เข้าสู่ระบบ1度口を離すと、優希を後ろ向きに自身の膝に座らせ、露出した首から肩に何度も口を寄せる。
そのまま背中へ熱い唇が移動すると優希は思わず背中を仰け反らせた。 反ることで突き出た胸を、服越しに大きな手が下から掴み、人差し指で先端を掻く。 思わず優希の太ももに力が入った。 「ちょ…っと、ちょっとまって!」 優希は流されそうだったが、背中を怪我しているかもしれないことを思い出し不埒な動きをする手を押さえる。 「背中を見せて。怪我してるなら消毒しないと。」 「さっき三滝秘書が支えてくれた時に彼女の爪が引っかかっただけです。大したことないのでそんなに心配しないでください。」 邪魔されたことを抗議するかのように暁春が耳を噛むと、優希の肩が震える。 甘い刺激に思考がまとまらないが、1つだけ確認しなければいけないことに気づいた。 「もう!真剣なの、止めて。」 本気で拒否する様子にさすがに動きを止めた暁春は優希のお腹で指を組む。離れるつもりはないようだ。 「さっき見た時はワイシャツに破れたところなんてなかったのに、どうやって有美ちゃんの爪が暁春の背中に引っかかるの?何か危ないことに巻き込まれてない?」 優希の問い詰める言葉に暁春は目を瞬いた。子供のようなその仕草に頭の片隅で可愛いという単語が浮かんだが、それ以上に事件、事故の様々な可能性を考えた。 暁春の立場では全体を考えて1部を切り捨てる選択をしなければいけない時もある。そうなれば恨まれることもあるだろう。 背中を刺されているのではないか。まで思考が行った時、ケロリとしている暁春の様子を見て否定する。 その時、有美の爪という言葉に違和感を覚えた。 本当に彼女の爪が引っかかったというなら、どうやったら服を破らずに爪が血を出すまで素肌に引っかかるだろうか。服を脱いでいないとありえないのではないか? 彼女は決して純心な乙女ではない。女性の爪痕が男性の背中に残ることの意味は理解できる。 荒唐無稽な考えだと思ったが、事件や事故の線が薄くなった今、1番可能性が高いと感じてしまった。 何故今日は急にこんな考えに走ったのだろうと優希は不思議に思ったが、悪い考えは止まらない。 2人が隣合って歩いていた映像が頭の中に流れる。運命の相手のように調和していた。 何かを考えているのか、優希の様子を伺っているのか、黙ったま優希を見る目がどこか見知らぬ人のように感じて無意識に眉を顰める。 緊張で喉が詰まる感覚が不快だった。 「嫉妬?」 何故何も言わないのか、不安になり、そう口に出そうとした瞬間に暁春の磁性のある声がした。目を細め、口元に軽い笑みを浮かべる姿は後暗いことなど何もないようだった。 「…なに」 真剣に取り合われていないと感じ、意図せず声が低くなる。そんな話じゃなかったじゃないかと思った。 その態度も愛おしいというように目元を下げる暁春。 「お馬鹿さん、犯人はあなたじゃないですか。」 優希は意味がわからずいっそう眉を寄せた。 ( 朝出てから会ってもいないのに?いったいいつから出てる血だと言うの…。) 暁春は険しい顔のままの優希を自分に向かせ、耳に小さくキスをすると囁いた。 「2週間前、あなたは落ちないように必死に俺にしがみ付いていた。」 「腕だけじゃなく、この足でも、俺を離さなかったじゃないですか。」 めくれた裾から伸びる足を人差し指でゆっくりなぞられると、その刺激に優希の太ももが暁春の腰を締め付けた。 「忘れた?」 からかうような暁春の声に、先週の出来事を思い出した優希の顔が、暗がりでもわかるほど赤くなった。「…時間がある時にでも、三滝社長とゆっくり話をしたらどうかしら。彼も離れていた間のことをゆうちゃんから聞きたいと思うの。」 老夫人の提案にそうだろうかと不安に思うも、とりあえず頷き車に乗った。 手を振る老夫人の横で、老人も優希に軽く頭を下げるとすぐに老夫人に視線を向け、彼女の肩にストールをかけた。 (今、おじいさんにとって1番気にかかってることはおばあさんなのね。) あからさまな老人の態度に思わず優希の口元に笑みが浮かぶ。 そこまで気にかけてもらえる老夫人が羨ましく思うと同時に、今や自分と暁春ではその未来像が浮かばなくなっていることに気づき、優希の胸に悲しみが滲む。 車が本邸の門から出る時、玄関から暁春が出てくるのが見えた。 その傍らに有美がいるのも見え、優希は目を逸らして前を向く。 