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「小鳥遊主任、いい加減有給消化してくれないもんかな。この際長期でお休みを取るでもいいからさ。当社としても毎回厚労省からの通達で君の名前が筆頭に挙がってくるし、ちゃんと本人には仕事を休んできっちり有給休暇を取得してくれるように頼んでいる、と毎回報告しているものの、実際にきみが有休を取ってくれないと困るんだよ」
上司である係長の中上からの叱責が飛ぶ。今の世の中は効率こそが第一。残業や日曜出勤でいたずらに有給期間を増やし、または有給休暇を消費せずにため込んでおくことはこの際美徳ではなく悪徳とされる時代になっていた。
「もう少しだけ待っていただけませんか。今、私抜きでも仕事が間に合うようにマニュアルの作成の真っ最中で、もう少しでマニュアルの実装テストが終わるところなのです。業務と無関係な人員を配備してくださって、その人員がマニュアルを読んだだけで実行できるようになればそれで私の部下の業務をほぼすべて任せることができるようになります」
「わかった、その手配はしておこう。別部署から適当に一名、一日借りてきてそのマニュアル通りに仕事ができるかどうか試せばいいんだな? 」
中上がメモを取り、「人員確保、一名、小鳥遊主任と別部署から」と的確にメモを取る。そのメモを取った手を横目でさっと見て、安堵する。これでようやく休めるようになるのかな、と。
「はい、お願いします。そうなればようやく溜まった有休に手を付けることもできるようになる、というところに達することができます」
「しかし、普段の仕事に加えてマニュアル作成までやらせてしまってすまないな。おかげで君の有休はたまりっぱなしだ。本来なら許されないことなのだが……残業ついでに他の仕事まで任せてしまっている現状はよくわかっているつもりだ。君もこの仕事が終わったらゆっくりできるはずだから、その間持たせるように手はずは整えておく。でもまさか、君がそこまで有休を取らずに働いているのは、何か野望でもあるのかね? 有休を盛大に使って世界旅行をしてみたいとか、豪華客船で世界周遊をしてみたかったとか、そういうものが」
中上としては、きちんと有給休暇を使う意思があるのを今再確認したので、次に厚労省から有休の未使用事故情報がある人へのランクインはなんとか逃せるようになるようにはなるだろう。
「では、失礼します。引継ぎマニュアルの続きを書きに向かいますので。引継ぎマニュアルのほうはでき次第中上係長の共有フォルダにアップロードしておきますので、出来上がり次第お声がけしますのでご一読をお願いします」
「ああ、わかったよ。それでは、仕事がまとまり次第小鳥遊主任には有給休暇をまとめて取得してもらうことになる。その間の仕事のつなぎと部下への仕事マニュアル化、それから……色々だ、とにかく頼んだからね」
小鳥遊正明、主任、43歳。この二日後、無事にマニュアルの稼働が可能であることを承認され、現場から離れ、長期有給休暇の消化を始める。
有休残り期間:320日。厚労省有休ブラックリスト上位者の孤独な有給消化が始まる。
「さて、何をしようかな。有休消化と言われてもな。寝て起きて終わるだけでは面白くないし、何か面白い体験でもしたいところだな……そういえば有休消化案内所から、妙なパンフレットが来ていたな。特別プランとか書いてあったがいったい何だろう」
◇◆◇◆◇◆◇
20XX年、国会にて通称、有休強制消化法案が成立した。これまでは買取か消滅で有給休暇を取らずにごまかしていた企業、機関、特別公務員、研究職も含めて、すべての人々はこれまで見逃されていた残業規制の壁や法的前提を取っ払われた。
その結果、すべての代休や残業時間分を有給休暇に換算され、その有給休暇を強制的に消化させられることになった。残業手当こそ出なくなったものの、残業にかかった時間の二割五分増しの時間を有給休暇として付与する義務が生じた。これにより、カラ残業を行う労働者が激減したため企業の負担も若干減るところがあった。
それに伴い、これまで有給休暇を消化させたフリをしていた会社などが一斉に検挙され、厚生労働省を筆頭にかなりの数の機関や法人がメディアに取り上げられ、世の人々はこれが労働層に対する社会のアプローチの形として歓迎される運びとなった。
