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第1118話

Author: 栄子
輝と音々の結婚発表後、綾も忙しくなった。

結婚披露宴や招待客のもてなしなどは、岡崎家の年配者たちが取り仕切ることになった。

輝と音々は、ウェディングドレスを選ぶことだけに集中すればよかった。

片や、音々は北城に知り合いが少ないため、結婚式の準備は意外と大変だった。

そこで、綾は音々のウェディングプランナー役をかって出た。

今日は音々がウェディングドレスを選びに行く日だったので、綾は付き添っていた。

輝は家で子供たちの面倒を見ていた。

北城最大のウェディングドレス店の店長は、今日来店するのは星城市の名家、岡崎家の嫁だと事前に連絡を受けていたので、万全の準備を整えていた。

音々と綾が店に到着すると、店長は並々ならぬ熱意で二人を迎えた。店の従業員全員が二人を見ると、敬意を払いながら挨拶した。「二宮社長、中島さん、ようこそいらっしゃいました!精一杯お手伝いさせていただきます!」

音々は手を振り、こんなにもてはやされるのは落ち着かない様子で言った。「そんなに大勢いなくても大丈夫ですよ。一人だけで十分です」

すると、店長はすかさず店員たちに指示を出した。「さあ、みんな、仕事に戻って」

そう言われて、店員たちはそれぞれの持ち場に戻っていった。

店長は音々と綾を見て言った。「中島さん、二宮社長、当店は世界的に有名なウェディングドレスデザイナーと提携しております。まずはごゆっくりご覧ください。何かご希望があれば、遠慮なくおっしゃってください」

音々はウェディングドレスについて特にこだわりがなかったから。「まずはお店にあるドレスを見せてください」と言った。

「かしこまりました。それではこちらへどうぞ」店員は二人を2階へ案内した。

2階は広々としたショールームになっていて、いくつかのエリアに分かれていた。

和装とウェディングドレス、そして少し珍しいデザインのウェディングドレスもあった。

綾は音々に尋ねた。「和装もウェディングドレスも必要だよね?」

「輝が、お色直しも含めて最低3着は必要だって言うの」

「じゃあ、まずは和装から見てみようか」

音々は頷いた。「ええ」

店長は二人を和装エリアへ案内した。

すると、音々は初めて、見てみると和装だけでも数多く種類があることに驚いた。

店長は一つ一つ説明してくれたが、音々は頭を抱えてしまった。

音々は自
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