Se connecter賢吾が目を細め、ひどく酷薄そうな表情となる。このとき和彦の心臓は、確実に賢吾の見えない手に鷲掴みにされていた。
「そうしてほしいか? そうなる覚悟で、三田村と寝たんだろ」 「……だったら、順番はぼくが先だ。先にあの男を手にかけたら、金輪際、ヤクザに手を貸してやらない」 賢吾の目の中で、大蛇がゾロリと身をしならせたような気がする。巨大な体で和彦をギリギリと締め上げてくるのも時間の問題かと思われた。 本当は、賢吾に向けてこんなことを言う恐怖に、身も心も凍りついていた。些細な衝撃で砕け散っても不思議ではないほどだ。 しかし賢吾は、和彦を手荒に扱おうとはしなかった。それどころか、また唇を吸ってくる。もちろん、その口づけに応える余裕は和彦にはない。されるがままだ。 「やっぱり肝が据わってるな、先生」 「これがぼくなりの、ヤクザらしい駆け引きだ。……与えられるばかりじゃ、退屈する。たまには、自分から欲しがらないと……」 「俺のオンナなら、それぐらいふてぶてしくて、逞しくないとな。見た目は色男で、体は、どん和彦の予想を上回って、事態は急速に動き始めた。 総和会出資によるクリニック経営の話を承諾した三日後には、午前中のうちに総和会本部へと連れて行かれ、藤倉の立ち会いのもと、膨大な数の書類にサインをさせられたのだ。 長嶺組出資のクリニックを任されることになったときも、同じように書類にサインはしたが、ここまで多くはなかった。 当然の義務とばかりに藤倉は、書類の一枚一枚について説明をしてくれたが、公的なものはほとんどなく、大半が、総和会内で回され、保管される書類だった。 自分を総和会に縛り付けておくための契約書だと、万年筆を握る手を機械的に動かしながら、自虐的に和彦は考える。自分が決断した結果だということは痛いほどわかっているのだ。例え、そうするしかなかったとはいえ。 強い力に身を委ねた先にあるものについて想像力を働かせてみるが、まるで靄がかかったように、何も思い浮かばない。安寧があるとは思えなかった。正体のはっきりしない何かが真っ黒な口を開けて待っているような、漠然とした不安だけは、ひしひしと感じる。当然、重圧も。「――佐伯先生に、総和会の加入書を書いていただいたときのことが、昨日のように思い出されますよ」 和彦が記入し終えた書類を確認しながら、藤倉が感慨深げに言う。和彦は微苦笑を浮かべていた。そのときのことは、和彦自身、今も鮮明に覚えている。「あのときは、藤倉さんにはご迷惑をおかけしました」「いえいえ、ご迷惑だなんて。我々も少々強引に物事を進めすぎたと、反省したんですよ。なんといっても、佐伯先生はまだ、まったく堅気の方でしたから」 悪気はないのだろうが、今は違うと言外に言われたようなもので、和彦は複雑な表情となる。しかし藤倉はそんな変化に気づいた様子もなく、さらに言葉を続ける。「その佐伯先生が、今では総和会会長の信頼を得て、出資を受けて事業を始めるまでになられたんですから、すごいことです。しかも、短期間のうちに」 藤倉も当然、和彦と守光がどんな関係にあるのか知っているだろう。そのうえで、嫌悪や侮蔑といった感情を微塵も表に出すことなく、当初の頃のように接してくるのだから、感心するしかなかった。総和会の人間の誰もが、和彦の前で
力をなくした片足を持ち上げられ、再び内奥の入り口に道具の先端が押し当てられる。この瞬間、ゾクゾクするような強烈な疼きが背筋を駆け抜け、和彦は自分の反応に戸惑った。「あっ、いや――……」 反射的に制止しようとして、守光と目が合った。淫らな行為の最中とは思えないほど冴えた眼差しに和彦は射抜かれ、発しかけた言葉は口中で消える。代わりに口を突いて出たのは、甘い呻き声だった。** 和彦は布団の上で仰向けとなったまま、茫然自失としていた。さんざん道具で嬲られ、啜り泣きを洩らしても許してもらえず、ひたすら快感を与えられ続けたのだ。限界まで体力も気力も削り取られ、まさに精根尽き果てた状態だった。 動けない和彦の体の後始末をしたのは、吾川だった。