LOGIN身支度を整えたところで一階の食堂に降りて行って、リンカちゃんにリッチな夕食を二人分頼む。
「父さん、白パンセット2つ! 」
席に座り、しばらく待っていると、しっかり両面を焼かれた白パンに具だくさんのスープとちょっとしたソースがかけられた肉が小さく一枚乗ってきた。どうやら今日はサービスがいいらしい。それとも、夕食の白パンセットには必ず肉がつくんだろうか。まあ、いい。
とりあえず食べよう……と、肉についているソースをなめとる。少しはちみつが混ぜてあるのか、ほのかな甘みとソースのこってり感がある、なかなかに味のあるソースだ。それに、肉を焼いた面をよく見ると、肉の油以外にもう一つ油が使われているのが分かる。
「リンカちゃん、これ、肉焼くときに使った油って何の油? 」
「オリブの油ですかね? 少なくとも肉の油を混ぜ合わせて使ってはないはずですから……ちょっと確認してきます」
リンカちゃんが親父さんに確認しに行く。その間に肉にかぶりつき、その確かな味わいを確認する。これはホーンラビットの肉だな。
「ふわふわで美味しいですー」
セルフィはパンの柔らかさとスープの具沢山に満足してほえほえとしている。
「確認してきました。オリブの油で合ってますね」
「それって植物だよね? 」
「そうですよ? オリブ見たことないです? 」
植物油が普通に食堂で使えるということは……マヨ行けるか、マヨ。マヨは原材料こそそこそこかかるものの、安定した植物油と卵の供給源が手軽に作れるチート食べ物だ。そして、食に情熱をかける人はそれほど少なくない。これは、いけるかもしれんな。
「手が空いたらでいいんだけど、2、3質問させてもらっていいかな」
「あとでよければ。今は忙しい時間なのでちょっとアレですけど」
「うん、よろしく」
「? 」
頬っぺたいっぱいに肉を詰め込んだセルフィが何を始めるんだろうという顔で俺を見ている。
「ちょっと美味しい物を作ろうとしているだけだよ。もしかしたら直接働かなくてもよくなるかもしれないね」
「そう、なのですか。ご主人様は働くのがお好きなのですよね? なのに働かないで大丈夫なのですか? 」
セルフィに言われてハッとする。そういえば俺、ここ数日働くことしか考えてないな。働きに来たのか? このままでは生活費の安い所に出稼ぎにきただけではないか。しかも、その分だけ安い給料になっている。一日に金貨一枚も稼げるわけではない。労働の場所としてはあまり勧められたものではないのだろう。
「ぐう……うぐぅ……」
「ご主人様は働かなければ死んでしまうのですか? 」
「そんなことは……ない……はず」
「ご主人様にお金の管理をすべてお任せしている立場で申し上げることではないのかもしれませんが、時には休息も大事ですよ? 」
「それはわかってる……はずなんだが……」
それが実行できていれば320日も有給溜めたりはしないんだろうな。就職してから数年分の連勤と休日出勤、それらがたまりにたまった結果なのだ。
そもそも会社がマニュアルもなければすべて手作業による指示やマニュアルなしでの労働指示なんかに頼り切った状況だったのを、俺が入社してすべてマニュアル化。
そして誰でもできるように作業を細分化、そしてそれぞれの工程できちんと動作するかのチェック、マニュアルのテスト、それらをきっちりやり終えての休暇なのだ。この休暇は何をしててもいいし、どのように過ごしてもいい休暇のはずだ。休暇だからと、無駄に三日ぐらいひたすら寝転がってからこの特別プランを選択するという方法もあったはずだ。
しかし、そうしなかったのは俺自身が動いていないと死ぬ、マグロのような性質を持っているからだろう。もしかしたらこの休暇で安定した休みというのを身に付けられるようになるかもしれないが、それでもしっかりとやれる範囲のことを一通り楽しんでからでもいいんじゃないか。まだまだ金もあるし、むしろちょっとだけ増えている。
この調子で増やせる金額の量を多くしていけば、ちょっとだけ給料を増やした状態で現世に帰れるならそれが一番だ。有給で休んでる間に副業、いい話じゃないか。しかも俺が楽しんで、周りも笑顔にできての行為ならやっただけの甲斐があったと後で満足できることになる。
