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際どい写真を誤送信!?政略結婚の夫がすぐに帰国してきた

際どい写真を誤送信!?政略結婚の夫がすぐに帰国してきた

โดย:  レイチェルจบแล้ว
ภาษา: Japanese
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結婚して3年。私・柴田紬(しばた つむぎ)と夫の柴田響(しばた ひびき)は、いまだに手も繋いだことのない仮面夫婦だ。 ほんの出来心と密かな復讐心から、私はセクシーなランジェリー姿の自分の背中を撮り、裏垢を使って響に送りつけた。 どうせ既読スルーされるだろうと思っていたのに。予想に反して2分後、ブブッとスマホが震え、画面にこんな通知が光った。 【ご家族様が本日付の帰国便の航空券を購入しました】 【紬はお前で暇つぶしをしてるだけだ。見つけたらただじゃおかないぞ、この下劣な野郎が……】

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บทที่ 1

第1話

【柴田社長って本当にお忙しいんですね。今月だけでもう3回目の出張ですよね?】

撮りたての写真を選択し、私・柴田紬(しばた つむぎ)は息を殺して送信ボタンを押す。

盗撮風の絶妙なアングル。右下には、男物のパジャマの一部が写り込んでいる。

ピコン、と送信完了の音が鳴った瞬間、私は爆弾でも捨てるようにスマホを放り出した。

「まったく。そんな度胸しかないくせに、よく旦那さん相手にこんな真似をしようと思ったわね」藤田晴香(ふじた はるか)が呆れ顔で言った。

「自分で自分の浮気相手を演じてるのよ、緊張しないわけないじゃない?」私はクッションに顔を埋めて叫び、ビクビクしながら尋ねた。「ねえ、自作自演だってバレないかな?」

「そんなにビビらなくてもいいでしょ。バレたら悪ふざけでしたって言えば済む話でしょ」

「でも、私たちってまだ冗談を言い合えるような仲じゃないし……」自分の衝動的な行動に後悔し、泣きそうになった。

「結婚して3年、同じ屋根の下に住んでるのに、まだそんなに他人行儀なの?ある意味、二人ともよく理性が持ったわね」

「響さんと3年も一緒にいたら、ときめきなんてとっくに枯れたわ」そして、晴香は感心したように私の肩を叩いたが、私は呆れたように彼女の手を払いのけ、スマホへと手を伸ばした。

