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第155話
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離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第779話
若い男が彼女に覆いかぶさり、ズボンの上からでも、彼の熱いものが伝わってきた。だが、男にはプロの意識があった。客が満足したと言い終わると、男はすぐに体勢を解いた。水谷苑は横を向いて小切手を一枚取り出し、男に手渡しながら静かに言った。「この金を受け取って海外へ行って。2年間は帰ってこないで」若い男は小切手に視線を落とした。2000万円だった。男は改めて水谷苑を見た。男は前のこの貴婦人がただ寂しさを紛らわしているだけではないと直感した。彼女の瞳には深い苦悩が宿っており、他人が簡単に心の中に入り込むことはできないだろう。男は軽くお礼を言って、静かに立ち去った。30分後、九条時也は水谷苑からメッセージを受け取った。それは、短い動画だった。次の瞬間、携帯は向かい側の壁に叩きつけられ、粉々に砕け散った。九条時也は荒い息を吐いた。床に散らばった破片を見つめ、しばらく我に返ることができなかった。水谷苑が、まさかそんなことをするなんて、信じられなかった。まさか、こんなことを......よくもそんなことができるな？他の男と......動画の中で、彼女は若い男と抱き合い、キスをしていた。男に体を触られるままにし、うっとりとした表情さえ浮かべている。そして、二人は真っ白なベッドに倒れ込んだ。動画はそこで途切れた。九条時也は予備の携帯を取り出し、水谷苑に電話をかけ始めた。彼女は出なかった。こうして、九条時也の携帯はまた一台壊れた......気が狂いそうだ。完全に気が狂いそうだ。彼は水谷苑を殺してしまいたい。彼女の心臓をえぐり出して、本当に赤い血が流れているのか確かめたい。赤い血が流れているのなら、どうして自分にこんな仕打ちができるんだ......午前1時。九条時也一行はホテルに現れた。フロント係が何か尋ねようとした瞬間、口を塞がれた。彼女は拘束され、足をばたつかせ、その目に恐怖の色を浮かべていた。九条時也は近づき、彼女の顎を掴んだ。少しでも抵抗すれば、片手で握り潰せる、そんな力を感じさせた。しかし、彼の声は穏やかだった。「6401号室のカードキーをくれ。予備はあるだろう？」フロント係は必死に首を振った。九条時也は冷たく笑った。「俺は彼女の夫だ。何かあったんじゃないかと心配で様子を見に来たんだ
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第778話
太田秘書は彼の態度には賛成しかねていた。だが、今は他にどうしようもない。この一件はすぐに片付いた。小林渉は水谷苑を巻き込みたくなかったのだ。飛び降りる直前、ずっと耳にしていたあの噂を思い出し、河野誠の噂を思い出した。河野誠があんなにきっぱりと飛び降りることができたのなら。自分もできるはずだ、と小林渉は思った。あの夜は、彼の悪夢となった。真夜中にふと目が覚めると、水谷苑の泣き叫ぶ声が聞こえてくるようだった......小林渉は、その時の心の傷が癒えず、ついに飛び降りた。しかし、彼は死ねなかった。九条時也からの小切手を受け取ることもなく、水谷苑に付きまとうこともなく、彼はようやく自分が誰一人守れないことを悟ったのだ。距離を置くことこそが、最良の守り方なのだと......夜遅く、小林渉は携帯を握りしめていた。連絡先に登録された【苑さん】の文字を眺め、名残惜しそうに何度も撫でた後、苦い笑みを浮かべ、その番号を完全に削除した。彼女に近づかなければ、巻き込むこともない。玄関の方から、騒がしい音が聞こえてきた。河野瑶子の声だ。甲高い声が耳をつんざく。「あの女のせいよ！あのクソ女がいなければ、渉は飛び降りたりしなかった！あの女が渉を誘惑して......渉を追い詰めたのよ！」小林渉の母はベッドの傍らに座り、何か言いたげな様子だった。小林渉は静かに言った。「瑶子の言うことを真に受けないで！苑さんはいい人だ。瑶子のことで頼みに行ったのは私で、彼女を巻き込んだのは私なんだ」小林渉の母親は涙を拭いながら言った。「この間、瑶子があなたと別れたいと言い出した時、何かあるんじゃないかと思ったけど、まさかあんなに図太いとは！渉、彼女と別れて正解だった」小林渉は頷いた。「分かってるよ、お母さん」退院後、彼は家族と共に香市へ戻り、静養することになった。河野瑶子とは完全に別れ、それでも彼女はB市に残ることを選んだ............夜、水谷苑は一人でソファに座っていた。傍らには『B市夕刊』が散乱しており、そこには小林渉に関する、ここ二日の大きなニュースが一面を飾っていた。小林渉が飛び降りた。新聞の記事は曖昧な表現だったが、水谷苑は小林渉がなぜ飛び降りたのかを知っていた。彼は精神的に追い詰められ、心の傷を乗り越えら
