ログイン食堂に入り、適当に空いた座席に座る。
「リンカさん、ランチ二つで」
イアンちゃんが早速注文をする。通い慣れてる感じがするな。
「あらイアンちゃん、久しぶり。ここに来るってことはお客さんかしら」
「そうです、お仕事です。なので美味しいところをお願いします」
「うちはいつも美味しいところしか提供してないよ! 」
いつものお互いの軽口なのか、嫌みっぽいやり取りではなかった。他の有休消化者も似たようなやり取りはしてきたんだろう。しばらくすると、温かそうなスープと肉の焼いた塊、そして付け合わせのようなパンが出てきた。パンは白パンではないので、お値段はそれ相応、ということなんだろう。
「これがこっちで一般的な外食の形になります。これで銅貨8枚ってところですね。下手に自炊するより外食の方が安くすみます。たくさん利用してあげてください」
「ここにはよく来るんだ? お互いに顔見知りって感じだけど」
「そうですね、神崎さんからの紹介の方を連れてくるときは大体ここですね。後は時々おごってもらうのもここになります。ここ、高級ランチもやってて、銅貨16枚払うと白パンが出てくるんですよ! 」
なるほど、白パンはやはり高級路線なわけだな。しかし、一般庶民でもその気になれば手を出せる、ということまでわかった。そして、もう一つ分かったことがある。この銅貨一枚は10円ほどの価値ということだ。つまり、今日の昼飯代はイアンちゃんの分を含めても160円しか支払ってないことになる。
現世であれば2000円は軽く超えるところだろうに、確かに事前に伝えられている通り、物価は十分の一程度になっているのだろう。しかし、160円で白パン定食が食えるなら、毎日でもいいところだが、下手に毎食それを頼んで悪い輩に目を付けられる可能性もあるのだ、ほどほどにしておくべきだろう。
黒パンはほのかな酸味があり、ライ麦パンかな? と思う程度。白パンが当たり前の現世からすれば逆に高級路線のパン、と判断することもできるので、こっちに慣れるほうが逆に贅沢をしてる気分になってくるな。
「さて、タカナシさん。まずはお金の話をしましょう」
「イアンちゃんのガイド料金かい? 」
「いえ、そっちはもうもらってるのでいいのですが、主にこの世界では銅貨と銀貨が主流になっています。それぞれ、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚になっています。ちなみに銅貨10枚で大銅貨、銀貨10枚で大銀貨、金貨10枚で大金貨、という中間貨幣まで用意されています」
「白金貨もあるのか。俺の手元には金貨までしかないな 」
「めったに見ることはありませんが、貴族同士のお金のやり取りや上級商人の間でのやり取りでは使われることがあります」
金貨1枚10万円、白金貨1枚は1000万円、ということだろう。1000万円なんて一年の間の生活ではお目にかかることもないだろうな。
「では、周りが騒がしいですが説明していきます。タカナシさんの聞いている範囲の世界の話と私が教えられる範囲の話、それぞれ話し合っていきましょう」
それから、経済の話、言語の話、他の町の話。様々な話を共有し、覚えられる範囲のことを学んでいく。どうやら冒険者ギルドという組織は国を超えてつながりがあるらしく、場合によっては国にたてついてでも我を通すだけの武力集団であることは確かなようだが、場合によっては共闘することも多々あるため、基本的にお互いの国との仲は悪くないらしい。
また、この世界にはモンスターと呼ばれる野生生物が自然発生し、そのモンスターへの対処を国が行う場合は問題ないが、それ以外の場合は基本的に冒険者ギルドにクエストの形で引き継がれ、それぞれの探索者が常駐依頼、臨時依頼、独占依頼の形でそれぞれ対応が変わり、独占依頼は依頼を受けた冒険者が専属で行い、臨時依頼、常駐依頼はそれぞれ達成要素を確認し、報酬を受け取る。
冒険者……これが俺の新しい仕事か。休みながら働けるなんてなんて素晴らしい話なんだろう。今後は仕事をしながら金を稼ぎつつ、異世界を堪能しよう。まずは……
「まずは装備を整えないとな。この服装では明らかに冒険者って感じではない。貴族の忍びきれていないお忍び冒険者体験ってところが関の山だろうな」