「響さん、見てくれるかな?」言い終わるか終わらないかのうちに、スマホがブブッと震えて画面が光った。響からのメッセージだ。

【紬はお前で暇つぶしをしてるだけだ。見つけたらただじゃおかないぞ、この下劣な野郎が……】

今度は私と晴香が、顔を見合わせた。

「どういう意味?私、怒られてる?」響がこんな言葉遣いをするのを見たのは初めてで、戸惑いつつも、なんだか新鮮だった。

柴田響(しばた ひびき)と結婚して3年。ずっと同じ家に住んでいるとはいえ、まともな会話をしたことは数えるほどしかない。

たまにどうしても話さなければならない用事があっても、響はいつも短い言葉で済ませていた。彼が感情を露わにするのを、私は初めて見た。

「正確には、その『浮気相手』を罵ってるのよ」晴香は生唾を飲み込み、ためらいがちに言った。

私がまだ事態を呑み込めていないうちに、再びスマホがブブッと震えた。

【ご家族様が本日付の帰国便の航空券を購入しました】

「えっ、これどういうこと?まさか、今すぐ帰ってきて私を殴る気?」私は顔面蒼白になった。

「あるいは、裁判沙汰にして離婚かもね。どっちにしろ、私は先に逃げるわ」晴香がきびすを返して逃げようとしたので、私は彼女の足にすがりついた。

「一人にして行かないでよ!薄情者!」

バタン、と玄関のドアが閉まる音を聞きながら、私はソファに沈み込み、懸命に頭を悩ませていた。

響と結婚して3年になるが、私たちの親密度は友人にも満たない。むしろ、上司と部下といった方がしっくりくる。

3年前、父は意気揚々と大規模なプロジェクトに投資した。ひと花咲かせるつもりが、見事に大失敗してしまったのだ。

抱えた借金は、家の財産をすべて売り払っても到底返せないほどの莫大な額だった。

借金返済のため、家族総出で金策に走った。しかし、かき集めたお金など、巨額の負債の前では焼け石に水だった。

借金を返せず、いよいよ逃げ場がなくなりかけたその時、響がまるで救世主のように天から舞い降りてきたのだ。

彼は、我が家の事業はまだ持ち直せると言い、手を差し伸べてくれると申し出た。ただし、条件が3つあった。

1つ目は、契約書を交わすこと。5年以内に元金と利息をきっちり返済する。

私と父は、これ以上ないほど激しく首を縦に振った。

2つ目は、本当に事業が起死回生した暁には、株式の25%を響に譲渡すること。

私たちはまたしても、必死に頷いた。

そして3つ目。私と結婚すること。期間は3年間。

私と父は固まった。

響は社長椅子で姿勢を正し、少し身を乗り出して言った。

「人の弱みにつけ込むつもりはない。3年間、ただの仮面夫婦として過ごす。それも契約書に盛り込む」

私は指をいじりながら、恐る恐る口を開いた。

「あの、柴田社長。私には、あなたのために何ができるんでしょうか?」

「妻として振る舞い、俺が父の遺産を少しでも多く受け取れるようにすること」響は再び社長椅子に背中を預けた。「他に何か質問は?」

「いえ!何も問題ありません」彼が心変わりするのを恐れた私は、愛想笑いを浮かべながら、慌てて契約書にサインした。

夫婦になるどころか、響から「下僕になれ」と言われても、私は喜んで受け入れただろう。

オフィスビルを出て、私と父は顔を見合わせた。

「柴田社長のお父さんって、誰なの?」と私は聞いた。

「契約書に書いてなかったか?」父は問い返した。

「読んでないわよ」私は両手を広げ、悪びれずに言った。

婚姻届を出した後、車の中で私はこっそりと響を盗み見ながら、恐る恐る尋ねた。

「柴田社長。まだお父様のお名前を伺っていなかったのですが……」

ハンドルを握る響の骨ばった手。端正な顔立ちに影が落ち、その瞳の色は読み取れなかった。

「知らなかったのか?君が小さい頃、抱っこしてもらったこともあるぞ。

柴田峰行(しばた みねゆき)。君の義父さんになる人の名前だ」

峰行。この街で一番の不動産デベロッパーだ。響があれほど羽振りがいいのも納得だ。

とんでもない後ろ盾を得たと内心小躍りしかけたその時、私はふと気がついた。峰行には、息子が一人しかいないはずでは?

「あの……あなたのお父さんには、柴田慎也(しばた しんや)っていう息子さんが一人だけじゃなかったかしら?」私はゴクリと唾を飲み込んだ。頭が追いつかない。

「言うのを忘れていたが、俺は隠し子なんだ。慎也は俺の腹違いの兄ということになる」衝撃で固まっている私を見て、響は慰めるように言葉を続けた。「心配いらない、誰にも文句は言わせないから」

私は完全に唖然としていた。まるでモブキャラが、ドロドロの愛憎渦巻く財閥ドラマに巻き込まれたような気分だった。

スマホがブブッと2回鳴り、私は現実に引き戻された。画面を見ると、響からメッセージが2件届いていた。

【家にいるか?今夜パーティーがあるんだが、一緒に来てくれないか?】

私は何事もなかったかのように装い、こう返信した。

【いるよ。さっき今日の航空券を買ってたみたいだけど、あなたが帰ってくるのを待って、一緒に行けばいい?】

【用事が早く済んだから、早めに帰ることにした。すぐ着くから、家で待っててくれ。一緒に向かおう】

なんだ、パーティーがあるから急いで帰ってきたのね。安堵すると同時に、私の胸の奥で、なぜか無性に寂しさが広がっていった。
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ความคิดเห็น