食事を済ませ、食堂が一通り落ち着いてから、リンカちゃんがテーブルにやってきた。
「で、何なんですか用事って」
「リンカちゃんはマヨ、マヨネーズ、マヨラー、なんて言葉聞いたことある? 」
「マヨ……料理か何かですか? 」
「正しくは調味料だな。後、鳥の卵や植物油と酢が安定して手に入るかどうかを聞きたい」
「鳥の卵も植物油も酢も、市場へ行けば手に入ると思います。大体値段が……」
リンカちゃんが唱えていく値段を頭で計算し、マヨネーズの黄金比率になるように個数と値段を計算していく。やはり鳥の卵と植物油が少し高めか。だが、極端に高くて作れないということではないということはわかった。
「なんですか? 新しい調味料でも作るんですか? ぜひ作るなら教えてくださいね。お客さんに味見してもらって美味しいなら店の売りになりますから」
「そう思って提案してみたんだ。後は親父さんに厨房を貸してもらえるかにかかってるかな」
「朝早くならいいぜ。あんまり時間がかかるんだと昼の仕込みに被ってしまうが……それまでに終わらせてくれるならタダで貸してやる」
どうやら親父さんも新しい調味料というのには興味があるらしい。いいぞ、異世界チートっぽくなってきた。だとすると、明日の朝市に向かってそれぞれの分量を計って購入してくるだけだな。
親父さんにじゃあ明日借りると申し出ると、さっそく借り受けられるよう手はずを整えてくれた。さて、明日は異世界転移定番のマヨ作りだ。特許とかもないようだし、必要材料をそろえて手に入れることができれば後は実際に作るだけだな。
どうやら異世界転移特典で記憶力のほうも多少良くなっているらしく、「これだけ詰め込め! 異世界に行ったときにチートできる知識100選」の内容はほぼ覚えている。その中の一つをさっそく実行させてもらうことにしよう。
そうと決まれば朝市の時間に間に合うように明日は早起きしないとな。といっても目覚まし時計があるわけでもないから、いつも通り日の光に起こしてもらうしかないんだが……まあ、何とかなるだろう。
side:アザーワールド社 イアンから提供されたアンケートはその日のうちに会議にかけられ、アザーワールド社内でも問題となった。即座に銀行口座に対して照会がされ、小鳥遊が金銭を稼ぎ副業として立派に稼いでいることと、その金額が十分に大きいことがクローズアップされ、話は更にややこしくなった。「ふむ、では小鳥遊氏は満喫していることは確かなのだな? 」「それは間違いないでしょう。ただ、休みに行ってるというよりは出稼ぎついでに休んでいる、という形になっている可能性が大きいと考えられます。本人満足度が非常に高いのが返って不思議なのですが」「有休を320日も溜める男なんだ、普通に休んでいる感覚で仕事をしているのか、もしくは仕事と私生活が不可分な御仁なのかもしれないな」 社内ではそれぞれ会議内で意見が出され合い、この事態をどうするかについての協議がなされた。小鳥遊が稼いできた金額は二十日で彼の平均賃金のおよそ三カ月分以上。 有給休暇中にこれだけの資金を稼ぐのは明らかに副業である、という判断ができるだけの金額になっているため、厚生労働省に問い合わせるまでもなく、彼の有給休暇時間は再考の上で延長される可能性は高いとみられている。「10日のうち、真面目に休んでいるのは2日だけ、ということか」「おそらくは、現地で生活するための資金を稼いで、その余裕を貯蓄の形で回したのだと思いますが、何をしたかまでは今回アンケートの内容に含まれていないため、抜け落ちや不足があるものだと思われます」「神崎君、現地監視員からの詳細報告を求めることはできるかね? 」 上司からそう質問された神崎は、正直に答える。「今回のアンケート結果について、場合によっては有給休暇の延長が認められる可能性がある、という話については既に小鳥遊さんも知っている、ということですので、それを前提としたアンケートを再度行って、正式な事実として積み上げることは可能ですが、この様子ですと、ここ19日の有給休暇、そして18日間の異世界行きの時間に対して、比率換算すると4日しか休んでいない、という計算に行き当たります」「ふむ…&hellip
