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3.星野麗華

مؤلف: 中道 舞夜
last update تاريخ النشر: 2025-10-24 08:55:41

「週末、経営者の大事なパーティーがある。家族同伴が必須なんだ。準備しておけ。詳細は執事に話をしておいた。俺は忙しいからいちいち連絡なんてしてこないでくれ」

朝、支度を終えて家を出る前に奏多がそっけない口調で私にそれだけ言うと、返事を聞く前に家を出て行ってしまった。

(パーティーに出席しろだなんて珍しい。一人での参加は断られたのかしら……)

結婚したばかりの頃に一度だけ出席をしたことがあるが、あの時は悲惨だった。

「ねえ、何?あの痩せ細った人は、病気かしら……。まだ若いだろうに可哀想そうに」

「やだ、パーティーだと言うのにアクセサリーも何もしてこないなんて……。誰もプレゼントしてくれないのね」

参加者たちの心ない声が私のところまでしっかりと聞こえてくる。その声は奏多にまで届き、怪訝そうな顔で声の主たちを睨みつけていた。奏多の鋭い視線に、女性たちは気まずそうに早足でその場を退散していった。

「お前はもうここにいなくていい。帰れ」

私の事を守ってくれたと思ったが勘違いだった。奏多は、そう一言だけ放つと、私の元を離れて赤の他人のふりをしたのだ。周囲がパートナーと腕を組んだり楽しそうに談笑している中で、私の隣には誰もいない。誰からも話しかけられることなく、冷ややかな嘲笑と視線だけが突き刺さっていた。

パーティーが終わった後に、次こそはちゃんとした格好で出席しようと私は僅かな貯金からパールのネックレスとピアスを買った。

しかし、奏多は私が笑い者になったことで自分も恥をかいたと屈辱を味わったと思ったようで、他の経営者が夫婦同伴で参加する中でも、私の存在を隠すように一人でパーティーに参加するようになった。せっかく買ったパールのアクセサリーは出番なくベッドサイドの引き出しに眠っている。

――――パーティー当日、髪を梳かしてドレッサーの前にいる私の顔は浮かなかった。

きっと周囲はドレスやお着物で綺麗に整えて眩いばかりの宝石を身に着けて出席するのだろう。だけど、私にはドレスも着物もない。クローゼットを開いて数少ない服の中から黒の長袖のロングワンピースを選んで袖を通した。

妊娠をしているから、もし転倒でもしてお腹の子に何かあったら一生後悔するだろう。悩んだ末に、ヒールの低い無地のパンプスを選んだ。

今日の朝も、奏多は何も言わずに家を出て行ってしまった。迎えの話もなければ、私の服装を気にかける言葉も一切ない。どうせ一緒に行くことなど毛頭にもないのだろう。

会場となるホテルの入口に着くと、ロータリーには高級車がずらりと列をなして、順番に綺麗に身なりを整えた貴婦人たちが夫にエスコートされながら車から降りてくる。その姿を横目にひっそりと一人で会場へと入った。

「ねえ、やだ……あの人、お葬式会場と間違えてここにきたのかしら。真っ黒な服にパールなんて礼服じゃない」

「本当、なんだか縁起が悪いわね……靴やバックも地味だし、あら、顔も地味だわ。メイクしているのかしら」

私が唯一持っているフォーマルなワンピースを喪服呼ばわりされ、手に持っている小物を馬鹿にする声が聞こえてくる。居場所をなくして会場の端でひっそりしていると、会場の入口のドアが勢いよく開き、その圧倒的なオーラに周囲の視線が一気に集まった。

「ねえ、見て。住吉奏多さんよ。一緒にいるのは奥様かしら。やっぱり住吉家の奥様ともなると存在感が違うわよね。とても綺麗だわ」

(奏多……?それに奥様ってどういうこと?)

皆が話す方へ視線を向けると、スーツに真っ赤なネクタイをした奏多と深紅のふんだんにフリルのついた豪華なドレスを着て、堂々と奏多の隣に立つ麗華の姿があった。

(私がいるというのに、奏多は私じゃなくて麗華を迎えに行ってこの会場に来たの?それにあの服も、敢えて色を揃えたの?)

注目を浴びながら二人は堂々と周りに挨拶をして会場を闊歩している。その姿に、住吉家の妻は麗華だと誰もが思ったことであろう。

二人が会場の奥まで来ると、私の姿に気がついた麗華が馬鹿にするように鼻で笑ってから奏多の肩をツンツンとつつき奏多にこちらを見るように促していた。奏多は、私の姿を見ると苦虫を噛みつぶしたような嫌悪感に満ちた目でこちらに視線を投げた。

「なんだその地味な格好は。やっぱりお前を呼んだのは間違いだったな」

「奏多、そんなこと言ったら遥さんが可哀想よ。彼女にドレスコードなんて敷居が高すぎて分からないわよ。きっと遥さんの中で、一番の服装をしてきたんだから許してあげて」

「……そうだな。所詮、家政婦あがりの女にはこんな場所の服装なんて分からないか」

麗華は私をフォローするふりをして、マウントを取るように馬鹿にしながら笑ってくる。しかし、男の奏多にはそのマウントが分からないようで納得して同調してきたのだった。

「でもさすがにその地味な靴はないわね。貧乏くささが滲み出てしまうわ。服がなくてもピンヒールでも履いて高価なアクセサリーをつければ、それなりになるのに」

奏多が納得したことで麗華は勝ち誇ったようにとどめを刺してきた。今日の麗華は、八センチはあるであろうピンヒールと右手の指先には大ぶりのルビーの指輪、左手の薬指には一粒の二カラットちかくあるダイヤモンドの指輪とシンプルなプラチナの指輪を重ねづけしていて、婚約指輪と結婚指輪のようだった。

(私は、お腹の子のことを思ってヒールの低い靴にしたのに。あなたも妊婦なんでしょ……散々、流産しそうだって騒いでいたのによくそんな高いヒールが履けるわね)

屈辱で全身が震えあがっている。そして、司会者の一言がさらに私を奈落の底へと突き落したのだった。

「本日は、弊社会長の古希を祝う会にお集まりいただきありがとうございます。主役である会長の強い要望により、これからダンスタイムを設けさせて頂きます。みなさまも是非、大切なパートナーとお手を取って参加をお願い致します」

そう言うと、奏多は当たり前のように麗華の前に手を伸ばし、麗華も奏多の手をしっかりと握り、中央のダンススペースの輪の中へと入って行った。

奏多が軽く麗華の腰に手を添えると、麗華は身体を必要以上に密着させて二人は見つめ合いながら優雅にステップを踏んでいる。

「やっぱり奏多さんと奥様、華があって素敵よね」

周りから聞こえてくる声に反論せずに黙っていると、どこからか意地の悪い声が聞こえてきた。

「あら、やだ。一緒に踊っているのは奥様じゃないわよ。本当の配偶者は、あの黒い服の人よ」

「あんなみすぼらしい女性が嘘でしょ?」

失笑と冷たい視線が一斉に私に向けられる。

(奏多の大切なパートナーは麗華だと言うの?それを見せつけるために、わざわざ私を呼びつけたというの?馬鹿みたい!!!)

このパーティーで私にいて欲しいと思う人は誰もいない。周囲の罵倒や失笑を感じながら、奏多や麗華の姿を見ているなんてもう懲り懲りだ。

私は、ひっそりとパーティー会場を後にして家へと戻って行った。

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