麻貴子
麻貴子
珍しくハッピーエンドで可愛いお話。クズ男に傷つけられる話しばかりより良いかも。
2026-05-25 21:49:09
1
0
松坂 美枝
松坂 美枝
ニヤニヤ物語 ツンケンしてた御曹司が忠犬になる様はいつ読んでもいいものだ
2026-05-25 10:16:40
4
0
KuKP
KuKP
政略結婚の2人が距離を詰めたり、有能隠し子 vs ポンコツ嫡男戦を起こしたり。 可愛い話だった
2026-05-25 21:41:41
1
0
9
第1話
【柴田社長って本当にお忙しいんですね。今月だけでもう3回目の出張ですよね?】撮りたての写真を選択し、私・柴田紬(しばた つむぎ)は息を殺して送信ボタンを押す。盗撮風の絶妙なアングル。右下には、男物のパジャマの一部が写り込んでいる。ピコン、と送信完了の音が鳴った瞬間、私は爆弾でも捨てるようにスマホを放り出した。「まったく。そんな度胸しかないくせに、よく旦那さん相手にこんな真似をしようと思ったわね」藤田晴香(ふじた はるか)が呆れ顔で言った。「自分で自分の浮気相手を演じてるのよ、緊張しないわけないじゃない?」私はクッションに顔を埋めて叫び、ビクビクしながら尋ねた。「ねえ、自作自演だってバレないかな?」「そんなにビビらなくてもいいでしょ。バレたら悪ふざけでしたって言えば済む話でしょ」「でも、私たちってまだ冗談を言い合えるような仲じゃないし……」自分の衝動的な行動に後悔し、泣きそうになった。「結婚して3年、同じ屋根の下に住んでるのに、まだそんなに他人行儀なの?ある意味、二人ともよく理性が持ったわね」「響さんと3年も一緒にいたら、ときめきなんてとっくに枯れたわ」そして、晴香は感心したように私の肩を叩いたが、私は呆れたように彼女の手を払いのけ、スマホへと手を伸ばした。「響さん、見てくれるかな?」言い終わるか終わらないかのうちに、スマホがブブッと震えて画面が光った。響からのメッセージだ。【紬はお前で暇つぶしをしてるだけだ。見つけたらただじゃおかないぞ、この下劣な野郎が……】今度は私と晴香が、顔を見合わせた。「どういう意味?私、怒られてる?」響がこんな言葉遣いをするのを見たのは初めてで、戸惑いつつも、なんだか新鮮だった。柴田響(しばた ひびき)と結婚して3年。ずっと同じ家に住んでいるとはいえ、まともな会話をしたことは数えるほどしかない。たまにどうしても話さなければならない用事があっても、響はいつも短い言葉で済ませていた。彼が感情を露わにするのを、私は初めて見た。「正確には、その『浮気相手』を罵ってるのよ」晴香は生唾を飲み込み、ためらいがちに言った。私がまだ事態を呑み込めていないうちに、再びスマホがブブッと震えた。【ご家族様が本日付の帰国便の航空券を購入しました】「えっ、これどういうこと?まさか、今すぐ帰って
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第2話
先月、3年間の契約期限を迎えた。本来なら響との関係は先月で終わっているはずだったが、1ヶ月が過ぎても彼は何も言ってこず、私も知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。響に出会うまで、一目惚れなんて嘘だと思っていた。私たちはこのまま、本当の夫婦としてずっと一緒にいられるのではないかと、密かに期待していた。欲というものは恐ろしい。それは時に、人に狂った決断をさせる。悩み抜いた末、私は自分自身に「恩を仇で返す不倫妻」というシナリオを用意した。毒を食らわば皿まで。愛よりも憎しみの方が長く記憶に残るものだ。だが悲しいかな、私という名の手製の爆弾では、響の最新鋭戦艦を揺るがすことすらできなかった。