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第5話(13)

작가: 北川とも
last update 게시일: 2025-11-11 11:00:41

 薄ら笑いを浮かべた表情から剣呑としたものを感じるが、和彦が知っているヤクザの空気とはどこか違う。この男は、違う意味で危険だ。少なくともヤクザは、人目がある場所で揉め事を起こす愚かさを知っているが、目の前の男は、人目をものともしていない。

「彼を離してください」

 緊張のためわずかに上擦った声が出る。それでも和彦は、男から視線を逸らさない。

「何か気に障ったことをしたというなら、保護者のぼくが頭を下げます。だから、手荒なことはしないでください」

「先生、俺何もっ――」

「黙ってろ」

 和彦は、千尋の喉元から男の手を退けようとして、反対に手首を掴まれた。すかさず千尋が男に飛びかかろうとしたが、和彦は片手で制する。普段は犬っころと呼んでいるが、千尋の本質は獣だ。一度牙を剥くと、多分自分を抑えられない。

 それに千尋では、この男には敵わない。得体の知れない禍々しさを秘めたところに、賢吾と似たような匂いを感じるのだ。

 これは、和彦が非力で、何より痛みが嫌いだからこそ身につけた嗅覚だ。

「薄汚いヤク
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    「布団を敷かせるよう言って、ついでに、安定剤も持ってこさせる。飲んで、さっさと横になれ。――総和会のことは、当分気にするな」 顔を伏せたまま和彦は微かに頷く。厳しい追及を受けなかったことに安堵する余裕すらなかった。 静かに襖が閉められて再び一人になった途端、まるで自分自身を安心させるかのように考える。 俊哉が意味ありげに言った、準備が必要だという発言は、今すぐ総和会や長嶺組を相手に事を荒立てる気はないと判断していいだろう。 いくらか時間が稼げる間に、自分に何ができるか考えなければならない。情を注いで大事にしてくれる男たちに手が及ばないようできるかということが最優先だが、できることなら、鷹津の消息も知りたい。「――……最低だ、ぼくは……」 いまさらながら自分の多情さを心の中で罵り、和彦は小さくため息をこぼした。**** ラテックス手袋をゴミ袋に放り込んだ和彦は、すっかり強張ってしまった眉間を指の腹で押さえる。機嫌は確かによくないが、光量が十分でない場所でずっと目を凝らして縫合を行っていたため、気がつけば険しい顔になっていた。「お疲れ様でした、先生」 治療に立ち合っていた組員に声をかけられ、ああ、と短く応じる。すっかり和彦の手順を覚えたらしく、すかさずメモ用紙とボールペンが差し出される。受け取ると、必要なことを手早く書いていく。 メモ用紙を破り取って組員に手渡してから、手術衣を脱いだ和彦は、患者の男をちらりと振り返る。顔半分を覆うようにガーゼを貼った男は、悄然とした様子でイスに腰掛けていた。他の組の組員と乱闘になり、その最中に顔を切りつけられたそうだ。 和彦がここに到着したときは、妙な薬でも飲んでいるのかと思うような興奮状態だったが、無造作な手つきで縫合を始めたときには、人が変わったようにおとなしくなり、とうとう今のような状態となった。 首を傾げつつ部屋を出た和彦に、同行してきた組員が苦笑交じりに話しかけてきた。「切りつけてきた連中よりも、無表情で皮膚を縫い合わせる先生のほうが怖かったんで

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  • 血と束縛と   第8話(33)

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  • 血と束縛と   第5話(40)

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