メリーさんのところへ行き、次の10日分の宿泊代金である大銀貨1枚を払う。「順調に稼いでるようで何よりだねえ。その調子でいつも通り長く居てくれると嬉しいね」 メリーさんがそろそろ更新日付だということを覚えていてくれたので、次の区切り日までの延長ということになった。メリーさんとしても、親父さんとしても、マヨを安く仕入れることができるということでメリットはあるはずだ。「あと、桶をいくつか借りるね。ちょっと今日は全身ピカピカにしてみたいもんで」「今の時間ならいいさね。お湯を沸かす時間までに帰してくれれば自由に使ってくれていいよ」 許可を得たので、井戸で水を汲んで部屋に持ち込み、部屋の中で火魔法でぬるい湯にまで温度を高める。気持ちいい温度になったところで、服を脱いで全身に水をなじませた後、石鹸で体を洗い始める。「うん、ちょっとビリッとくるが、このぐらいは許容範囲かな。レンモの香りもするし、泡立たないのはそれだけ体が汚れてるってことだろう。スポンジみたいなものがあればより良かったかもしれないな」「すぽんじ……とはなんですか? 」 スポンジを知らないのは当たり前か。ここの周辺には海もないし、海綿も珍しいものになるだろうから説明が難しいか。「泡を立てるのに便利なもの……かな。石鹸を泡立ててから体を磨いたほうが効率的に体を綺麗にできるんだがな。手ぬぐいより便利なものが今のところ手持ちにないから、諦めておくしかないかな」「ぬるぬるしますが、このぬるぬるが大事なんですよね? 」「ちゃんと水で溶いて、泡立ちを……と言いたいが、俺もセルフィも体がそれなりに汚れてるから泡立たないのかもしれないな。毎日定期的に綺麗にしてると、泡が立ってなかなかに気持ちいいんだが」「むぅ、そうですか。じゃあせめて全身綺麗に洗って、その後洗い流してレンモの香りがするようにしましょう」「それだけできれば十分かな。さて、そろそろ洗い流すか……って、桶を複数個借りてて正解だったな。垢で桶の中が凄いこ
どうやら、俺がゴブリンの耳を査定にかけた段階で第一報はフェリクスさんに伝わっていたらしい。そして、査定とカウンターで報酬の支払いと相談をしているうちに情報が伝わって、あらかじめ事前情報を共有。そこまではできているらしい。仕事が早いな。「えっと……このあたりで一匹、その後このあたりでもう一匹、それからここで一匹、この時点で戻ったのでこの先は不明ですね」「なるほど。つまり、この間には巣がある可能性は低い、というわけですね」 俺が通ったルートをたどり、フェリクスさんが書類の上に魔石を置いて場所を絞り込んでいく。「セルフィが一緒に居るので、もし巣に誘い込んで俺を引き離して襲おうとしていた場合、もっと早く仕掛けてくる可能性があったはずです。なのでここまでは安全ゾーンであると考えます」 アライ草を採りに行っていた範囲を丸っと安全圏ではないか? と判断する。巣があるとしたらその先の可能性が高いだろうと意見を具申する。「確かにそうですね。だとするとこの先にあるかどうか、探しながら行かなくてはなりませんね。本来ここにはゴブリンは生息していないんですよ。仮に住み着いたとしても、街に近すぎますので、駆除対象にしなくてはいけません。これがもっと遠くや、薬草群生地の近くでなければ問題はなかったのですが」 ゴブリンの発生場所について詳しく教えてくれている。今後も似たような場所にゴブリンが出た場合には参考にしろ、ということなのだろう。フェリクスさんのほうをちらっと見やると、こくりと頷く。そういうこと、ということなのだろうな。「一つ質問があります」 早めに聞いておこう。この後数日かけての作業になる可能性もあるからな。「なんでしょうか」「ゴブリンの巣の特定が必要になった場合、我々も特定のためにギルドの指示を仰がなければならないのでしょうか? 」「そうですね、手伝いをしてくれるなら一番ありがたい、というのが正直なところですね。やはり一度現地を知っている人物が追い込みや索敵、追跡をしてくれるほうがありがたいのが確かです」 こっちは初めて出かけた場所だから詳しくない
