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第10話(38)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-12-30 11:00:43

「あのときは、ぼくの意識は朦朧としていたっ。だいたいお前も、変な気になってなかっただろ」

「今はなってる?」

 千尋が耳に直接唇を押し当て、意味ありげに囁いてくる。わざわざ確認しなくても、ニヤニヤとしている表情が容易に想像できる。

「なってないとしたら、ぼくの腰に当たっているものはなんだ」

「俺の正直な気持ち」

 背後から千尋にきつく抱き締められ、隠しようのない熱い欲望がさらに押しつけられる。

 一緒に風呂に入りたいと言われたときから、こういう状況になるのはわかりきっていた。それに、こんなことを言われると――。

「今日は、先生を独占できる。オヤジには何度も念を押しておいたんだ。絶対電話してくるなって」

「何も、そこまでしなくてもいいだろ……」

「先生は、オヤジの意地の悪さを甘く見てる」

 息子にここまで言われるのも、ある意味すごいかもしれない。思わず和彦が声を洩らして笑うと、千尋に首筋を舐め上げられた。驚いて水音を立てた和彦だが、一向に気にかけた様子もな
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  • 血と束縛と   第22話(22)

    ****「――賢吾が、あんたのための着物をあつらえさせていると聞いた」 守光の言葉に、シートの上で和彦はわずかに身じろぐ。 寛ぐよう言われたが、総和会会長と並んで車の後部座席に座っていて、背筋を伸ばす以外の姿勢を取れるはずもない。やはりどうしても、緊張してしまうのだ。 そんな和彦を見て、守光は口元に淡い笑みを浮かべる。「旅行にも一緒に行ったのに、まだ、わしに慣れんかね?」「いえっ……、突然のことで、驚いているだけで……」 クリニックでの仕事を終え、いつものように護衛の組員が運転する車で帰宅していたのだが、途中、あるビルの地下駐車場に入ったかと思ったら、隣に停まっている車に移るよう言われた。そして、今のこの状況だ。 守光は、ビル内にある料亭で会食を終えたところで、これから別の店に向かうそうだ。そう、守光が決めたのなら、和彦は付き従うしかない。 濃いスモークフィルムが貼られたウィンドーから、外を流れる夕方の街並みはあまりよく見えない。この車は、総和会会長の身を守るための動く要塞だ。見た目からして威圧感に溢れており、その前後を護衛の車が守っている。 こういう状況に身を置いていると、自分は総和会会長のオンナになったのだと、不思議な感慨をもって実感できる。まだ現実味は乏しいのだが、紛れもない事実だ。 ただ、守光が相手だと、どう振る舞えばいいのかいまだにわからない。賢吾と知り合った当初もわけがわからないまま振り回されていたが、そうしているうちに、あの大蛇の化身のような男に慣れていった。 しかし守光は――。 一瞬見ただけでの、九尾の狐の刺青を思い出し、和彦は小さく身震いする。あれは触れてはならないものだと、本能が訴えていた。 身を固くしている和彦の膝の上に、あくまで自然に守光の手が置かれる。「そう、着物の話だ。せっかくだから、わしもあんたに着物を仕立てて贈ろうと思っている。この先、何枚あっても困らんものだ」 遠慮の言葉が咄嗟に口をついて出そうになったが、守光の強い眼差しを向け、そ

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  • 血と束縛と   第6話(3)

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  • 血と束縛と   第6話(13)

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