世間は労働者不足で嘆いている中でこのような法案を通すのはいかがなものか、という企業側からの圧力もあったが、労働者が不足しているからこそ手厚いケアが必要であり、労働者への適切な支援により、長持ちするのは機械も人間も同じである、という労働者擁護の意識が出始めた。
ちなみにこの法案は特別公務員にも適用されたため、質問通告を待って深夜まで待機している官僚もいなくなり、一部野党では質問ができなくなった結果適切な国会運用ができるようになったという体感もあったため、官僚側からの感想もなかなかいい法案を通してくれた、ということが伝わってくることになった。
さて、ここで一つ問題が生じることになる。有休をどうやって消化させるのか? という点である。有休である以上好きな時に好きなタイミングで取ることができるため、有休の上限であった40日をはるかに超える長さの有休のため込みが法的に許可され、人々はこれまで残業時間で鎖の長さを自慢していたが、今後はそれが有給日数に変わっただけではないのか? という疑問点が湧くのだろう。
しかし残業日数は適切に処理していくべし、とのお達しにより、一年分溜めてまとめて旅行に行くであるとか、高級列車で回る国内一周旅行や海外旅行、世界一周旅行などに有給休暇を使い始めるものもあらわれ、世の中は「いかにして質の良い有休を消化するのか? 」というのがトレンドになった。
巷には有休を効率的に利用するための施設や有休ファイナンシャルプランナーなどの新たな職業も生まれ始め、世の中には有給休暇消化案内所(通称ハローホリデイ)などが作られ、有給休暇をどう過ごしていくのか、というトレンドに対する答えも出回り始めた。
本記事では今後も参考になる有休の使い方などがあれば順次紹介していくものである。なお、先日の私の有休の使い方はラーメン屋を何軒はしごできるか、ということに一日を費やし、12軒の記録を打ち立てた。大盛りでなければ何とかなるもんだな、と思った次第である。
~月刊金銀パール:世は大有休時代! より抜粋~
午前中めいっぱい、肩慣らしと称してコボルトスカウトとコボルトファイター相手に思い存分戦い尽くした。レベルもまた一つ上がり、これで剣術レベルが……6になったかな。 自分で自分を見て鑑定したので間違いない。セルフィは剣聖レベル6のままらしいが、6から7に上がるにはそれなりに時間がかかるらしい。俺が剣術レベル6と火魔法レベル3の間ぐらいだから……結構かかる感じか。 そういえば、いつの間にか鑑定でスキルレベルまで見られるようになっているな。これも鑑定レベルの上昇の影響とかだろうか。午前中の仕事を終えて、一層の安全地帯に戻ってそこで食事。今日は黒パンのサンドイッチだ。ちゃんと両面を軽く炙ってくれてある。 冷えたそのままのパンを硬いまま食べることはせず、アイテムボックスの効力で温かく辛うじて柔らかい食感を残しつつも、焼いた肉と野菜の味わいもそのままに食べることができている。「今日のは食べ応えがあります」「さすがに少ないと言ったら一個分多めに入れてくれるようになったみたいだ。後でお礼を言っておかないとな」「そうですね、催促したみたいでなんだか悪い気分です。でも、リバーシでお客さん読んだりマヨで儲けさせたりしてますからそこはイーブンですよね」「むしろ、マヨで儲けさせてる分だけ向こうのほうが美味しい思いをしているはずだ。その分昼食でサービスしてもらっていると思えば悪い気はしないな」「……これにもマヨが塗られているみたいですね。なんか高級っぽいお味になってますよ。酸味があって美味しいです」 焼いたパンの内側に塗ったマヨ。そしてお肉の汁とまじりあってこれがなかなかにイケている。イメージ的にはウサギ肉のマヨレタスサンドイッチなのだが、ウサギ肉に塗られたソースがまたマヨと混ざり合って美味しさを引き立て合っている。「次はどんな食べ物にするかな……」「まだ何か美味しいものが出てくるんですか? ご主人様の頭の中にはどれだけの食べ物への情熱が詰め込まれているんでしょう。楽しみです」「まあ、思いついたらちょこちょこと作って出す……程度のものかな。まあ、材料があるかどうかはわからんからな。また市場調査して作
