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第5話

작가: ドドポ
澪は今朝、寝坊をした。

昨夜寝るのが遅かったこともあるが、早起きをして朝市で新鮮な野菜を買う必要もなければ、洵のために少なくとも一汁三菜の朝食を作る必要もなくなったからだ。

家で袋麺を茹で、澪はそれを美味しそうに食べた。お腹を満たした後、彼女は銀行へ向かった。

送金小切手に記入し、相手に二億円を送金する。備考欄には「医療費」と記した。

銀行を出た後、澪は「カフェ・ブルー」へ向かった。

蘭と食事の約束をしていたのだ。

結婚後、篠原家の良き主婦となるべく全力を尽くすため、澪は同級生や友人との付き合いをほぼ絶っていた。

親友である蘭とも、三年ぶりの再会となる。

この三年間の自分の青春を思うと、澪は自分自身に中指を立ててやりたい気分だった。

予約していた席に座り、澪は蘭を待った。

蘭は現在、綾川市で小規模ながら有名なスクールのボーカル講師をしている。

蘭が食事に誘ってくれたのは久しぶりにゆっくり話したいという気持ちと、おそらく仕事を紹介したいという意図があるのだろうと、澪は察していた。

案の定、蘭が現れると、少し話しただけで話題は彼女のスクールでのピアノ講師募集へと移った。

「蘭、ありがとう」

澪は晴れやかに笑い、手を振った。

「でも、もうピアノは弾かないって誓ったの。それに、新しい仕事も見つかったから」

「えっ?」

蘭は好奇心をそそられたようだ。

「まさかジュエリーデザインの会社?専攻と合ってるしね!」

澪は再び手を振った。

「違うわよ!私は大学を中退してるの。そういう会社は大卒が条件でしょ」

「でも、このご時世、学歴不問の仕事なんてそうそうないわよ!」

蘭は小声でそう言うと、我慢できないといった様子で澪のために憤った。

「篠原は本当にクズね。結婚中に浮気しておいて、あなたを一文無しで追い出すなんて。私なら数億円はふんだくってやらないと、無駄にした時間が報われないわ!」

澪は笑いをこらえた。その時、スマホが光り、ラインの通知が来た。

「絶対篠原からよ。ほら、貸して。私が罵倒してあげる!」

澪はラインを開いたが、洵からではなかった。

返信を打ちながら、澪は蘭に言った。

「実は洵が浮気したという証拠はないの……」

洵の体が浮気をしていようがいまいが、心が離れているのは確かだ。自分の血を分けた子供さえ要らないというのだから。

お腹の中でわずか二ヶ月しか生きられず、実の父親の手によって葬られた子供のことを思うと、澪の表情は冷ややかになった。

「ただ一刻も早く洵から離れて、過去の生活と決別したいだけ……」

「で?」

「だから、ここに応募したの」

澪があるウェブページを蘭に送った。

蘭は澪がそんなに嬉しそうなので、よほど良い仕事が見つかったのかと思ったが、開いてみて絶句した。

「少年院?」

蘭は目の前が真っ暗になったような顔をしたが、澪は花のような笑顔を浮かべていた。

蘭の昼休みは限られており、二人は話し足りないまま別れざるを得なかった。

澪は帰宅したが、家には入らず、宅配ボックスを開けて中から一通の封筒を取り出した。

その時、また新しいラインが届いた。今度は洵からだった。

文字はなく、写真が一枚だけ。写真には床に散らばる粉々になった紙吹雪が写っていた。

篠原グループ、社長室。

洵はデスクの角に手をつき、ゆっくりと椅子に座り込んだ。足元には彼がたった今自らの手で引き裂いた離婚届が散らばっている。

「社長、手に入る限りの胃薬はこれですべてです……」

アシスタントの佐々木が恐る恐る言うと、洵は手を振り上げ、デスクの上の胃薬をすべて床に払い落とした。

「何の役にも立たん。飲めば飲むほど痛くなる」

洵は胃を押さえ、額には脂汗が滲んでいた。

ここ数日漢方薬を飲んでおらず、もともと胃の調子は良くなかった。

そこへ来て、今日出社するなり澪から送られてきた離婚届を目にし、胃痛は一気に悪化したのだ。

佐々木は洵を見て、心の中で焦っていた。

洵が飲んでいる漢方薬は老舗の医者による独自処方で、煎じる際の配合や火加減、時間は澪しか知らない。毎回、澪が一人で煎じていたのだ。

「あの、社長……夏目さんに電話してみましょうか?」

佐々木が探るように尋ねると、洵は鋭い眼光で睨みつけ、逆に問い返した。

