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第540話

Author: 風羽
智也が去ったあと——

澄佳は背をドアに預けたまま、長い間動けなかった。

八年。

それほどの時間と想いを捧げてきたのに、簡単に立ち直れるものではない。

心の奥底で、彼を許すことはもうできなかった。

彼に与えられる最後のものは、ほんのわずかな体面だけ。

「戻る」と口にしたその言葉は、彼女にとっては生きながら少しずつ切り刻まれるような、最後の拷問に等しかった。

もし本当に選ばれていたのなら、どうして他の女の存在があるのか。

しかも、その女は長年彼の傍にいて、彼女は自分に嘘をつき続けてきた——

ただの幼なじみ、家族同然だと。

けれど実際は、母親公認の「嫁候補」だったのだ。

——澄佳、お前の八年は、ただの笑い話だった。

……

扉ひとつ隔てて、智也は壁にもたれて煙草をくゆらせていた。

理性は「去れ」と告げる。

だが足は動かず、彼女のいる場所に縛り付けられる。

それは後悔かもしれない。

……

深夜、智也が帰宅すると、母は宵食を用意して待っていた。

「金を失ったくらいでくよくよするな。真面目に仕事を続けて、いい人を見つけて結婚しなさい。うちは昔ながらの家だ、子をも
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