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第777話
水谷苑はゴールドカードを取り出した。声はかすれていた。「最上級のスイートルームを7泊で」フロント係は驚いた。最上級のスイートルームは1泊26万円。7泊となると200万円近い大金だ。フロント係はますます愛想よく、すぐに手続きを済ませた。知らせを聞いた支配人が、自ら最上階まで案内しようとする。「大丈夫！少し静かに過ごしたい」......顔面蒼白の水谷苑は、ルームキーを手にエレベーターへと向かった。よろめきながら、今にも崩れ落ちそうな後ろ姿だった......フロント係は支配人に視線を向け、鼻声で言った。「すごく悲しそうでしたね。ひどい男に騙されて、失恋でもしたんでしょうか？」支配人は彼女を睨みつけた。「200万円近い宿泊費は入ったんだ。余計なことを気にするな。しっかりサービスすれば、悲しみのあまり、さらに7泊延長してくれるかもしれない。そうすれば、今年のボーナスはほぼ確定だ」フロント係は「はい」と返事した。彼女はもう何も言えなかった。支配人は立ち去りながら、独りごちるように呟いた。「綺麗な人だな......あんなに傷ついて。一体どんな男にやられたんだか......」水谷苑は最上階に着き、スイートルームのドアを開けた。びしょ濡れの服を脱ぎ捨て、ゴミ箱に放り込むと、浴室へ向かい、キスマークだらけの体を洗い流した......熱いシャワーを浴びながら、容赦ない鞭打ちを受けているかのように、体がひどく痛んだ。2時間も浴室にこもり、全身の皮が剥けそうになるまで湯に浸かった。バスローブを羽織って大きなベッドに座り、眠ることもなく、窓から外を眺めていた。何も食べず、何も飲まず、ただ静かに座っていた。目は虚ろで、何を考えているのか分からなかった。夕方、九条時也から電話がかかってきた。水谷苑は電話に出た。「時也、1週間だけ1人でいさせて。1週間後、答えを伝える」電話口で九条時也は彼女の言葉を聞き、胸が痛んだ。彼は優しく、痛むかと尋ねた。水谷苑は静かに言った。「心が少し痛む」そして「この数日は電話も、会いに来るのもやめて」と言い、電話を切った。九条時也はオフィスチェアに深く腰掛けた。太田秘書が慌てて入ってきて、机に両手を付き、緊張した様子で言った。「九条社長、大変です！」九条時也は彼
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第776話
九条時也は冷酷な声で言った。「何を企んでいるんだ？苑、俺のやり方は知ってるんだろう」苑はすっかり失望していた。「知ってる！でも、もうこれ以上あなたに仕える気はないの！」何をしようとしているのか、九条時也、すぐに分かるよ。彼女は嗄れ声で言った。「もう行ってもいい？津帆と美緒ちゃんが家で待っている。一晩も帰ってないから、高橋さんはきっと心配している」九条時也は彼女を引き止めた。「送って行く」「結構よ」水谷苑は一歩後ずさった。彼女は最後に彼を見つめ、その姿を脳裏に焼き付けた。この恨み、一生忘れない。彼女は小林渉に聞くことはしなかった。九条時也の目的は達成された。彼は自分を辱め、小林渉にも嫌な思いをさせた。もう小林渉には手を出さないだろう......なのに、自分はただ関係のない男と話しただけで、こんな目に遭わされる。この世界の男はたくさんいるのに、誰かが自分をちょっと見ただけで、彼はその人を縛り上げ、そして自分を辱める。そんなことをしていたら、きりがないじゃないか。もう彼とは言い争いたくない。何を言っても無駄だ。水谷苑は無表情に外へ出た。入口には二人のボディーガードが立っており、彼女が出てくると敬意を表した。「奥様！」彼らは九条時也の意図が分からず、中に頭を突っ込んで尋ねた。「九条様、奥様をお通ししてもよろしいでしょうか？」しばらくして、九条時也の声が聞こえてきた。「行かせてやれ」ボディーガードは頷いた。「奥様、どうぞ」別荘の庭には黒い車が停まっており、運転手が傍らに立って恭しく言った。「奥様、九条様がお送りするようにと言っております」水谷苑の目はうつろだった。彼女は運転手に静かに尋ねた。「あなたは私が奥様だと思う？本当にそう思う？」運転手は何も言えなかった。水谷苑はすでに彼を通り過ぎ、別荘の門へと歩いていた。そして、その華麗な黒い彫刻が施された門を出た。背後で、春の風が吹き、ガラスが砕ける音がした。霧雨が彼女の顔に降り注ぎ、冷たい。彼女は何も感じていないようだった。ハイヒールを履いたまま雨の中を歩く。しかし、どんなに雨に打たれても、昨夜の屈辱は洗い流せない......ハンドバッグの中の携帯が鳴った。高橋からの電話だった。高橋は焦った様子で言った。「奥様、どうして一晩
