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第5話(20)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-11-12 17:00:20

「――ベッドの上で乳繰り合っている場面を見るより、インパクトはあったな。先生と三田村が手を握り合っている場面は。先生は、浴衣がはだけたうえに、えらく色っぽい顔をしていたし」

「あんたと千尋の相手をして、疲れていただけだ……」

「なら、三田村と手を握り合っていた理由は?」

 和彦はぐっと言葉に詰まる。賢吾を前にして、上手い言い訳など思いつかなかった。

 そう、言い訳が必要なことを、自分と三田村はしたと自覚している。だから三田村は、和彦の護衛から外れたいと賢吾に申し出たのだ。

「秘密を持つ人間の表情はいいな、先生。その秘密が色恋なら、なおさらだ」

「ぼくと三田村さんはっ――」

 いきなり肩を引き寄せられ、眼前に賢吾の顔が迫ってくる。一瞬にして何を求められるのか察した和彦は、従順に深い口づけを受け入れていた。

「んっ、ふっ……」

 濡れた音を立てながら舌を絡め合い、唾液を交わす。一方的に賢吾に舌を吸われるようになる頃には、千尋との交わりでわずかに燻ぶっていた情欲の種火が、じわじわと熱を放ち始めてい
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  • 血と束縛と   第7話(13)

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  • 血と束縛と   第7話(2)

     和彦はゆっくりとまばたきを繰り返し、なんとか賢吾の話を頭に留めようとする。いろいろと考えようとするのだが、思考はどこまでも散漫だ。「……蛇蝎の、サソリ……」「ああ、そうだ。あれは、悪党ってやつだ。暴力団担当の刑事だったくせに、その立場を利用して悪辣なことをヤクザ相手にやらかして、それこそ蛇蝎みたいに嫌われていた。そこで、ある組が鷹津をハメたんだ。かなり大問題になってな、警察の監査室まで引っ張り出して、県警の本部長のクビが飛ぶかという話までいった」 淡々と話す賢吾のバリトンの響きが耳に心地いい。ふ

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