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風に消えた誓い

風に消えた誓い

By:  こむぎこCompleted
Language: Japanese
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社長である松浦竜也(まつうら たつや)と内密に結婚して6年。やっと彼が、私たち夫婦の関係を公表してくれる気になった。 会社のパーティーでは、もう知らないふりなんてしないで、みんなに私のことを紹介してくれた。 竜也が、柴田遥(しばた はるか)のために家に帰ってこなかったり、私との約束をすっぽかしたりすることも、もうなくなった。 竜也の態度が変わったおかげで、義母の松浦穂花(まつうら ほのか)からも、もう嫌味を言われなくなった。 竜也があからさまに特別扱いしてきた、遥からでさえ、メッセージが届いた。 【あなたの勝ち。6年も添い寝もなしの生活に耐えて、やっと彼の気が変わったってわけね】 こうして私は、やっと名実ともに竜也の妻になった。 でも、思ったほどうれしくはなかった。 竜也が、結婚式のプランを差し出してきた時、私は思わず黙り込んでしまった。 私の様子がおかしいことに気づいた竜也は、眉間にしわを寄せて問い詰めてきた。 「周りにもちゃんと紹介して、結婚式もやり直す。これって、お前がずっと望んでいたことじゃなかったのか? 絵美(えみ)、また何をすねてるんだ?」

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Chapter 1

第1話

社長である松浦竜也(まつうら たつや)と内密に結婚して6年。やっと彼が、私たち夫婦の関係を公表してくれる気になった。

会社のパーティーでは、もう知らないふりなんてしないで、みんなに私のことを紹介してくれた。

竜也が、柴田遥(しばた はるか)のために家に帰ってこなかったり、私との約束をすっぽかしたりすることも、もうなくなった。

竜也の態度が変わったおかげで、義母の松浦穂花(まつうら ほのか)からも、もう嫌味を言われなくなった。

竜也があからさまに特別扱いしてきた、遥からでさえ、メッセージが届いた。

【あなたの勝ち。6年も添い寝もなしの生活に耐えて、やっと彼の気が変わったってわけね】

こうして私は、やっと名実ともに竜也の妻になった。

でも、思ったほどうれしくはなかった。

竜也が、結婚式のプランを差し出してきた時、私は思わず黙り込んでしまった。

私の様子がおかしいことに気づいた竜也は、眉間にしわを寄せて問い詰めてきた。

「周りにもちゃんと紹介して、結婚式もやり直す。これって、お前がずっと望んでいたことじゃなかったのか?

絵美(えみ)、また何をすねてるんだ?」

竜也は分厚い結婚式の企画書を、不機嫌そうに投げ捨てた。

大きな音が耳元で響いて、私はビクッと震えた。胸が苦しくなって、呼吸が少し速くなる。

竜也もそれに気づいたようで、眉間のしわをさらに深くして、いらだたしげにため息をついた。

「一体どうしたいんだ?俺は最近、お前のためを思っていろいろやってるつもりなんだが」

私はうつむいて、カーペットの複雑な模様をただじっと見つめ、何も言わなかった。

確かにこの3か月、竜也はよくやってくれたと思う。

遥とはもう会っていない。

私が止めなければ、すぐにでも遥を海外に送り返すつもりだったみたい。

結婚記念日も覚えていてくれたし、付き合いの飲み会を断って、私と食事をするために家に帰ってきてくれた。

どこへ行くにも報告してくれたし、インスタにあった遥の写真を、私と竜也のツーショットに変えてくれさえした。

このやり直しの結婚式だって、私が昔話した好みに合わせて準備してくれている。

まるで人が変わったように、彼は完璧な夫になろうとしている。

私は乾いた唇をきゅっと結び、無理やり笑顔を作った。

「あなたが選んでくれれば、それでいいわ」

竜也の我慢も、もう限界だったみたい。

彼はタバコの箱から一本取り出して、火をつけた。

でも何かを思い出したように、急に灰皿にタバコを押し付けて、立ち上がると私を腕の中に引き寄せた。

「絵美、俺の我慢にも限界がある」

竜也は声を低くして、警告するように言った。「これ以上、わがままを言うな」

竜也の腕の中で体がこわばる。私を抱きしめるその手は、指の節がくっきりしていて、昔は大好きだったのに。

でも今は、その手が氷のように冷たい手錠にしか感じられない。

こんなに体を寄せ合っているのに、私たちの間には決して越えられない深い溝があるように感じた。

恋を知ったときから十数年、竜也を愛してきたけど、今ではもう心は冷え切ってしまった。

そして今この瞬間、竜也に触れられることに、吐き気と拒絶感しか抱けない自分に気づいた。

だから、インターホンが鳴って、竜也がやけになったみたいに、訪ねてきた遥を中に入れた時、私はなぜか、ほっとした。

遥は家に入るなり、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。今にも倒れそうな様子だった。

「竜也、どうして会ってくれないの?電話にも出てくれないし。会いたかったよ……」

竜也は何も答えず、私の反応をうかがっていた。

私が無表情なのを見て、彼は諦めたようだった。ここ数か月、遥に見せていた冷たい態度はもうどこにもなかった。

竜也は手を伸ばして、遥を腕の中に抱き寄せた。

「これからはもうしないよ」

遥は嬉しそうに顔を上げた。でも、竜也の視線が私に向いていることに気づくと、悔しそうに唇を噛んだ。

遥は私の方に向き直ると、哀れな声で頼んできた。

「絵美さん、誤解しないで。どうしても竜也に会いたかっただけで、あなたから何かを奪おうなんて思っていないわ」

遥はそう言うと、今度は悲しそうな顔で竜也を見上げた。

「竜也、今日で会うのは最後にするから。

お腹の子は諦めるわ。そして海外に戻って、もう二度とあなたの邪魔はしない」

「なんだって?

妊娠したのか?」

竜也は、はっと息をのんだ。

遥は悲しそうに頷くと、挑発するように私をちらりと見た。そして、そのままぐらりと倒れて気を失ってしまった。
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