無謀にもいきなりダンジョンへ行ってしょんぼりして帰ってくることに比べればかなり賢い行動だと思いますよ」 笑顔でちょっとハートに刺さるセリフを言ってくる。確かにそうだが、初日二日目と二回も何の情報もなしにダンジョンに突っ込んでいったことは間違いないので言い返せない。 早速二階にある、本棚二つ分ぐらいの書棚を調べて……あった、パナメラのダンジョンとだけ、本当に書かれている簡素な本……本というより、厚紙に挟んである紙束だな。それを取り出して、破らないように丁寧に扱って読む。 待ってる間セルフィも暇だろうし、ここは図書館と違ってお静かにとも書いてないので、読み聞かせて情報を共有する。 パナメラのダンジョンがいつからあるのか、という話と、商用利用されるようになった話やダンジョンからモンスターがあふれそうになった時期があるのかどうか。それから活性化……ダンジョンが活発にモンスターを出現させる時期がいつ頃になるのかなどが記されている。 ダンジョンも活性化という、いわゆるモンスターの繁殖期みたいなものがあるんだな。最近の活性化の時期は……どっかに載ってないかな。後ろのほうにとか……お、あった。 どうやら昨年度に活性化し、その前は5年前、さらに前は10年前と、ほぼ5年おきに発生しているらしい。ということは、しばらく活性化の可能性は薄そうだ。少なくとも俺がいる間に活性化が発生することはないだろう。
「ちょっと寄り道してから帰るか」「寄り道ですか? いいですけど、あてはあるんですか? 」 セルフィに少し話をしてから商業ギルドに立ち寄ってみる。すると、商業ギルドの入り口に大きく貼り出しがしてあった。「マヨ専門店、マヨチュッチュ、本日開店! 容器持ち込みで容器代サービス! 」 ネーミングセンスぅ……商業ギルド内で適当に決めたんだろうなという気がするが、しかしマヨチュッチュしたいほどのマヨ中毒者がいた、ということにはなるか。 場所は……ちょっとだけ離れたところになるか。食品を扱う店舗に近い場所にはあるので、各種の食事店や宿屋からのアクセスは悪くない場所ではあるな。ここで今後マヨを販売していくことになるんだな。「どれ……朝早くから開いてるかどうか確認しに行こう。自分が原因でできた店だし、どのぐらいの人や人気が出てるかは気になるしな。それが自分の収入に直結するならなおさらだ」「ご主人様のマヨがもう売られているんですか……これからは毎朝作らなくても、マヨチュッチュに来るようになればマヨが気軽に買えるようになる? 」「そういうことになるな。それを確かめにお店のほうに寄ってみるんだ。もしかしたらもう並んでたりして」「どうでしょうね……昨日の鳥騎士にも来ていた通り、マヨを配っていましたから、もしかしたら話題になっているかもしれませんね」 早速商業ギルドの案内図に従って……そして、途中から列ができていたので、すぐに店の場所はわかった。なかなかの長蛇の列。そして、入れ物を持っている人たち。入れ物は千差万別だが、同じような容器を持っている人も多いので、もしかするとマヨを配った容器なのかもしれない。「多いですねー……でも、順調に進んではいますからペースは悪くなさそうですね」 並ぶ列の先を見ていくと、食品店街に近い一角にそこそこの広さの店が営業を始めていた。どうやら急ぎで店を改装して、一刻も早く食事処に
朝のぎらついた、煩わしい太陽に視線を貫かれて目が覚める。もうこの目の覚め方も慣れた。慣れてしまえば、毎朝お日様が昇るありがたさを感じようともいうものだ。 そういえば、こちらへ来てまだ雨が降ったことはないな。雨が降らない地域なのか……いや、それにしてはあんまり埃っぽくないな。今は降らない時期なのかもしれないな。 外で仕事をするにしてもダンジョンに行くにしても、晴れているほうが都合がいいのでその点は感謝はしている。おひさまありがとう。 セルフィも目を覚ましたらしく、目を軽くこすりながらくぁ……と小さくあくびをして起き上がってきた。