こっちの世界にはない化学繊維の服装。怪しい帽子。明らかに浮いている、金持ちっぽい見た目。まずはその辺から何とかしないといけないな。
「次に、スキルの話をしましょうか。スキルはタカナシさんも覚えているはずですがいくつか有名なものがありまして……」
「ご主人様、あちらです」
ふと、入り口が盛大に開き、商人らしい格好の人がずかずかと入り込んでくる。
「いらっしゃい、開いてる席に……あれ、サイバルさん。こんなところに来るのは珍しいね」
リンカさんと呼ばれていた受付嬢兼ウェイトレス兼店員兼……多分ここの娘さんなんだろうな。どうやら騒がしく入ってきた客とも顔なじみらしい。
「うむ、今日は食事ではなく……いた! 」
俺を見つけると指さし、シャカシャカと恰幅の良い格好からはとても考えられない素早い動きでこちらに近寄ってくる。
「うむ……うむ……うむ! 」
サイバルさんと呼ばれていた御仁は、俺の着ている服をあちこち見まわし、服を引っ張ったり帽子を取って自分でかぶったり、好き放題に触ってくる。
「あの、食事中なので後にしてもらえると助かるのですが、私の服装が気になるのですか? 」
「うむ、気になる! こんな生地の服装は珍しい! 数年に一度見かけることがあるという伝説の服装によく似ておる! この服をどこで手に入れたのかね! 」
ああ、化学繊維はまだまだ未発達な世界なのか。確かに伸び縮みする服装は珍しいだろうな。スパンデックスもまだ存在してないなら、伸び縮みする時点で珍しい生地ではあるんだろう。
「とりあえず食事を終えてから商売の話をしませんか。よければあなたもご一緒に食事をしましょう。私のおごりでもいいですから」
「うむ! そうであるな。 リンカちゃん、私にもお昼を……高いほうで頼む! あと従者にも、普通のお昼を」
「あいよー! 父さん、白パンセットと黒パンセット! 」
やはり、リンカさんは店の娘さんらしい。今後もお世話になるかもしれないから名前はしっかり覚えていくことにしよう。
「うむ、私はサイバルという。この町で服屋を経営している。ちなみにそれ以外には繊維の一からの生産もやっておるし、紡績や服作りも含めて上から下までをやっている。以後よろしくな。して、そちらのお名前は? 」
「私はタカナシといいます。よろしくお願いします、サイバルさん」
side:アザーワールド社 イアンから提供されたアンケートはその日のうちに会議にかけられ、アザーワールド社内でも問題となった。即座に銀行口座に対して照会がされ、小鳥遊が金銭を稼ぎ副業として立派に稼いでいることと、その金額が十分に大きいことがクローズアップされ、話は更にややこしくなった。「ふむ、では小鳥遊氏は満喫していることは確かなのだな? 」「それは間違いないでしょう。ただ、休みに行ってるというよりは出稼ぎついでに休んでいる、という形になっている可能性が大きいと考えられます。本人満足度が非常に高いのが返って不思議なのですが」「有休を320日も溜める男なんだ、普通に休んでいる感覚で仕事をしているのか、もしくは仕事と私生活が不可分な御仁なのかもしれないな」 社内ではそれぞれ会議内で意見が出され合い、この事態をどうするかについての協議がなされた。小鳥遊が稼いできた金額は二十日で彼の平均賃金のおよそ三カ月分以上。 有給休暇中にこれだけの資金を稼ぐのは明らかに副業である、という判断ができるだけの金額になっているため、厚生労働省に問い合わせるまでもなく、彼の有給休暇時間は再考の上で延長される可能性は高いとみられている。「10日のうち、真面目に休んでいるのは2日だけ、ということか」「おそらくは、現地で生活するための資金を稼いで、その余裕を貯蓄の形で回したのだと思いますが、何をしたかまでは今回アンケートの内容に含まれていないため、抜け落ちや不足があるものだと思われます」「神崎君、現地監視員からの詳細報告を求めることはできるかね? 」 上司からそう質問された神崎は、正直に答える。「今回のアンケート結果について、場合によっては有給休暇の延長が認められる可能性がある、という話については既に小鳥遊さんも知っている、ということですので、それを前提としたアンケートを再度行って、正式な事実として積み上げることは可能ですが、この様子ですと、ここ19日の有給休暇、そして18日間の異世界行きの時間に対して、比率換算すると4日しか休んでいない、という計算に行き当たります」「ふむ…&hellip