パナメラのダンジョンの本っぽい何かを読み終わり、元の位置に戻すと冒険者ギルドを後にして、そのまま北門へ向かう。北門では今日も門番が暇そうにしつつも、まじめに出入りする人間の身分確認を行っていた。「おつとめご苦労様です」 探索者証を見せてそのまま通り抜けようとする。……が、Eランクの探索者証を見せたとたん少し顔色が変わり、こちらに少しだけ圧をかけ始める。「ん? お前たち、この前までFランクだったんじゃないか? 気をつけろよ、Eランクになってすぐに怪我をする奴が多いんだ。パナメラのダンジョンへ行くんだろうが、無理に五層へ行こうとせずに体を慣らしていくんだぞ」 普通にいいおせっかいだった。ここは素直にお礼を言っておこう。「ご忠告どうもありがとうございます、気を付けます」「うむ、無事帰って来いよ」 門番もこうやって適度にコミュニケーションを取っておかないと暇なんだろうな。それでも、誰も守っていなかったらモンスターが大発生したりした場合の対応が遅れることになる。先日のようなミニボアやワイルドボアの大発生に対応するときも必要だろう。「暇なんですかね。もしくは新人冒険者には一言かける決まりでもあるんでしょうか」「さあな。さて、三十分歩く間にミニボアを狩りながら行こう。何もしないよりは金になる」 パナメラのダンジョンまで片道30分。セルフィとのんびり話をしながら行くのも悪くないが、それでは金にならない。 それに、30分も語るほどのネタはお互いにないのはわかり切っているし、思い出話はセルフィのトラウマを刺激する可能性があるので危険。だから、モンスター退治をしているほうが合理的といえるだろう。 草原部分からちらちらと見えているミニボアに軽く水魔法や土魔法で刺激を与えてやり、こっちを向いたところでミニボアを仕留めては、アイテムボックスから半分だけ出して血抜きをしながら歩く。そしてそのうちに血抜きが終わり血が止まると、完全にアイテムボックスの中にしまい込む。 これを繰り返してミニボアをできるだけ綺麗な状態でアイテムボックスにしまい込み、冒険者ギルドに
銀の卵亭を出て、まず冒険者ギルドへ。カウンターへ行き、受付嬢へ簡単な質問をする。「パナメラのダンジョンの地図とか、出てくるモンスターの特徴を知りたいんですが、まとめてある資料みたいなものはありますか? 」 受付嬢もその手の質問には慣れているのか、すんなり頭の中から知識を披露してくれた。「二階部分の書物棚にパナメラのダンジョンという名前そのままの本がありますので、そちらを参照されると宜しいと思います。事前に知っておけば怪我のリスクも減りますし、モンスターの強さにも対応しやすくなりますからね。無謀にもいきなりダンジョンへ行ってしょんぼりして帰ってくることに比べればかなり賢い行動だと思いますよ」 笑顔でちょっとハートに刺さるセリフを言ってくる。確かにそうだが、初日二日目と二回も何の情報もなしにダンジョンに突っ込んでいったことは間違いないので言い返せない。 早速二階にある、本棚二つ分ぐらいの書棚を調べて……あった、パナメラのダンジョンとだけ、本当に書かれている簡素な本……本というより、厚紙に挟んである紙束だな。それを取り出して、破らないように丁寧に扱って読む。 待ってる間セルフィも暇だろうし、ここは図書館と違ってお静かにとも書いてないので、読み聞かせて情報を共有する。 パナメラのダンジョンがいつからあるのか、という話と、商用利用されるようになった話やダンジョンからモンスターがあふれそうになった時期があるのかどうか。それから活性化……ダンジョンが活発にモンスターを出現させる時期がいつ頃になるのかなどが記されている。 ダンジョンも活性化という、いわゆるモンスターの繁殖期みたいなものがあるんだな。最近の活性化の時期は……どっかに載ってないかな。後ろのほうにとか……お、あった。 どうやら昨年度に活性化し、その前は5年前、さらに前は10年前と、ほぼ5年おきに発生しているらしい。ということは、しばらく活性化の可能性は薄そうだ。少なくとも俺がいる間に活性化が発生することはないだろう。
