夕暮れの散策を終えたエレナは、約束の刻限より少しだけ早く、皆との集合場所である街の入り口へと戻ってきた。 石畳を染める橙色の光。 昼の喧騒を吐き出すように、人影はまばらで、風だけが穏やかに吹き抜けている。 その入り口の脇で、すでに一人の人物が静かに腰を下ろしていた。 ――シオンだ。膝の上に開いた書物に視線を落とし、周囲の音すら遮断しているかのような佇まい。 「戻りました、シオンさん」 エレナの声に、彼はゆっくりと顔を上げる。 「おかえりなさい、エレナさん。他の方々も……もう間もなくでしょう」 穏やかで、凪いだような声。 不思議と、その一言だけで、胸の奥に溜まっていた緊張がすっと溶けていくのをエレナは感じた。 それから、ほんの数分もしないうちに。 街の入り口の空気が、にわかにざわめいた。 聞こえてきたのは――深く、重たいため息。 そして現れたのは、まるで三日三晩、眠ることも忘れて魔獣と戦い続けてきたかのような、生気の抜け落ちた瞳のシイナだった。 「……悪い。待たせたな……」 その声には、覇気というものが悉く失われている。 「シイナさん!? だ、大丈夫ですか? 何か、あったのですか?」 あまりにも尋常ではない様子に、エレナは思わず駆け寄り、顔を覗き込む。 「いや……うん……その……なんだ……」 歯切れの悪い言葉の合間に、乾いた笑いを挟みながら、シイナは続けた。 「……とんでもなく、いや……ものすごく賑やかな奴が、俺たちのパーティに合流することに、さっき決定してな……はは……」 そう言って、魂の抜けたような腕で、力なく背後を指し示す。 訝しげに、エレナがその先へと視線を移した――その瞬間。 「どうもどうもーッ!!! 皆さん、初めましてッ!! 私、マギア研究所の研究員――ミストですっ!! 以後お見知り置きを! どうぞよしなに、よろしくお願いしますねぇーーッ!!!」 まるで小型の竜巻が、目の前で発生したかのような勢い。 鼓膜を直接揺さぶる、やたらと元気のいい声。 一人の少女―― ミストが、満面の笑みで、そこに立っていた。 有り余る元気。 いや、溢れすぎている勢い。 見ているだけで、こちらの体力
Last Updated : 2025-05-25 Read more