メリーさんのところへ行き、次の10日分の宿泊代金である大銀貨1枚を払う。「順調に稼いでるようで何よりだねえ。その調子でいつも通り長く居てくれると嬉しいね」 メリーさんがそろそろ更新日付だということを覚えていてくれたので、次の区切り日までの延長ということになった。メリーさんとしても、親父さんとしても、マヨを安く仕入れることができるということでメリットはあるはずだ。「あと、桶をいくつか借りるね。ちょっと今日は全身ピカピカにしてみたいもんで」「今の時間ならいいさね。お湯を沸かす時間までに帰してくれれば自由に使ってくれていいよ」 許可を得たので、井戸で水を汲んで部屋に持ち込み、部屋の中で火魔法でぬるい湯にまで温度を高める。気持ちいい温度になったところで、服を脱いで全身に水をなじませた後、石鹸で体を洗い始める。「うん、ちょっとビリッとくるが、このぐらいは許容範囲かな。レンモの香りもするし、泡立たないのはそれだけ体が汚れてるってことだろう。スポンジみたいなものがあればより良かったかもしれないな」「すぽんじ……とはなんですか? 」 スポンジを知らないのは当たり前か。ここの周辺には海もないし、海綿も珍しいものになるだろうから説明が難しいか。「泡を立てるのに便利なもの……かな。石鹸を泡立ててから体を磨いたほうが効率的に体を綺麗にできるんだがな。手ぬぐいより便利なものが今のところ手持ちにないから、諦めておくしかないかな」「ぬるぬるしますが、このぬるぬるが大事なんですよね? 」「ちゃんと水で溶いて、泡立ちを……と言いたいが、俺もセルフィも体がそれなりに汚れてるから泡立たないのかもしれないな。毎日定期的に綺麗にしてると、泡が立ってなかなかに気持ちいいんだが」「むぅ、そうですか。じゃあせめて全身綺麗に洗って、その後洗い流してレンモの香りがするようにしましょう」「それだけできれば十分かな。さて、そろそろ洗い流すか……って、桶を複数個借りてて正解だったな。垢で桶の中が凄いこ
どうやら、俺がゴブリンの耳を査定にかけた段階で第一報はフェリクスさんに伝わっていたらしい。そして、査定とカウンターで報酬の支払いと相談をしているうちに情報が伝わって、あらかじめ事前情報を共有。そこまではできているらしい。仕事が早いな。「えっと……このあたりで一匹、その後このあたりでもう一匹、それからここで一匹、この時点で戻ったのでこの先は不明ですね」「なるほど。つまり、この間には巣がある可能性は低い、というわけですね」 俺が通ったルートをたどり、フェリクスさんが書類の上に魔石を置いて場所を絞り込んでいく。「セルフィが一緒に居るので、もし巣に誘い込んで俺を引き離して襲おうとしていた場合、もっと早く仕掛けてくる可能性があったはずです。なのでここまでは安全ゾーンであると考えます」 アライ草を採りに行っていた範囲を丸っと安全圏ではないか? と判断する。巣があるとしたらその先の可能性が高いだろうと意見を具申する。「確かにそうですね。だとするとこの先にあるかどうか、探しながら行かなくてはなりませんね。本来ここにはゴブリンは生息していないんですよ。仮に住み着いたとしても、街に近すぎますので、駆除対象にしなくてはいけません。これがもっと遠くや、薬草群生地の近くでなければ問題はなかったのですが」 ゴブリンの発生場所について詳しく教えてくれている。今後も似たような場所にゴブリンが出た場合には参考にしろ、ということなのだろう。フェリクスさんのほうをちらっと見やると、こくりと頷く。そういうこと、ということなのだろうな。「一つ質問があります」 早めに聞いておこう。この後数日かけての作業になる可能性もあるからな。「なんでしょうか」「ゴブリンの巣の特定が必要になった場合、我々も特定のためにギルドの指示を仰がなければならないのでしょうか? 」「そうですね、手伝いをしてくれるなら一番ありがたい、というのが正直なところですね。やはり一度現地を知っている人物が追い込みや索敵、追跡をしてくれるほうがありがたいのが確かです」 こっちは初めて出かけた場所だから詳しくない
