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第1122話

Autor: 風羽
彰人は携帯電話を握りしめたまま、顔色を失っていた。

目の前には妻がいる。

腕の中には結代――彼と願乃の子どもがいる。

だが、電話の向こうにあるのは鈴音との「最後の別れ」だった。

男は決断できずに立ち尽くす。

商場ではいかに冷酷果断であろうとも、この瞬間だけは迷った。

行かなければ、藤宮先生から受けた恩情に、顔向けできない――そう思ってしまったのだ。

そのとき、願乃が静かに口を開いた。

声はひどく柔らかく――

「昔ね、お姉さんたちから聞いたことがあるの。結婚相手は家柄が釣り合っている人がいいって。私はそうは思わなかった。だって、必ずしも幸せそうじゃなかったから。だから、私は本当に好きな人と結婚したかった……」

一度、言葉を切り、微かに息を吸う。

「でも、今になって分かったわ。最後は……結局、同じなのね。彰人、行ってきなさい。行かなければ、あなたはきっと後悔する。

彼女が亡くなったら、私たちはいずれ、憎み合う夫婦になる。それなら……行ったほうがいい」

……

彼女は彼の代わりに決断していた。

だが、彰人はそれを、願乃の思いやりと寛大さだと受け取ってしまった。

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Comentarios (1)
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良香
もう別れ〜。肺がん中期なら看取ってからまた追いかけたらええやん。 生き残ったら、面倒見てやれば良い。この手を離せないならいっそ、この人と添い遂げれば良い。願乃は諦めな。
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