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第7話(14)

Author: 北川とも
last update Last Updated: 2025-11-28 11:00:52

『今、先生はドキドキしているでしょう? 側に三田村さんがいるんですよね。わたしにとっては運がよかったですよ。三田村さんに、先生と連絡が取れるよう頼むつもりだったんですが、その三田村さんと一緒だったんですから』

「……ぼくにとっては、最悪のタイミングだ」

『なら、今すぐ三田村さんに、わたしとの間に何があったか報告しますか? それなら少なくとも、わたしからの連絡に身構えなくて済みますよ』

 自分は被害者なのだと、頭ではわかっているのだ。秦の外面のよさにすっかり騙された挙げ句、鷹津という刑事に絡まれて動揺しているところに、気づかないまま、アルコールとともに安定剤を飲まされた。

 意識が朦朧としていなければ、あんなことは許さなかった――。

「面倒を引き起こす気はない。あんたと二度と関わらなければ、それで済む話だ。……ぼくを脅迫するようなマネをしたら、洗いざらい、組長にぶちまけるからな」

『怖いですね』

「これはハッタリじゃない。ぼくは本気でヤクザが怖いし、長嶺組と、その組長が何より怖い。だから、誤解を生むようなことはしたくない」

 ここで和彦は、感じた疑問を率直に秦にぶつけた。

「ヤクザの怖さを知っているのは、そっちも同じはずだ。なのにどうして、ぼくに――長嶺組長のオンナに、あんなリスキーなことをした。ぼくが組長に泣きつく可能性のほうが高かっただろ。そうなったら絶対、無事では済まない」

『先生はできませんよ』

「なぜ言い切れる」

『――あなたは、長嶺組長のオンナではあっても、ヤクザじゃないから。そんな人が、暴力に訴えられるとも思えない。自分の手を汚さず、ヤクザに頼むとなったら、なおさらだ。先生にとっては大事な一線でしょう、それは。知り合ったばかりの男のために、越える勇気がありますか?』

 その勇気があるなら、そもそもヤクザのオンナになどなっていないだろう。

 穏やかな口調で、秦にそう嘲られたような錯覚を覚える。だがこれは、和彦自身の心の声なのかもしれない。

 和彦は、自分が抱えた矛盾や迷いを、あえて直視することを避けてきた。そうしないと、自我を保って日々を過ごせなか
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