LOGIN泡立て器を使って滑らかに混ぜ込みながら、油を継ぎ足していく。おおよそ酢や卵と油の割合は5分の1ほどだ、とわかってはいるものの、実際に作った分量はレシピとして残さないといけないので、それぞれ重さや分量を計ってもらって計算してもらうことに。俺作る人。彼記録する人。なのでこっちは分量ぎりぎりまで油をちょい足ししながらマヨをひたすらかき混ぜる。
「そのかき混ぜてる道具は見たことありませんね。それも新商品ですか? 」
「鍛冶師のギド親方のところで作ってもらったんです。これがあるとマスタドの実をつぶすのはともかくとして、かき混ぜるのがずいぶん楽になりますから」
「なるほど……そっちで儲ける算段は行っていますか? 」
「ギド親方には鍛冶師ギルドか商業ギルドに相談すればいいんじゃないか、という話はしましたが、実際にどう動いているかまではわかりかねます。商業ギルド内部か、鍛冶師ギルドに掛け合ってもらえばわかるかと。あと、ギド親方にはサンプル品をもう一つ作ってもらってあるので、それを見本にして考えてもらうのが分かり
役所での用事を済ませ、銀の卵亭に帰ってくる。今日は本当にお休みを取っている感じがしてなんだかいいな。たまには休みも悪くない……っと、そういえばずっと休みを取ってこっちに来ているんだったな。そういう意味では休みらしい休みは何度目だろうか。 もしかしたら初めてなんじゃないか? 休みだと言いつつ何かしら金稼ぎに走っていたことを考えると、俺は初めて休みを取っているのかもしれないな。 なんだかんだ勝ち取った休みは貴重だ。しっかり休んで明日からの仕事に備えて……いや、ちゃんと休むか。セルフィも今頃石鹸のついた鍋から石鹸をこすり取って、服を洗っているはずだ。乾かして干して、ちゃんと効果があったのかどうかも確認しなきゃいけないしな。 これは昼ご飯は銀の卵亭で取ることになりそうだ。セルフィが楽しそうに石鹸で遊んでいるだろう光景を瞼の裏に想像しながら銀の卵亭に帰ると、大体予想通りの光景が目に入ってきた。 それほど泡立ちはしてないものの、白い泡に包まれた、綿のパンツと普段は血まみれにしている服をあわあわしているセルフィの姿を見れた。 鍋に付着した余りだからどれだけでも使えるとはいえ、ちょっと泡立てすぎな気もするが、しっかりと洗濯板で洗いながら楽しそうに血の汚れを落としている。「順調か? 」「おかえりなさい。順調ですよ。綺麗になってますよ、ほら」 まず自分の服で試したらしいが、今朝までは返り血で少し汚れていた綿の帽子と冒険活動用の服が、綺麗に汚れが落とされていた。光り輝く……というほどまでではないが、綺麗に落ちていると納得できるぐらいに綺麗になっていた。 本当にきれいにすすぎが出来ているかどうか確認するために水で洗って確かめるも、ひたすら石鹸を使ってる割にきちんと泡を落とし、石鹸も綺麗に落とされていた。「お、ちゃんとすすいである。えらい」「戦ってる間に泡だらけになっても困りますからね。ちゃんと必要な分しか石鹸は使っていません」 たしかに。戦闘が始まって汗をかき始めたら汗で石鹸が泡立っても困るし、それが原因で肌荒
部屋に戻って、買ってきた紙に書く内容をまず考える。セルフィは要らなくなった鍋をこすって泡立ちを確認して、「せっかく泡立つので、これを利用して服を洗ってきます! 」と、井戸のほうへ行った。 きっと、鍋をこすっては泡を洗濯物に移して洗濯板で綺麗に洗濯している最中なんだろう。俺の着替えも持って行ったので、ついでに両方洗うということらしい。まあ、任せよう。鍋も綺麗になるし、後片付けが一つ楽になった。鍋はまた別の機会に何かで使うこともあるだろうからそのままアイテムボックスにしまっておくか。 さて、俺の頭の中の方法を達成するには、いくつか確認しなければいけないことがある。この近くに火山があった形跡や、そういう地層が見当たるかどうか、という点だ。石灰石の層が存在しなければコンクリートはおろか、モルタルもセメントも作ることはできない。 石灰石があればセメントを作るのは比較的簡単であると言える。