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第55話「冷炎の騎士との戦い」

Auteur: fuu
last update Dernière mise à jour: 2025-10-01 00:44:05

祠を揺らすほどの衝撃音が響いた。

冷炎の剣と俺の銃弾がぶつかり合い、青白い光と白い閃光が入り乱れる。

「くっそ……速ぇ!」

『ナギ! 騎士の剣、普通の炎と違って“熱”がない!』

確かに、剣が石を斬り裂いても、焦げ跡ひとつ残らない。

ただ冷たい青白い光が残るだけだ。

「……熱がねぇ炎なんて、ただの闇じゃねぇか!」

騎士が冷たい声を響かせる。

「熱は怒りを生み、炎は争いを煽る。

冷炎こそ、静寂と平和をもたらすのだ」

「笑わせんな! 炎は怒りだけじゃねぇ!

暖めて、照らして、繋ぐんだ!」

俺は銃を撃ち放つ。

——バンッ!

光弾が騎士をかすめ、壁に衝撃を刻む。

だが騎士は怯まない。

剣を振り下ろすたび、祠の中の空気が凍りつき、息すら白くなった。

「ぐっ……寒っ……!」

『ナギ! このままじゃ凍えちゃう!』

騎士の剣が再び振り下ろされる。

咄嗟に銃で受け止めるが、冷気が腕を伝って痺れさせる。

「っ……やべぇ……!」

そのとき、祠の奥から微かな光が漏れた。

小さな焔が、まるで震えるように揺れている。

『ナギ! あれ……火の神の残り火だよ!』

「残り火……?」

『うん! それを繋げば、この世界に本当の火を取り戻せる!』

「なるほど……なら——」

俺は残り火を背に守りながら、騎士に銃口を向けた。

「お前は冷炎を掲げてるが……火を完全には消せなかったんだな!」

騎士の瞳が一瞬揺らぐ。

「……それは……」

「残り火は、人が火を求め続けた証だ!

だから——絶対に消させねぇ!」

リィナが銃身を震わせ、力強く重なる。

『ナギ! 一緒に、残り火を燃やそう!』

「よし、全力でいくぞ!」

俺は銃に残り火の光を宿し、引き金を引いた。

——轟ッ!

白光と焔が混ざり合い、冷炎の騎士を正面から撃ち抜いた。

「ぐっ……これは……本物の……炎……」

騎士の甲冑に亀裂が走り、冷たい焔が次々と散って消えていく。

「……熱い……温かい……こんなものが……まだ……」

その声を最後に、騎士の身体は崩れ、闇に溶けて消えた。

残り火がふっと輝きを増し、祠全体を照らす。

「……やったな」

『うん! 火はまだ、生きてる!』

俺は銃を背に戻し、残り火の温もりを掌に感じながら息を吐いた。

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