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10.ミッドナイトブルー - 1

last update Huling Na-update: 2025-09-03 17:00:00

 隠されると知りたくなるのが恵也である。

 小学校では非常ボタンを押しまくり、教室ではサッカーをしまくり、メダカの池にはザリガニを投入してきた男である。

 帰宅時間は十九時過ぎ。

 まだまだ春の夕暮れは日が沈むのが早い。

 あの爆発的に増えたフォロワーに、普段インスタがメインの恵也は霧香の身の安全が不安で仕方がなかった。

 恵也、現在霧香の後を尾けている。

 そもそも郊外の豪邸に一人暮らしとは、いくらお嬢様でも分からない話だ。独り立ちが目的なら地域住民と接点のあるようなマンションやアパートに賃貸するはず……と言う思い込みと、もし危険な目にあったら………などと、案外面倒見のいい兄貴分なのである。

 顔出し配信したがために、ストーカー等に襲われては大変だと、あっさり帰宅した彩と別れ、霧香の様子を背後から尾ける事にしたのだ。

 駅からバスに乗り、郊外へ向かう。恵也はリュックからパーカーを取り出すとフードを目深に被り、コソコソと上手くついて来た。

 霧香は住宅地で降りると、未開拓の小さな雑木林の前で足を止める。

 どうやら通りに面してポストがあるらしい。

 中を確認している霧香を見届け、つい好奇心で、雑木林の中に足を踏み入れる。

 どんな豪邸か。

 本当に一人暮らしか。

 兄弟姉妹はいないのか。

 恵也にとって素性を知っていた彩より、霧香の方が余程訳の分からない存在だった。

 何よりあんな美少女が小学、中学と通っていたら、絶対友人から又聞きでも噂になるレベルだと思っている。

 彩と違い……恵也は霧香の魅了魔術にかかりやすい体質だったようだ。

『好き = LOVEでは無いが放っておけないし、心配だし、もっと知りたいし』くらいの言い訳を思い浮かべてる恵也だが、健全な反応だ。

 何故なら、恵也はファミレスで話した時から、既に霧香に一目惚れしている ! 

 林を抜けるとただの空き地だった。平らではあるが、何も無い。

 垣
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