が、とりあえず街の建物の様子を見るあたり、石材同士の接着剤として使われている形跡はあるので、セメントに関しては問題はないと言えるだろう。問題は量かな、それとも質かな。 とりあえず、モルタルにしろコンクリートにしろ、防水仕様にする方法はいくらかあるのでその方法からまずは記していくことが必要か。 耐水性があり、自己修復機能を持つコンクリートは特殊な火山灰と石灰石の混合で得られるから……まず、その特殊な火山灰というのが存在するかどうかから調べないといけないな。 調べ方は……水酸化ナトリウムに溶かせばいいはずだが、水酸化ナトリウムを手に入れる方法がないし、そもそもこの方法で得られる火山灰は石英質を持つはずだから、ガラスを作り上げられる砂でもあるはずだ。だからこの近くでは産出しない可能性が高いな。 だとすると、ローマンコンクリートの再現は非常に難しいか。そもそも石灰石があるだけでも儲けものなのだから、それ以上の贅沢は言わないのがいいな。ここは普通のコンクリートで作って数十年たって劣化するのは折り込み済みで建設してもらうしかなさそうだ。 もし、地面を掘ってガラス質の地面が掘り起こされるようならその限りではないが、どう
メリーさんにちょっと庭を借りるのと、火を使うこと、それから危ない薬品を使うのであまり近寄らないようにできるかを聞いて、了承を得てから早速石鹸づくりを始める。家主の了解を得てから仕事を始めるのは基本だな。 まず、ギド親方始め色んな工房からもらってきた灰を水に混ぜ込んでよくぐるぐるとかき混ぜて、しばらくした後指先で軽く触れてみる。ヌルっとしていたら成功だ。その後、灰を布で濾して灰汁にする。 本来なら手袋とマスク、ゴーグルあたりが必須の工程だが、この時代の技術水準でそれに近いものは用意できないので、せめて口元にマスク代わりのあて布をしてそれをマスク代わりにしておく。 手袋はゴムみたいに完全に密封できるタイプじゃない限りはかえって手荒れを加速させるし、手に成分が残ったら清潔魔法と水魔法で洗い流せるのでそれで代用していこう。 次に、買ってきた油を軽く熱し、生ぬるくする。人肌から少し熱めぐらいにすると、そこに灰汁を投入。そのままの温度を維持しながらひたすら混ぜ合わせる。混ぜ合わせる分量さえ間違えてなければ、温度を調節しながら混ぜてやることで石鹸が徐々に硬くなってくるので、そこで塩をぶち込む。 塩を入れることで塩析という現象が起きる。これは石鹸よりも塩のほうが水分子を引き付けるため、その分だけ石鹸成分は脱水される……という感じの現象だ。これで更に石鹸が固まりやすくなる。 これ以上の固まりやすさは石鹸作りに使う油が動物性であるか、植物性であるか……というところで大きく変わってくる。今回はヤシの実っぽい物から作られた油を使用した。おそらくボア肉の油が一番安く手に入る動物性の油だろうが、それを入手するルートがまだ確保できてないため今回は断念する。 油が固まってきたところで、ビッグラットスレイヤーの表皮を削って絞った汁を追加し、香りづけにする。これで匂いの問題は解決できるはずだ。本来ならオイルベースにして油化されたものを使ったほうがいいのは確かだろうが、そこまでの精油技術は今のところない。 そこまで作るにはまず精油蒸留器や圧搾機から作らなければいけなくなり、本末転倒というか本業から行き先が離れてしま
早速朝市へ買いだしに。市場でビッグラットスレイヤーと植物油を購入。そして、ギド親方のところへ行き、炭を使い終わった後の灰をどうしているかを質問しに行くと、普通に捨てているということなので、いくつかの工房を回って捨てすぎて問題がない程度にそれぞれ分けてもらってきた。 数カ所回ったおかげでかなりの量の灰を手に入れることが出来たので、原料が足りなくて少ししか作れなかった、ということにはならないだろう。しかし、ちょっと多いかもしれないな。もうちょっと油を買い足しておくか。 油を買い足し、朝市ではない普通の商店で塩を買い求める。岩塩でもよかったが、砕いた後の塩が売っていたのでそっちを購入。