カウンターへ行く前に、今度はモンスターの査定を行う。ゴブリン二匹分だけだが、金になるならこれもちゃんとした収入。それに、あんまりアイテムボックスに入れておきたいものでもない。 査定カウンターにゴブリンの耳を持っていき、渡す。「ゴブリンの耳ですね……これをどこで? 」 査定嬢の目がぎらつく。ゴブリンがすぐそばに繁殖しているというなら大ごとだろうし、そうでなくても街の近くにいたという話だけでも大事なことだろう。「西門から南西に30分ほど行ったところでゴブリンが最低3匹はいることは確認しています。その内の2匹の分ですね」「残りの1匹はどうされたんですか? 」「こちらを警戒して罠を張ってる可能性があったので、下手に会敵したり戦闘をしないうちに撤退してきました。できるだけ警戒して帰ってきましたが、付いてくる様子はなかったので気づかれなかった可能性のほうが高いですね」「なるほど。その話、帰ってきてから誰かにしましたか? 」 査定嬢が更に確認を重ねてくる。報告はしたか、ということだろう。「ここで話しているのが最初です。誰に報告したらいいのかもわからない新人なので、専門の部署があるならそこへ相談しに行くのですが」「わかりました……と、カウンターで支払いを受ける際にこれをついでに渡してください。担当部署への引継ぎのサインになります。細かいお話はそちらでお願いします」 査定嬢からは耳二つ分の査定金額が記された査定結果書をもらう。 ゴブリン 2 どうやら、シールドゴブリンと普通のゴブリンに差はないらしい。いくらになるかは受け取るまで分からないってところだな。まあ、ダンジョンのモンスターより安いということはないだろう。 カウンターへ行って薬草の査定結果を渡す。カウンターでは薬草査定結果を確認して、銀貨7枚と大銅貨1枚を渡される。これで今日の稼ぎは銀貨9枚と大銅貨1枚となった。最近の稼ぎからすれば多くはないが、7日分の宿泊代金と考えれば安いものだ。 ゴブリンの左耳はどうやら一匹当たり銅貨5枚と
ここまでで出てきたゴブリンは二匹。そもそも偶然ゴブリンが出現した、という可能性はまだ否定できない。初心者冒険者がゴブリン二匹と出会ったからと言ってそれを元に巣ができたかもしれない、と引き返してくるのはありがちかもしれない。 だからといって、このまま次のゴブリンを探して彷徨ってる間にゴブリンの計略にはまって囲まれて……という可能性もある。ここは深追いせずに、薬草採取のついでにゴブリンを探す、という方向を続けているほうが良いな。 もうちょっと街に近い位置にまで戻ってアライ草を探す。そして、そこでゴブリンがもう一匹出てきたら、これはゴブリンが街の近くで繁殖している可能性が高い、と冒険者ギルドに報告する流れのほうが良いだろう。 こっちは二人しかいないんだ、集団戦に持ち込まれたらあっという間にのされてしまうだろう。いくら剣聖だとしても、ゴブリンが十数匹、数十匹と現れてくるような状況では限界もある。まだ剣聖としてのレベルが高いとは言えないセルフィでは手に余るだろう。 そして、ゴブリンによって攫われてあーんなことやこーんなことに……うむ、許せん。ゴブリンはすべて殲滅しなければならないな。そのためにはきちんとした手順を踏まないといけない。 俺とセルフィの力をもってすればゴブリンなどたかが低級モンスター……と言い切れるほど腕に自信があるわけでもない。世の中の流れや手順、ルールにはできるだけ従うべきである。 もしも、ここで討伐をしなかったり巣を放置したせいで少なからず損害が出るんだとしても、街の西側なら何もないし、あえて言うなら採石場があるのみ。 ゴブリンが石に興味を示すとは思えないので、ゴブリンがより繁殖してから襲ってくるか、通りかかる民衆を襲うのがせいぜいだろう。 その前に短期決戦でゴブリン退治をする、というほうが期待に応えることができるだろう。その為には報連相、無理に自分たちだけで解決しようとせず、冒険者ギルドに報告する。 そして、俺たちより使える安全なパーティーが偵察を行い、ゴブリンの巣を発見して駆除の流れをきちんと作ってもらうほうが大切だ。