結局、私は白旗を上げて大人しく引き下がり、クローゼットでパーティー用のドレスを選び始めた。響の出張先は近場だったらしく、時計の針が3時を回った頃に玄関の開く音が響いた。強行軍の疲れは見えたものの、その黒い瞳だけは妙に冴えていた。「お手伝いさんが衣装のアイロンがけを済ませてくれたわ。いつ出発するの?」「急がなくていい。まだ時間はある」響は寝室へ戻らず、ネクタイを緩めながらジャケットを脱いで腕にかけた。浮き出た手首の骨と、額にかかった無造作な髪が妙に色っぽい。「最近、会社の新規プロジェクトの進捗はどうだ?」響は非の打ち所がないほど整った容姿をしている。長年、人の上に立つ立場にいるせいか、御曹司特有の奔放さの中にも強引な圧を感じさせた。「予想以上に順調よ。来月には完了するし、収益も見込みより大きくなりそう」出資者からの突然の質問に、私は殊勝に答えるしかなかった。「順調なら何よりだ」響は関心がなさそうに頷いたが、その視線はローテーブルに置かれた2つのコーヒーカップに留まった。「今日は誰か来ていたのか?」「ええ、晴香が遊びに来てくれたの」ソファに脱ぎ捨てていたパジャマを慌ててクッションの裏に隠しながら、私は引きつった顔で声を張り上げた。「最近、家で一人で何をしているんだ?退屈してないか?」私は響の顔を盗み見たが、彼の真意が読み取れなかった。「会社の方も落ち着いているし、確かに家では手持ち無沙汰ね」響に暇を持て余していると思われたのかもしれないと思い、私はおずおずと切り出した。「外で仕事でも探してみようかしら?」「探す
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第3話
「気負うな。これも家の仕事の一部だ。秘書課の人たちはみんな接しやすい」「家の仕事」という言葉に舞い上がっていたのも束の間、メールボックスに届いた300ページを超える資料を見て、私は絶望した。泣き言も言えないほど周囲のタイピング音は激しく、私のデスクと社長室の間には、5人もの壁が立ちはだかっていた。恋の火花を散らすどころか、その種火すら用意させてもらえない環境だ。私は覚悟を決めた。神様が私に試練を与えたのだと自分に言い聞かせ、社畜としての使命に身を投じることにした。午前中だけで、私はすでに新しい同僚たちと仲良くなり、腕を組んで食堂へ向かっていた。左にゲイ友、右に知的な姉系。ここはまさに顔採用の聖地だった。ブラインドの隙間からこちらを見つめる響の視線に気づき、私は「順調よ」と元気よくウィンクを飛ばした。光の反射のせいか、響の顔がさらに険しくなったような気がしたが、エレベーターの扉は非情にも閉じていった。昼時の食堂は混雑していた。私たちがようやく席を確保したその時、入り口の方からどよめきが近づいてきた。「えっ、社長がどうしてこんなところに?」私は森田健二(もりた けんじ)の言葉に釣られて振り返ると、響が社員たちに笑顔を振りまきながら歩いてくるのが見えた。腕まくりしたシャツから覗く前腕のラインが綺麗だった。「今月は福利厚生強化月間だから、社長が視察に来るのもその一環でしょう」二宮杏(にのみや あん)が私のお皿にチキンを乗せてくれた。私は響と無関係を装い、黙々と食事に集中した。ふと視線がぶつかったが、慌てて逸らす。「社長って本当にイケメンですよね。あの強引な感じがたまらないでしょう?」健二がニヤニヤしながら耳打ちしてくるので、私は仰天した。「えっ、ああいうタイプが好きなんですか?意外です」「社長は若くしてご結婚されてるんですよ。もう3年になるはずですね」杏は創業時からのベテランで、社内の事情には精通していた。情報を聞き出そうとしたその時、響がトレーを持ってこちらへ近づいてきた。「ここは空いているか?」テーブルの脇に立つ響の瞳は、陽光を浴びた泉のように澄んでいた。私たちは慌てて席を空け、響は私の正面に座った。沈黙が場を支配した。私があまりの気まずさに逃げ出したくなる寸前で、響は口を開いた。「食堂