体の汚れを拭い、新しい浴衣を着せたあと、ひどい有様の布団を入れ替えて、道具すらも布に包んでどこかに持って行ってしまった。和彦は、羞恥する感覚さえ麻痺しており、ぼんやりと吾川の行動を目で追っていた。 恭しく頭を下げて吾川が部屋を出ると、ほぼ入れ違いで守光が部屋に戻ってくる。どうやら湯を浴びてきたらしく、白髪が濡れていた。 和彦が緩慢に体を起こそうとすると、側にやってきた守光が手を貸してくれる。「……すみません」 言葉を発して初めて、自分の声が掠れていることに気づいた。「あんたがあんまりいい声で鳴くから、無茶をしてしまった。すまなかった」 布団の傍らに座った守光の言葉に、和彦は返事のしようがなかった。ここで、部屋の主である守光を畳の上に座らせ、自分が布団の上にいるのも失礼だと気づき、慌てて布団から下りようとする。守光は笑って首を横に振る。「かまわんよ。今夜はここで寝るといい」「いえ、そんな――」「あんたに、その権利は十分ある。なんといっても、わしの大事で可愛いオンナだ」 和彦はピクリと肩を震わせ、うかがうように守光を見る。口元に薄い笑みを湛えた守光は片手を伸ばし、乱れたままの和彦の髪を撫でてきた。それだけで、疼きにも似た感覚が背筋を駆け抜ける。体は離しはしたものの、精神的にまだ守光と
繋がりを解くと、和彦は内奥から残滓を溢れさせながら、言われるままうつ伏せとなり、腰を突き出した姿勢を取る。苦痛に近い羞恥があったが、守光の言葉通り、和彦の体はやはり反応していた。欲望は萎えることなく熱く震えている。 守光が文箱から何かを取り出す音がして、ビクリと腰を震わせる。「怖がらなくていい。あんたに痛みを与えることは、絶対にしない。これまでしてきたおもちゃ遊びと同じだ。ただ少しばかり――」 守光の欲望に擦り上げられ、精を注ぎ込まれたばかりの内奥は、ひどく脆くなっている。ひんやりとして硬く滑らかな感触が押し当てられると、嬉々として淫らな肉の洞に呑み込んでいた。「くっ……、んっ、んっ、ううっ……」 太い部分を受け入れて、苦しさに喘ぐ。守光が新しく作らせたという道具は、歪な形をしているようだった。全体に太くなっただけではなく、括れの部分がより強調され、さらにはごつごつとした小さな瘤のようなものがいくつもあるのだ。 それでなくても敏感になっている襞と粘膜が、緩やかに道具が出し入れされるたびに瘤の部分で強く擦り上げられ、和彦は腰を揺らして反応する。「ひあっ、あっ、待って、くだ、さ――、うあっ、あっ……、んんっ」 一度道具が引き抜かれ、内奥から守光の精と潤滑剤がドロリと溢れ出してくる。そこに新たに潤滑剤を塗り込まれ、道具を挿入された。いままで、誰も訪れたことがないほど奥深くに。和彦は布団を強く握り締め、甲高い声を上げる。それは、女のような嬌声だった。 頭の中が真っ白に染まり、目を開けていながら、何も見えていない状態となる。体中の力が抜けていると知ったのは、それから数瞬後だった。道具を咥え込んだまま、絶頂に達したのだ。「――やはり、あんたなら気に入ってくれると思ったよ。このおもちゃを」 そう言って守光の手が開いた両足の間に差し込まれ、組み紐を解く。軽くてのひらで擦り上げられただけで、和彦の欲望は破裂し、精を噴き上げた。「いつだったか、わしの友人という男とここのエレベーターですれ違っただろう。あの男は、わしの難しい注文にも、文句を言いながらも応え
もう一度たっぷりの潤滑剤を内奥に施されてから、浴衣の前をわずかに寛げた守光が腰を密着させてくる。落ち着いた佇まいからは想像できないほど高ぶった欲望が、すっかり慎みを失って色づいた内奥の入り口に押し当てられたかと思うと、身構える間もなく押し入ってきた。「ううっ――」 感じやすくなっている内奥の襞と粘膜が、強く擦り上げられて歓喜する。和彦は喉元を反らし上げて目を閉じていた。瞼の裏で鮮やかな閃光が飛び交い、もしかすると放埓に声を上げていたのかもしれないが、この瞬間和彦は、快感の嵐に翻弄され、何もわからなくなっていた。内奥の刺激だけで絶頂に達していたのだ。 ようやく自分を取り戻したとき、激しい呼吸を繰り返しながら、すがるように守光を見上げていた。