「お前、あいつを何と呼んだ?」

「えっ、夏目さんですが……」

佐々木は戸惑った。

彼だけでなく、洵の周りの人間は誰一人として例外なく、澪のことを「夏目さん」と呼んでいた。

この瞬間まで、洵は気づいていなかった。

澪は自分と結婚して三年になるが、ずっと「夏目さん」のままであり、「篠原夫人」ではなかったことに。

スマホを手に取り、洵は引き裂かれた離婚届を見る澪がどう反応するか確かめようとした。

しかし、澪からの返信はずっとなかった。代わりに、千雪から電話がかかってきた。

夕暮れ時、澪は一人、綾川市にある煌びやかなバイオレット・ホールへとやってきた。

彼女は服を着替えていた。

青いシャネル風のツイードのセットアップは、結婚前に持っていた服の中で比較的見栄えのするものだった。

入り口のスタッフが澪を見て礼儀正しく微笑んだので、澪も笑顔を返した。

自分のクラッチバッグを開けようとしたその時、背後から聞きたくない声が聞こえてきた。

「あら、夏目さん。奇遇ね、どうしてここに?」

澪が振り返ると、千雪が二人の親友と腕を組んで歩いてくるところだった。

千雪は今日のために念入りに着飾ったようで、淡いピンクの花の妖精のようなドレスを身にまとい、首にはピンクダイヤのネックレスが相変わらず目立っていた。

「千雪、誰その人?知り合い?」

佐藤莉奈(さとうりな)が澪を品定めした。

「まさかFYの祝賀パーティーに来たんじゃないわよね?」

「ありえないでしょ」

田中洋子(たなかようこ)が嫌そうに眉をひそめる。

「FYはハイブランドよ、世界的ブランド。招待されるのは有力者ばかりだもの。見てよあの服……たぶん、デリバリーの配達でもしに来たんじゃない?」

澪は千雪の取り巻き二人が調子を合わせているのを見て、明らかに自分が誰か知った上での態度だと察した。

「莉奈、洋子、夏目さんを悪く言わないであげて……」

千雪はもっともらしく説明を始めた。

「洵から聞いたんだけど、夏目さんは大学も出ずに結婚して、何年も専業主婦をしてたのよ。

一番着ていた服はエプロンで、市場以外どこにも行かないし、ここみたいなところに行く機会もなかったの。

だから世間知らずなのは仕方ないし、ファッションへの感度も鈍いのよ。私たちみたいにFYで働くデザイナーとは違うんだから」

「あなた、FYで働いてるの?」

澪が驚いた様子を見せると、千雪は誇らしげに名刺を取り出して差し出した。

「千雪は今、ジュエリーデザイン界で注目の新星なのよ。FYの人事部も彼女に一目置いてるんだから!」

「あなたみたいな専業主婦じゃ、人事部の意味なんて分からないでしょうけどね!」

莉奈と洋子の耳障りな嘲笑を聞き流し、澪は千雪の名刺に目を落とした。

FYジュエリーデザイン部インターン。

千雪は澪が自分の名刺を見て引け目を感じると思っていたが、澪はただ淡々と微笑んだだけだった。

「うん、優秀ね」

莉奈はすぐに白目をむいた。

「何余裕ぶってんのよ。心の中じゃ千雪に嫉妬して死にそうでしょ!」

澪が背を向けて中に入ろうとすると、洋子が大声で叫んだ。

「デリバリーはそっちから入っちゃダメよ」

千雪は思わず口元を押さえて笑い、莉奈と洋子に目配せをした。二人はすぐに割り込み、強引に澪を脇へと押しやった。

「見た?招待状がないと入れないの」

莉奈は招待状を見せびらかし、千雪を先に通した。

千雪は慎重にピンクのドレスの裾を持ち上げ、王女のように胸を張って中へ入ろうとした。

「申し訳ありません、お客様。その招待状では従業員用通路をご利用ください」

スタッフが千雪を制止した。

千雪の顔に気まずさが浮かんだが、すぐに莉奈と洋子がフォローに入った。

「千雪はFYの社員なんだから当たり前でしょ!」

「そうそう、従業員通路から入るとしても、門前払いの誰かさんよりはマシよね」

千雪たち三人がようやく道を空けた。澪は再びVIP用通路の入り口へと進み、バッグから一通の封筒を取り出してスタッフに手渡した。

スタッフの目が輝き、笑顔がいっそう恭しくなった。

「夏目様、こちらへどうぞ……」

千雪たち三人の驚愕の視線を浴びながら、澪はVIP用通路を通ってホールの中へと入っていった。
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