遠目で見た2人は最初に見た時に感じた通り、お互い揃えたように服装のバランスが取れていた。 まるでカップルがパーティのドレスを合わせるように、デートでペアルックを楽しむように。 優希は息苦しさを感じて窓を開けた。 春の夜風が顔を撫で、どこか懐かしい匂いが鼻腔に触れる。 (…人がずっと覚えているのは嗅覚だったかしら。) 夜の少し湿った匂いは子供の頃に嗅いだものだったか、それとも昼は外出出来ないからとたまに暁春としていた夜の散歩の時だったか。 思い出せないが、とても懐かしい気持ちになるのは、この匂いを嗅いでいた当時の彼女はとても幸せを感じていたのだろう。 優希は背もたれに体を預けて目を閉じると、自然と体の力が抜け、今日1日緊張していたことを思い出した。 あの2人を見た時の嫌な気持ちは、懐かしい匂
優希が振り返ると、沈痛な面持ちの老夫人が立っていた。 眉毛を下げて視線を落とし、肩も落とした姿は桃子に退去を命じていた時の毅然とした姿と真逆だった。 「桃子と桜が本当にごめんなさい。あの馬鹿な2人が台無しにしてしまった…。」 頭を下げる老夫人に優希が慌てて肩を支える。 「謝らないでください!おばあさんが謝ることじゃありません!」 「あの2人は私が育てたの、私の育て方が間違っていたのよ…。本当に申し訳ない…。申し訳ない…。」 顔を下げたまま声を震わせる老夫人から少し離れた所に老人が立っている。 その表情は怒りなのか悲しみなのか、優希には判断がつかないもので、ただ分かるのは、老夫人を心配しているようだということだった。 優希は、顔をあげない老夫人の背中を優しく撫でながら話しかける。 「おばあさんとおじいさんが味方でいてくれたので大丈夫です。…お父さんも、たぶん庇ってくれたんだと思います。それだけで十分ですよ。」 ちょうどダイニングから見えなくなった隆一の背中に目を向け、優希は落ち着いた声で言った。 「だから顔を上げてください。結果的に妊娠を伝えることは出来ましたし、桃子さんに笑われる原因を作ったのも私ですから…この後のことは、帰ったら暁春と話します。」 老夫人は顔を上げると優希の手を握る。 「もしあの子が馬鹿なことを言ってきたら…、必ずおばあさんに連絡を頂戴。」 その言葉に優希の表情が固まった。 考えないよう
「細工、しましたね。」 優希が反応をしないと、暁春は誰に言っているのか知らすように口調を変えた。 優希がそろりと目線をあげると、先ほどの睨みは和らいだが、それでも凍りつきそうな視線でまっすぐ見てくる暁春と目が合う。 その目には老人の言う通り喜びは無く、優希は歯を噛み締めた。 「え?何のこと?」 桜は戸惑った声をあげるが、桃子は察したのか大きく吹き出した。 隆一が嫌そうな顔をするも桃子は気付かず、今までで1番蔑んだ目で優希を見て言った。 「優希ちゃん、地味なくせに案外行動派なのね。あはっ、コンドームに細工するなんて!」 大きな声で言われ優希は耳まで真っ赤にして俯いた。 隆一はますます眉を寄せて桃子を睨みつける。 「どうやったの?やっぱり穴を開けたのかしら?」 静かなダイニングには桃子の楽しそうな声だけが響き、優希は居た堪れず、さらに顔を俯かせた。 俯くことはより自分を惨めに見せるだけだとわかっていても、暁春が笑うならまだしも、桃子から笑われることに優希は顔を上げて耐えることができなかった。 - 既に妊娠を知っていた老人は密かに暁春と有美の反応を見ていた。
「本気で言ってますか?」 沈黙は桜の冷たい声で破られた。 有美に向けていた笑顔の欠片も見えない表情は、顔立ちは違えど暁春と似ており、2人は兄妹なのだと改めて思わされる。 「本当よ。今6週目になるわ。」 優希は桜をまっすぐ見て頷いた。 ようやく言えた達成感から少し気分が軽くなったように感じるが、目の端にぼんやりと見える暁春を直視することは出来ずにいた。 「有り得ません。お兄ちゃんはいつも避妊をしていました。何故妊娠が可能なんですか?」 桜の言葉に優希は眉を寄せた。 (桃子さんと桜ちゃんが何故知ってるの…?) 先ほどの桃子の発言でも感じたが、夫婦生活のことを何故2人が知っているのか…、優希 は暁春と有美を見る。 暁春は何か考え事をしているようで、グラスを握ったままテーブルの上をぼんやり見ており、その隣の有美は呆然とした表情で優希を見ていた。 