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第4話
その時、スマホが激しく震え、晴香からのメッセージが連投された。【やばい!旦那さんの部下に例の裏垢のIPアドレスを特定されそうになったわ!適当に誤魔化しておいたけど、旦那さん本気で怒ってるみたい!】私は慌てて画面を隠そうとしたが、響に手首を掴まれた。彼は画面を一瞥すると、瞳の奥に暗い感情が渦巻いていた。「なるほど、周到に準備された悪ふざけだったというわけか?」「あなたが本当に私のことを気にかけてるか知りたかっただけよ!」私はヤケクソになって叫んだが、次の瞬間には顎を強く掴まれていた。「俺が至らなかったせいで、不安にさせたな」響の指先が私の唇をなぞる。「これで分かったか?俺がどれほど君を気にかけているか」車内の空気は重く沈み、凍りついた。晴香からのメッセージは、せっかくの甘い雰囲気を一瞬で粉々に打ち砕いた。「あの、私は……」私が弁解しようとした時、響のスマホが鳴り響いた。画面に表示された「慎也」の名を見た瞬間、響の目は氷のように冷たくなった。彼は私を離し、電話に出た。「父さんが呼んでいる。今すぐ来い」受話器越しの慎也の声は嘲笑に満ちていた。「自慢の奥さんも連れてこい。本家に30分以内だ」通話が切れた後の静寂の中で、私は自分の心臓の音だけを聞いていた。「心配ない」響は私のシートベルトを締め直し、アクセルを踏み込んだ。私は咄嗟に彼の袖を掴んだ。「契約に『親族との面会』なんて書いてなかったわ!」「今、追加された」響は私の手を握り返した。その掌は驚くほど熱かった。「芝居をするなら最後までやり遂げよう。紬」本家の重厚な門が開いた時、私はあまりの緊張に舌を噛みそうになった。屋敷は明々と照らされていた。執事がドアを開け、よろめいた私を響が力強く抱き寄せた。「足を震わせるな」彼が耳元で囁き、熱い吐息が耳たぶをかすめた。「君が今考えるべきなのは、どうやって俺たちが本物の夫婦だと信じ込ませるか、それだけだ」私は響を睨み返したが、玄関に足を踏み入れた瞬間、息を呑んだ。リビングの正面、椅子に座る中年の男は響にそっくりだった。そしてその隣でライターを弄んでいる青年。経済誌の常連、慎也だ。「東区の土地買収を進めているそうだな?」峰行は茶器を置き、重苦しい音が部屋に響いた。「慎也が先月まとめた案件
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第5話
「結婚して3年、一度も連れてこなかった理由が分かった。これまでの女たちよりはマシだな」自分の味方をする者がいないと悟り、慎也の怒りは頂点に達した。「柴田家のためだと?どこの馬の骨とも知れん小娘が、一族の人間を気取るな!」「黙れ!帰ってきて早々、騒ぎ立てるな」響は私の手を取り、強引にリビングの奥へと歩き出した。背後では峰行が吐き捨てていた。「無能な上に、恥さらしめ!」慎也がドアを叩きつけて去り、シャンデリアが揺れた。私は皿を見つめたまま、指先のナイフとフォークが震えていた。「食べないのか?」響が私の皿にチェリー風味のフォアグラを置いた。何事もなかったかのような口調で。「好物だろう?」なぜ、私の好みを?「お手伝いさんから聞いた」響は私の思考を読み透かすように、淡々と食事を進めた。「デリバリーを頼む時は、いつもチェリーソースを選んでいるそうじゃないか?」