「ちょっと寄り道してから帰るか」「寄り道ですか? いいですけど、あてはあるんですか? 」 セルフィに少し話をしてから商業ギルドに立ち寄ってみる。すると、商業ギルドの入り口に大きく貼り出しがしてあった。「マヨ専門店、マヨチュッチュ、本日開店! 容器持ち込みで容器代サービス! 」 ネーミングセンスぅ……商業ギルド内で適当に決めたんだろうなという気がするが、しかしマヨチュッチュしたいほどのマヨ中毒者がいた、ということにはなるか。 場所は……ちょっとだけ離れたところになるか。食品を扱う店舗に近い場所にはあるので、各種の食事店や宿屋からのアクセスは悪くない場所ではあるな。ここで今後マヨを販売していくことになるんだな。「どれ……朝早くから開いてるかどうか確認しに行こう。自分が原因でできた店だし、どのぐらいの人や人気が出てるかは気になるしな。それが自分の収入に直結するならなおさらだ」「ご主人様のマヨがもう売られているんですか……これからは毎朝作らなくても、マヨチュッチュに来るようになればマヨが気軽に買えるようになる? 」「そういうことになるな。それを確かめにお店のほうに寄ってみるんだ。もしかしたらもう並んでたりして」「どうでしょうね……昨日の鳥騎士にも来ていた通り、マヨを配っていましたから、もしかしたら話題になっているかもしれませんね」 早速商業ギルドの案内図に従って……そして、途中から列ができていたので、すぐに店の場所はわかった。なかなかの長蛇の列。そして、入れ物を持っている人たち。入れ物は千差万別だが、同じような容器を持っている人も多いので、もしかするとマヨを配った容器なのかもしれない。「多いですねー……でも、順調に進んではいますからペースは悪くなさそうですね」 並ぶ列の先を見ていくと、食品店街に近い一角にそこそこの広さの店が営業を始めていた。どうやら急ぎで店を改装して、一刻も早く食事処に
朝のぎらついた、煩わしい太陽に視線を貫かれて目が覚める。もうこの目の覚め方も慣れた。慣れてしまえば、毎朝お日様が昇るありがたさを感じようともいうものだ。 そういえば、こちらへ来てまだ雨が降ったことはないな。雨が降らない地域なのか……いや、それにしてはあんまり埃っぽくないな。今は降らない時期なのかもしれないな。 外で仕事をするにしてもダンジョンに行くにしても、晴れているほうが都合がいいのでその点は感謝はしている。おひさまありがとう。 セルフィも目を覚ましたらしく、目を軽くこすりながらくぁ……と小さくあくびをして起き上がってきた。「おはようございます……」「まだ眠たそうだな。顔を洗ってさっぱりしに行こう」「ふぁい……」 本当に眠そうだが、冷たい井戸の水で顔を洗えば気分も落ち着くだろうし、昨日してやれなかった髪の洗浄を清潔魔法でしてやることもできる。朝からちょっと冷たい思いをすることになるかもしれないが、それでしゃっきりして今日一日を過ごす必要がある。 着替えて着替えをもって井戸へ。洗濯板に洗い物を入れておくと、その間に顔を洗い、口を漱ぎ、塩と布で口の中を綺麗にしてさっぱりする。うむ、今日も一日気持ちよく過ごせそうだ。 身支度を済ませてから洗い物を始める。清潔魔法を唱えてから下着と上着を洗い始める。しかし、洗濯板って割と近代の発明品だったはずだが、この世界の文明水準からすればオーパーツなんだよな。 これも、俺以外の異世界転移者が残していった痕跡だったりするんだろうか。だとしたら……助かった、というべきだろうな。さすがに洗濯板までは思い浮かばなかった。 洗濯機と洗濯板を比較すると、洗濯板のほうが綺麗に汚れが落ちやすい部分があって近年再評価されているらしいし、頑固な汚れになりやすい血の汚れや匂いも、清潔魔法をかけながら落とすことでよりきれいになってくれるはずだ。少なくとも、汚れ以外の菌なんかは落ちるだろう。 自分の分の洗濯が終わった後、セルフ