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第775話
こんな仕打ち、耐えられない。九条時也は彼女を愛しているんじゃない。歪んだ独占欲を満たしたいだけだ。どんなに情欲に溺れそうになっても、魂の奥底まで突き動かされるような瞬間が訪れても、彼女は声を押し殺した。これ以上屈辱的な叫び声を上げるまいと、必死に耐え続けた――私に乗っているのは人間じゃない。獣だ。人としてあるまじき行為だ。耐えがたいほどの痛みが襲ってきた時だけ、水谷苑は魂の底からの悲鳴を上げた――やめて、やめて......どうしてこんなに痛いんだろう？なんでこんなに苦しいの？水谷苑の目は生気を失い、光が消えていった。初めて彼に近づき、キスをしたあの日、胸が高鳴った。でも、そんな思い出も、何度も体を重ねるうちに、色あせてしまった。九条時也、なんて残酷な人なの。それでも九条時也は飽き足らず、彼女を抱き上げてベッドの端に腰掛けさせ、小林渉の怒りと狂気に満ちた様子を無理やり見せたまま、水谷苑を抱いた......ああ。ついに水谷苑は耐えきれなくなった。顔を上げると、汗ばんだ首筋に彼の唇が触れ、噛みつかれた。彼はまるで自分を鼓舞するかのように囁きかける。「気持ちいいなら声に出せ！あいつに聞こえるように叫べ！苑、あいつにもう二度と、お前を奪おうなんて考えさせないようにするんだ！」水谷苑はまるで水から引き上げられたように、全身汗びっしょりだった。彼女はもはや何の音も立てず、まるで人形のように彼の思うがままだった。彼女はガラスの向こうの小林渉を見つめていた......小林渉にはこちらの物音が聞こえていた。ここで何が起こっているのか察し、狂ったように椅子を動かすが、言葉にならない。声は途切れ途切れだった――「彼女に触るな！彼女に触るな！彼女は何も悪いことをしていない！彼女に触るな！」......しかし、彼は何もできなかった。檻に閉じ込められた獣のように、一晩中、あの生々しい音に耐え続けた。そして、微かな何かが砕ける音を聞いた気がした。まるで......まるで水谷苑の心が砕ける音のようだった。やめろ。やめろ。彼女に触るな。後悔していた。全て自分のせいだ。彼女に会いに行かなければ、あんな想いを抱かなければ、こんな目に遭わなかったはずなのに......九条時也は本当に最
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第774話
水谷苑は呆然とした。頭に被せられた黒い布が、一瞬にして静かに濡れていく。信じられない気持ちで、彼女はかすれた声で彼に尋ねた。「本当に、こんなことをするつもりなの？」水谷苑は激しく抵抗した。夜の闇に引き裂かれるような声で、彼女は叫んだ。「時也、一体どんな悲惨な結末になれば、あなたは諦めるの？」九条時也の大きな手が彼女の首筋を掴み、自分の体へと引き寄せた。彼は彼女に覆いかぶさり、低い声で言った。「結末なんてどうでもいいんだ！苑、俺たちは永遠に一緒にいるんだ！」ゲームは終わった。彼女への甘やかし、彼女に与えていた自由は、ここで終わりだ。これからは全て彼が決める......実際、彼女が撮った写真はもう脅威にはならない。あのプロジェクトは別の会社に移した。形は変わっても、中身は彼のプロジェクトだ。彼女はもう、彼を脅かすことはできない。水谷苑は知らない。それも当然だ。彼は彼女を甘やかして、好き勝手にさせてやるつもりだった。だが、現実はそう甘くはなかった。彼女を自分の手のひらで転がしていなければ、また他の男に奪われてしまう。小林渉と河野誠は、よく似ている。......30分後、車は一戸建ての邸宅に到着した。ドアが開くと、九条時也は彼女を抱き上げ、灯りのついた玄関へとまっすぐに向かった。1分後、彼女の体はベッドに沈んだ。頭から黒い布が外された。金と黒を基調とした寝室は、視覚に強い衝撃を与える。水谷苑はベッドに仰向けになり、目尻にはまだ涙の跡が残っていて、それがかえって彼女を美しく見せていた。彼女の真上には、九条時也は、彼女をじっと見つめていた。彼はゆっくりと言った。「今、俺と帰れば、この後のことは何も起こらない。苑......お前を泣かせたくない」彼は彼女の顔を優しく撫でた。水谷苑は顔を背け、本能的に彼を拒絶した。九条時也の瞳は暗くなり、声も冷たくなった。「どうやら、お前は望まないようだな！大丈夫。今夜が過ぎれば、あの人はお前への未練を断ち切るだろう」あの人......水谷苑の体は震えが止まらなかった。P市で、九条時也のやり方を目の当たりにしていた。刑務所にいる自分のもとへ、彼は毎晩のように入り込み、自分の体を無理やり奪い、妊娠させたのだ。彼女は震える声で言った。「今度は何をしようっ