「あんたを血肉にするどころか、わしのほうがあんたに食われそうだ。――わしの肉でも、欲しがってくれるかね?」 うっすらと笑みを浮かべた守光が軽く腰を揺すり、繋がっている部分が淫靡な音を立てる。和彦は顔を背けて唇を噛んだが、守光はさらにもう一度腰を揺すってから、和彦のあごに手をかけてきた。 唇が重なってきて、口腔に舌が侵入してくる。一方で内奥では、奥深くまで欲望が押し入り、丹念に和彦の弱い部分を突いてくる。 甘い毒のような快感で酔わされ、自分の体だけではなく、心まで支配されていくのを感じた。和彦はもう抵抗する気力どころか、意味すら失い、あとはもう守光を受け入れていくだけだった。 おずおずと両腕を動かし、浴衣越しに守光の背にしがみつく。いまだ一度しか目にしたことのない九本の尾を持つ狐の姿を脳裏に描きながら。 和彦のこの行為が意味を持つことを、守光は知っていた。「――淫奔だが、慎み深くもあるオンナが、ようやくわしを受け入れてくれた」 笑いを含んだ声でそう呟いた守光が、内奥深くを抉るように一度だけ突き上げてくる。和彦はビクビクと体を震わせて、尾を引く嬌声を上げる。 精を放つこともできず、快感を味わいながらも苦しんでいる和彦の欲望を片手で握り締め、守光が胸元に唇を這わせ始める。所有の証を刻み付けるように、容赦なく鮮やかな鬱血の跡を散らし、そのたびに和彦は喘ぎ声をこぼす。興奮で凝ったままの胸の突起
唾液を流し込まれて従順に受け入れると、再び流し込まれ、そのまま濃厚に舌を絡め合っていた。 和彦の喉の嚥下の動きを楽しんだのか、唇が離れると同時に、喉元からも手が退く。その手は、迷うことなく和彦の両足の間へと這わされ、欲望を握り締められる。和彦の欲望は、いつの間にか身を起こしていた。「賢吾には、しつこいほど言われていた。あんたに痛みを与えることだけは絶対にしてくれるなと。そのあんたは、痛み以外のものには、よく反応する。羞恥や屈辱、さっきのような苦しさにも。――命の危険を感じて反応するとは、本当に、どれだけ淫蕩な性質を持っているのか」 そう言いながら守光のてのひらに欲望を扱かれ、羞恥に身が燃えそうになる。和彦は顔を背けたが、体は無防備なままで、守光に両足を大きく左右に広げられても、抵抗すらしなかった。「うっ、うっ」 片手では欲望を扱きながら、守光のもう片方の手が柔らかな膨らみに触れてくる。さんざん男たちによって弄ばれ、慣らされたため、本能的に体を強張らせながらも、強い刺激を期待して腰が妖しく揺れる。繊細に蠢く指に柔らかな膨らみを丹念に揉みしだかれ、探り当てられた弱みを弄られる。たまらず和彦は甲高い声を上げて身悶えていた。「いっ……、あっ、あっ、んんっ――」 欲望の先端を指の腹で擦り上げられて、自分がもう濡れ始めていることを知る。「苛まれて悦ぶとは、いやらしいオンナだ」 愉悦を含んだ声で呟いた守光が、両足の間に顔を埋める。欲望を口腔に含まれて、和彦は腰を震わせて仰け反っていた。根元を指で擦り上げられながら、口腔の粘膜によって欲望は包み込まれ、締め付けられる。愛撫自体の巧みさもあるが、この愛撫を施しているのが守光だということに、官能を刺激されていた。「ひっ……」 先端を舌先でくすぐられたあと、括れにそっと歯が当てられる。硬い感触は恐怖を感じるには十分だが、しかし和彦の全身を貫いたのは、快美さだった。隠しようのない反応として、先端からはしたなく透明なしずくを滴らせると、守光は喉を鳴らして笑った。「こういう反応を見ると、ついこう思ってしまう。――そもそもあんたは、本当に痛み
