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体育祭実行委員

Autor: 姫吏祢夢
last update Data de publicação: 2026-07-02 23:12:58

五月に入り、学校中が少しずつ騒がしくなっていた。

理由はひとつ。

体育祭。

廊下には体育祭のポスターが貼られていて、

クラスは体育祭の話で持ちきりだ。

「いよいよ始まるね、体育祭。」

私が呟くと、陸が

「今年は優勝したいよな!」

とはりきっていた。

「昨年はおしかったもんな。」

と返事する湊。玲央はというと…。

「暑そう。無理。」

と嫌そうな顔をしていた。

現実的ですね、相変わらず。

そんな話をしていると、

先生が教室へ入ってきた。

「じゃあ早速実行委員決めるぞー。」

ホームルームで先生が言った瞬間、

教室中がざわついた。

「やりたくないー。」

「絶対忙しいじゃん。」

そんな声があちこちから聞こえる。

私もその一人だった。

できることなら避けたい。

面倒だし。

人前に立つのは得意じゃないし。

「誰か立候補いるか?」

もちろん誰も手を挙げない。

静寂。

気まずい空気。

「じゃんけんしようぜ。」

誰かがそう言った。

「それは嫌!」

とクラス中が笑いに包まれた。

陸とかやらないのかな…と思っていた、

その時だった。

「はい。」

手を挙げたのは湊だった。

教室がざわつく。

「東堂やってくれるのか?」

「はい。」

爽やかか。

爽やかなのか。

さすが人気者。

私は心の中で拍手した。

これで一人決定。

すると担任が言う。

「じゃあ女子は?」

静寂再び。

誰も動かない。

みんな目を逸らしている。

私ももちろん逸らした。

すると。

「水原。」

聞き慣れた声。

振り向くと陸だった。

「え?」

「お前向いてそう。」

「向いてない。」

「向いてる。」

「向いてない。」

「向いてる。」

「向いてない!」

教室から笑い声が上がる。

「仲良いなー。」

誰かが言った。

恥ずかしい。

すごく恥ずかしい。

すると。

「水原ならいいんじゃないか?」

先生が言った。

「えっ!?」

周りも頷いている。

待って。

なんで。

なんでそうなるの。

だって私。

小学生の時に、前に出て発表する時に

盛大に失敗したことがあって

今でもトラウマなの。

あれから人前に立つことは避けてきた。

どうしよう。また失敗しちゃったら。

私が葛藤していると、

「伊吹ならできるだろ。」

湊が笑って私を見た。

「無責任なこと言わないで!」

「大丈夫だって。」

その一言がずるかった。

湊にそう言われると。

なんだかできる気がしてしまう。

不安も心配もあるけど、

湊がいるならやってみよう、

頑張ってみよう。

そう思えた。

「……やります。」

気付けばそう言っていた。

教室から拍手が起こる。

終わった。

果たしてこれで良かったのかな。

放課後。

実行委員の初顔合わせ。

教室に入ると。

そこにはすでに湊がいた。

「お。」

目が合う。

「よろしくな。」

そう言って笑う。

その笑顔に。

また胸が少しだけ騒いだ。

先生が役割説明をしたり、

他のクラスの実行委員との自己紹介をしたり、

体育祭当日のスケジュールを確認した。

私が緊張しながらメモをとっていると

隣に座っていた湊が

「そんなに緊張しなくていいよ。」

と小声で言ってきた。

「うん…。」

私は小さく頷いた。

初顔合わせが終わって、

部活がある湊とは教室でお別れ。

「じゃあ、俺部活行ってくる。」

湊が鞄を肩に掛ける。

「うん、頑張ってね。また明日。」

「おう。ありがと。またな。」

軽く手を振って教室を出て行く湊を見送り、

私も一人で廊下へ出た。

校門を出る前にふと後ろを振り返る。

校庭では、すでに運動部の掛け声や笛の音が響いている。

グラウンドを走る陸上部。

ボールを追いかけるサッカー部。

そこにはすでに合流した湊の姿。

「頑張っているなぁ。」

私は小さく呟いて、帰り道を歩き始めた。

夕日に照らされた体育館は、

いつもより少しだけ輝いて見えた。

「湊も頑張ってるんだ。私も頑張ろうっと。」

湊の部活姿を見た私は元気が出てきて、

前向きな気持ちになれた。

湊、あのね。

本当は断るつもりだったんだ、実行委員。

でも私が変わるチャンスだと思った。

湊が勇気づけてくれたんだよね。

ありがとう。

私は心の中で湊に感謝を伝えた。

体育祭まであと一か月。

実行委員として忙しくなる毎日が始まる。

少し不安で、

だけど。

それと同じくらい楽しみな自分もいた。

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