「よく見てるのね」私は引きつった笑みを浮かべた。口元にソースがついているのを、響がさりげなくハンカチで拭ってくれた。峰行が目を細めてその様子を見ていた。「結婚して3年、まだ挙式をしていないそうだな?」「当時は事業を引き継いだばかりで、時間が取れなかったんだ」私が咽せそうになるのを余所に、響は平然と嘘を重ねた。「だが、式場やドレスの手配はすでに済ませてある」峰行の表情が和らいだが、私はあまりの衝撃にグラスを握り潰しそうになった。なんて出鱈目な嘘を。私たちの結婚なんて、役所が閉まる直前に駆け込んで済ませた事務的なものだったのに。帰り道、私は堪えきれずに尋ねた。「お父さんがウェディングフォトを見たいと言い出したらどうするの?」「今から撮れば間に合うさ」響は片手でハンドルを操り、不敵な笑みを浮かべた。「明日の朝8時、カメラマンを自宅へ呼ぶ」「正気なの?」私はシートベルトを握りしめた。「私たちは本当の夫婦じゃないのよ!」夜の静寂を切り裂くようなブレーキ音。響が振り向いたその瞳には、嵐の前の海のような闇が渦巻いていた。「契約が切れてから37日間、君は俺のことを一度も好きだと思ったことはないのか?」彼はシートベルトを外し、助手席の私を追い詰めるように身を乗り出した。その時、スマホが激しく震え、晴香の声が車内に響き渡った。「紬、
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第6話
「どこへ?」「指輪を受け取りに行く。結婚すると言ったからには……」「今そんな芝居をしている場合じゃないでしょ!」私は声を荒らげた。「あなたのお兄さん、私たちが別々の部屋で寝ている証拠を握っているのよ!」響が急ブレーキをかけ、私は彼の胸の中に投げ出された。「ゲストルームの監視カメラは1週間で上書きされるが、先週クラウドの契約を更新した。証拠なら俺たちが持っている」私は凍りついた。3年間、モデルルームのように整然としていたあのゲストルームに、カメラが仕掛けられていたなんて。「変態……最低だわ!」私は逃げ出そうとしたが、響は私の肩を押さえ、力任せにシートへ押し戻した。温かな唇が耳たぶをかすめ、私は震えた。「俺のパジャマを盗み着していた君も、相当なものだと思うが?」スマホが再び震え、慎也からメッセージが届いた。【父さんが戻れと言っている。今すぐだ】「ちょうどいい」響は私から手を離した。「夫婦の絆というものを見せつけてやろうじゃないか」柴田家の本家は煌々と明かりが灯り、立ち込める香の匂いが鼻を突く。峰行は上座に構え、その鋭い視線はナイフのように私を射抜いた。「跪け!」慎也が卓を叩いて怒鳴った。「柴田家に、こんなふしだらな嫁を置いておく余裕はない」私が動くより早く、響が椅子を蹴り飛ばした。陶器の割れる音が響く中、彼は私を背後に庇った。「兄さん、そんなに急いで追い出したがるのは、来月の役員会で後継者に選ばれないのが怖いからか?」「黙れ!」峰行の杖が床を激しく叩いた。「本人の口から説明しろ」「写真は捏造です」私はスマホを掲げた。画面には加工された偽のチャット履歴が映っている。「だが、この指輪は本物だ」その場が一瞬、死んだように静まり返った。響がジャケットの内ポケットからベルベットの箱を取り出した。「父さんがかつて母さんにプロポーズした時のものだ」響は皆の前で私の指にリングを嵌めた。サイズは完璧だった。「買収案件が片付いてから挙式するつもりだったが」峰行は杖のヒスイを撫で、不敵に笑い出した。「母親よりも肝が据わっているようだな」「母さんに度胸があれば、父さんが他の女を家に迎え入れるのを黙って見ていたりはしなかっただろうな」「黙れ!無礼千万な!」痛いところを突かれた峰行は肩を震わ