西門にたどり着き、外に出る。出るときに衛兵がいつも通り話しかけてきた。「冒険者が西門に用事があるのか? 」「薬草を採りに行くんですよ。西門からのほうが近くて」「そうか、夜の鐘には遅れないようにな」 納得したらしく、そのまま見送ってくれた。ちゃんと仕事をしていてえらい。そのまま西門から南西方向に道を外れて、採石場とは道を挟んで反対側に行く。 まだ採石場として稼働していないが、今稼働している採石場から石を取り切ったら、こっち側が今度は採石場になるんだろうな、というようなイメージの岩場を歩く。道はないので適当に岩に昇って……そして、岩陰にこっそりと生えている草を鑑定する。 草からは「僕アライ草です、こんにちは。良く育ってます」と返事が返ってきた。アライ草はこんなに近くでも取れてくれるのか。ただ、鑑定で調べる感じ……と、お? 今ので鑑定のレベルが上がったらしい。 範囲鑑定ができるようになって、周辺の地形の中にどんなものがあるのかが遠距離でもわかるようになってきた。ついでに、さっきの鑑定結果のアライ草の返事を見る感じ、状態変化も把握できるようになったらしい。「セルフィ、鑑定のレベルが上がったぞ。これで離れててもどこに薬草が生えてるのかわかるようになった。いちいち近づいて見たり抜いて観察しなくていいのは楽だな」「おめでとうございます。これで楽に稼げますね」「そうだな、しっかり育ったアライ草だけを抜いていくことにしよう。アライ草の育ち具合も見られるようになったからそこも楽になった」「鑑定だけで食べていけるようになったんじゃないですか? これでお休みを増やしてもいい感じになりましたね」 セルフィはニコニコと嬉しそうにしている。お休みが増えるのを楽しみにしているらしい。確かに、自分の自由になるお小遣いも増えたし、お休みに買い食いするとか楽しみたいことはそれなりにあるだろう。「それだと鑑定やってる婆さんの商売敵になっちゃうしな……鑑定で飯を食っていくつもりはないよ。それに、レアなスキルを持っ
朝が来た。相変わらず日の差し込みやすいこの建物の一室は、俺の目を直撃するように日が入ってくるので、目覚ましとしては中々に性能がいい。 ふともう一つのベッドに目をやると、セルフィが丸くなって眠っているので、もう少し寝かせておいてやるかと一人起き出し、トイレと顔洗いを済ませる。ボットン海綿トイレにも三日目にして慣れた。二日目は気になった、服に染み付いた自分の匂いも気にならなくなった。やはりこういうところではいかに早く慣れるかが大事だ、と神崎さんも言ってたっけ。 井戸から水を汲んで顔を洗うと、口もすすいで後は磨き砂でも口に含んで歯のほうも綺麗にしておく必要があ
食事を終えて、満腹になる。結局、もも肉の茹でたやつを追加で注文して、お金は定食と合わせて銅貨30枚ということになった。いいお店を教えてくれたのでここは俺のおごりだ。「さて、今後何をしていくかだが……ダンジョンへは一度向かってみたい。ダンジョンではどういう稼ぎができるんだい? 」「では、まず説明を。ダンジョンでは、モンスターの死体が残らず消滅します。その代わり、モンスターの体内に存在する魔石が必ず落ちてきますので、それを冒険者ギルドに出すことで報酬を得られます。モンスターが強いほど魔石の質もいいものが落ちると考えてください。そし
イアンちゃんのおすすめのお店に連れて行ってもらう。だが、少し血の匂いが残っている以上、まずは身支度を整えるのが先だ。イアンちゃんも一旦血の匂いを落としてから行きたいとのことなので、家へお互い戻って体を拭いてから再合流することになり、イアンちゃんに迎えに来てもらうことになった。 セルフィと宿に戻る途中で夜の鐘が鳴る。これは急がないといけないな。急いで宿に戻って、メリーさんに湯を二人分頼む。部屋に戻ると、ベッドがもう一つ運び入れられていた。どうやらセルフィ用にもう一つ運び入れてくれたようだ。ありがたいことだな。寝床をどうしようか少し悩んでいたところだ。「私の
日が暮れる前に門まで戻ってきちんと出入りを終える。「さて、急がないとな。今日は買い取ってもらうものが昨日より多いし、夜の鐘に間に合わないかもしれないな。血抜きはしてあるからある程度はいいとして、数があるからな。できるだけ急いで買取に出さないといけない、テンポよく行こう」「はい! 」 一日体を動かしてやる気があふれているのか、セルフィが鞘に入ったままの剣をぶんぶん振り回しながら町中を進む。「まず、冒険者ギルドに向かう。そこで今日の稼ぎを換金してもらって、それからそのお金で夕食をとって、宿を取ろう…&hellip