これで砕いて溶かす手間が一つ減った。灰、油、香りづけ、塩と四つの材料がそろったため、後は灰を水にくぐらせて濾すための布と、熱している間持つだけの鍋を買い求める。 後、燃料は自分の火魔法とする。ここで燃料に炭や薪を使って、その灰でまた石鹸を……という無限ループを作ることはできるが、そこまでするつもりはないし、一回こっきりの予定だ。一回分だけ作るならまあそれほど問題はないだろう。 これを商売にするつもりはないし、既に存在する石鹸ではあるので、自分で使う分をちょいちょいと、気に入った香りで作りたいと思っているだけだ。さっさと帰って試しづくりと行こう。 そう思って街の中心部を通り抜けると、何やら人だかりができている。どうやら新しい掲示物があるらしく、それを見るために人が集まっている様子だ。若干騒がしいし、自分に関係があるかもしれないので念のため見ておく。 人だかりを少しずつかき分け、前まで出て掲示物を確認すると、布告というかお願いというか、知恵貸し願いのような内容だった。 街の発展に伴い、北西の川から上水を引きたいのだが、できるだけ綺麗な水のままでこちらまで導水したい。何かいい方法はないか? 礼は出す。とのこと。 つまり、水道口が土のままの導水路では不満、ということだろう。ちゃんと掘って、周りを固めて、土や川の滞留物やその他いろいろは流れてくるにせよ、できるだけ少なく、そして街の中を流れる間も綺麗なままで流してきて、井戸や湧き水の形で街中
朝だ。今日も眩しい太陽……太陽という言い方であっているのかはわからないが、お日様がちょうど視線をぶつけてくるのは間違いない。 目が覚めて、いつも通りの寝起きの良さを感じる。こっちへきて、寝起きがだるいということがない。これが若返りのおかげなのか、それとも別の要因なのかはまだ判断つかない。 まぁ、気持ちよく起きれていることに違いはないのでありがたく起きていることにしよう。今日も元気だ太陽が眩しい! それでいいのだ。「おはようございます、ご主人様」 セルフィも元気そうで何よりだ。さぁ、今日も一日を楽しく過ごそう。 井戸で身支度を整えて、洗濯物を洗うと、そろそろ石鹸が欲しくなってきた。買えないこともないが、市販の石鹸は液体で、あまり香りもいいものではない。 そうだな……ビッグラットスレイヤーの香りがするような爽やかな石鹸を作る方が良さそうだな。獣脂と灰が必要か。灰は……どこかの工房で出た炭の灰を使わせてもらって、ゴミを引き取りに行く方向性で行けば安く仕入れられるかな。 あ、でもビッグラットスレイヤーはたぶん酸性だろうから、アルカリ性の柑橘以外の香りのする果物のほうがいいかな。何か探してみるのがいいかもしれないな。でもまあ、香りづけ程度なら問題ないか。獣脂のそのままの香りを使うことに比べたら多分大幅にましだろう。 洗濯板でほとんどの汚れは落ちてくれるので問題ないが、香りのほうはそうそう抜けない。もしかしたら鼻がもう麻痺しているだけで、そこそこの匂いを放っている、という可能性だってあるのだ。何かしらの機会に匂いをリセットして、さわやかさを演出する必要があるともいえる。 さてどうするか。ギド親方のところへ行って灰をもらえるか相談して、もらえたら石鹸づくりに費やしてみる、というのも悪くないが……ちょっと、一日かけて石鹸づくりをしてみて、服の汚れをきっちり落としてさわやかな香りのする服を調達するのも悪くないかもしれないな。今日はそういう日にしておくか。 洗い物を終えて服を干すと、今日は時間に余裕があるので火