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第7話
「紬は最近、東区プロジェクトにかかりきりで、手が離せない状態なんだ」響は顔色一つ変えずに言った。「プロジェクトと結婚式、どっちが大事だって言うんだ?」慎也が突然身を乗り出し、スマホの画面を私の顔すれすれまで突きつけてきた。「それとも……本当は式なんて挙げられない事情でもあるんじゃないか?」その時、トレンド画面が更新され、新たなハッシュタグ【#柴田グループの社長夫人の浮気確定】がトップに躍り出た。「兄さん、メディアまで買収したのか?」響がふっと冷ややかな笑みを漏らした。「いっそ、東区プロジェクトの入札の最低価格が欲しいと素直に言えばいいのに」峰行の杖が激しく床を叩いた。「慎也、いい加減にしろ」「いい加減にすべきはこいつの方だ!」慎也が突然ローテーブルを蹴り飛ばし、茶器が粉々に砕け散った。「隠し子が財産を狙い、どこの馬の骨とも知れない女が奥様面をする。柴田家も遅かれ早かれ……」乾いた平手打ちの音が、慎也の怒鳴り声を遮った。峰行の震える手が、空中で止まっていた。「出て行け」慎也は口角の血を拭い、陰湿な目で私と響を睨みつけた。「今に見てろよ」……本家を出てマイバッハに揺られながら、私は指輪のダイヤをぼんやりと見つめていた。時刻はすでに深夜。銀色の月光が指輪の台座をすり抜けて細かい光の斑点を描き出し、それはまるで、3年前の役所の窓ガラスについた雨粒のようだった。「監視カメラって……ずっと前から知っていたの?」私はようやく口を開いた。「ゲストルームのシーツ交換は毎週水曜日だ。君がパジャマを盗んだのは木曜日だったからな。紬、君の演技は下手すぎる」響の指先が、赤くなった私の頬をなぞる。「でも、俺はそれに合わせてやったんだ。君が警戒心を解かなくても構わない。俺から動くし、いくらでも待てる。君を逃さないためなら、3年だろうと何度でも待つ。チャンスさえくれればいい」「いつから待っていたの?」「ずっと前からだ。君がまだ俺を知らなかった頃から。あの契約だって、君に近づくための口実だった」記憶が3年前に巻き戻る。ぎこちなく響と条件交渉をしていたあの時。あのペンの先に反射していた光の裏には、とうの昔から、私を射抜くような熱い眼差しが隠されていたのだ。「変態」私は響の上着を引き寄せ、火照る顔を隠した。
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第8話
「帰ってからじゃダメなの?眠いから邪魔しないでよ」私は背もたれにもたれて眠ろうとしたが、揺さぶり起こされた。「告白も後回しにする気か?」「告白なら尚更後回しよ」「じゃあ、慎也への復讐はどうする?その話をしようか」「あの人、去勢できないかしら?」慎也の数々の女性スキャンダルを思い出し、私は大真面目に答えた。「極刑にするのは無理かもしれないが、あいつの罪なら十数年の刑は確実だ」「お父さんが黙ってるかしら?」峰行が慎也を溺愛しているのは明らかだった。あんなにも不出来な息子を、ひたすら庇い続けているのだから。響は肯定も否定もしなかった。「明日から、俺の寝室で寝ろ」私は飛び起きて背筋を伸ばした。「どうしてよ?」「ゲストルームの監視カメラは外した。寝室には独立した警報システムがある」「あなたのお兄さんはまだ何かする気なの?」私は思わず声が大きくなり、手に冷や汗をかいた。「実の親にすら薬を盛るような奴だ。君になら何をしてもおかしくない」響は車載冷蔵庫から冷えた水を取り出した。「去年、父さんの健康診断の結果を、慎也は3度も改ざんしている」「じゃあ、お父さん自身にその事実を気づかせようってこと?」