カウンターへ行く前に、今度はモンスターの査定を行う。ゴブリン二匹分だけだが、金になるならこれもちゃんとした収入。それに、あんまりアイテムボックスに入れておきたいものでもない。 査定カウンターにゴブリンの耳を持っていき、渡す。「ゴブリンの耳ですね……これをどこで? 」 査定嬢の目がぎらつく。ゴブリンがすぐそばに繁殖しているというなら大ごとだろうし、そうでなくても街の近くにいたという話だけでも大事なことだろう。「西門から南西に30分ほど行ったところでゴブリンが最低3匹はいることは確認しています。その内の2匹の分ですね」「残りの1匹はどうされたんですか? 」「こちらを警戒して罠を張ってる可能性があったので、下手に会敵したり戦闘をしないうちに撤退してきました。できるだけ警戒して帰ってきましたが、付いてくる様子はなかったので気づかれなかった可能性のほうが高いですね」「なるほど。その話、帰ってきてから誰かにしましたか? 」 査定嬢が更に確認を重ねてくる。報告はしたか、ということだろう。「ここで話しているのが最初です。誰に報告したらいいのかもわからない新人なので、専門の部署があるならそこへ相談しに行くのですが」「わかりました……と、カウンターで支払いを受ける際にこれをついでに渡してください。担当部署への引継ぎのサインになります。細かいお話はそちらでお願いします」 査定嬢からは耳二つ分の査定金額が記された査定結果書をもらう。 ゴブリン 2 どうやら、シールドゴブリンと普通のゴブリンに差はないらしい。いくらになるかは受け取るまで分からないってところだな。まあ、ダンジョンのモンスターより安いということはないだろう。 カウンターへ行って薬草の査定結果を渡す。カウンターでは薬草査定結果を確認して、銀貨7枚と大銅貨1枚を渡される。これで今日の稼ぎは銀貨9枚と大銅貨1枚となった。最近の稼ぎからすれば多くはないが、7日分の宿泊代金と考えれば安いものだ。 ゴブリンの左耳はどうやら一匹当たり銅貨5枚と
ここまでで出てきたゴブリンは二匹。そもそも偶然ゴブリンが出現した、という可能性はまだ否定できない。初心者冒険者がゴブリン二匹と出会ったからと言ってそれを元に巣ができたかもしれない、と引き返してくるのはありがちかもしれない。 だからといって、このまま次のゴブリンを探して彷徨ってる間にゴブリンの計略にはまって囲まれて……という可能性もある。ここは深追いせずに、薬草採取のついでにゴブリンを探す、という方向を続けているほうが良いな。 もうちょっと街に近い位置にまで戻ってアライ草を探す。そして、そこでゴブリンがもう一匹出てきたら、これはゴブリンが街の近くで繁殖している可能性が高い、と冒険者ギルドに報告する流れのほうが良いだろう。 こっちは二人しかいないんだ、集団戦に持ち込まれたらあっという間にのされてしまうだろう。いくら剣聖だとしても、ゴブリンが十数匹、数十匹と現れてくるような状況では限界もある。まだ剣聖としてのレベルが高いとは言えないセルフィでは手に余るだろう。 そして、ゴブリンによって攫われてあーんなことやこーんなことに……うむ、許せん。ゴブリンはすべて殲滅しなければならないな。そのためにはきちんとした手順を踏まないといけない。 俺とセルフィの力をもってすればゴブリンなどたかが低級モンスター……と言い切れるほど腕に自信があるわけでもない。世の中の流れや手順、ルールにはできるだけ従うべきである。 もしも、ここで討伐をしなかったり巣を放置したせいで少なからず損害が出るんだとしても、街の西側なら何もないし、あえて言うなら採石場があるのみ。 ゴブリンが石に興味を示すとは思えないので、ゴブリンがより繁殖してから襲ってくるか、通りかかる民衆を襲うのがせいぜいだろう。 その前に短期決戦でゴブリン退治をする、というほうが期待に応えることができるだろう。その為には報連相、無理に自分たちだけで解決しようとせず、冒険者ギルドに報告する。 そして、俺たちより使える安全なパーティーが偵察を行い、ゴブリンの巣を発見して駆除の流れをきちんと作ってもらうほうが大切だ。