side:商業ギルド マヨのレシピの特許権を独占することができた商業ギルドの動きは早かった。商業ギルドで、泡立て器も含めて材料の購入ルートを確保してしまうと、ギド親方から出来始めの数本を受け取り、商業ギルドの一角を仮のマヨ生産拠点とし、さっそくマヨづくりを始めた。 最初は二人一組で始め、慣れてきたら一人ずつそれぞれのペースでマヨづくりを始め、手ごろな容器を都合してくると、容器に入るだけのマヨをたっぷりと入れると、各食品店舗や食事店に無料で配り始める。「急いでください、初動でどれだけの店に配れるかが勝負を分けます。えこひいきなしでどれだけのお店に配れて、それぞれのお店でどのぐらいの客を相手にマヨを売りさばけるか、そしてマヨがどれだけ美味しいかをわかってもらうためのこれは呼び水です。金を払っても欲しいと思わせられればそれでマヨの価値は確定します。後は作っただけ売れる、と思ってください」「はい! 」 ギルド職員のやる気も本物らしく、一生懸命泡立て器を回しながら油を流し込んで、分離しないように一生懸命マヨを作る姿が見えていた。 木工ギルドから適度な大きさの入れ物を受け取ってはそこにマヨを詰め、試供品として配りまわる職員と、製造に回った職員、そして、職員に雇われて、機密契約を結んだうえでさっそくマヨを作り始めた、おそらくこの世界で初めてのマヨ職人たちがひたすらかき混ぜ続けることになった。「ギド親方には歯車式の回転泡立て器の発注はしてありますが、それが仕上がってくるまではひたすら自力で混ぜることになります。泡立て器までセットで考えてくれたタカナシさんにはお礼以外に言うことはありませんね。こうなることまで予想されていた、ということでしょうか」 マルタは一人微笑む。さて、マヨはいくらで売れば元が取れるのか……という計算はもうしてある。後はその値段でも買うと言い出す店がどれほどあるのか、ということだろう。しかし、これは調味料の革命だ。 マルタには絶対の自信があった。これは売れる、この街だけではない、国中、いや、商業ギルドが存在するすべての地域でこれを流行らせることができると。そのためのバラマキの値段だとする
日が暮れる前に門まで戻ってきちんと出入りを終える。「さて、急がないとな。今日は買い取ってもらうものが昨日より多いし、夜の鐘に間に合わないかもしれないな。血抜きはしてあるからある程度はいいとして、数があるからな。できるだけ急いで買取に出さないといけない、テンポよく行こう」「はい! 」 一日体を動かしてやる気があふれているのか、セルフィが鞘に入ったままの剣をぶんぶん振り回しながら町中を進む。「まず、冒険者ギルドに向かう。そこで今日の稼ぎを換金してもらって、それからそのお金で夕食をとって、宿を取ろう…&hellip
今日は東門から出るらしい。東門から出るほうが草むらに近く、また薬草の採取場からは離れているうえにこちらはモンスターが出やすい方向だということらしい。東のほうに行けば行くほどモンスターも強く、ゴブリンの巣なんかもできやすいとのことで、戦闘を行う冒険者は大体東門から出ていくらしい。「さて、では行きますよお二方」 イアンちゃんが先頭に立って歩みを進める。「はい、イアン先生」「なんですかタカナシさん」「このあたりには何が出るんですか? 」「このあたりにはスライム、ホーンラビット、ミニボアの三種類が出
「とりあえず、冒険者として恥ずかしくない格好はしないといけないな……着たままの服一着だけでは洗濯もできないだろうし、サイバルさんのところへ行くか。服は……俺も一着しか持ってないけど、セルフィは女の子だし、洗濯して乾かしてる間の服も必要だろう。よし、まずは服、その次に装備、それが終わったら……時間があればお金を稼ぎに行こう」「はい、頑張ります」「とりあえず武器は……これを持っててもらうか」 アイテムボックスからショートソードを取り出
食事を終えた後、宿の部屋に戻る。メリーさんにはちゃんと今日から二人になるけど追加料金が必要かどうかを確認しておく。 どうやら一部屋いくらの計算らしく、よほどうるさくしたり人数を詰め込んだりしない限りは人数としてカウントしないらしい。それにセルフィはまだ子供でもあるし、子供で一人にカウントするのは問題だ、ということのようだ。ここはメリーさんの温情に感謝だな。 部屋に戻り、まだ何もない部屋に移動すると、さっそくセルフィと正面に向かって話し始める。こっちは椅子に座って、セルフィはベッドに腰かけて、足をブランブランさせながらこっちに向いて話しかけ始める。







