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第6話:この世界について

مؤلف: 大正
last update تاريخ النشر: 2026-04-18 07:00:31

 食堂に入り、適当に空いた座席に座る。

「リンカさん、ランチ二つで」

 イアンちゃんが早速注文をする。通い慣れてる感じがするな。

「あらイアンちゃん、久しぶり。ここに来るってことはお客さんかしら」

「そうです、お仕事です。なので美味しいところをお願いします」

「うちはいつも美味しいところしか提供してないよ! 」

 いつものお互いの軽口なのか、嫌みっぽいやり取りではなかった。他の有休消化者も似たようなやり取りはしてきたんだろう。しばらくすると、温かそうなスープと肉の焼いた塊、そして付け合わせのようなパンが出てきた。パンは白パンではないので、お値段はそれ相応、ということなんだろう。

「これがこっちで一般的な外食の形になります。これで銅貨8枚ってところですね。下手に自炊するより外食の方が安くすみます。たくさん利用してあげてください」

「ここにはよく来るんだ? お互いに顔見知りって感じだけど」

「そうですね、神崎さんからの紹介の方を連れてくるときは大体ここですね。後は時々おごってもらうのもここになります。ここ、高級ランチもやってて、銅貨16枚払うと白パンが出てくるんですよ! 」

 なるほど、白パンはやはり高級路線なわけだな。しかし、一般庶民でもその気になれば手を出せる、ということまでわかった。そして、もう一つ分かったことがある。この銅貨一枚は10円ほどの価値ということだ。つまり、今日の昼飯代はイアンちゃんの分を含めても160円しか支払ってないことになる。

 現世であれば2000円は軽く超えるところだろうに、確かに事前に伝えられている通り、物価は十分の一程度になっているのだろう。しかし、160円で白パン定食が食えるなら、毎日でもいいところだが、下手に毎食それを頼んで悪い輩に目を付けられる可能性もあるのだ、ほどほどにしておくべきだろう。

 黒パンはほのかな酸味があり、ライ麦パンかな? と思う程度。白パンが当たり前の現世からすれば逆に高級路線のパン、と判断することもできるので、こっちに慣れるほうが逆に贅沢をしてる気分になってくるな。

「さて、タカナシさん。まずはお金の話をしましょう」

「イアンちゃんのガイド料金かい? 」

「いえ、そっちはもうもらってるのでいいのですが、主にこの世界では銅貨と銀貨が主流になっています。それぞれ、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚になっています。ちなみに銅貨10枚で大銅貨、銀貨10枚で大銀貨、金貨10枚で大金貨、という中間貨幣まで用意されています」

「白金貨もあるのか。俺の手元には金貨までしかないな 」

「めったに見ることはありませんが、貴族同士のお金のやり取りや上級商人の間でのやり取りでは使われることがあります」

 金貨1枚10万円、白金貨1枚は1000万円、ということだろう。1000万円なんて一年の間の生活ではお目にかかることもないだろうな。

「では、周りが騒がしいですが説明していきます。タカナシさんの聞いている範囲の世界の話と私が教えられる範囲の話、それぞれ話し合っていきましょう」

 それから、経済の話、言語の話、他の町の話。様々な話を共有し、覚えられる範囲のことを学んでいく。どうやら冒険者ギルドという組織は国を超えてつながりがあるらしく、場合によっては国にたてついてでも我を通すだけの武力集団であることは確かなようだが、場合によっては共闘することも多々あるため、基本的にお互いの国との仲は悪くないらしい。

 また、この世界にはモンスターと呼ばれる野生生物が自然発生し、そのモンスターへの対処を国が行う場合は問題ないが、それ以外の場合は基本的に冒険者ギルドにクエストの形で引き継がれ、それぞれの探索者が常駐依頼、臨時依頼、独占依頼の形でそれぞれ対応が変わり、独占依頼は依頼を受けた冒険者が専属で行い、臨時依頼、常駐依頼はそれぞれ達成要素を確認し、報酬を受け取る。

 冒険者……これが俺の新しい仕事か。休みながら働けるなんてなんて素晴らしい話なんだろう。今後は仕事をしながら金を稼ぎつつ、異世界を堪能しよう。まずは……

「まずは装備を整えないとな。この服装では明らかに冒険者って感じではない。貴族の忍びきれていないお忍び冒険者体験ってところが関の山だろうな」

 こっちの世界にはない化学繊維の服装。怪しい帽子。明らかに浮いている、金持ちっぽい見た目。まずはその辺から何とかしないといけないな。

「次に、スキルの話をしましょうか。スキルはタカナシさんも覚えているはずですがいくつか有名なものがありまして……」

「ご主人様、あちらです」

 ふと、入り口が盛大に開き、商人らしい格好の人がずかずかと入り込んでくる。

「いらっしゃい、開いてる席に……あれ、サイバルさん。こんなところに来るのは珍しいね」

 リンカさんと呼ばれていた受付嬢兼ウェイトレス兼店員兼……多分ここの娘さんなんだろうな。どうやら騒がしく入ってきた客とも顔なじみらしい。

「うむ、今日は食事ではなく……いた! 」

 俺を見つけると指さし、シャカシャカと恰幅の良い格好からはとても考えられない素早い動きでこちらに近寄ってくる。

「うむ……うむ……うむ! 」

 サイバルさんと呼ばれていた御仁は、俺の着ている服をあちこち見まわし、服を引っ張ったり帽子を取って自分でかぶったり、好き放題に触ってくる。

「あの、食事中なので後にしてもらえると助かるのですが、私の服装が気になるのですか? 」

「うむ、気になる! こんな生地の服装は珍しい! 数年に一度見かけることがあるという伝説の服装によく似ておる! この服をどこで手に入れたのかね! 」

 ああ、化学繊維はまだまだ未発達な世界なのか。確かに伸び縮みする服装は珍しいだろうな。スパンデックスもまだ存在してないなら、伸び縮みする時点で珍しい生地ではあるんだろう。

「とりあえず食事を終えてから商売の話をしませんか。よければあなたもご一緒に食事をしましょう。私のおごりでもいいですから」

「うむ! そうであるな。 リンカちゃん、私にもお昼を……高いほうで頼む! あと従者にも、普通のお昼を」

「あいよー! 父さん、白パンセットと黒パンセット! 」

 やはり、リンカさんは店の娘さんらしい。今後もお世話になるかもしれないから名前はしっかり覚えていくことにしよう。

「うむ、私はサイバルという。この町で服屋を経営している。ちなみにそれ以外には繊維の一からの生産もやっておるし、紡績や服作りも含めて上から下までをやっている。以後よろしくな。して、そちらのお名前は? 」

「私はタカナシといいます。よろしくお願いします、サイバルさん」

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