西門にたどり着き、外に出る。出るときに衛兵がいつも通り話しかけてきた。「冒険者が西門に用事があるのか? 」「薬草を採りに行くんですよ。西門からのほうが近くて」「そうか、夜の鐘には遅れないようにな」 納得したらしく、そのまま見送ってくれた。ちゃんと仕事をしていてえらい。そのまま西門から南西方向に道を外れて、採石場とは道を挟んで反対側に行く。 まだ採石場として稼働していないが、今稼働している採石場から石を取り切ったら、こっち側が今度は採石場になるんだろうな、というようなイメージの岩場を歩く。道はないので適当に岩に昇って……そして、岩陰にこっそりと生えている草を鑑定する。 草からは「僕アライ草です、こんにちは。良く育ってます」と返事が返ってきた。アライ草はこんなに近くでも取れてくれるのか。ただ、鑑定で調べる感じ……と、お? 今ので鑑定のレベルが上がったらしい。 範囲鑑定ができるようになって、周辺の地形の中にどんなものがあるのかが遠距離でもわかるようになってきた。ついでに、さっきの鑑定結果のアライ草の返事を見る感じ、状態変化も把握できるようになったらしい。「セルフィ、鑑定のレベルが上がったぞ。これで離れててもどこに薬草が生えてるのかわかるようになった。いちいち近づいて見たり抜いて観察しなくていいのは楽だな」「おめでとうございます。これで楽に稼げますね」「そうだな、しっかり育ったアライ草だけを抜いていくことにしよう。アライ草の育ち具合も見られるようになったからそこも楽になった」「鑑定だけで食べていけるようになったんじゃないですか? これでお休みを増やしてもいい感じになりましたね」 セルフィはニコニコと嬉しそうにしている。お休みが増えるのを楽しみにしているらしい。確かに、自分の自由になるお小遣いも増えたし、お休みに買い食いするとか楽しみたいことはそれなりにあるだろう。「それだと鑑定やってる婆さんの商売敵になっちゃうしな……鑑定で飯を食っていくつもりはないよ。それに、レアなスキルを持っ
翌日、朝日の出とともに目覚める。角部屋で窓にカーテンがないためだが、それにしてもまぶしい部屋だなここ。誰だこんな部屋借りたの……俺か。 二度寝を決め込もうとも考えたが、今日は大事な日だったな。これは寝てはいられないし、微妙に日当たりが良すぎて暑くもなってきそうだ。よし、起きるか。 昨日履いたパンツを、井戸の横に設置されていた、桶と洗濯板で洗う。ここで洗い物していいんだよな……? パンツだけは毎日替えないと気分悪いからな。洗ったパンツは後で干しておこう。 パンツの洗濯が終わったところで
ちゃんと日が落ちる前に南門から街中へ帰る。「お、ちゃんと帰ってきたな、えらいぞ」 門番からはちゃんとお使いできてえらい! と褒められた。40過ぎのおっさんが、だ。でも、新人冒険者には違いないからな。言われたことをきちんと守るのも冒険者の務めなら、今日一日は立派に過ごせたということになる。 にしても、腰を痛めなくてよかったな。最近は歳のせいか、ぎっくりの気配が近寄ってくると、察知できるようになってきたが、今日は中腰仕事を半日してもいつもなら現れるであろうぎっくりの気配がかけらも来なかった。これも異世界転移特典だったりしてな。わはは。
30分待つことなく、武器だけ買いそろえた俺は南門へ向かった。その場で先に待っていたイアンちゃんと合流する。イアンちゃんはさっきより一枚二枚多く着込んだような服装で、頭には軽めの帽子をかぶっていた。 腰にはしっかりナイフを持ち、戦う準備は万端という感じだ。 実際にはもっと重苦しい装備もできたんだろうが、薬草採取ならこのぐらいで大丈夫だろう、という感じだな。「早かったですね。そういえば、武器も持たせずに待ち合わせに来てしまいました。今から急いで武器だけでもそろえに行きますか? 」「いや、アイテムボックスに入れてある。この通り」
奴隷の中の一人の少女の鑑定を行ってみる。その鑑定の中身には驚くべき一つのスキルと一つの称号が書かれていた。「ケンセイ」「イセカイテンイシャノシソン」 片方は剣聖、もしくは拳聖、後は健聖という可能性もあるが、あまり健康そうには見えないので最後のはありえないだろう。どちらにせよ何かしら強そうなイメージが与えられる。問題はもう一つのほうだ。 異世界転移者の子孫。これはあれだろうか。俺以外の異世界転移者がこの世界に過去に存在していて、その転移者が残していった種が畑に植えられて、実った結果、ということなのだろう。おそらくはこの子は借金奴