「嘘か、野良の種か…どっちかしらね。」 桃子が懲りずに愉快そうな顔でテーブルに乗り出し言った。 不倫を言われていることに気づいた優希が顔を青くさせる。 彼女はコンドームへの細工の説明ばかりに気を取られて、他の男性の存在を疑われたり、そもそも妊娠自体を疑われる可能性を失念していたのだ。 「野良なんてっ…お腹の子は正真正銘暁春の子供です!」 「ふーん?まず妊娠が本当ならエコー写真見せて欲しいわね。」 優希の焦った声に桃子の眉毛が上がる。 「持ってきていないので、今はお見せできません…。ですが、井竜中央病院に記録があります。」 「そう。まぁ、妊娠が事実だとしても、暁春の子供かどうかの疑問は残るけどね。」 「うちの病院の産科で優希ちゃんの元カレが働いてるらしいじゃない。…その元カレの子供だったり
しかし優希の想像とは違い、桜は有美と優希を比較するような発言をすることはなく、むしろ優希をいないかのように全く絡んでこなかった。 桃子も隆一に熱心に話しかけ、いつもことある事に言っていた優希への「指導」が来ることもない。 優希を煩わせるものがなく一見平和な食事会だが、しかし優希は惨めな気持ちだった。 目の前の暁春は隆一と話しながら時折有美と穏やかに話し、その話し方や接し方は優希へのそれよりもとても自然に感じられ、さらに桜と有美の仲の良さがまるで有美こそが彼の妻のように思えた。 本来はとても美味しいはずの料理も美味しく感じず、優希は微笑みを顔に貼り付けながら機械的に料理を口に運ぶ。 「ちょっといいかしら、それぞれで話すのもいいけど、みんなの最近の出来事を聞きたいわ。」 優希を心配そうに見ていた老夫人はフォークを置くと咳払いをして言った。 皆が話を中断して老夫人を見るのを確認し、再び口を開く。 「まずは私からね。みんなも気づいていると思うけど、最近おじいさんと喧嘩をしているのよ。お墓に入るまでに仲直りできるかも分からないわ…。」 上品に頬に手を当てため息をつく老夫人。 優希は本邸に来た時から感じていた違和感の正体に納得した。 先日来た時はべったりという表現がしっくりくるほど老夫人の隣をキープし、老夫人はお菓子を食べさせるなど仲睦まじい2人を見せていたのに今日は2人が話すとこを見ておらず、食事中も老夫人は老人の隣に座らなかった。 ちらりと老人に目を向けると、表情は変わらないが片眉が僅かに動いたのを優希は見た。 「じゃあ次はゆうちゃんね。」 老夫人が妊娠を伝える機会を作ってくれたのだと理解した優希は、緊張で目を泳がせる。 「えっと…。」 心臓は破裂しそうなほど激しく動き、膝に置いた両手は緊
暁春はそう言いながら椅子を引き、ずっと立っていた老夫人を座らせると、その隣の椅子も引いて老人に促す。 年長者の2人を気遣っているように思える行動も、一瞬老人に向けた挑戦的な目つきに裏を考えてしまった美代子は、持ってきた椅子を置いて急いでキッチンに入っていった。 - 優希はトイレの鏡の前で化粧を直していた。 隆一との再会の衝撃が落ち着いた今、彼女の頭には混乱が生じていた。 本邸では今日のような食事会は定期的に行われているが、過去の食事会は家族のみで、招待されたとしても親戚の人たちだけだった。 だから優希は自然と、食事会は気軽なホームパーティではなく、家族間の近況報告も兼ねたものだと思っていた。 そこに有美と隆一を連れてきた暁春の意図が分からず、優希はため息をつく。 考えに耽ると手元の注意が疎かになり、マスカラがまぶたに着いてしまった。 慌てて拭き取ろうとしたら今度はマスカラを落としてしまい、ベージュのワンピースにマスカラの黒が付着した。 優希は思わず天を仰ぐ。 (上手くいかないわね…。) 妊娠報告の失敗や事故、有美と暁春の過去、そして先日の喧嘩など、最近の物事のうまくいかなさに優希は再び大きなため息をついた。 桜が昔から有美を姉のように慕っていたとは老夫人から聞いており、今日の食事会は優希を好いていない桜による、有美との比較会になるのではないかと憂鬱になる。 それでもお腹に手を当て、妊娠をきちんと伝えるのだと自分を奮い立たせた。 何とか身なりを整え終わった優希はトイレを出てダイニングへ行く。 ダイニングに近づくにつれ、桜が甘えるように話している声が聞こえてくる。 おそらく有美に話しかけているのだろう。 出入口のとこで一旦足を止め、深呼吸をすると笑顔を作り中に入る。