「自分が一番愛している息子が、実は自分を早くあの世へ送ろうとしていると身をもって知らなければ、父さんが慎也を完全に見限ることはないからな」確かにその通りだ。人は皆、自分の目で見たものしか信じないのだから。……テレビでは、慎也が経済チャンネルのインタビューに応じている様子が流れていた。背景には、柴田家の本家の飾りが映っている。「最近、個人的な事情でバタバタしておりますが、身の潔白は証明されると信じています」慎也はカメラに向かって微笑んだ。「むしろ、姑息な手段で地位を掠め取った人間こそ、いずれ報いを受けることになるでしょうね」「では、本日の柴田グループの声明についてはどうお考えですか?社長職の解任は、別の役職への異動が理由なのでしょうか?」「声明?何のことだか存じ上げませんが、記者の皆さんも根も葉もない噂を信じないでいただきたい」一人の記者が声明の載った画面を突きつけるまで、慎也はそう嘯いていた。画面を見た瞬間、彼の顔から血の気が引き、みるみる青ざめていった。「本日の取材はここまでです」慎也の秘書が飛び出して
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第9話
「売れるものは今のうちに売っておくことをお勧めするよ。さもないと、破産手続きが始まった時には、父さんの老後の資金すら残らないだろうから」ドアがバタンと閉まり、峰行の「この親不孝者が!」とか「このろくでなしが!」という罵声も完全に遮断された。部屋は束の間の静寂に包まれた。私は以前、響の母親についての噂を聞いたことがあった。何かの病を患い、いくら治療しても良くならず、最後は骨と皮だけになって息を引き取ったと。おそらく慎也は、あの時と同じ手口を峰行に使ったのだろう。響の母親が原因不明の病で苦しんだのは、当時、慎也の母親が邪魔者を完全に排除するため、峰行と一緒に病院の検査結果を改ざんしたからだった。峰行がその事実を知らなかったわけではない。ただ、慎也の母親がもたらす莫大な利益のために、峰行はすべての悪事を見て見ぬふりをしたのだ。そして何年もの時を経て、今度は峰行自身が同じ運命を辿ることになった。「病院へ慎也の面会に行くか?鬱憤を晴らさせてやる」私は何度も首を縦に振った。ガラス越しとはいえ、すっかり常軌を逸した慎也の姿には肝を冷やした。片手はベッドの枠に手錠で繋がれ、全身をギプスと包帯でぐるぐる巻きにされている。無精髭が伸び放題の顔に、血走った両目。目の下には狂気が滲んでいた。たった数日で、まるで別人のように成り果てていた。「お前ら、よくも俺をこんな目に遭わせやがって!絶対にただでは済ませない!」唯一動かせる手で点滴のスタンドを掴んで床に転げ落ちると、異様な姿勢で這いずりながらこちらへ向かってきた。だが、凄まじい激痛のせいで、2歩も進まないうちに気を失いかけていた。響が指を曲げてガラスをコツンと叩くと、慎也は悪魔でも見たかのように表情を一変させ、泣き喚いて命乞いを始めた。「ここから出してくれ!頼む、あの記事を流したのは俺じゃない……全部嘘だったって、俺が証明してやるから!」顔中を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにし、慎也は床に頭を打ち付けながら叫び続けた。看護師が拘束帯を持って入室すると、やがてその声は完全に途絶えた。……すべてが決着し、柴田家の崩壊はもはや確定事項となった。その後も峰行は何度か響のもとを訪れたが、面会すら叶わなかった。挙句の果てには人づてに私を探し出し、喚き散らした。「お前は響の妻であり、
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