「おはようございます……」「まだ眠たそうだな。顔を洗ってさっぱりしに行こう」「ふぁい……」 本当に眠そうだが、冷たい井戸の水で顔を洗えば気分も落ち着くだろうし、昨日してやれなかった髪の洗浄を清潔魔法でしてやることもできる。朝からちょっと冷たい思いをすることになるかもしれないが、それでしゃっきりして今日一日を過ごす必要がある。 着替えて着替えをもって井戸へ。洗濯板に洗い物を入れておくと、その間に顔を洗い、口を漱ぎ、塩と布で口の中を綺麗にしてさっぱりする。うむ、今日も一日気持ちよく過ごせそうだ。 身支度を済ませてから洗い物を始める。清潔魔法を唱えてから下着と上着を洗い始める。しかし、洗濯板って割と近代の発明品だったはずだが、この世界の文明水準からすればオーパーツなんだよな。 これも、俺以外の異世界転移者が残していった痕跡だったりするんだろうか。だとしたら……助かった、というべきだろうな。さすがに洗濯板までは思い浮かばなかった。 洗濯機と洗濯板を比較すると、洗濯板のほうが綺麗に汚れが落ちやすい部分があって近年再評価されているらしいし、頑固な汚れになりやすい血の汚れや匂いも、清潔魔法をかけながら落とすことでよりきれいになってくれるはずだ。少なくとも、汚れ以外の菌なんかは落ちるだろう。 自分の分の洗濯が終わった後、セルフ
急いで昼の鐘が鳴る前に必要な材料を買いそろえて、ぎりぎり市が終わる前に品物を買いそろえることができた。俺の背中のジャガの実でいっぱいだし、セルフィの背中のかごも空いているスペースはジャガの実で埋め尽くされている。生でも売り始めたってことだし、あればあるだけ売れる、というところだろう。 ガルキンの卵が割れないように慎重に帰ると、まだまだ行列は続いていた。朝からこれなら夜までにはもう売り切れてしまうんだろうな。昼の半ばまで売れたらもうそれで精いっぱいというところだろう。 これ以上の販売は店に負担しかもたらさないので、早めに外注をするか、早々と拠点を構えてもら
30分ほどだろうか。出来上がりほやほやの品をサンプルとして親方は見せに来た。「これでどうだ、全金属だから軽いし、持ち手がちょっと弱々しいが物としての役目は果たしてくれていると思う。試作品第一号だ」 持ち手も金属でできているため、木が入っているとかよりも軽く、逆に清潔感が高いものとなっている。かき混ぜる部分もきちんと泡立て器のように複数のワイヤーじみた針金の太いもので出来上がっていて、ちょっと何もない空間をかき混ぜてみて、その使い心地を想像してみる。「うん……うん……これでいいんだ。こ
買い物かごを親父さんに渡して、親父さんがジャガの実と今日の分の仕入れを買い集めに行く。その間にリンカちゃんがスープを温め、今日の朝食分を出してくれた。白パンがちょっと多めの硬くなったパンをスープの残りでふやかしながらしっかり食べる。今日はしっかり休みを取るからな。そのためにもしっかり食べておく必要がある。 普段よりちょっと多めに入れてくれたスープと、一つ多いパンでしっかり腹を満たした後、さっそくマヨづくりを始める。今日もセルフィにはゆっくり油を注いでもらう係を担当してもらおう。二回目だし多少慣れ始めただろうし、今回は量も作るからしっかりと作っていく。もしかしたら、しばら
マヨネーズ職人の朝は早い。とまではいかないが、いつもの強烈な朝日に目をやられて起きるのが、もはや恒例になってしまった。おはようございます。 今日は休み。昨日銀貨16枚も稼いだおかげでもあるが、これでゆっくりマヨづくりに神経を注げるというもの。さあ、今日もしっかり頑張るぞ。 気持ちよく寝ているセルフィを起こさないようにそーっと部屋から抜けると、井戸でいつも通り顔を洗い、顔を拭き、そしてまたこっそり部屋に戻り、今日は綺麗なほうのパンツに履き替え、服も綺麗な服に着替える。今日は一日食品を取り扱う日だ、できるだけ衛生環境のいい服でいたい。 パンツも洗って……多少手が汚くなったが、まあ、このぐら







