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死に戻る君に救いの手を
死に戻る君に救いの手を
Author: 月咲やまな

【プロローグ】後継者の発見

last update Last Updated: 2025-11-13 12:34:05

 『何も無い』と表現するのが一番適切と言える程にただっ広い空間で一人。巨大な《惑星》の立体的なホログラムみたいなモノの前に居る。周囲には『資料』と呼ぶには名ばかりの雑多な本、箇条書きの文章や絵の書かれた束が大量に積み上がっていて、たまにドササッと崩れていく。フィクション、ノンフィクション、歴史書に、世界地図の他にも科学的な専門書まで。多岐にわたる分野のものがないまぜになってしまっているけど、きっちり分別しておくのは難しい。だって自分自身がそもそもその『違い』がよくわかっていないからだ。

 私が《手》的なモノをスッとあげ、左右に動かすと惑星のホログラムみたいなモノが連動して動いていく。同時にその周囲に現れる様々な数値化されたデータ群。それを見て、惑星の環境を微調整をしていく。何だかまるで惑星開拓型のシュミレーションゲームみたいだ。

 ……だけどコレは、ゲームではない。

 現実に、この星の上では無数の命が生き、そしてポロポロ死んでいっている。永い永い歳月、それらをひたすら前にしていると、どうしたって心が押し潰されて疲弊していく。そのせいで元の姿は随分前に崩れ、私はもう『人間』と呼べる様な形状をしていない。霞のような、光のような、霧のような。とにかくまぁそんな存在になってしまった。こんな姿では眠れず、ずっと······を願いながら黙々と、もはや『作業』と化した『惑星の管理』を続けている。

「——『管理者』様!『管理者』様ぁぁぁぁぁ!大っ変っです!」

 珍しく、私の補佐を勤めてくれているモノ達が大騒ぎしている。最初の頃はぼてっとした鳥みたいな形状だったはずの補佐達も、今では『認知』の歪みのせいか蛍程度の光になっていて、会話する度に毎度毎度申し訳ない気持ちに。でも『仕事』という名のお片付けは不思議と出来るままなので、私にだけ、アレらが『そう見えるだけ』なのかもしれない。

「どうしたって言うの?そんなに騒ぐだなんて」

 呆れながら返すと、「見つかったんです!——『後継者』様が!」と補佐達がワーワーと騒ぐ。

 ……『後継者』というワードを聞いても頭が処理出来ない。長年ずっと待ち焦がれてきた反動のせいでしばらく思考停止していたが、やっと理解出来た瞬間、私は「やっと、後継者が!」と叫んでしまった。《私》がまだ人の姿をしていたのならガッツポーズをとっていた所だ。

「……ただ、一つ問題が」

 補佐の一人がぽつりと呟く。

「……え?」と抜けた声を返すと、補佐達が言葉を続ける。

「『後継者』様は、その、不幸な目に遭い続け、すでに何度も死に戻りを繰り返していまして……」

「『管理者』様の後継者になれるだけの莫大な『魔力』を、その原動としている為」

「あと一度でも『死に戻る』と、もうその希少な『魔力』を使い果たしてしまうという寸前なのです」

 その言葉を聞き、顔を青くして声にならぬ悲鳴をあげたい気分になった。——次の瞬間、私は目の前の惑星の、『実物』の方へ飛ぶ様に向かったのだった。

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  • 死に戻る君に救いの手を   【第7話】君に伝えるべき事①(アルカナ・談)

     生粋の《狼》は時速約五十六キロ程で走り、二十キロもの長距離を一日で移動する事も可能な生き物だ。《人間》要素が組み込まれている《獣人》では流石に《狼》であろうとそこまでの能力を素では持ち合わせてはいないが、鍛えた者であれば同等に近くはなれる。どうやら叶糸は後者のようで、剣家の敷地を飛び出し、アスファルトの公道を、草原や森の中みたいに駆けに駆けた彼は隣街にある廃れた公園にまで私を連行した。 「……大学は、いいの、か?」  余裕を持って一限目から出席出来るであろう時間にはもう家を出たんだ。てっきりあのまま大学に向かうとばかり思っていたのだが、此処では随分と離れている。 「あぁ、今日は午後からだから大丈夫だ。あの時間に家を出たのは、アイツらに渡す物があったのと……いつもは、家に、居たくないから習慣化しているだけ、だな」  ブランコに乗り、足だけで軽く揺らす。私は膝の上に抱えられた状態で一向に離してくれる気配はない。 住宅街の一角にあるこの公園には私達以外には誰も居ない。動くとギーギーと煩いブランコ、ペンキの禿げた木製のベンチ、他には小さな砂場があるだけの狭くて管理がずさんで小さな公園よりも、少し足を伸ばして、もっと大きな遊具のある綺麗な公園に子連れの人達は集まっているのだろう。「……お前が、無事でよかった」 ふっと緊張の糸が切れたのか、急にギュギュッと抱き締められて骨が軋む。きっと彼はその生い立ちのせいで一度も小さき者や動物なんかを相手にした事が無いのだろう。加減が一切出来てはおらず、私が相手じゃなかったら骨が折れるか、下手をすると砕けていたかもしれない。 「でも、何でアイツらには見えなかったんだ?」  今度は一転して力を緩め、私のわがままボディの腰っぽい箇所を掴んで少し距離を取る。  見上げた彼の目の下のクマが昨日よりも少しマシになっていたもんだから『昨晩は普段よりかは眠れたのか』と、つい関係の無い事を考えてしまった。が、疑問には答えようと「——ハッ」と笑い、胸を張る。だけどこの体ではただ腹を突き出しただけみたいにしかならず、ちょっと後悔した。「あの程度の者達に姿が見える程、下等な魔力は持っちゃおらんからなっ!」 突き出したままの腹、そして何故にこの口調なんだ。……と、やってしまってから後悔したが、もう遅い。変に《彼》が自分の《後継者》である事

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