side:アザーワールド社「部長、小鳥遊さんの件ですけど」 神崎がイアンからの報告書をもとに、現地での行動をまとめた調査報告書をあげる。神崎の上司である茅野が閲覧し、渋い顔をする。「ふむ……ふむ……なるほど」 茅野は書類を一通り見終わった後、静かに調査報告書を読み終わり、神崎に向かい直し、コーヒーを一口飲むと、静かに語り始めた。「小鳥遊さんは向こうでも仕事をしっぱなしで休んでないどころか、本業以上の収入を得ている可能性がある、ということだね? 」 神崎も茅野からコーヒーを受け取り、グイッと一気に飲み干すと、ため息をつくようにはぁ……っと呼吸をしてから上司に対して口頭で報告を始める。「そういうことになります。さすがに小鳥遊さんの本業での収入について調べ上げることはプライバシーの観点から調べることはできませんが、厚労省に問い合わせて有休強制消化法案第18条第3項を理由とした、個人口座の記録の参照を厚労省に依頼し、それを元にして本業よりも稼いでいることが確認された場合、同じく9条2項の副業規定にかかるかどうかを確認する必要があります」「しかし、二週間そこそこで預金口座に振り込めるほど稼いで、それでいて生活費は現地調達。奴隷を購入してなおまだ余裕あり。奴隷と共に手数を増やして生活を自力で稼ぎ切っている……と」「そうらしいです。現地ガイドの三回目の報告書はまだ受け取ってませんが、二回目の報告書の時点でこういうことになってますから……今の段階で考えると、莫大な金額を稼いでいる可能性がある……ということになります」 茅野は腕を組みながら椅子のローラーをころころさせながら、ぐるぐるとその場で回転し始め、止まった後、神崎の顔を見たあと、下を向いて机の上に軽く突っ伏すような格好になった。「神崎くぅん、この場合どうすればいいと思う? 有給消化に来てもらってるのに有休中に働いてしまっているんだけど」「過去に同じようなケースがなか
朝が来た。相変わらず日の差し込みやすいこの建物の一室は、俺の目を直撃するように日が入ってくるので、目覚ましとしては中々に性能がいい。 ふともう一つのベッドに目をやると、セルフィが丸くなって眠っているので、もう少し寝かせておいてやるかと一人起き出し、トイレと顔洗いを済ませる。ボットン海綿トイレにも三日目にして慣れた。二日目は気になった、服に染み付いた自分の匂いも気にならなくなった。やはりこういうところではいかに早く慣れるかが大事だ、と神崎さんも言ってたっけ。 井戸から水を汲んで顔を洗うと、口もすすいで後は磨き砂でも口に含んで歯のほうも綺麗にしておく必要があ
食事を終えて、満腹になる。結局、もも肉の茹でたやつを追加で注文して、お金は定食と合わせて銅貨30枚ということになった。いいお店を教えてくれたのでここは俺のおごりだ。「さて、今後何をしていくかだが……ダンジョンへは一度向かってみたい。ダンジョンではどういう稼ぎができるんだい? 」「では、まず説明を。ダンジョンでは、モンスターの死体が残らず消滅します。その代わり、モンスターの体内に存在する魔石が必ず落ちてきますので、それを冒険者ギルドに出すことで報酬を得られます。モンスターが強いほど魔石の質もいいものが落ちると考えてください。そし
イアンちゃんのおすすめのお店に連れて行ってもらう。だが、少し血の匂いが残っている以上、まずは身支度を整えるのが先だ。イアンちゃんも一旦血の匂いを落としてから行きたいとのことなので、家へお互い戻って体を拭いてから再合流することになり、イアンちゃんに迎えに来てもらうことになった。 セルフィと宿に戻る途中で夜の鐘が鳴る。これは急がないといけないな。急いで宿に戻って、メリーさんに湯を二人分頼む。部屋に戻ると、ベッドがもう一つ運び入れられていた。どうやらセルフィ用にもう一つ運び入れてくれたようだ。ありがたいことだな。寝床をどうしようか少し悩んでいたところだ。「私の
日が暮れる前に門まで戻ってきちんと出入りを終える。「さて、急がないとな。今日は買い取ってもらうものが昨日より多いし、夜の鐘に間に合わないかもしれないな。血抜きはしてあるからある程度はいいとして、数があるからな。できるだけ急いで買取に出さないといけない、テンポよく行こう」「はい! 」 一日体を動かしてやる気があふれているのか、セルフィが鞘に入ったままの剣をぶんぶん振り回しながら町中を進む。「まず、冒険者ギルドに向かう。そこで今日の稼ぎを換金してもらって、それからそのお金で夕食をとって、宿を取ろう…&hellip