本能的な怯えが全身を駆け巡り、動けなかった。守光にやすやすと布団の上へと押し倒され、和彦は顔を強張らせたまま、守光を見上げる。考える前に、こんな言葉が口を突いて出ていた。「……どうして、ぼくなのですか……」「あんたは、長嶺の男とこれ以上なく相性がいい。理由など、それで十分だと思わんかね?」 そう言いながら守光の手に浴衣の帯を解かれる。和彦は身じろぎもせず、じっと守光を見上げ続ける。向けられる視線の強さから、和彦が考えていることがわかったらしく、守光は短く声を洩らして笑った。「納得いかないという様子だが、事実だよ。千尋はもちろん、賢吾まで骨抜きにしたあんただからこそ、わしは興味を持った。そしてわしも、あんたに骨抜きだ。賢吾たちは、あんた込みの長嶺組の将来を描いているだろうが、わしは、あんた込みの総和会の将来を描いている。つまり、わしらにとってあんたは、欠かすことのできない存在というわけだ」 浴衣の前を開かれて素肌を晒すと、容赦なく下着も引き下ろされる。守光は、満足げに和彦の裸体を見下ろしながら、胸元に冷たいてのひらを押し当ててきた。「――欠かすことができないということは、組織にとっても、長嶺の男たちにとっても、あんたは血肉になるということだ。あんたによって、男たちは生かされる」 なぜだか鳥肌が立った。和彦の反応に、守光は楽しげに目を細める。 ゆっくりと守光の顔が近づいてきて、このときほど目隠しが欲しいと思ったことはないが、目を閉じることもできず、狡猾な生き物が潜む両目に見つめられながら口づけを受け入れた。 丹念に唇を吸われて、口腔に舌が侵入してくる。決して性急になることのない、いつもの守光の口づけだった。和彦を味わい尽くすように口腔で舌が蠢き、歯列や粘膜をまさぐり、まだ眠っている官能を少しずつ刺激していく。その間も、守光の冷たいてのひらは和彦の体をまさぐっていた。 舌先同士が触れ、擦りつけ合ってから、唾液を絡めるようにして妖しく舌がもつれ合う。和彦が微かに喉を鳴らすと、守光の片手が喉元にそっと這わされていた。力を込められたわけではないが、今にも首を絞められるのではないかという怯えは、圧迫
さすがの賢吾も、和彦の心を煩わせるものすべてを見通すことは不可能らしい。「……最初にぼくを狙って、あんなことをした人間が、どんな顔をして、そんなことを言うんだ」「俺はいい。俺は、許されるんだ」 さすがに図々しい発言だと思って和彦が顔を上げると、待っていたようなタイミングで唇を軽く吸われた。「先生を狙って自分のものにして――見事に、骨抜きにされたんだ。そんな哀れなヤクザを、愛情深い先生なら、たっぷり甘やかしてくれるだろ?」 本当に図々しいと思いながらも、和彦はつい笑みをこぼしてしまう。 自
「――冗談じゃない」 答えたのは鷹津だ。それはこっちの台詞だと、心の中で呟いてから和彦は、端的に説明する。「この男は、刑事だ。しかも君らの天敵ともいえる、暴力団担当係」 さすがの中嶋も驚いたらしく、目を見開いて、和彦と鷹津を交互に見る。もっとも、切れ者ヤクザらしく、即座に澄ました顔で鷹津に一礼した。「先生は、変わったお知り合いがいますね」「……つきまとわれているんだ。長嶺組長も把握している。なんなら、総和会にも報告していいが」 中嶋はちらりと笑みを浮かべ、今度は和彦に一礼すると、ウェートレ
「俺を潰したいからなんて理由で、こいつに近づくなよ。大事な大事な、俺たちのオンナだ。お前みたいな下衆が近づいていいような、安い人間じゃない」「蛇みたいな男が、薄ら寒くなるようなことを言うな。……お前は、弱みを晒すような男じゃねーだろ。それとも、弱みを隠し切れないほど、そいつに骨抜きにされたか? 俺を失望させるようなことを言うなよ、クズどもの親玉ともあろう男が」「しばらく辛酸を舐めたようだが、相変わらず口汚いな、鷹津。そんなんじゃ、誰にも好かれんだろ。それこそ、女だろうが、男だろうが――」 急に賢吾の腕が肩に回され、抱き寄せら
そう言いながら鷹津が指を動かし、内奥を掻き回してきたかと思うと、襞と粘膜の感触を楽しむようにじっくりと撫で上げてくる。意識しないまま和彦の息遣いは妖しさを帯び、誘われたように鷹津が顔を寄せ、傲慢に命じてくる。「舌を出せ。吸ってやる」 この状態にあっても、鷹津の命令に従うのが嫌だった。和彦は唇を引き結んで顔を背けたが、鷹津は何も言わず内奥から指を抜き、体を起こした。ベルトの金属音とファスナーを下ろす音が聞こえて和彦は身を強張らせる。その間に両足を抱え上げられ、わずかに綻んだ内奥の入り口に〈何か〉が押し当てられた。「まあ、いい。長嶺のオンナを抱いたという







